クラウドやツールを導入する際のアドバイス

吉羽龍太郎氏(以下、吉羽):これクラウドのセッションではありますが、一方で逆にクラウドだからつらいことってなにかありますか? いきなり無茶なふりするなって感じですかね。

藤田純氏(以下、藤田):先ほどのお話と共通すると思うんですけども、弊社のサービスはソースコードを格納するところが大きな機能になっています。どこにその情報を置くかというのが、国や企業、団体によって、大きな問題になるケースがあるので。

そういうケースだと、すべてのクラウドプラットフォームがダメとかいいとかって話ではないんですけれども、ちょっとつらい場面もあるかなと。

吉羽:なるほど。社内のセキュリティポリシーとか、そういうポリシー系ですかね。

今日いらっしゃっている方はすべてのツール、クラウドを含めて、かなりの方が導入されてましたけど、なかにはまだ導入されていない方がいらっしゃると思うので、実際に「導入しよう」と思ったとき、そもそもどうやってこういうツールとかクラウドを導入していけばいいんだろうと。

いろいろなアプローチがあると思いますし、正解が1つだとも思わないんですけれど、みなさんが実際にたくさんのエンドのお客さんにお会いして、「こういうやり方がいいんじゃないですか?」という話をしたりとか。

岩瀬さんは、ご自身がユーザーの立場なので、たぶんご苦労されていろいろやられていたと思うので、そのあたりを会場のこれから導入をされる方に、アドバイスをいただければと思います。

岩瀬義昌氏(以下、岩瀬):私の環境から話すと、ちょっとエンプラっぽい会社なので、なんらかのツールを入れようとすると、やっぱりハードルはけっこう高いんですよね。

幸いなことに、私はSlackも使っていますし、Qiita:Teamも使っていますし、GitHubも使っています。

社内を通す時にコツがあって。ちょっと偉い人にいきなり行くとわからないんですよね。今のこのビジネスの文化とかについていけない。でも、一部ミドルマネジメントくらいの層に、理解のある人が必ずいます。

そういう人を巻き込んで、なにかあったら責任を取ってもらいつつも、けっこうボトムアップ主導でやっていくという、ちょっとせこいやり方するのがとてもオススメです(笑)。

それで、実績ができると、Slackなんかは入り始めるともう止まらないですよ。そうすると「あれ?」って部隊の部長が気づくんですよね。

吉羽:(笑)。

岩瀬:気づいてきて、なぜか部長も入ってるみたいな。こうなったら勝ちです(笑)。こういうふうにやっていくのが、私のとてもオススメなやり方ですね。

ツール導入は「セキュリティ」がキーワードに

吉羽:なるほど。ある程度、既成事実を作るようなやり方をしたときに、現場の偉い方というのは、その流れでもなんとか攻略できるのかなとも思うんですけど、一方で、大きな会社になればなるほど、セキュリティだけを面倒みてるとか、けっこううるさい監査をされる部門の方とかが増えてくると思うんです。

岩瀬さんがいらっしゃる会社はけっこう大きい会社で、そのあたりはいろいろあったんじゃないかと想像するんですけれど。

岩瀬:やっぱり「セキュリティ」はキーワードですね。

吉羽:セキュリティはキーワード。

岩瀬:ここはコツがあって。1つのノウハウの共有になりますが、お客様情報とか、めちゃめちゃ重要な情報ってありますよね。絶対に外に出せないもの。そういうものに関してはやっぱりオンプレにしています。

Qiita:Teamなどを使ってはいるんですが、そこには「まあ、バレても大丈夫だよね」という(笑)。その線引きがたぶん会社によって違うんですけど、そういうところである程度線を区切って話はしています。

吉羽:でも、チームの方に「お客さんの名前はこのツール上で出しちゃダメ」ということを守らせるのってどうやるんですかね。けっこう大変な気がします。

岩瀬:間違えちゃったら消します。徹底です。基本的には。

吉羽:そうすると、岩瀬さんずっと見張ってたんですか?

岩瀬:だいたいQiitaの記事とかを最初は読んでましたね。あとは、必ず情報共有ミーティングみたいなものがあったりするので、そういうところで使い方を気をつける話を必ずしていました。

吉羽:教育を徹底してどんどんやっていくという感じですかね。

岩瀬:はい。

旗振り役がいるかどうかもカギ

吉羽:なるほど。導入という意味でいうと、高橋さんはどうですかね?

今、岩瀬さんはボトムアップでやっていって、承認をもらっていくというお話だったんですけれども、高橋さんもQiita:Teamを、実際にお客さんに入れていただいている立場として、偉い方に会うこともあれば、たぶん現場の方というケースもあると思います。どちらがやりやすいとか、なにかありますか?

