オリンピック後の新国立競技場の後利用を考えた計画を作らないといけない

小栗泉(以下、小栗):どうもありがとうございました。東京オリンピックが行われるということで、実に多岐にわたる課題について視察も含めて取り組んでらっしゃるご様子というのを伺っていただきました。で、会場からもすでにいくつか質問カードというのを私どものほうにいただいております。まずですね、東京オリンピックの関連で私のほうから質問させていただきたいと思います。先ほど知事のお話の中でもお金を誰が負担するのかというお言葉がありましたけれども、一番気になるのが新国立競技場ですね。下村(博文)文科大臣は都議会と内々話をして、500億都が負担するということの了解をもらっているというふうな発言がありますけれども、この点いかがでしょうか?

舛添要一(以下、舛添):はい、そういう話は全く白紙になったということを都議会の方々からは聞いております。それが一つ。私が知事に就任して以来、この新国立競技場、すでに500億円都が負担するってな話が出ているようですけど、一度もそういう話をしたことは文科大臣とはありませんし、国のレベルからそういう要請もまだありませんですから、全く私が知事になってからはこの問題は検討もしていないということです。

小栗:知事は国政とのパイプも非常におありだと思うんですけれども、すでにどのくらい都が負担するかというようなお話というのは始めてらっしゃるんでしょうか?

舛添:全くやっておりません。

小栗:もう来月には解体も始まるということですけれども、タイムスケジュールとしてはその費用負担、どういう青写真というのを描いてらっしゃるんでしょう?

舛添:これはですね、まず忘れてはならないのは、例えば8万人収容する広さが必要だということは、8万人収容というのは招致のときの条件ですから、5万人しか入れられませんっていうのではそれは招致できないっていうことですから、IOCとの約束、契約条項はきちんと守らないといけませんよと。

それから先般の国レベルの会議でもあったように、もうあのデザインが決まって、それで正式に動く、解体作業も始まるということですから、あくまで国立競技場なんで、それを国の責任できちんとやっていただく。しかし国立競技場があるのは東京都であるわけだし、東京五輪そしてパラリンピックであるわけですから、東京都が一切、何も知らんというわけにはもちろんいきませんよ。それは無関心であるわけではありません。

しかし全体を見ながら国立競技場をどうするかっていうのを、これは国の話であり、それから森元総理がトップをおやりになってる組織委員会が主としておやりになることなんで、組織委員会とも東京都は緊密に協議をしております。ただまだ、スケジュール感的に言うと、とにかくまだ話を国ときちんと、私は一度も国からの要請も受けておりませんので、それからでしょうということです。

小栗:ということは、白紙ということで、500億払わないぞということではないということですか?

舛添:要請も受けてないんで、答えのしようがありません。

小栗:はい。それで、新国立競技場に関連して会場からもご質問いただいております。「あんなに巨大なスタンドを作って、五輪の後利用される確信はおありになりますか? 今からでも少し縮小する気はないのか」というご質問いただいておりますがいかがでしょうか?

舛添:今、世界各国の、例えばメインスタジアムも含めて競技施設の後利用はどうなってるのかということを精査をしておりますし、先般北京に行って鳥の巣も見ました。もちろん自分の国の施設ですから全然後利用ダメで困ってますという言い方はなさりませんよ。だからある程度うまくいってます。で、シドニーについても同じことなんで。ただやっぱりそうは言いながらも最初は大変だったよっていうのは、なかなか9万人とか10万人とかそんなのを埋めるっていうのは大変ですから、中国のような人口の多い国にしてもですね。

だから我々がやるべきことは競技施設を作る、その段階から後利用をきちんと考えるということをやらないといけないんで、もっともっと日本が元気になって、AKB48の10倍ぐらい人を集められるグループができれば、そんなもの8万人ぐらいそれでも足りないぐらいになる。だから絶対5万人しかイベントがダメなんで、あんまり削ろうっていう、そういう縮んで縮んで縮んでいく思考じゃなくて、「何なんだ、12万人来るんだけど8万人足りないじゃないか」くらいの大きな気持ちで、何やればこんだけ人集まるんだろうと、どれだけ日本経済発達すれば人集まるのかと、そういう発想があってもいいんじゃないでしょうかと。なんか今はもう、サイズを動かすとかそういう話ばっかりなんで、後利用との関数だというふうにだけ申し上げておきたいと思います。

小栗:五輪の後の収支計画ということで言うと、日本スポーツ振興センターですか、が先日試算を出して黒字ということの見通しを示されましたけれども、でもまだ基本の設計案が出る前に黒字というのはちょっと早計ではないかなという気もするんですが、そのあたり知事はどういうふうにご覧になりますか?

