DeNA南場氏「会議で“正解”を探す人はいらない」就活生に語った、デキる人材になる方法

基調講演

Start Venture Festival 2016 Spring
に開催

2016年5月14日、社会人&大学生のためのベンチャーの祭典「Start Venture Festival 2016 Spring」が開催されました。基調講演に登壇したDeNA取締役会長・南場智子氏は、就職を控えた学生たちに向けて、これから訪れる組織や働き方の大きな変化を紹介。そのなかで、デキる人材として活躍するためにやるべきことや、必要な成長環境について語りました。

マッキンゼーを経て、DeNAの創業へ

南場智子氏(以下、南場):こんにちは、南場です。よろしくお願いします。(Start Venture Fesital 主催者、元・DeNA、現・株式会社ライトマップ代表取締役)鈴鹿が「DeNAさん」と「さん」づけで呼んだのはショックでしたね。仲間ということで応援に来たんだから……。

若い世代が職業をしっかり自分で選択することがとても重要だと考えているので、こういうOppotunityをくれて感謝しています。

はじめに自己紹介をします。 新卒でマッキンゼーというコンサルティング会社に入りました。最初あまりに仕事ができず2年でアメリカに留学し、休憩しました。MBAを取るという、ちょっと格好がつく休憩(笑)。ズルいですよね。

休憩してるうちに辛かった日々をすっかり忘れちゃって、卒業後また戻って来ちゃいました。戻った初日にマッキンゼーの辛さを思い出して、えらい後悔したのを覚えてます。

その後、仕事が軌道に乗り楽しくなってしまい、「私、一生マッキンゼーでいいや」という感じで、本当に、「自分がいないマッキンゼーはつまらない」と思うくらい調子に乗っていたんですけど。

マッキンゼーに戻って9年経ったころ、突然魔が差してしまい、「起業したいな」となりました。ずっと人にアドバイスしているうちに、「自分で事業をやりたい。アドバイスしているくらいだから自分でもできるんじゃないか」って錯覚に陥っちゃったんですよね。

これが大きな間違いで、あとで「クチで言うのとやるのではえらい違うんだ……」とわかって奈落の底に何度も落ちるんですけど。まあそれがDeNA創業の経緯です。

(スライドの年表に)ビックリマークがついてるのは、そのときのウキウキっぷりを表現したいなと思って(笑)。それからDeNAの紆余曲折の歴史が始まり、今日も続いています。

私は立ち上げから12年間社長を務めたのですが、2011年に家族が突然大病をしてしまい、闘病に専念するために退任しました。 2年経って一段落したとき、やっぱりDeNAでもっと試合をしたいなということで、戻ってフルタイムで仕事をしています。

今は「会長」という役職ですが、ふつう会長というと、あんまり現場の仕事をしないで大所高所から、というイメージなんですけど、DeNAはそういう会社じゃないです。それに執行役員も兼ねているので、全社の経営だけじゃなく、eコーマスとヘルスケア、スポーツなどいくつかの事業を直接やってます。

今日は、「Start Venture Festival」。ベンチャー万歳って趣旨だと思うんだけど、ベンチャーがどういうものかは、名著『不格好経営 -チームDeNAの挑戦』というのが出てますので(笑)。

(会場笑)

包み隠さずベンチャーの現実がわかるように書きました。新しい事業を成長させていくというのはどういうことなのか、どういうところでドジを踏むのか、ドジを踏むとだいたい人間はどうなるのか、そういったことが赤裸々に記されているので、ぜひ図書館で借りないで、ブックオフで買わないで、Amazonかどこかで買って読んでください。

名前は出ていないけれど、ここにいる(元DeNA、現LITALICO)中俣(博之)とか(元DeNA、現ライトマップ)鈴鹿(竜吾)などの若手の活躍がびっちり入っています。

不格好経営―チームDeNAの挑戦

組織や仕事の仕方が大きく変わる

さて、今日の趣旨に反するかもしれないけれど、私は、全員がベンチャーに向いてるとは思いません。また、ベンチャーという形式概念が、なにかを約束してくれるものではありません。そういうことに惑わされずに、ぜひ自分で考える軸を持ってもらいたいと思っています。

ここにいるみんなが職業を考えるとき、どの会社に入ろうかと、所属する組織を探すのが実態だと思います。それはぜんぜん悪いことじゃないのですが、これから仕事の仕方が大きく変わっていくことを忘れないで欲しいと思っています。1つの組織にみっちり属して、その中に閉じてなにかコトをなすというのは少数派になっていきます。

目的に向けてベストな人材を選ぶ。たまたま同じ組織にいる身近な人の中から「あいつだ、こいつだ」と選んでプロジェクトを推進するのは、限界があると思わない?

