音に悩まされるミソフォニア

マイケル・アランダ氏:誰かがサンドイッチを食べる音というのは、体に不快感が走るほどの音ですか? 大きな音でキーボードをカチャカチャさせるのはどうでしょうか? 神経に障る音でしょうか?

そういった音が、時として、ちょっとしたイライラ以上のものを引き起こす音となる場合があります。人によっては、不安や激しい怒りといった、激しい感情や身体的反応を引き起こしてしまう音となることがあるのですから。

音に悩まされる人たちというのは、ミソフォニアと呼ばれる、音嫌悪症という症状に悩まされているのです。

この症状は聴覚過敏症と呼ばれることもあります。

ミソフォニアという症状は比較的最近になって認められた症状です。そのため、医者はミソフォニアを、診断によって疾患と特定出来る症状の1つとして認知はしていません。

しかし、そこには無視できないくらいの逸話が数多くあります。また、研究者たちの重い腰を上げ、この症状についての調査をする気にさせた、オンラインサポートグループの存在は決して無視できるものではありません。

これまでの間にミソフォニアについて知られてきたことは、まだほんの一部分でしかありません。しかし、ミソフォニアの研究はようやく本腰が入れられてきたところですから、これからです。

繰り返される音に反応している?

感情的な反応を引き起こしてしまう音は、人によって違います。しかし、多くの人が“繰り返される音”というものに反応を示しているのではないかと言われています。

2013年、42人のミソフォニアを含むアムステルダム大学の研究班が出した研究結果によると、ミソフォニアの人は、人の身体が出す音に反応するのだとか。

咀嚼したり、息をしたり、鼻をならしたり、飲み込んだり、と言った音です。

また、別の研究者の研究結果によると、ミソフォニアの人たちの不安の原因は、ペンをカチカチさせる音や、時計のチクタクする音、車をアイドリングする音など、環境が生み出す音が原因なのだとか。

つまり、以前お話をした、人をいい気持ちにさせ、心地よくさせる感覚を刺激するはずの些細な繰り返し音は、ミソフォニアの人たちにとっては不快な感覚を呼び起こす音となるのだということなのでしょう。

神経学的にはどのようなことが起っているのでしょうか。2004年に、ミソフォニアに苦しむ人たちは脳の領域が処理しきれない程の情報を集めてしまっているとの見解を示した科学者が居ます。とくに、音域を司る聴覚系と、感情を司る大脳辺縁系への情報伝達が激しいのだ、と。ありふれた音にも敏感に反応してしまうはずですね。

ある科学者は、ミソフォニアと、刺激に対する激しい恐れを伴うPTSD(心的外傷後ストレス症候群)、などのほかの身体症状との関連について調べています。

また、別の科学者はミソフォニアは条件反応によるものだとの見解を示しています。

恐れや怒り、不快といった感情は決まった音によって同時期に引き起こされるものだからです。そのため、嫌な感情を持った時の音が鳴ると、その音を将来に渡って嫌な感情を引き起こさせる音として認識してしまうのです。

神経生物学的にどうであれ、ミソフォニアは実際に存在し、人々に不快な症状を与えていることに違いはありません。もっとたくさんの人たちからデータを集め、まだまだ解明しなければならない問題はたくさんあるのです。

ですから、食事会の場で誰かが咀嚼する音を耳障りに感じ、不安に陥れられたとしても、あなたはたった1人でそう感じている人間だというわけではないのですよ。