iPS細胞がついに初の臨床試験へ!
担当医師が語る、”夢の技術”の現在

Regenerative medicine #1/2

山中伸弥教授が開発した「iPS細胞」は、彼の手を離れて現在、各地で臨床試験が進められています。そのなかのひとつ、網膜の再生医療の研究を進める理研・高橋政代プロジェクトリーダーは、実用化前のiPS細胞が患者に与えている好影響を紹介。また現場の視点から、また古い医療体制の見直しを訴えました。(TEDxTokyo2014より)

iPS細胞が今できる事は、患者の気持ちを変えること

高橋政代氏(以下、高橋):この小さな細胞シートが、医療を変えることになります。これはiPS細胞由来の、網膜色素シートです。世界初のiPS細胞を使った臨床試験に使われるものです。私は、美しい港町である神戸の医者です。かつて大きな地震がありましたが、今は科学の発信地とも言える街です。私はここで、臨床や新しい疾患治療のために網膜治療の研究をしています。

世界初の臨床実験は、このように行われます。まず、患者さんの皮膚細胞からiPS細胞を作ります。iPS細胞はどのような細胞にも変化することが出来ます。私の場合はiPS細胞由来の網膜細胞を作り、この細胞シートを患者さんの目に移植します。このiPS細胞は素晴らしい特色を持っていて、例えば高齢者の患者さんの皮膚からでも若い細胞が出来るのです。まさに再生医療と言われる所以です。

私たちはこれを、加齢性黄斑変性症の治療に使います。昨年の夏、この世界初の臨床試験を行うと発表した後、患者さん……特に目の疾患を患っている世界中の患者さんから、非常に多くのお手紙やE-mailをいただきました。今、患者さんには希望があります。学会では、iPS細胞で有名な山中先生をはじめとして、この研究の成果を非常にうれしく思っています。

ただ実際に診察しているときには、患者さんをがっかりさせてしまうことがあります。今の再生医療の段階では、患者さんのニーズの全てに答えることが出来ないからです。問題は、効果と費用です。

少し考えていただきたいのですが、私は山中先生からiPS細胞の初の臨床試験をするように、というバトンを受け取りました。ただそうは言っても、人類初の飛行機が300メートルしか飛ばなかったように、再生医療のスタートも、最初の歩みは小さなものです。しかしこの小さな歩みが、多くの疾患を治療する第一歩になるわけです。その大きな成功を収めるために、何をするべきなのでしょうか? おそらく私には、その答えがわかります。

私は研究者ですので、笑うことなく真剣な顔をして研究発表をします。そうすると私の印象は、怖くて強そうな女性研究者、と思われてしまうのですが、実際は私は怖い女性ではないのです。明るい気さくな人間なのです。私が患者さんを診察する時には……特に治療法のない網膜の疾患の方を診ますが、診療所では笑いが絶えません。私は、患者さんに同情したり、可哀相と思うのは嫌なんです。

多くの患者さんは、最近の医療技術の進歩で、視覚障害があっても文字が読めたり、今や出来ることがたくさんあるのです。ですので私は、患者さんにはいつもアドバイスを差し上げています。診療をしてお話をしていると、次第に笑みがこぼれ、時には涙が流れる方もいらっしゃいます。それは悲しみではなく、「この疾患は、思ったよりも希望がないわけじゃない」という安心感から涙を流す方もいます。

このような患者さんとの診察の体験から、私は確信していることがあります。視覚障害がある患者さんだとしても、「同情をしない」といった私たちの接し方によって、気持ちの持ちようを変えることが出来ます。なので私はこの再生医療によって、視覚障害を持つ患者さんの気持ちを変えたいと思います。

再生医療を現実に引き寄せるには、制度面のバックアップが必要

高橋:では先ほどの、効果と費用の問題を解決するために出来ること、の答えは何でしょうか?

再生医療というのは、視覚点を少し改善する効果があります。今はまだ少しです。しかしこれをリハビリに用いて、効果を高めることが出来ます。医療とリハビリをセットにすることによって、効果の問題は解決できます。

コストの問題はどうでしょうか? 全く新しい医療制度が必要です。現在の日本の医療制度は規制、規制、規制……そして医者が決めている制度です。この医療制度を変える必要があります。医学会の考え方を採用している今の制度を、患者さん主体の物に変える必要があります。そこで私たちは今神戸で、新しい網膜センター「Eye center」という物を考えています。

そこには病院やリハビリ施設、実験施設、研究所……。最新の研究によって、イノベーションを産業界にもたらすことが出来ます。これはすでに完成していまして、今軌道に乗っているところです。ここでイノベーションが臨床によって実用化されることによって、コストを下げます。この循環で、新しい研究が出来る。このような流れで「Eye center」は独自経営が出来るようになるべきです。

つまり、楽しくて、おしゃれで、素敵な空間になる必要があると思います。もしかしたらルイヴィトン病院とか、そんな素敵な発想もいいかもしれません(笑)。現在こうした新しいコンセプトの中で、優秀な才能のある方が「Eye center」に集って、センターの立ち上げに参加してくださっています。こうした若いリーダーの方は、医療を全く違った見方で考えておられます。

この「Eye center」では、新しくて素晴らしい物をすべて盛り込みたいと思います。この地球上にある全ての治療を盛り込んだ病院にしたいのです。新しい視覚障害ケアセンターには、世界初を試みるような研究所があります。しかし一番、一番大事なことは、患者さんの満足を中心に置くこと。これが一番大事だと思います。これが私の夢のセンターです。ご清聴ありがとうございました。

<続きは近日公開>

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