ノイズを遮断するしくみ

マイケル・アランダ氏:退屈なフライトでは、飛行機の低いエンジン音がやけに耳に障りますよね。そんな時、ノイズキャンセリングヘッドホンを取り出して耳に当てれば、心地よい静かな世界に包まれることでしょう。

ノイズキャンセリングヘッドホンは、ただ外界の騒音を遮断するだけでなく、音そのものを取り除くことが可能です。

ノイズキャンセリングヘッドホンは、スイッチを入れると、音波という物理学の力で音を消し去ることができます。弱め合う干渉を利用して、音波を互いに打ち消し合う機能を備えているからです。

音は波でできています。音波は空気中を進みながら、空気の圧縮と膨張を繰り返してパターン化した波形をつくります。弱め合う干渉は、ここに違う音波が放たれて2つの音波が重なり合う時に起こります。

最初の音の波が空気を圧縮している時に2つ目の音の波が空気を膨張し、逆にはじめの音波が空気を膨張している時に2つ目の音波が空気を圧縮している状態です。

2つの音波の圧縮のピークと膨張のピークが重なり合うと、圧縮も膨張もされていない空気が作り出されます。圧縮の力が膨張を妨げ、膨張の力が圧縮を妨げるからです。すると音波はフェードアウトし、「音のない状態」がつくりだされます。

ノイズキャンセリングヘッドホンには、周囲の音を感知し、その音波を打ち消す音波を発生させるマイクが内蔵されています。マイクからその音波が放たれると、弱め合う干渉が起きて、騒音のある空間に静寂がつくりだされるという仕組みです。

でもそれは「完全な静寂」ではありません。マイクから放たれる音波は、感知した音の音波を打ち消すよう計算されていますが、それが適用されるのはヘッドホンの外にある音に限られます。ですから、ヘッドホンを通して聞いている音は打ち消されることなく、あなただけの音空間に浸ることができるのです。

また、ノイズキャンセリングの技術をもって外界の全ての音を打ち消すことはできません。

飛行機のなかなら約70パーセントの騒音をカットすることができると言われています。とくに飛行機のエンジン音など、単調な持続音に対して効果を発揮します。そのような音は、その音波も単調で持続的だからです。

ノイズキャンセリングヘッドホンは、反対の波形を持つ持続的な音を発生させることによって、周囲の持続低音を打ち消します。ですから、赤ちゃんの泣き声のように、突然の音やピッチが頻繁に変わる音などに即座に対応することは難しく、それらの音を効果的に打ち消すことはできません。

というわけで、飛行機のエンジン音にはヘッドホンが効果的ですが、赤ちゃんの真後ろに座ることになったら、お気の毒です、覚悟を決めましょう。