大脳皮質を180のエリアに分割

ハンク・グリーン氏:人間の脳のまったく新たなマップが登場しました。脳のエリアで存在が未確認だった、新たな97のエリアが発見されたのです。

『The Human Connectome Project』は、文字通り人間の脳のすべてを知るための大規模な活動です。先日、このプロジェクトに携わる科学者たちが人間の脳の新たなマップを公開しました。

神経科学者はこれまで、人の大脳皮質を83のエリアに分けていました。新たな研究の成果が雑誌『Nature』で発表され、これがトータルで180のエリアに増加したのです。いまだに脳のすべてが解明されたわけではありませんが、どのように脳が分割され特性を持つのかがより詳しく分かってきました。

大脳皮質は灰色で、しわの多いもっとも外側の層で、言語など高度な思考を担います。それぞれのエリアはそれぞれの役割を持ち、あるエリアはビジョンを、また別のエリアはスピーチに特化します。各エリアの構成や構造には、わずかな違いがあります。

それぞれのエリアを研究することで、科学者が脳の働きや病気による影響などを学ぶのに役立ちます。脳外科医は、メスを入れる場所がどこなのかを知る必要があるのです。

新しいマップを作成するにあたり、研究者たちは健康な成人の脳210人分をスキャンしました。その後、コンピュータープログラムを用い、構造や脳の別エリアとのコネクション、機能の違いに基づきそれぞれの脳をエリア別に分割しました。結果に一貫性があるのかを確認するためだけに、まったく別の210人分のセットの観測もしています。

過去のブレインマッピングプロジェクトとまったく違う研究だったので、チームは新たにさまざまな発見をすることができました。初期の研究では、死体の脳の一部をカットするのが一般的でした。

しかし今回の研究では、対象者は生存した状態で脳をスキャンしたので、生きた脳を調べることができました。それにより研究者は、各パートがどのような働きをするのかという多くの情報を得られたのです。

新たに発見されたエリアの多くは、すでに判明しているエリアを詳細に観察することで見つかりました。チームは1つのエリアだと考えられていた場所を観察し、高精度のスキャンが数エリアに分割できることを示したのです。

私たちは、脳のそれぞれのエリアがどのような働きをするのか完全には把握していませんが、いくつかのエリアに分割されていることは分かっており、科学者はさらに研究を進めています。

クローン羊のドリーの研究

人の脳を調べる研究者は多いですが、クローンを用いた実験について聞いたことがある人は少ないでしょう。

クローン羊のドリーのことは知っているかもしれませんね。世界初の哺乳類の体細胞クローンです。ドリーは2003年に6才で死んでおり、羊の寿命としては短いものでした。さらに、ひどい関節炎を患ってもいました。

そのため、科学者のなかにはコピー動物は不健康で寿命が短いと考えるものもいました。クローンは骨関節などの加齢と関係する病気で早死する可能性はあります。しかし、今週発表された英国ノッティンガム大学の研究によると、クローン羊は健康問題のないまま高齢まで生きられるというのです。

ドリーだけが唯一のクローンではありません。ほかにも同ラインのセルから複製されたクローン羊はいて、“ドリーズ”と複合名称で呼ばれていたのは“クローンクラブ”という意味だったのかもしれません。

そして、ドリーをオリジナルとしないクローン羊も存在します。クローン羊は体細胞核移植と呼ばれる手法で複製されました。

研究者はまず、成熟細胞と卵細胞からセルのDNAを含む核を取り出します。そして成熟細胞の核を卵細胞の中に入れます。つまり、卵細胞の核と入れ替えるのです。

一般的に成熟細胞のDNAは、完全な生体に発達することができません。それは、肌や内蔵などを形成する特定の働きを持つからです。ですが成熟細胞のDNAは、生体のすべての細胞のインストラクションを含んでいます。そして、卵細胞という新たな家の中で、それらすべてのインストラクションを開花させます。細胞は分割を開始し、最終的に完全な生体を作りだすのです。

チームはこの方法で複製されたドリーズや、ほかのクローン羊のグループの調査をしました。ドリーズの複製は、すこし前に20才になる有名な姉よりずいぶん後に行われました。

すべてのクローン羊は7~9才で、10~12年が寿命の羊にとって適齢期でした。研究者は糖尿病、高血圧、骨関節炎の兆候を調べました。糖尿病、高血圧の兆候はありませんでしが、緩やかな骨関節炎の兆候は発見しました。だがそれは、ヒトが高齢化するのと同じように、年齢による影響だと考えられます。しかし、ドリーのような関節が衰える問題は見られませんでした。

もし、クローンが誕生するだけの健康体であれば、平均寿命まで生きられるには十分な健康を備えています。私たちがヒトのクローンに出会う機会は、しばらくはなさそうですが。

しかし、クローン羊で使われた技術を発展させれば、より良好な幹細胞セラピーにつながるかもしれません。クローン羊の結果が好ましいことが理解いただけたでしょうか。