粘着テープの不思議

ハンク・グリーン氏:粘着テープってどうして貼りつくんだろうと不思議に思ったことはありませんか?

ベタベタしているから……そう答える人が多いでしょう。でもそれはあまりに浅はかな考えです。

粘着テープの正体は、個体と液体の両方の性質を兼ね備えた粘弾性物質と呼ばれるものです。粘弾性物質は、放置しておくと固体のまま、あるいは(ほかの形状から)固体に戻ろうとします。

ところがこれに圧力をかけると、液体のように流動的になり、テープを貼りつける対象物の割れ目や隙間などに入っていくことができるようになるのです。

それがなんであれ、テープを貼りつける対象物は基材と呼ばれます。テープに圧力がかかると、テープ素材が液状化されると同時に、テープ素材と基材の分子との間に、ファンデルワールス結合と呼ばれる弱い分子結合が引き起こされます。

ファンデルワールス結合とは、分子が静電気によって引き付け合う時に生じる力です。

安定した分子は、電気的にはプラスでもマイナスでもない中性ですが、分子の一端がプラスの電荷を、反対側がマイナスの電荷を帯びている双極子という状態にあります。

その結果、分子は全体として小さな磁石のように機能します。テープがベタベタするのは、この双極子が無数に集まっているからです。テープに圧力をかければ……顔にくっつけてみましょうか。

粘着性を生み出す分子と基材の分子を接近させることになりますから、小さな磁石が一斉に引き合っているような状態が作り出されるのです。

圧力をかけることをやめると、テープ素材は個体の形状に戻り、ジグソーパズルのピースのように基材にはまり込んだ状態でとどまります。

テープを剥がすことは、すなわちファン・デル・ワールス結合を破壊することです。

同じテープをほかのなにかに再度貼りつけようと押し付ければ、この粘着のカラクリが繰り返されてテープは貼りつきます。ただしテープの表面が埃やひどい汚れで覆われてしまうと、基材との接触はできなくなってしまいます。