多くの同期がいる中で、突き抜けられた要因

麻生要一氏(以下、麻生):じゃあ、最初のトークテーマにいきたいと思います。今聞いていただいてわかるとおり、ほぼ事業責任者クラスの仕事、実際に事業責任者の仕事をこの年次でやっているという、なかなかいないお三方なのかなと思うんですけど。

例えば、同期の方で普通に現場で営業してるような人もおそらくいるんじゃないのかなと思うんですけれども。

そんななかで、なぜこれだけ突き抜けられたのか、仕事のチャンスをどうやってつかみにいったのか、そのあたりのきっかけからうかがっていければなと思います。

どなたでもいいいんですけど。なんで今の仕事に着任したのか、そのあたりの話を聞かせてほしいなと思います。これは大見さんから。

大見周平氏(以下、大見):本当ですか(笑)。

麻生:任命されたのか、手をあげたのかみたいな。

スマホゲームにはそこまで興味がなかった

大見:3年目になるタイミングが、かなり大きいターニングポイントでした。それまでDeNA自体もスマホゲーム会社としてどこまでいけるかというフェーズだったんですけど。

結論からいうと、手をあげたというのと任命、半々ぐらいかなという気がしています。

当時の話をすると、僕は2年間ぐらいゲーム事業にいたんですけど。個人的にはそんなにゲームにすごい強烈な興味があるかというとないのが正直なところで。

どんどんスマホゲームがアプリになると、クリエイティブ、本当にゲーム好きな人が作り込んで、勝てるような市場になってきちゃったので。「僕ができることってあんまりない……」っていう、けっこうキャリアに悩んでたんですよ、正直。

課外活動を経て、「Anyca」の立ち上げへ

DeNAの会社に入ったのは、「日本初のグローバルサービス作ろう」みたいな目線の高さが好きで入ってたので。

それを思い出すと、このまま市場環境もあれだし、ゲーム作ってて「うちの会社って本当に大きくなるんですかね?」みたいな、ちょっと生意気な話を普通に社内でもしてたし、人事にもしてたし。

それとセットで、「じゃあ僕、新規事業考えたいので」というのをオフワークでやって、役員にちょっとぶつけてみたりとか。

麻生:それは完全に課外活動として?

大見:課外活動を勝手にしてて、「お前ちゃんと働け」という感じだったんですけど(笑)。

だから、そういうのとちょうど会社のアジェンダ的にも、「ゲームの売上収益ってもう一気に倍にはならないよね」というなかで。とはいえ、年間数百億円のキャッシュがあって。

じゃあ、これを使って3年後、5年後の大きい事業をメガベンチャーなりに作っていこうというプロジェクトが、ちょうど立ち上がってて。

なんか生意気なこと言ってるやつがいるというのと、そのプロジェクトの立ち上がりというのは本当にぴったりタイミングがあったので。たまたまアサインしてもらえたという感じですね。

麻生:ちなみに「Anyca」の事業自体はどうやって、誰からどんな感じでアイデアが生まれて、どう承認されていったんですか?

大見:3年目の8月ぐらいに「自動車にしよう」って決まって。ただ領域だけ決めても事業案がないとダメじゃないですか。「教育が好きなので、教育やりました」みたいな。

麻生:じゃあ、先に自動車領域というのがあったんですね。

大見:ですね。ほぼ平行して事業案を考えておかないと「領域決めたはいいけど何やるんだ?」になっちゃうので。

そのなかでずっと個人間カーシェアって、いろいろ法整備とかハードルがあるのはわかるんだけど、チャンス大きいですよねというので、「掘らせてほしいです」というのをずっと話していてというところですね。

それで9月ぐらいに決裁を終えて、1人でマーケット調査とかワ~って始めてという感じでした。

麻生:「自動車領域で行こう、自動車領域を大見に任せよう」みたいな感じだったんですか?

大見:いや、自動車領域時代は執行役員の中島(宏)と僕、2人でわりと動いて決裁まで取りにいった感じだったので。基本的には「中島頑張れ。大見も頑張れ」みたいな感じではありますが、主には中島ですね(笑)。

麻生:なるほど。わかりました。じゃあ、松尾さん。

社内で実を結ぶ「課外活動」の方法

松尾:今の大見さんのお話から「課外活動」というお話が出たんですけれども、僕もそれが1つの重要なターニングポイントになったかなと思っていて。2つですね。

ちゃんと足元の業務をしっかりやるというと、プラスアルファなにかやるというところで。

そのプラスアルファのところに関していうと、さっきも簡単に申し上げた、社内で社員が事業を立案しますみたいな。

リクルートさんもやっていらっしゃると思うんですけれども、ああいう仕組みがありますと。そこで事業作りについてすごい勉強しました。

毎回、出場するたびに審査員が経営陣なので、彼らとともに「次のSpeeeにとっての新規事業とはどうあるべきか」みたいのをけっこう喧々諤々議論するんですけども。単純にいってもぜんぜん議論に勝てないので、事業創造に関してかなり勉強して武装しました。

