ほうれん草が地球を救う?
クリーンで安全、しかも無料の「人工光合成」の実用化が待ち遠しい

西村 美保 at TEDxTokyo 2014 #1/2

植物が行っている光合成を人工的に再現してエネルギー源にしてしまおう、という夢のようなテクノロジーの研究が今、岡山大学で進められています。その中心人物の一人である西村美保氏が、研究の進捗状況などについて語りました。(TEDxTokyo 2014より)

「人工光合成」が可能にする、完全にクリーンなエネルギー

西村美保氏(以下、西村):みなさんこんにちは。ここは私のキッチンです。これ、何だかわかります? ポパイが食べると強くなるやつです。

みなさん、ほうれん草は好きですか? 私は大好きです。もし、このほうれん草が新しいテクノロジーの鍵になると言ったら、どう思いますか? 私は光合成の研究者で、光合成のメカニズムをほうれん草を使って研究しています。今日はみなさんに、光合成研究の新しい側面をご紹介しましょう。

太陽の光を使って、植物は水と二酸化炭素からグルコースを作り、酸素を出します。もしこの仕組みを人工的に作れたら、新しいエネルギーシステムが手に入ります。加えて光合成は、温暖化の原因の二酸化炭素を減らすこともできます。太陽の光はクリーンで安全で、しかも無料です。そして私たちは、二酸化炭素を減らしたいと思っています。

人工光合成は、エネルギー問題や環境問題を解決するのに良い方法です。そのために、自然の光合成についての研究は、人工光合成システムの実現に不可欠であると言えます。未来のクルマは、人工光合成でできた有機物で動くかもしれません。ガソリン代を心配する必要は無くなります。できれば8%の消費税は、光合成の前では無力であるべきです。

植物の内部を3Dで見てみると

西村:私は基礎科学の研究者で、経済学者ではありません。自然の光合成の新しい治験を探求しています。今は、植物がどのように環境ストレスに対処しているかを研究しています。

例えば、過剰な太陽の光は植物にとって有害です。光合成タンパク質を壊してしまうからです。日焼けと同じようなものです。植物が日陰に駆け込むのを見たことがありますか? 恐らく無いでしょう、特別な力を持っている人は別ですが。植物は自力で動くことはできません。ですから、厳しい環境でも耐えるか適応するしかありません。

植物は葉緑体を持っており、光合成は特に葉緑体の中の「チラコイド膜」で行われます。そこにはたくさんの光合成タンパク質があるからです。チラコイド膜は光合成にとって大切な場所なんです。今私は、そのチラコイド膜の構造の可視化に取り組んでいます。電子顕微鏡を使ってです。

まず、葉緑体の内部を可視化しました。白い物体が葉緑体で、赤い光は光合成が起きているチラコイド膜の分布を示しています。光合成効率を維持する為に、植物はチラコイド膜の配置を強い光の元では変化させる、と考えられています。

研究を始めた頃、私は顕微鏡観察の技術を持っていませんでした。しかし、植物の内部を可視化したいと考えました。そこで、愛知や東京の研究室をはるばる岡山から訪ねて、電子顕微鏡の使い方を学びました。この研究は、彼らの助け無しにはできなかったでしょう。アイデアやスキルをシェアすることで、新しい研究の分野を広げることが出来るのです。では、チラコイド膜を電子顕微鏡を使って拡大してみましょう。

これは、ほうれん草のチラコイド膜の写真です。チラコイド膜は、強い光の元では外側に曲がっているように見えます。この構造変化は、強い光で損傷を受けたタンパク質を除去する助けになります。植物は光ストレスに対処する為、チラコイド膜の構造を変化させるのです。植物は動きません。ただその中は大いに動いています。3Dでの可視化は、チラコイド膜の構造をより詳しく知るための強力なツールです。

チラコイド膜の3Dモデルを、電子顕微鏡写真から構築しました。今私たちは、チラコイド膜の構造変化を3Dモデルから解析しようとしています。光合成システムの分子的なプロセスは、これまでもよく研究されてきました。しかし、チラコイド膜の三次元構造についての更なる研究が、光合成メカニズムの完全な理解の為に求められています。最終的には、効率的な人工光合成システムの実現の為でもあります。

私は今、植物の体全体の可視化が、3Dマップのようにできるかどうかに興味を持っています。おもしろいと思いませんか? これは、植物の新しいメカニズムを発見する為の一助となるでしょう。

未経験のことだからこそ発見がうまれる

西村:私は今、研究者です。けれど、理科は高校生の頃は好きではありませんでした。国語の授業が好きでした、日本語のネイティブスピーカーですしね。科学の授業には興味が持てませんでした。

しかし、私は天の邪鬼なところがあるので、理系に進みました。その時こう思ったんです、「将来何がしたいのかわからない、じゃあ好きでは無いことをやってみよう。何かおもしろいことが起こるかもしれない!」。おもしろいことには、いつもオープンな心を持っていたので。そのようなおかしな選択のおかげで、今でも科学で奮闘しています。

しかし、私が今でも科学に魅せられているというのも事実です。おもしろいことに、ほうれん草が科学の楽しみを見せてくれました。植物の構造を、3Dモデルを使って解明したいと思っています。

ですから、もし何か嫌いなことがあって、それがまだ未経験のことなら、どうぞそれに飛び込んでやってみてください。そこには、チャンスや見たことも無い発見があるはずです。難しいことをしようとすることは、未来への鍵です。今日の話を、ほうれん草を食べる時に思い出してもらえたら嬉しいです。ありがとうございました。

<続きは近日公開>

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1 ほうれん草が地球を救う? クリーンで安全、しかも無料の「人工光合成」の実用化が待ち遠しい
2 近日公開予定

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