舛添:今、ご承知のように資材も高騰している、人件費も高騰している。これは、それこそ計算した時点で変わっていくもんだろうというふうに思ってます。しかし長い目で見たときに、そしていろんな要素を見たときに、例えばですよ、東京オリンピック・パラリンピック2020年のおかげでものすごい経済が良くなって、日本の富が増えたとなれば、投資としては安いもんである可能性があるわけですよ。

だから今言った黒字か赤字かっていうのはどこまでスコープを広げておっしゃってるんですかと。それからオリンピックの期間だけ取ってるんですか、後利用を考えての黒字なんですかと。だからあんまりそこの厳密な条件付けを私はチェックしてないんで、正確にお答えできないんですけど、条件付けをどうするかによって数字はいくらでも変わると思いますので、むしろ今から赤字とか黒字とか言うよりも、どうすれば成功できて、どうすれば日本経済にとっても良くなるし、アジアでも世界でもプラスになるような、そういうオリンピックにするにはどうすればいいかって発想で頑張るほうが私は生産的だと思ってます。

カジノ建設に関しての法体系的な議論がなされていない

小栗:それでは、その他の質問を瀬口委員のほうからお願いします。

瀬口晴義(以下、瀬口):はい、会場からたくさんの質問もいただきました。何点か読ませていただきます。知事になられて、朝から知事が出勤して仕事されるのに、非常に職員の方も驚かれたっていう話もありましたけれども、石原さんと猪瀬さんから引き継いだ遺産ということで言うと、2つあると思うんですね。一つが都の税金を800億円以上棄損してしまった新銀行東京。これの処理について、ここ数年は黒字が出てるということなんですけども、これをどうしていくかという問題。もう一つは尖閣諸島のことで、14億の基金があるんですけども、今塩漬けになってる状態ですけども、これをどうやっていくのか。この2点についてまず伺いたいと思います。

舛添:はい。新銀行東京は、今の経営陣が一生懸命頑張って黒字に持ってきていただいてるんで、もう少し状況を見てみたいというふうに思っております。尖閣基金の使い道は条例できちんと決まって、国との連動のもとに行わないといけませんので、今のところはこれをどうこう動かすということではありません。もっと具体的に言うと、要するに匿名の方の給付がたくさんありますから、戻しようがない。仮に全員名前がわかっていても、一旦もらったものを戻すということの手続きは行政上簡単じゃないんですね。ですから、今のところそういうことも含めて、すぐ動かせる状況ではないということです。

瀬口:続きまして、カジノ法案、国会で審議が始まろうとしてるんですけども、猪瀬さんは結構積極的に取り組んでいたという話もありますが、知事は東京にカジノ、これをどう考えてますか?

舛添:IRって言うけども、非常にIR法案っていうのは、どこまで具体的に法案化されているのか、どうもよくわからない。私が個人的に申し上げれば、もう一つ一つ(の施設)、例えばさっきの競技場じゃないけども、国際会議センターを作りますよと、それから子どもの遊園地を作りますよと、ディズニーランドみたいなものを作りますよと、わかるんですよ。IRって何なんですかと。

カジノって言ったらわかりますよ。IRは全部がカジノじゃありません。そうするとカジノだけについて言うと、様々な問題がある。青少年の教育にとってどうですか、カジノはギャンブルですから、ギャンブルで家庭が崩壊したらどうするんですか。

ギャンブルってのは法律的には禁止されてますね。じゃあ、禁止されてることを解除することとして、公営ギャンブルがありますね。競馬、競輪、競艇。それは、使い道が公共のために一部行くことになってるから、この車はボートの売上ですって書いた車が走ってますね? カジノっていうのは民間の方々がおやりになる、企業が、プライベートカンパニーがおやりになる。じゃあ一般的なギャンブル禁止の日本の法体系とどう整合性があるんでしょうかと。果たして、例えばそういう議論を、審議入りだけはするかもしれないですけど、まず国会でしっかりやっていただきたいと思います。

