かゆみを感じなくする方法がある?

マイケル・アランダ氏:かゆさを考えるだけで、なんだかかゆくなってきますよね。

かゆみはさまざまな要因で引き起こされます。通常、原因といえば、虫に噛まれたとか、触れるとかぶれる植物に触ったとか、肌に対して髪の毛をブラッシングするといったことだったりします。

しかし、湿疹や乾癬などの肌の状態によって引き起こされることもありますし、脳腫瘍や肥満、化学療法など一見関係なさそうな事柄によって起きることもあるのです。

そういったさまざまな要因があることから、かゆみは不思議なものに思えます。そして、実際に不思議なのです。

しかし、科学雑誌に掲載された2013年の研究で、国立衛生研究所の研究員2名がかゆみがどう作用するのかという生理を発見しました。これは慢性的にかゆみに悩まされている人たちが治療法を見つける手助けになるでしょう。

科学者たちはかつて、かゆみとは基本的に低レベルの痛み信号だと解釈していました。つまり、ある種の神経細胞がかゆみと痛みを両方とも検出しているのだと考えられていたのです。

しかしその研究によって、かゆみはNPPBと呼ばれる神経ホルモンを生み出す特別なニューロンと関係していることがわかりました。

そこで、科学者はマウスを遺伝子改造してNPPBを生み出さないようにし、かゆみを引き起こすとされている化学物質をマウスに与えました。マウスは身体も熱も、痛みも感触も感じられましたが、体を掻くことはありませんでした。

つまり、NPPBがなければ、かゆみもないということです。かゆみを止めたい人々には朗報ですよね。

かゆみの作用について知るほど、コントロールができるようになります。しかし残念なことに、「この神経ホルモンをブロックするだけ」という簡単な話ではありません。

かゆみは伝染する

NPPBには別の作用もあるのです。それは肝臓によって排出されたナトリウムを調節するために心臓から放出された物質で、血圧をコントロールする役目を果たします。けれど、多くの人々にとっては、かゆみを止めることはいいことです。かゆみは非難されますが、それは便利な進化的発生でもあるのです。

かゆいところを引っ掻くことで、みなさんの身体に害が及ぶ前に、厄介な虫や危険な植物、もしくはそのほかのなにか刺激物を取り除くことができます。

このかゆみの話を聞いて、きっとみなさんもなんだかかゆくなってきた感じがするでしょう。僕だってそうです。かゆみは、クモがみなさんの身体中を這い回っているような感じにさせると考えてみてください。

研究者たちは信じ込みやすい観客に向かってかゆみに関するレクチャーをして、彼らの反応を調査しました。そして、その観客たちは言葉によるかゆみの刺激とビジュアルによるかゆみの刺激、どちらに対しても身体を掻きだしたのです。

人間に対してだけではありません。研究者たちは猿に対して、かゆみの伝染性の効果を実験しました。あくびが人へうつるように、猿たちはほかの猿が掻いているのを見て、その行動を真似たのです。

とてもイライラすることですが、かゆみが伝染することは進化の恩恵でもあるのです。もし集団の誰かにかゆみがあれば、それは彼らが寄生生物にさらされているか、もしくはなにか刺激物が周りにあるということを意味します。つまり、自分自身もその危険にさらされているということです。

念のために身体を掻き始めさせる価値があると言えますね。