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商社からベンチャーへの転身の実際(全3記事)

三菱商事の退社に迷いなし Retty奥田氏が語るベンチャーの魅力 

2016年5月14日、社会人&大学生のためのベンチャーの祭典「Start Venture Festival 2016 Spring」が開催されました。パネルディスカッション「商社からベンチャーへの転身の実際」では、モデレーターを務める勝屋久氏の進行のもと、トレンダーズ・郭翔愛氏、Retty・奥田健太氏、エス・エム・エス・福田升二氏の3名が、商社からベンチャーに転職した理由を紹介しました。

商社よりもエキサイティングなベンチャー企業

勝屋久氏(以下、勝屋):じゃあ福田さん、奥田さん、同じ質問(商社からベンチャーに転職した理由)なんですけれども。

奥田健太氏(以下、奥田):僕はけっこうシンプルです。高校3年から大学生ぐらいのなかで、サッカーを真剣にやっていて、本当にサッカーのことだけ考えていて、どうやってプロになろうかということをずっと考える生活をしてきました。

やっぱり仕事をしても、あの瞬間を超えるような仕事をしたいなと思っていて。要は、自分の人生の全部の時間とマインドシェアを根こそぎ持っていって、でもそれが超楽しいみたいな、そういう仕事じゃないとやってる意味がないなと思っています。

そういう仕事の仕方がしたいなと思って商社に入っていって、商社の仕事もすごくエキサイティングでしたし、一緒に働いてる人も、今でも尊敬してるんですけど。

とはいえ、そのサッカーやってたときのレベル。自分の全部の時間を土日も含めて、そのことしか考えたくないみたいなレベルにはいってなかったんですよね。

「じゃあ、どういう仕事になるんだろうな?」と思ってふらふらしてたときに、たまたまマンションの1室で5人ぐらいでやってる、怪しい会社というとあれなんですけど(笑)、よくわからないグルメサイトを作ってる会社に飛び込んでみた感じです。

もう本当に1回行って、土曜日丸1日いただけで、「あ、これだ」って感じになったんですよね。

あとから振り返って、僕の性格的にどういうことが大事だったのかなと思うと、自己決定権みたいな、圧倒的に大きな、自分で決めることと、その責任を自分で負えることというのが。

だから、三菱商事で2,000億の投資をしてそれに何十人かで関わる感覚よりも、5億円かもしれない、1億円かもしれないけど、自分たちが決めて、そのリターンが全部自分たちに返ってくる環境で仕事をしないと、サッカーをやってたときの、あの魂がふれる感覚というのは持てないなということがわかりましたね。

そういう瞬間にたまたま会えたというのがあったので、本当に1ミリの迷いもなく、すぐに転職しました。

勝屋:みなさんはどうですか?

“IT業界”は死語に近い

福田升二氏(以下、福田):1つはやっぱり、私が入社した頃ぐらいなので、まだ利益でも数十億とか……辞めるときは1,000億とか2,000億とか、単位がぜんぜん変わってる状況で。

僕はもともと情報のセクターに入ったので、いわゆる新しいものを作って世の中に出していくというよりは、会社を買ってきて、だんだんその会社を大きくするほうが早いみたいな発想。どんどん投資銀行の位置づけになってきたのが、ちょっと「?」がついていたというところはあります。

ただ、情報セクターにいる先輩方を見たときに、ITバブルの時代に活躍されてた方々のバイタリティとか、スキルを見てると、やっぱり半端ないですよね。

なにが原因なのかというと、やっぱり成長マーケットでビジネスを作ってたというのがすごく大きな違いだなというのがあって、そう考えたときに、日本における成長マーケットと情報、ITのかけ算で勝負できる領域で仕事したいなというのが一番大きくあったというのがきっかけです。

そのなかでは、ヘルスケア領域というところと、あとはやっぱり農業、教育、エネルギー。このへんのITのかけ算の領域にいかないと、もう伸びる領域がないというのがあったので。

