ハゲワシの胃酸は強烈

ハンク・グリーン氏:夜遅くに冷蔵庫の前でなにか食べるものを探している時。長期間放置していた食べ物を発見して、もしかしたら賞味期限が切れているんじゃないかと思った経験はありませんか?

でも、とにかくお腹が空いていて、もったいなくて、あるいはある種の勇敢さから食べてしまって、翌朝うめき声をあげながら、縮れたブリトーを食べたことをずいぶん後悔する羽目にになった、というような経験が。

しかし、ハゲワシにとってはこうしたことは問題になりません。

腐りかけて轢死体となり道路を汚した動物の遺骸にがっつくヒメコンドルを頭に浮かべてください。どうやったらそのような悪臭を放つ腐肉を食べることができるのでしょうか? 病気になることもなく、腹を壊して死ぬこともありません。

世界の23種のハゲワシは究極の奇妙な内臓を発達させました。彼らは、驚くべき消化器系の助けを借りて、もっぱら死肉だけを食べています。

胃は、胃液を使って食物を細かくします。胃液は主に、タンパク質分子の結合を切断するために使用される塩酸や、この分解プロセスを維持するために使用される消化酵素によって構成されています。

通常のヒトの胃液の平均的なレベルはpHでいうと1から2の間で、比較すると、酢が2.4で、バッテリーの酸が0.8です。

ハゲワシの胃酸のpHは0から1の間で、これは、金属を溶かすことができるほど腐食性が高い値です。

これは、めちゃくちゃクールですが、ロボット・アライグマを食べるのでもない限り、とくに役に立ちません。大嫌いな牛の死肉をオーバーキルするようなものです。

糞尿が消毒剤になっている

しかし、想像がつくと思いますが、爛れた死体はとても不潔です。

ウイルスがこれらに寄生し、その結果、ウイルスがこの遺骸になかに宿り続けることになります。

ですが、ハゲワシの超強力な酸は、常に腐肉に広範囲に存在する病原体全体を殺すことで、彼ら腐食動物が、サルモネラ菌やコレラ菌、または炭疽症、ボツリヌス中毒症、狂犬病などの原因となる病原菌によって死ぬ確率を下げているのです。

抗体と戦うバクテリアを血液とともに吸いあげて、消化管で汚らしい病原菌を叩き潰すことに加えて、彼らの健康を保つ次の一手を用意しています。

それは言わばパンツのなかに糞をすること。もちろんパンツは履いてないんですけど、自分の脚に直接糞をするのです。これはとても奇妙ですがすばらしい方法です。

排泄物を蒸発させることは、暑い日にクールダウンを行うとてもいい方法になっています。一方で、広範囲に撒き散らされた強力な酸を含む糞尿は、腐敗物のなかに膝までつかった脚に対して消毒剤としての役割を果たしています。

さらに、腐肉周辺の牧草の病原菌を殺菌することによって、ほかの動物や土壌や水といった生態系に病気が蔓延することを防いでいます。

また、ハゲワシの頭が禿げているのは、掃除に命をかけている掃除人のようなものです。

柔らかな胸腔から顔をあげると、頭がとんでもなく汚れるため、禿頭によって清潔に保っているのです。

とさかのなかに羽があると、常にあごひげを生やしている状態と比較しても、より多くのバクテリアが潜むことができますが、この掃除人は頭をより衛生的にし、暑い太陽の下で熱消毒を行っているのです。

それから、もしあなたが、「ハゲワシは自分を捕食者から守るために嘔吐する」という話をきいたことがあるなら、これは半分しか正しくありません。

なるほど彼らは嘔吐物を雨あられのように噴き出しますが、コヨーテの顔に狂犬病ウイルスをぶちまけるつもりはないでしょう。

ハゲワシの嘔吐物によって不幸にも火傷をするものがいるかもしれませんが、跳ね散らすためにやっているわけではありません。むしろ、彼らが肉付きがよくて立派だということに関係があると思われます。

彼らは重すぎて素早く飛び立つことができないため、荷物を軽くする必要があります。

いずれにせよ、そのとき捕食者はたぶん「あっ、焼けた酸の嘔吐物だ!」と思い、ハゲワシを放っておいてくれるのでしょうね。すばらしいですね。

とにかく、次にあなたがハゲワシが汚いなと思ったときには、今日話したように、「汚い」ということ以上のものがあるということを思い出してください。本当に驚きですね。