髙橋侑久氏(以下、髙橋):今、1人わかってくれるミドルマネージャーを味方につけるって話があったと思うんですけども、そういう人といきなり話ができるのはやっぱり一番楽ではあるなという感じはしています。

だけど、そういう人がいるのかどうかというのは組織ごとに違うので、ボトムアップがいいのか、トップダウンがいいのかというのは、ちょっと明言は避けるんですけれども。

吉羽:一概には言えないですよね。

高橋:少なくとも導入するときに、ポンと置いておいたらみんなが勝手に使い始めてくれるというのは、相当奇跡的な状況でないとなかなか難しいとは思います。

どうしても最初に誰か率先して使う人、最初に飛び込んでいく人というのはやっぱり必要だと感じていますね。

先ほどの、オフラインで話したことをオンラインに積極的に書いていく活動をしている人がいるという話に近いんですけれども、そういう旗振り役みたいな人がいることは、ツールの導入を成功させるためにけっこう重要だと感じています。

社内のロックスターを巻き込んでいく

吉羽:それはクラウドもけっこう似たようなところなんですかね。新しいものを導入しようとすると、よくいうチャンピオンとか社内エバンジェリストみたいな人がいたほうがいいんですかね。

僕の経験上、そういう人が1人だと心が途中で折れちゃって、自分はすごい必死にやってるのに、みんながなかなか乗っかってきてくれなくて、ある日会社辞めちゃうみたいな(笑)。けっこう味わったことがあるんですけど。

岩瀬:めちゃめちゃ気持ちはわかるんですけど、僕の持論だと、折れてからが勝負ですね(笑)。

吉羽:折れてからが勝負(笑)。

岩瀬:そのぐらいのノリでいかないとなかなか広まらないです。

吉羽:強いですね(笑)。あ、なんか藤田さんが言いたそうな(笑)。

藤田:いやいや(笑)。まあ、GitHubも同じかなと思っていて。ボトムアップって、トップ・ボトムってあまり言葉はあれなんですけれども、やっぱり現場からだろうと。

やっぱり会社の組織のなかに、ロックスターみたいなチームとか人っていると思うんですよ。誰しもが憧れるエンジニアの人とか。そういう人たちをうまく巻き込んで、彼らに使ってもらって、よさというのを実感してもらうと。

さっき、上の人も巻き込むってお話もあったと思うんですけれども、基本的に組織の上のほうの人というか、管理している立場の人たちって、みなが幸せに楽しく仕事をしていれば、それは彼らにとってもうれしいことなはずなんですね。

これは先日聞いた話なんですけども、ある会社では現場からGitHub導入のムーブメントが起こりました。それで、ロックスターチームが使い始めて、みんな「お、すげー。俺らも使ってみたい」という流れが出てきました。

その時に、そのロックスターチームの人たちが、組織の上のほうの人たちに「ありがとうございます」ってメールを投げたんですよね。

吉羽:おお。

藤田:すごくシンプルなことなんですけど、そうすると、上からすると、「あ、こういうことをしてあげれば、この人たちは喜んでくれるんだ」「なるほど。逆にありがとう」って。「じゃあ、みんな使ってね」という話になった。

そういう話をお聞きしたので、やっぱりコミュニケーションって、シンプルですけど大事だなというのを改めて思った次第です。

著名なコンサルタントに上の人をガツンと殴ってもらう

吉羽:なるほど。今のすごくいい話ですよね。だいたいの場合、新しいツールを入れようとして「ダメ」「セキュリティが……」と言われて、「うちの上はわかってない」となる感じじゃないですか。

藤田:「ありがとう」と言われて嫌な気持ちになる人はいないと思いますし、たぶんそれは本心だったと思うんですよ。本当に現場を気にしてくれてる上がいて、ありがたいと思ったんだろうなと思いました。

吉羽:なるほどねぇ。ありがとうございます。

岩瀬:もう1個だけ補足していいですか?

吉羽:どうぞどうぞ。

岩瀬:社内ハックがあって、もう1個だけ。そういうツールを導入するときに、1つの手段としては、著名なコンサルタントで筋が通ってる人に上の人をガツンと殴ってもらうというのはありますね。これは効く人と効かない人がいます。

吉羽:例えば、伊藤直也さんみたいなちょっとこう。

岩瀬:まさにそういう人のパターンです。

吉羽:連れて行って、ガツンと殴ってもらうと。ありがとうございます。ほかになにかいい手ないですか?(笑)。「まだまだいっぱいネタあるんだけど」みたいな。

岩瀬:今のところ、それで通ってしまったので、次の手は詰まったら考えます(笑)。