やっぱり事業を作っていくにあたっては、ふだんの足元の業務もすごい重要なんですけども、それとはぜんぜん違う筋肉を使うなあということがあったので、いわゆる勉強をしっかりしましたね。

それで、「勉強ってなんだ?」って話なんですけども。ちょうど今の時期とか各社が出しているIRを見たり、あとはIVSとか、海外のピッチコンテストとか。

ああいう新規事業ってどんなふうに作られてるのかというのを見たり。あと本を読んだりとか。Web記事を読んだりとか。

あとはいろんな業界の人に会いに行って話を聞くとか。本当手当たり次第という感じなんですけれども。

本当に自分は大学では政治しか勉強してなくて、事業とかビジネスについてはまったくのド素人だったので。少なくとも前提としてのインプットがないといけないなと思って勉強していたというのが「課外活動」にあたるところですかね。

「新規事業キャラ」はつけたもん勝ち

麻生:その勉強の成果をコンテストにぶつけて受賞したんですか?

松尾:受賞したのは別の事業なんですけども、わりとコンテストに何度も何度も出て、「事業やりたい」と手をあげてたりすると、やっぱり「新規事業キャラ」みたいのが付くじゃないですか?

それで、「あいつにだったら、いずれなにかチャンスがあったら任せてみるか」というようなポジションにいさせてもらえたので、こういう大きな構想ができたときに、お声がけいただいたと。そんな感じですね。

麻生:なるほど。じゃあ、「医療で15年かけて行こう」と。そのときに「松尾にやらせよう」みたいになったと。

松尾:そんな感じでございます。

麻生:でもなかなか……4年目ですよね? 

松尾:4年目です。

麻生:丸3年ぐらいしか経ってないなかで、そのキャラを確立するのは至難の業じゃないかなと、おそらく全員思ってると思うんですけど。そのあたりは「勉強量がすごかった」みたいなことなんですか?

松尾:わりとキャッチアップみたいなところは得意かなと思っていて。結局どんな事業をやるのであれ、新卒ってなんのプロフェッショナルでもないじゃないですか? なので、どこに飛び込んでいくにせよ、急速にキャッチアップして、アウトプットを出していく。

カオスな状況でも、わりとメンタル強く頑張れるみたいな。その素養の部分がすごくアサインする側にとったら大事かなと思っているんですけれども、その部分ですかね。

けっこう足元の事業では、BtoBのコンサルティングとしてけっこうハードワークをしていたので、「あいつわりとハードワーカーであるよね」というのもあったとは思うんですけれども(笑)。

麻生:じゃあ、「あいつはやってくれるよね」「成果出してくれる人材だよね」ということも同時にやってたと。

松尾:そうかなと思っております。

大見:メンタル重要ですよね。

松尾:メンタル重要ですね。はい、そんな感じです。

麻生:じゃあ、財部さんは?

裁量は自分で取りに行く

財部:そうですね。お二人のようなかたちで、1人のビジネスマンとして周囲の信頼を得て、裁量を会社から任されるのも非常に重要なところかなと思うんですけれども。

プラス、自分の場合、かなりスタートアップフェーズのベンチャーだったので、ちょっと特殊なのかなと思ったのが、裁量は自分で取りに行く、もしくは自分で事業を名乗りをあげて始めて。

最初は、例えば社員2名で始めてくれとか、予算いくらとか。すごい小さいのものを自ら成長させていくことによって、結果的に任されるリソースが増えていく。その結果として裁量が大きくなるみたいなのが、自分の場合は大きかったかなと思ってます。

ちょうど2年前にこの会社に入ったんですけれども、「ZUU Online」を“国内最大級のメディア”と言いましたけれども、当時はまだまだ小さいメディアだったんです。

そのメディアを担当していくなかで、ある程度大きくなっていった部分があったりだとか。ほかにもいろんな事業が立ち上がってるんですけれども、それが小さいものがだんだん結果的には大きくなったと。

それで大きくなったときに、たまたま自分が中心にいるので裁量が結果的にある状況になる、というところが非常にベンチャーならではの「裁量を作りに行く」みたいなところはあるんじゃないかなと思いました。

最初の3年でいかに目線を高く持てるか

麻生:今お話をうかがってると、任された仕事をちゃんとやって成果を出していくということをやりつつ、「キャラ付けする」という話がありました。

例えば、経営陣と新規事業の話をして「あいつなんか新規事業やりたそうだな」みたいな空気を作っていくみたいな話とか、両面あると思うんですけど。

とくに、同世代と比べてやってる裁量が大きくて、事業責任者クラスの仕事をされてるということで、突き抜けているとすると、何が違うんだと思いますか?

