70点のネタでウケてもファンは増えない

絵本作家のぶみ氏(以下、のぶみ):(今までの話で)すごいわかるのが、僕も講演会でやっぱり次の絵本を読みたいんですよ。ラフの状態の、まだ読み聞かせてないやつとかやりたいんですよ。

西野亮廣氏(以下、西野):はいはい。

のぶみ:そうしないと、自分がドキドキしないから。

西野:あー、わかる!

のぶみ:やってて「なんだこれ……」って。

西野:はいはい、終わった後すごい楽しくない。

のぶみ:「俺、知ってるよ」みたいな。

西野:そうそう、「これぐらいウケるのも知ってるよ」なんですよ。もうこの反応、他所で見たし。

「いきなりこんなにしゃべってすごい!」みたいに思ってるかもしれないけれども、ほかでもうウケたやつを下ろして、「どうだ!」ってやってるみたいな感じ……なんかぜんぜんおもしろくないなって思って。

山口トンボ氏(以下、トンボ):(笑)。

のぶみ:そうなんですよ。

西野:しかも、終わった後がおもしろくないんですよ。

トンボ:まあね~。

構成作家・山口トンボの落語体験

西野:そこなんです。もう安パイのネタやってドーッてウケて、「どうもありがとうございました!」って終わった後の打ち上げの、「やったな!」みたいな感じが一切なくて。僕は1回やっちゃったことがあって。トンボがちっちゃい小屋で落語をやったときがあったでしょ?

トンボ:ありましたね。

のぶみ:えー! マジで?

トンボ:2回ぐらいやってます。

のぶみ:そうなんだ。

西野:そんときにいいなと思ったのが、トンボがやっぱり一番ビビってたんですよ。開演前すごいビビってて、「むちゃくちゃ緊張する」って言って。

のぶみ:普通緊張するよね!

トンボ:しますします(笑)。

西野:本番もうまくいったところもあれば、うまくいかなかったところもあったんですよ。やっぱ緊張するし、初めてだし。だけれども、最終的にはバーンってウケて終わったんですよ。その後の打ち上げのこいつの表情がよかったー! いい顔してた!

のぶみ:通り抜けたからな(笑)。

トンボ:もうやり切ったから。

のぶみ:なるわ、それはなるわ!

西野:もうなんか、ホームランも空振りも全部やって、「僕はやることはやったんだ」って。

のぶみ:もういい酒だ!

西野:そう、いい酒だったんです! それに比べてそんときの僕ときたら……なんかこう、2塁打みたいなの打って。

のぶみ:うんうん、わかる、わかるわ。

西野:それで、「なんておもしろくない男なんだ」って思ったんですよ。それに比べて、恐怖とか不安から解放されたときのこいつの顔。

トンボ:(笑)。

西野:キラキラ、もう卵みたいやった。

トンボ:卵みたいでしたか(笑)。

西野:卵みたいにもう真っ白で。

のぶみ氏が号泣した子供のひと言

のぶみ:たぶん西野さんが、「俺、こういうふうにやりたかった」って思ってたからというのもあったんだろうね。

西野:はいはいはい。

のぶみ:「トンボみたいなことしたかったなあ」っていうのがあったからキラキラ見えた。

西野:いや、そうなんすよ。

のぶみ:そういうことだろうな。

西野:そうなんですよ。

のぶみ:この前、僕なんて(お客さんが)600人いて、テレビがバーッて来てんのに、画面が映んないし、「これどうすんの? どうやってしゃべっていくの?」って。

そんで「画面映んないですよね」っていうのをちょっと話題にしたりして、もうギリギリでやっていくんですよ。どうなるかわかんない。プルプルプルプル震えてるし。

「うわー、プルプル震えてる~」とか言って、みんなバーッて笑ったりして。もう必死にやって、「僕はすごく大事なときなんです」って言って、最後に子供たちが「とりあえず、こいつ一生懸命やってるから見よう」みたいな感じの雰囲気になって……。

最後に終わって、「今日はすいませんでした! 31日にリベンジさせてください」「でも、すごい幸せでした」って言って終わって。それで子供が「点数つけてあげよっか?」って言って、大阪の子が「100点」って言ってくれて(笑)。

西野&トンボ:あーー!