クラウドソーシングとかいうバズワードはどうでもよくて、基本的な考え方として、世界中からベストな人材を連れて来て、目標に向けて最適なフォーメーションを組み、目標を達成して成果をわかちあおうよ、というかたちのプロジェクト単位の組成です。

これまでもモノやお金は組織の壁を超えて調達してきました。一番重要な人材のソーシングも当然そうなっていきます。

そういった方向への動きは当社でもすでに顕著です。例えばヘルスケアの事業の1つは東京大学医科学研究所と一緒に基盤を作ったし、各テーマの世界的権威と広くネットワークを作って進めています。

医師にも参加してもらっているプロジェクトがあります。よくある「名前貸し」ではなく、それぞれのプロジェクトの成功に向けて役割を担ってもらい、精一杯がんばってもらっています。

また、ゲーム事業ですが、わが社はSound Studio持ってないんです。当然ですけど、サウンドってむちゃくちゃ大事だよね。サウンド1つでテンションがぜんぜん違ってくるでしょう? ものすごい反応が薄くて残念だけど(笑)。

そういった成否を左右するコアな要素も外部の人が参加してプロジェクトが組成されています。この動きはもっと加速し、ゆくゆくは会社ベースではなくプロジェクトベースが基本になるでしょう。

この方向性で世の中が変わるときに、就職するとか会社を選ぶってどういうことなのか、考えて行きましょう。

プロジェクトに呼ばれる「デキる人材」になる準備

もちろん、やりたいことがすでに明確に決まっている人はそれを追求すればよいのですが、まだフワフワしている人も多いんじゃないでしょうか。私自身も就活してるときなんか、なにをやっていいのかまったくわからなかった。社会に出るという概念すらわからなかったです。

若いうちから具体的に「これやりたい」って明確に持てないことは多いし、知ってる狭い世界のなかで無理に選ばなくてぜんぜんいいと思う。社会に出ると視野は急激に広がるんだから、それから選んでいいし、いつだって選び直していい。

だから今現在、具体的なキャリアビジョンやパッションがないことに対して焦らないでください。

そういうものは、一生懸命仕事をしていくうちに生まれてくることが多いです。目の前の仕事に打ち込んでいるうちに、やりたいことが明確になってくる。あるいは、湧き出るような情熱に自ら気づく瞬間に巡り会えるので。焦らずに、そのときまでに、自分の力を磨いておくということが重要だと思います。

とくに、仕事の仕方が大きく変わっていくということを考えたときに、プロジェクトに呼ばれる「デキる人材」になっておくことが、なによりも重要なことだと考えます。

目的単位でプロジェクトが組成されて仕事をする。そういうときに、有名企業の課長さんだからとか、一番出世が早い部長さんだからとか、そういうことで呼ばれることはないんですね。実力で呼んでもらえるかどうかが決まります。実力をつけ、プロジェクトに呼ばれるデキる人材になっておけということです。

どんな実力? デキる人材って何? これはなかなか整理して言えないんだけど、ひと言でいうと、なにか目標に合意したときに、それを達成できる人材になってくださいということにつきるのかなと思っています。

スペシャリストであってもジェネラリストであっても、そういうことなんです。「これを達成しよう」と自分で腹落ちしたときに、それを達成できる人材かどうか。

私もうん十年社会人をやってわかったことが1つありますが、なにか目標が定まったときに、「この人に任せたら絶対できるな。なんとかなるだろうな」という人と、「この人に任せたらたぶんできないな」って人と2パターンしかいないんだよね、残念ながら。

まずは、その前者になっとけということです。どこか領域を絞り込んで、専門スキルを作って……とか考える前に、すごく大事なことだと思います。

もっと噛み砕いて言うと、この目的・目標を達成するために、「誰の力となにが必要か」そして、「どういう段取りでやっていけばいいんだろう?」と考えて、アクションに移すということですね。

漢字で言えば、戦略や戦術を企画し、実行する力。そしてやってるうちに「間違ってたー!」とか「やっぱりこれが足りなかった」とかがわかってくるので、あれこれ工夫し、軌道修正しながら、目的をなんだかんだいって達成してしまう、そういう力です。

世の中、真新しい課題だらけになってきています。過去から繰り返されている課題もいっぱいあるんだけど、そういうのはだいたいマニュアルとかAIとか機械とか、あるいは整備された美しい歯車が解決してくれるわけです。

大量の過去の事例から学習しどんどん賢くなるAIにとって代わられたくなければ、我々人間は、本当に真新しい課題に挑戦しなければならない。

とりわけこの日本は人口構成や国家財政やエネルギーの問題、自然災害の問題とか、あるいは国際的な競争力や安全保障など、他国が経験していない真新しい課題に直面しています。

なにも事業じゃなくたって、こういった大きな社会的課題の解決に向けても、ゼロベースの思考、前例のない付加価値を創造していくことが求められます。

まず「正解」を探すクセのある人は採らない

そこで、教育ハンデキャップについて語りたい。ここにいるみんなだいたい日本人だよね? 同じ国籍の人がこれだけ集まるというのは、すごいことなんだけど、やっぱり日本の教育のハンデキャップを背負ってる人が多いはずです。

自分はそうじゃないと思っても、私も含めて実際そうです。お父さんが文科省とかの人がいたら申し訳ないけど、やっぱり、日本の教育は大きい問題の根源になってます。

戦後の高度成長期、きわめて高いレベルの均質な工業製品を大量に作って加工貿易するという時代に最適であった教育システムが、根本的にはほとんど変わっていません。

我々はいまだに均質な1つの答えを言い当てられるように教育されています。間違えない達人の量産です。今求められる人材とのギャップが激しすぎる。

最終面接を今でも自分でやることがあるのだけれど、「最後になにか質問ありませんか?」と言うと、「こういう質問が正解だ」と頭がまず回り始める人が多いです。

「ここでなにか聞いておきたいことある?」と私が訊く。大事な職業選択において……私、DeNAのファウンダーだよ?

もっと聞きたいことあるんじゃないのかなと思うんだけど、「ここではこういうことを聞くのが正解だ」みたいに頭が回転してる。「質問」するときまで「答え」を探しているという……。

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