宇宙の始まり

スティーブン・ホーキング博士(以下、ホーキング博士):宇宙はこの世で最も大きく、古い存在です。宇宙についてのいくつかの疑問についてお話したいと思います。1、私達はどのようにして生まれたのか? 2、宇宙はどのようにして生まれたのか? 3、この宇宙の中で私達以外にも生物が存在するのか? 4、宇宙人、エイリアンは存在するのか? 5、今後の人類の未来は? 

ホーキング博士:1920年代まで、宇宙とは不動、不変的なものであると考えられていました。しかしその後、人類は宇宙は広がっていることを発見しました。つまり、遠く離れた銀河系が更に遠くへ動いていると発見したのです。言い換えるとその昔、地球と銀河系の距離はもっと近かったということです。既知の事柄から推測するに、銀河系と地球は、150億年ほど前までひとつのものだったということになるでしょう。

宇宙の始まりはビッグバンが起きた時です。ビッグバンの前に存在するものは何かあったのか? もしそこに何もなかったとしたなら、どのようにして宇宙は生まれたのか? なぜビッグバンによって宇宙が生まれたのか?

これまで宇宙を理解する為の議論は二つに分かれていました。マクスウェルの基礎方程式や一般相対論に代表する法則によって宇宙の進化は説明されるという議論と、もうひとつの議論 -宇宙はどのようにして始まったか- は、まったく別の議論だと考えられていました。更に、宇宙がどのように始まったかについては議論がなされていませんでした。極限の状況下で宇宙が進化してきたことについては、科学的法則に基づいて理解することは出来るようになりました。そして近年まで、私達は宇宙の初期に関して解明することが出来ませんでした。

しかしながら、進化の法則と宇宙の初期は共に時間と空間を理解しなければ解明することが出来ず、この二つを分けることは出来ないのです。時間と空間は分けて考えるべきではない。つまり、進化の法則を掘り下げることによって、宇宙の初期について考えることが出来るのです。

宇宙は何もないところから自らを発生させます。更に、宇宙が別の方法で生まれた可能性についても考えることができます。宇宙が別の方法で生まれた可能性は、WMAPサテライトが観察した早期宇宙の軌跡である、宇宙マイクロ波でもサポートされています。私達は宇宙創造の謎を解いたような気分になっていますが、宇宙を特許品として、この宇宙に存在するすべての人は彼らの存在に対して特許使用料を支払うべきかもしれません。

地球外文明は存在するのか

ホーキング博士:ここから、二番目の大きな疑問についてお話します。この宇宙に、私達の他にも高度文明は存在しているのか? 地球上の生物は、化学変化によって自然に生まれたと言われます。そうであれば、他の星でも同じことが起きていても不思議ではありません。更に「他の星」の数は計り知れません。しかし、実際のところどうやって生物が生まれたのか解明されていません。

生物の起源の証拠は二つあります。ひとつは35億年前の藻類の化石です。地球は46億年前に誕生し、最初の5億年は温度が高すぎて生物が生まれなかった、と考えられています。そして生命はその後、5億年の生存可能な環境の中で生まれ始めました。100億年の歴史ある地球において、約数億年など短いものです。つまり、生物が自然発生する確率がとても高いということを示しています。

「生物が自然発生する確率は低い」という人は、生物が自然発生するのにはもっと膨大な時間、100億年はかかると見積もる人々でしょう。その反面、宇宙人が地球を訪れたことはないようです。私はUFOを見た、という報告を信じていません。なぜ宇宙人やUFOは奇怪でおかしな存在としか受け止められないのでしょうか?

もしも政府が情報操作の為に宇宙人の存在を隠し、政府内だけに情報を留めて研究しているのであれば、それはあまり賢いやり方ではありません。更に、SETIプロジェクトが勢力をあげて研究を続けているにも関わらず、テレビで「エイリアンのクイズショー」が放映されることもありません。

これはつまり、私達の文明と同じ位に発達した文明は、地球から数百光年範囲内に存在しないということを示しています。まあでも、エイリアンに拉致された時の被害をカバーする保険なんかがあってもいいですね。

人類の未来は宇宙にある

そして、エイリアンの存在有無が最後の大きな疑問に繋がります。人類の未来です。もしも私達が銀河の中で唯一の文明であるとするのであれば、私達はこの宇宙で生き残らなければなりません。しかし、私達の存在が脅かされ始めました。テクノロジーの進化によって、環境を良くすることも汚染することも出来るようになりました。それによって、地球上の人口は増え続け、そして限られた資源もどんどん消費されていきます。

太古の昔には、自己中心的であること、攻撃的であることが人類が生き残る為の鍵でした。現在も人類はその時の自己中心的、攻撃的な性質を祖先より引き継いでいます。今後100年、1000年、何万年と先を見た時に、このような性質を持った人類が衝突し、存続の危機を迎えることは目に見えています。

今後もずっと私達が存在していく唯一の方法は、地球に留まり続けることを当たり前とするのではなく、宇宙の各所に私達人類が散っていくことでしょう。

宇宙に対する大きな疑問の解明は、私達がこの100年ほどの間に素晴らしい進歩を遂げてきた証拠です。しかし、この先100年を超えた人類の未来は宇宙にあります。だから私は、個人の宇宙旅行を可能にする技術が将来の鍵だと思っています。

私は人生をかけてこれら宇宙の疑問を解明しようと努めてきました。私の障害がそれを出来ないくらいに重篤でなかったことが救いです。そして障害があったからこそ、他の皆さんよりも多く研究に時間を費やすことが出来たのだと思います。私達は宇宙の謎を解明し、今後も進歩しつづけなければなりません。ありがとうございます。

クリス・アンダーソン氏(TEDの運営者):教授、どちらかを選ばなければならないとした時、銀河には他にも私達と同じか、またはそれ以上の文明が存在するとお考えでしょうか?

(アンダーソン氏による後日談:この質問に教授は七分かけて回答してくれました。これは教授がTEDで講演するのに、とてもたくさんの時間をかけて準備して来て頂いたことを示唆します。この時改めて感謝と尊敬の気持ちでいっぱいになりました。)

ホーキング博士:地球から数百光年範囲の中では、恐らく、私達だけが発達した文明であるという可能性はとても高いと考えます。もしも数百光年範囲で他の文明が存在していれば、これまでに何らかの形で彼らの電波をキャッチしていたはずですから。もうひとつの可能性として考えられるのは、他の文明は破滅、絶滅してしまった、長く繁栄しなかったということでしょう。

クリス・アンダーソン氏:教授、ご回答ありがとうございます。今後のTEDカンファレンスを続けていく上で、教授のお話を人類の将来へのとても貴重なご指摘と受け止めます。今回の公演の為にとても多くの時間と労力を割いて頂いたことに感謝します。本当にありがとうございました!