のぶみ:ボロボロボロって。

トンボ:それ泣けるなあ!

のぶみ:「もう俺、ダメだー」って思ったから。

トンボ:それ、めっちゃ泣けますね。

のぶみ:「なんて実力がないんだ……」って思ってたから、得意だと思ってた『うんこちゃん』もうまくいかないし(笑)。「もうダメだー」って思ったときに、「100点。いや、それ以上かな」って言われたときにもう。

トンボ:すごい、泣けるなあ。

のぶみ:「のぶみさん握手して」って言われたから、めっちゃうれしくって。

西野:いや、100点っすもん。

のぶみ:だからもう、もがいてるほうが。来てた人は、後から聞くと、確かに見づらかったんだけど、「のぶみさん、めっちゃ頑張ってたじゃんか」って。

西野:はいはいはい。

のぶみ:そんで、最後までやり切るっていう。途中でやめないで、投げ出さないでやったから、「そこがおもしろかった」と言って。

西野:いや、わかります。

のぶみ:それは、子供にも親にも、おばあちゃんにも伝わる。

ファンが求めるのは大ピンチのライブ感

トンボ:ドキュメンタリーの感動があるんでしょうね。

西野:ある! もしかしたら話は違うかもしれないですけれども、テレビの最初1年目、2年目の頃って、アンケート書いて、きっちり提出して。

のぶみ:その話もしてたもんなあ。

西野:それで「このエピソードをしゃべります」みたいなのをやって、やったら70点取るけれども。やっぱりえらいもんで、70点取ったから仕事は増えたんですよ。だけれども、ファン減ったんすよねー。

のぶみ:あー。

トンボ:うわー。

西野:ファンが本当に減って、応援してくれる人がぜんぜんいなくて。「あれ?」って思って、「おれ、むっちゃ頑張ってんのに」みたいな。

のぶみ:ドキドキしないからか? 見てて。

西野:たぶんそうだと思う。しかも、梶原のドジエピソードをバンバンしゃべって、ボンボンウケてて、「これはすごいぞ、評価されるぞ!」と思ったら、確かにウケたけれど、ファンが増えないみたいな。「おもしろい」って言われなかったんですよ。

のぶみ:例えば千原ジュニアさんは、構成作家さんたちにやらせるというのがあって、みんな千原さんをちょっと慌てさせようとしてるんですよね。

それで、同じエピソードを「30秒で話して」「15秒で話して」とか言ったりするんですよ。あれはたぶん、千原さんがいつもテレビで自分で考えてるトークをきっちり話す人だから。

西野:はいはい。

のぶみ:だから、構成作家さんの人たちは、慌てさせようと思って頑張ったんだろうな。ドキドキしてんのを、ライブで見たいんだよね。

西野:とくにね、ライブなのにできあがったものを持ってきて、「どう? おれの腕前」みたいな。「何してんの? その場でやれよ!」とか思ったんですよ、お客さんとの。「その場でやっちゃえ!」って。

トンボ:なるほどね。

のぶみ:僕が言うのもなんだけど、今日の最後のテーマは大ピンチじゃないですかね(笑)。

西野:大ピンチ、いいっすよね。

トンボ:まあでも、そうかもしれないですよね。だから(独演会の)18日の日に何をするか決めるということなのかもしれない。

西野:それ、いいよね。

のぶみ:大ピンチなのに、リハーサルも……。

西野:明日何するか、マジでなんも決まってないみたいな。

のぶみ:なんか、いろいろ起こるんじゃない? ハプニング(笑)。西野さんが知らないハプニングが何個も何個も(笑)。

西野:やっぱいいっすわ、もう。

のぶみ:そんときに、対応するんじゃないですか(笑)。

西野:もう生き様で笑わしたい! 酔っ払ってるみたいなこと言っちゃって、すいませんね。

トンボ:もう、本当にそうなって。

西野:生き様がいい!

トンボ:今日はとくに2時間ずっと居酒屋みたいな(笑)。

西野:生き様! 「あいつ、イッてるな!」みたいな。

トンボ:まあ西野さんなんて、本当にそうなりましたよね。

西野:生き様! 生き様芸人です。