太陽系外の惑星の大気を調べる技術

ハンク・グリーン氏:2013年12月、ハッブル宇宙望遠鏡によって、太陽系外の5つの惑星の大気中に水蒸気があることが確認されました。

ただ残念ながら、これは生命体の発見には結び付きませんでした。なぜならそれらの惑星が、俗に「ホットジュピター」と呼ばれる恒星に非常に近いところを回る巨大なガス惑星だったからです。

それでも、太陽系外の惑星の大気中に水が存在していること、そして私たちの科学技術がそれを探知できるレベルに達していることがわかったのは大きな収穫です。

さてその探知方法ですが、ターゲットの惑星が観測者と恒星の間に位置しているとき、恒星から放たれた光はその惑星の大気の縁にあるハローと言われる箇所を通り抜けます。

観測者、すなわち科学者たちは、分光器と呼ばれる機器を使いその光をスペクトルに分けます。これはあなたがこれまでに見てきた電磁スペクトル、すなわち赤外線や紫外線、そして7色の可視光線と同じものです。

私たちとその恒星の間になにも存在しなければ、私たちはその恒星から放たれたすべてのスペクトルを見ることができます。そして、もし惑星がその間に入り込みその光を遮ってしまうと、私たちはそれを見ることができなくなってしまいます。

しかし、ある種の光は惑星の大気を通り抜けることができるのです。

分光器によって生み出されたスペクトルは、さまざまなガスによってほかの周波数の光が遮られたり吸収されたりする大気中を通ってきた暗帯を含んでいます。それらは一般に吸収線と呼ばれます。

そして驚くべきことに、異なった化学物質はそれぞれ異なったパターンの吸収線を生み出すのです。

つまり、科学者たちは、分光器から得られたデータにより、その光がどのようなガスを通り抜けてきたかを知ることができるのです。

大気を分析することで地球外生命体の探索が可能に?

現在、私たちはホットジュピターより小さくて暗い惑星の大気を観察できる性能を備えた強力な望遠鏡を持っていません。しかし、それはもはや時間の問題です。遅くとも2018年までにはNASAによりジェイムズ・ウエッブ宇宙望遠鏡が打ち上げられる予定です。

そして、ガスではなく金属や岩石で構成された地球型惑星の大気を分析できるようになったあかつきには、いよいよ太陽系外の生命体探索がスタートするのです。

ところで、私たちはなにを探せばよいのでしょうか。それは水蒸気です。なぜなら、大気中に水分が存在するということは、すなわち地上にも水が存在する可能性を意味しているからです。

とくにその惑星が恒星から適度な距離に位置している場合、その可能性はさらに高まります。言うまでもなく、水なしでは生命体は存在し得ないのです。

私たちはまた遊離酸素、もしくは分子状の酸素を探すことになるでしょう。酸素分子、すなわちO2です。

実は酸素原子自体は自然界に豊富に存在しています。実際、地球の重量の45パーセント、そして容積の85パーセントは酸素なのです。もっともそれらのほとんどすべては分子としてシリコンやマグネシウム、そして鉄と結合し、私たちの足元にある岩石として存在しているのですが。

酸素原子はとても活発な原子で、常にほかの原子から電子を獲得しようと試みています。しかし酸素分子を形成するためほかの酸素原子と結合するととても不安定な状態になり、その結果まったく別の分子が生成されてしまうことがあります。   しかし、私たちの地球の大気はその20パーセント以上が酸素です。これは酸素が植物やそのほかの光合成を行う生物によって常に供給され続けているためです。彼らは日光や水、そして二酸化炭素を使い大気中にある大部分の酸素を生み出します。

このため、もし異星人が地球の大気を分析すれば、化学的に見て非常に偏っていると感じることでしょう。そうです、酸素の割合が多すぎるのです。そしてその大気の下には生命体が生息しています。水と酸素が揃うということは、好気性生物が酸素を利用して代謝過程を活発化させるいわゆる細胞呼吸の発達を意味します。

好気性代謝は空気を使わずに代謝をおこなう嫌気性代謝よりはるかに効率的です。一説では好気代謝の方が16倍も多いエネルギーを生み出すことができるそうです。そして言うまでもなく、多細胞生物である土植物や動物、そして人間が存在するためにはこの好気性代謝を行う必要があります。

前述したホットジュピターの大気中に水蒸気を発見することは、私たち人類が居住可能な惑星、ひいてはすでに生命体が存在しているかもしれない惑星の発見に繋がっているのです。

地球型の惑星を発見することは、もはやSF小説のなかだけの話ではありません。ひょっとするとここ10数年のうちに、私たちは夜空の星を天体望遠鏡で覗いたとき、反対側から私たちを覗いている存在を発見することができるかもしれないのです。