勝屋:セグメントというか、領域セクターで興味があるところがあって、そこにもっと自分が関わっていきたいと。

福田:そうですね。成長産業にいることというのは、自分にとって非常にプラスになるので、そこが最も重要だと思います。

もう、IT業界というのはたぶん死語に近いかなと思っていて。あとの領域というのは、どうITを活用するかしかない。

IT業界という目線ではなくて、領域とそれをどう掛けあわせるかで見ないとけっこう大変だろうなという感じはしていました。

仕事は大変でうまくいかないのが当たり前

勝屋:わかりました。私の質問はこんな感じで、これからみなさんと対話していきたいんですけれども。僕もやっぱりITに入って3年ぐらいがむしゃらに働いたんですよ。むしろベンチャーぐらい。だけど、30歳ぐらいになったら、自分はこれぐらいでいいやって落とし所をつけて仕事をするようになった。

例えば困難になっても、30歳ぐらいになると、もうやめちゃおうかなみたいなね。すごい適当に、困難に向き合うのが嫌で……そういう自分だったんですよ。

3人ともたぶんいろんな困難とか、「ここまででいいや」みたいな人間の弱さってあると思うんですけども。それに対して立ち向かえる、なにが原動力になって、頑張れる自分ができてるのかなと。そういう手法やなにか意識してることがあるのかというのを。じゃあ、福田さんから。

福田:そうですね。それも商社で身についたことかもしれないですけど、あんまり原動力というよりは「そんなもんだ」と思ってるということが大きいですね。

仕事って本当に大変なことがすごく多くて、やっぱりそれが当たり前で。それを達成して実現したときにすごくいい思いをしたりとか。まあ、それは失敗してもそうだとは思うんですけど。

どちらかというと、そういうところが、当たり前に大変だし、それを楽しんでやってるのも大事なんですけど。仕事が大変だということを理解してるというところが一番大きいかなとは思います、正直に。

これから社会に出られる方が多いと思うんですけど、そんなもんですよね。大変で、そんなに簡単にうまくいかないことが多いので。

そういうところを前提に、しっかりとできたときに、チームであったり、個人でも喜ぶというところが、商社的には本当そういうのが醍醐味という感じですね。

勝屋:今も?

福田:やっぱり基本的には大変です。おもしろいですけど。

勝屋:郭さん、どうですか?

自分で決めた仕事はモチベーションが下がらない

:僕も似てるんですけど、自分で決めたものと、自分で決めてなく他者に与えられたもので、定義がぜんぜん変わってくるなと思っていて。

決めたものに対して、大変なもの、困難なことに対しては、ぜんぜんモチベーションは下がったりしないです。

ただ、他人や親から言われたとかで決めたもの対して、大変なことに対してはすごくモチベーションが下がるので、後者を絶対避けるというポリシーは持ってます。それは別に社会に出て学んだというより、たぶん学生のときからなんとなくわかってたことなので。

就職活動のときのもう1個の落とし穴は、「こんな会社だとは思わなかったけど、蓋開けたらびっくり」という状況は、自分はキツいと思ってたので、就職活動ではネガティブなことばっかり聞いてましたね。将来「こんなはずじゃなかった」と言ってる自分が一番情けないので。

だから、もう腹をくくれるという状況だけ情報を集めて、「自分で決めたんだから」という土台を作る。そのあとはどの会社に入っても、逆風も落とし穴もあると思うのでという感じですね。やっぱりあんまりモチベーション下がった記憶はないです。

勝屋:やっぱり持って生まれたものなのかな。でも、すごい素晴らしい。奥田さん、補足とかなにかあります?

奥田:そうですね。付け加えるとすると、僕はRetty入ってからは正直モチベーションどうこうとか言ってられないぐらい嵐みたいななかで仕事をしてるので。3年間1回もモチベーションが下がったことがないです。

過去の三菱商事で働いていたときは、モチベーションが高いときと低いときとやっぱり波があって。なぜなんだろうと思うと、やっぱり僕は誰と働いているかというところで決定的に差が出てしまうんですよ。

だから、本当に死ぬほど尊敬していた方と働いているときと、いい人だけど、まあそうでもない人がいたとき、やっぱり後者のときって、「落とし所に向けて仕事をしちゃう」というモードの仕事の仕方になったんですよね。「ここまでやれば、まあ大丈夫でしょう」というところまで仕事するような。

「この人と一緒に価値を出す」とか「この人に認められたい」とか「この人の仕事を楽にしてあげたい」というのであれば、やっぱりどこまででも頑張れるよね、みたいなところでやっぱり差が出てしまうところがある。

僕はわりと自分の意思で環境を変えられる部分もあって、変数としてはいじりやすいので、そこはけっこう気にするようにしています。

勝屋:ありがとうございます。

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