みんな、成果を出そうと思って仕事も頑張ってるし、新規事業もやりたいと思ってコンテスト出したりもしてるじゃないですか。それと「何が違うんでしょうね?」というあたりを。どなたでもいいんですけど。

松尾:すごく難しい質問だと思うんですけれども。いかに基準を高く持っておくかというところが1個大事なんじゃないかなと思っています。

同じようなことをみんな着手すると思うんですけれども。それを完遂するスピードとか、その質とか、結局そのやりきりの度合いで決まってくると思うので。

じゃあ、その基準を社内の同期に見るのか、社外の同世代に見るのか、それともほかのビジネスの猛者たちと見るのかみたいなところで、基準をいかに高く持っておくかというのはわりと最初の3年ぐらいはすごい重要なんじゃないかなと。

麻生:松尾さん自身はそのへんの目線は、入社直後とか今とかでいうと、どのあたりに合わせてやってるんですか?

松尾:僕はやっぱり、社内でいうと、3年ぐらい上の人とかですね。あとは社外でいうといわゆる官僚になったり、弁護士になったりという、大きな仕事をする人がけっこう周りに多かったので。

でも一方で、自分はベンチャーを選んでるわけですよね。ある程度リスクを取ってベンチャーを選んで来ているわけなので。

そのリスクを取っているからこそ、ハイリターンを得るためにどうするのかというと、やっぱり「彼らよりやるしかない」というのがあって。

普通のビジネスマンで終わらないようにするために、わざわざこっち側の世界に飛び込んできているという、リスクテイクしている意味をけっこう日々考えたり。そんな思いを根底には持ってやってたかなと思ってますね。

「社内クレジット」の積み上げ方

大見:でもそうですよね。「社内クレジット」じゃないですけど。結局「経営陣も投資家だ」って見ちゃうと「あいつの信頼度」みたいのを、日々業務で結果を出すと積み上がっていくんですけど。まあ、失敗すると減るんですよね。ここの繰り返しかなという気はしています。

実は僕、DeNAに対して売上で貢献するような結果ってそんな出せてなくて。毎回、ド新規系にいるので、ちょっとチャンスは違うという話はあると思うんですけど。けっこうコケながら、今もなんとか責任者やってる感じなので。

だから麻生さんとかも、どエライ裁量をもらいながら、そのクレジットをどうやって積み上げてきたのかは気になりますね。

麻生:僕でいうと、僕の仕事は「任命された」ということよりは、自分で提案して、「こういうことやりたいから」って言って作ってきてるんですね。

今も新規事業の統括責任者やってるんですけど。これ目線の話にもちょっとつながるんですけど。僕が言ってるのは、「リクルートの新規事業開発エコシステムにおいて、世界最高のエコシステムを作る」と言ってやってるんですよ。

「シリコンバレー」というエコシステムがあると思うんですけど、「エコシステムレベルで超えるにはどうしたらいいか?」みたいな。

大見:なるほど。壮大なテーマ(笑)。

麻生:そうなんです。目線でいうと、「そういうことをやりたい」って言って、「いいよ」って言って、やらせてもらってるみたいなところがあるので、目線という話はあるかなと思いました。

あとは、達成できないこともあるんですけど、クォーター目標を設定したら絶対達成にコミットするというのをやってますね。

「ここまで行くんだ」って言ったら、「行くんだ」と。握ったあとは、途中で「それに意味がなかった」みたいなピボットとかはあると思うんですけど、いったん四半期ぐらいで「やる」って言っちゃったんだから、いったん数字は「やる」ということはやってますね。

入社後にあえて背伸びをしてみる

財部:たしかに僕も目線を高くとか、そういうところはあったなと思いますね。けっこう入社してすぐ、本当に1年目でまったくビジネスわからない状況なのに、社長ぶった発言を無理にしてみる、みたいなことはけっこうやっていて……。

麻生:それ、ちなみにどんな感じ?(笑)。

財部:「やっぱりM&Aとかも考えていきたいですね」みたいな(笑)。

大見:うぜー(笑)。

麻生:それけっこううっとしいと思うんだけど(笑)。

財部:あとは「やっぱりこのサイトを買えるかどうかが最終的なところですよね」みたいな。最初は「ん? どういうこと?」みたいな感じが出てたんですけど。その背伸びを繰り返していくうちに発言が徐々にまともになり、だんだん追いついてくるみたいな。

大見:たしかに。まあ、ありますよね。

財部:だんだん精度が上がってきたみたいなところで。だから、ちょっとそういう背伸びみたいな、「言っちゃったしな」みたいなところもあるんじゃないですかね、やっぱり。

大見:なるほどね。そうですよね。目線を上げる話をすると、今いる会社から飛び出しちゃう時ありません?

財部:そうですね。わかります。

大見:会社のアジェンダと自分の目線のアジェンダが釣り合うポイントって意外にそんな多くないなという気が徐々に(笑)。

麻生:それは「転職するぞ」ということも含めて?

(会場笑)

大見:いやいや(笑)。

麻生:危険な発言を(笑)。

松尾:これログミーに載っちゃうんですよね。

麻生:載っちゃいますね。今のところ伏せていただいて(笑)。

大見:でも、あるなというのはちょっと思いますけどね。