新生児の香りは実際に存在する

生まれたばかりの赤ちゃんの近くにいると、とてもいい匂いがすることに気付くと思います。

しばらくの間、この柔らかな心地がいい香りは、ただのベビーパウダーか、甘い匂いのする、おしりふきのものだと思われており、新米の両親が寝不足のせいで感じる幻、虚構だという人もいました。

しかし、新しい家や新しい車から香りがするように、新生児の香りは実際にあるものなのです。

ではこの匂いはなにが原因で起きるものなのでしょうか? そして科学者たちはなぜ、これが母親や赤ちゃんにとって、画期的な利益になりうると考えているのでしょうか?

人の体臭は多種類の分泌された化学物質から成っていますが、それぞれ、どれが、生まれつきの匂いに関わっているのか、調べるのは困難です。

新生児の匂いは、とくに調べるのが難しいのです。なぜなら、通常約6週間後には匂いは消えてしまうからです。

研究者たちは、赤ちゃんに羊水が残った可能性があるのではと見ています。羊水は、成長していく胚を囲った防御物質です。さらに、ろう質の白色層であり、生まれる時に赤ちゃんの皮膚を覆っている細胞でもある、胎脂の痕跡の可能性もあるのです。

香りが母親の脳に影響?

しかし、匂いが発生する正確な原因はわからなくても、科学者たちはその香りが存在する理由を知りたがっています。

2013年に、「ジャーナル・フロンティア・イン・サイコロジー」で発表された論文には、この香りは女性、とくに母親になったばかりの女性の脳の一部分に影響を与えると思われる証拠を発見したと述べています。

この実験によると、研究者たちは、6週間以内に出産したばかりの女性15人と、出産未経験の女性15人で構成された、ほぼ同い年の女性30人を集めました。

そして赤ちゃんのパジャマ、被験者と関わりがない18人の新生児から匂いを取り出し、脳スキャン中の女性たちにそれを嗅がせたのです。

すると、すべての女性被験者に、脳の報酬系の部分において反応が見られ、わずかに新米の母親たちの方が、反応が多かったのです。

研究者たちは、この香りは、赤ちゃんを世話するときに母親たちが喜びを感じるようにする刺激のような働きをするのではと考えています。これにより、妊婦管理をより促進させ、育児の忙しさや疲労を和らげるのです。

ですが、それでは新米の父親はどうなのでしょう? 父親も赤ちゃんの匂いに影響されるのでしょうか?

そうですね、赤ちゃんの匂いについては、まだ学ぶことがたくさんあります。

研究者たちは、おそらく同じような影響があると考えてはいますが、まだ男性と赤ちゃんの匂いに関する研究はされていないのです。