三井物産に3年いて身についたこと

勝屋久氏(以下、勝屋):さっき福田さんが「人間力が身についた」と。これはなんとなくわかります。私も伊藤忠の友達がいっぱいいて、本当に「このおっさんたちすげえな」みたいな人がいるんだけど。2人は商社にいて、具体的にスキルとして何を身につけました? 郭さんからお願いします。

郭翔愛氏(以下、郭):バチッと「これだ!」というカッコいいものはないんですが。たまたま当時の採用方針で、同期100人全員が管理部門にというところが、僕にとってはすごくポジティブで。

そのまま営業をやっちゃうと、たぶんもともと持ってる強みだけの勝負のできる人にしかならなかったんですけど。あえて一切興味のない経理をやれたのがまずよかったです。ですので、経営する能力というのを、会社の方針として身につけさせていただいたなと。

そこに3年もいると、100億円単位の出資をする際に、決定するための大企業のロジックと力学みたいなところに触れる場がたくさんあるんですよね。

それを知れると、商社を出たあとでも、別にそんな金額を自分で動かさなくても、世のなかの力学のポイントみたいなものを場数として知れたというのは、経験としてよかったなと思います。

勝屋:今もそれが役に立ってる?

:そうですね。

三菱商事で学んだ仕事観

勝屋:奥田さん、同じ質問なんですけれども。「このスキルは身についたよ」みたいの。

奥田健太氏(以下、奥田):僕はもうちょっとプリミティブな能力というか、マインドセットになるんですけど。ひと言でいうと、できるとかできないとかはどうでもよくて。そこまでにやるか・やらないかみたいな、そこがすごい高いレベルで当たり前に行われてるみたいなところですね。

それって今だと、もう自分がオーナーシップを持ってやってるので、寝る時間を2日間全部削ってやらなくちゃいけないこともあるんですよね。でも、それが「仕事だったら、それって当たり前だよね」というカルチャーです。だから本当に、新卒で三菱商事に入ったときに、「えっ、こんな辛いこともやるの?」と思ったこともあります。

別にいつも辛いわけじゃないですけど、やっぱりできるか・できないかじゃなくて、やるか・やらないかで「ここまでやらなくちゃいけません」みたいな話を、最初に「それが当たり前だよね」と教えられています。

今はスタートアップなので、それが本当にいっぱいあるんですけど、そういうことがまったく苦にならないという、そういうアンカリングみたいなものはけっこうよかったなと。

勝屋:思考回路に刻まれた感じですかね。

奥田:そうですね。

商社からベンチャーに飛び込む人はマイノリティ

勝屋:また違う質問しちゃってもいいですかね。さっき「おもしろいおっさんが商社にいる」と言ってたじゃないですか。でも、いろんな統計情報によると、商社からベンチャーの世界に飛び込む人って珍しいと。

私の知ってる限りでいうと、三井物産出身でSansanの社長になった寺田(親弘)さんとか。何人かいるんですけど、やっぱり少ないなと思うんですよ。

「それだけアグレッシブな人生を生きてる人が、なぜ外に飛び出さないのかな?」という。ぶっちゃけ3人はどう捉えてるかなと思って。

福田升二氏(以下、福田):さっきも少しだけ議論したんですけど、やっぱり一番大きい要素は、まずは中での仕事がすごいおもしろいというところはあると思います。

あとはたぶん、自分の実力がついてきたなと思う頃に、商社って世の中で言われてる通り、給与が高いとか、やっぱりそういうところに引きずられる部分がけっこう大きいというところが1つはあるなという感じですね。

奥田:あとは、ちょっと今思いついた話なんですけど、やっぱりセクターの話はあるかなと思っていて、スタートアップってやっぱりITが多いんですよね。

もちろんITじゃないスタートアップもあるんですけど。スタートアップにおけるセクターの割合は、ITの部分が大きいと

そのなかで、じゃあ「商社ってどういうところを強みにしてるんでしたっけ?」みたいなところをみたときに、やっぱりいわゆる重厚長大と言われる、昔からやってる、資源を中心とした資本集約的な分野。その資源関連で今大変なことになっているというのはあるんですけれども(笑)。

やっぱり資源だったり、船・造船だったり、会社によってその差はありますけれども。そういうセクターの相性があんまりよくないんじゃないかなというのはちょっと思うところではありますよね。

離職率が低い要因は、給与と仕事のおもしろさ

勝屋:郭さん、どうですか?

:そうですね、同感でした。でもやっぱり給与とかは本当にあるんでしょうね。

残念だなというのが、新入社員1年目のときにめちゃくちゃ輝いてても、今はもう37歳とかなので、「出たくても……」みたいな議論がやっぱり増えてくるわけですよね。「もうこの年収ベースで生活してしまってるし」みたいな。

ポジティブにいうと、やっぱりおっしゃったように、若いうちに世界でビジネスをするおもしろさを知れちゃう、というのはポジティブな部分ではある。その両方かなとやっぱり思います。

福田:我々も当然、入社するときに同期がたくさんいるんですけど。実は離職率って本当に10パーセントとか、10年とか経っても、多くても20パーセントぐらいしか出ないので。

やっぱりそういう方というのは、いろんなところに縛られて、中で残るほうが相対的には多くなってるというのは、数字としてもそういう感じかなと思います。

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