【全文】コンビニで働く独女を描いたのはなぜ?
芥川賞作家・村田沙耶香を生んだアルバイト生活

第155回 芥川賞・直木賞発表&受賞者記者会見

2016年7月19日に第155回芥川賞の選考会が行われ、村田沙耶香氏の『コンビニ人間』が受賞しました。当日に行われた受賞会見の全文書き起こしです。

スピーカー

第155回芥川賞・村田沙耶香『コンビニ人間』

司会者:村田さん、受賞された今のお気持ちをお願いします。

村田沙耶香氏(以下、村田):奇跡のような感じで信じられず、まだフワフワしてるのですが、とてもうれしいです。ありがとうございます。

司会者:それではご質問のある方は、挙手をお願いします。

記者1:ニコニコのタカハシです。受賞おめでとうございます。ニコニコ動画はご覧になったことはありますか?

村田:はい、いつも芥川賞とかの会見を本屋で流したりしてらっしゃる……。

記者1:ありがとうございます。ユーザーからの質問を代読させていただきたいと思います。複数のユーザーからいただいているんですけど、コンビニでバイトしているというのは本当でしょうか?

村田:はい、今日も働いてきました。

記者1:今回芥川賞を受賞されたわけですけれども、以後もコンビニバイトは続けていかれるのでしょうか?

村田:ちょっと店長に相談しようと思ってますが……可能なら。

(会場笑)

記者1:最後に、差し支えあるかと思うんですが、もし差し支えなければ、コンビニ名を教えてください。

村田:それはちょっと、店長ストップがあるのですみません。

記者1:ありがとうございます。

「コンビニは自分の聖域」

記者2:これまで書いてらして、今回コンビニの小説で受賞されたということについてどう思うか、教えてください。

村田:コンビニは自分の聖域なので、小説にすることはきっとないと思っていたのですが、なぜか急に書いてみようと思った、それがいいことかどうかはわからないのですが。でも、自分が働いてきたコンビニというものへの愛情を作品にできたことはよかったなと思っています。

記者3:今日も20時から1時までお仕事だったんでしょうか?

村田:はい。

記者3:今日、芥川賞を待っている感じで仕事をしているので、いつもとの違いはとくにありませんでしたか? 普通どおりお仕事はされましたか?

村田:はい、普通どおり。今日は忙しい日だったので、普通どおり頑張って働きました。

記者3:村田さんは、これまで小説で自分が知らないことを書いたりするときに、とても書いてる時間がとても楽しいということをおっしゃってますが、今回はよく知っている世界を書いていたなかで、どんなところが一番楽しかったでしょうか?

村田:そうですね……。舞台はコンビニというよく知っている場所ですが、そこを通じて、自分の中では自分の知らない世界に行くというか、発見することができたような気がするので、その発見が小説の中でいつも楽しいことなので、楽しかったです。

記者3:とくに自分で「ああ、こんなところがおもしろかったな」と思うのはどんなところですか。

村田:コンビニエンスストアという、自分のなかでは愛着のある場所が、小説家として見つめ直したときに、小説のなかではグロテスクなものになる感じ……それはおもしろかったです。

記者3:最後のもう1つ、先ほど選考委員を代表して、川上弘美委員が、「コンビニでしか働けないというある種特異な人間を、綿密に過不足なく描くことで、かえって社会の普通というおかしさをユーモアをもって描かれている点が大変おもしろかった」という評価がありましたが、そのような評価を受けてどのような感想をお持ちでしょうか?

村田:すごいうれしいです。作風とはあれですが、私は人間が好きという気持ちで小説を書いているので、人間のおもしろさとか、おかしさとか、そういう部分を表現できたとしたらすごいうれしいです。

記者3:ありがとうございます。

芥川賞の受賞を店長は知らない

記者4:報知新聞のカイと申します。2点うかがいたいんですけど、コンビニでのお仕事はいつからされているのかということと、店長さんは受賞のことをご存知なんでしょうか。もし店長さんの喜びの言葉とかあれば。

村田:店長にはそんなに詳しく小説のことを伝えてないので、たぶん知らないんじゃないかと思います。

記者4:小説を書いていることもご存知ないんですか?

村田:それは伝えてあります。

記者4:お仕事はいつから?

村田:初めてバイトをしたのは大学生の頃でしたが、主人公のようにずっと続けていたわけではなく、小説に専念しようと思った時期もあれば違うバイトをしていたこともあるので、ずっとコンビニだけでしか働いていなかったわけではないです。

記者5:NHKのカワイと申します。改めて、受賞の連絡を聞いたときのお気持ちをどんなふうに感じられられたかと、その後周りの方に伝えられたりとか、なにかあれば教えてください。

村田:電話がきたときはまだ信じられなくて、ずっと担当の編集さんと2人でいつもどおりおしゃべりしながら待っていたので、突然受賞の電話がかかってきてからが夢の中のようで、まだ信じられない気持ちです。でも、先ほど川上さんのお言葉をお聞きして、やっとちょっと実感がわいてきました。

家族へのカミングアウト

記者6:東京新聞のナカムラと申します。おめでとうございます。少し前にお話ししたときに、ご家族・ご両親にも作家であることを言っていないとおっしゃっていた時期があったと思うんですけど。

その後作家であることをカミングアウトされたのかということと、芥川賞を受賞したことはお伝えになったのかということを教えてください。

村田:デビューした当初は家族には言わず、母にだけこっそり話して小説を書いていたのですが、ある日「バレてるよ」と知らされたので、いつのまにかバレていました。

今日のことも、候補になった時点で、私のところにはあまり連絡はこなかったんですが、家族のところにいっぱい連絡がきたみたいで、少し、「そういうことになってるみたいだね」と言ってくれて、さっきもメールを家族からもらいました。

人間のなにかを知りたいという欲求がすごく強い

記者7:朝日新聞のヨシムラです。よろしくお願いします。これまでの村田さんの作品は息詰まるような、切実なテーマが多かったと思うんですが、今回もテーマ的には切実なものが非常にあると思うんですけど、本当にユーモアを感じて、初めて笑えるというか、そういう小説を読ませていただいたんですが、なにか心境の変化があったんでしょうか。

村田:そうですね。人間のおもしろさというか、シリアスな部分を書いていても、「ここの部分で笑ってしまったよ」と言われることがすごくうれしかったり、そういう部分をもっと膨らませてみたいなという気持ちが、たぶんずっと前からあったんだと思います。

それこそものすごくシリアスな思春期の女の子の話を書いていたときから、たぶんいつか人間をもっとユーモラスに、もっと慈しむような、そういう眼差しで書いてみたいというような気持ちがあったんだと思います。

だから、読んでそういう人間のおもしろさを感じられる小説はずっと書きたかった小説で、それが初めて実践してみたのかもしれないです。

記者7:わりと自然にユーモアが出てきたと。

村田:はい、そうです。

記者7:ありがとうございます。

記者8:朝日新聞のタカツと申します。先ほどコンビニを“聖域”だとおっしゃっていたと思うんですが、書いてみようと思ったきっかけと、これまでの作品の世界を書くきっかけと、今回ご自身の生活の一部を書くというところと、きっかけでなにか違うところはあったんでしょうか。

村田:それはたぶんまったく同じだと思います。書くことを通して、私は人間のなにかを知りたいという欲求がすごく強いので、小説を作り上げることを通じて、自分の気づかなかった人間の一部、人間の状態とかを知りたいという、そういう気持ちはまったく変わらないと思います。

村田沙耶香氏の小説のテーマ

記者9:改めて2つのことをおうかがいしたいんですが、先ほど「コンビニ愛を書けた」ということですが、どんなところにコンビニ愛を感じるのか、1つ2つあげていただくのと、やっぱり書いているうちに、自分が冷凍保存してきたいろんな違和感みたいなものがわき上がってきたということを前おっしゃっていた記憶があるんですが。

書いているときに、作家の意地悪な目で見ているときに、冷凍保存してきた違和感というのは例えばどんなものなのか。ある程度具体的に教えていただければと思います。

村田:そうですね……コンビニ。ごめんなさい、1つ目の質問を忘れてしまいました。コンビニ愛について?

コンビニっていう場所は、小さい頃から不器用だった自分が初めてなにかをまともにできた場所だと思っているので、ある意味ではすごく美化した場所で働いていたことになるので、小説家としてはあまりよくなかったかもしれないです。

ちゃんと小説家の眼差しをもって働かなくてはいけなかったのかもしれないなと、この作品を書いてみて思いました。

小説家の意地悪な目を通して見たときというと……そうだなぁ、でも意地悪というよりかは、人間のちょっと変なところ、バカにしたことを言っている人の表情とか、それは意地悪な目で見るというよりかは、おもしろいな、人間らしいなっていう目でずっと見ていたんだと思います。そういうことが頭のなかに冷凍保存されて、蓄積されていたんだと思います。

記者9:先ほど、川上さんの(講評の)なかで、「普通を求める社会に対する眼差しへの違和感」ということのなかで、今回の主人公が、30代の独身、恋愛経験なしというものに対する、社会の視線に対する違和感っていうのも感じられるんですけれども。その辺はいかがでしたでしょうか

村田:そうですね。私自身はそこまで感じることがない、たぶん小説家という職業が特殊だからかもしれないんですが、同世代の友達や編集さんと話しているときに、よくそういう話になるときはあります。

私は人と話すのが好きなので、そういう人からそういう苦しみとか、そういう話を聞いていると、たぶんそれが種みたいになって自分のなかにテーマとして残っているのかもしれないです。

司会者:ご質問は以上とさせていただきます。村田さん、最後に言い残したことがあればお願いします。

村田:ありがとうございました。この場所に来れると思っていなかったのでとてもうれしいです。本当にありがとうございました。

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