今申し上げた、ギャンブル禁止という日本の法体系と、それをどうするとその禁止条項を免除できるかということを、私は法律家の立場でもそう簡単な答えは出ないんじゃないかなと思ってますから、よくそういうのを議論してもらいたいというふうに思ってますから。

私にとってこれは優先課題ではありません。カジノやらないと日本経済復活しないとか、カジノこそアベノミクスの切り札だとか、国家戦略特区こそ日本を救う打ち出の小槌だとか、一切そういうような見方は私はしておりません。

なんかもうカジノさえやれば全て良くなるような、そういうふうなこともおっしゃる方がおりますけれども、私は非常にそこは冷めて見てるのと、現実味、カジノがどういう役割を果たしてるのかっていうのはマネーロンダリングとの関係でよく調べてみる必要もあるんではないかっていうことも含めて、議論が足りませんね。

ちょっとね、すぐね、舛添知事はカジノに否定的なことを記者クラブで言ったと、けしからんやつだって、必ず明日どこかの新聞が書きますよ。まあ書いてもいいんですけど。だけどここにいた方はそうじゃないってのは今言ったことでわかる。書かれる方は法律学的にギャンブルが禁止されてる日本の法体系に比べて。IRって言うからわかんないんですよ、カジノって言ったときにギャンブルです、そのギャンブルだけはなぜ許されるのかっていう法律作らないといけないはずでしょ。っていうことまで書いて、とにかく国家戦略特区にネガティブなアイツは、けしからんやつが舛添だと。今度はカジノに対してネガティブであんなけしからん知事はいないと。だから叩かれるのは慣れてますけども、ちょっとちゃんと総合的にものを考えていただきたいと。以上です。

中国、韓国における都市外交を努力して進めていきたい

瀬口:はい、ありがとうございます。友好都市の北京に、知事として久々に行かれました。近々ソウルに行かれる話もあるんですか?

舛添:ご承知のように、昨日地方選挙が行われました。ソウルは現職の朴さん(朴元淳 박원순パク・ウォンスン)が再選なさいました。現代(ヒュンダイ)のチョンジュアン(鄭周永)さんの6男坊の第一子が。フェリーの事故の前は、彼(鄭夢準 チョン・モンジュン)が圧倒的に有利だったんですけれども、あの事故で逆の結果になりました。

私の時も、知事の就任のお祝いのお手紙を頂いておりますので、すでにソウルの朴市長に対しては『当選おめでとうございます』という手紙を書きました。その中に、できるだけ早い機会にソウルに訪れたいという意志は表明しておりましたけれども、いかんせん選挙が終わったばかりですし、(行方)不明の方がおられるような事故の後ですから。今日明日という話ではなくて、これは先方のいろんな事情を踏まえて、先方の方から『こういう時期にいらしてください』ということがあれば、それはそれで考えたい。

10以上友好姉妹都市がありますし、いろんなところとの関係もありますんで。ただ当然、近隣の国、特にソウルの特色は、アジネット21(編集注:アジア大都市ネットワーク21)というアジアの大都市のネットワークのメンバーでもあって、姉妹都市でもあるんですね。ふたつの要件をかなえたのはあの街しかない。そういう意味では、今、北京がアジネット21から脱退してるので、北京に行った時には『ぜひ、戻ってきてください』と、申し上げたんですよ。北京が抜けてますから、そういう意味ではソウルが1番、東京と関係が深い。二重の意味で。できるだけ早く市長さんとお会いして、いろんな協力関係を結びたいと思っています。

瀬口:北京に行かれたことに関して伺いたいんですけれども。日中関係冷え込んでる中で、舛添さんはあえて民間の立場というか、政府ではない立場で行かれて、融和に尽くして来られたと思うんですが、そこで安倍首相と習近平総書記の日中首脳会談を開いたほうがいいんじゃないか? という声もあるんですけれども、日中首脳会談が実現する空気をお感じになりましたでしょうか?

舛添:都知事として行きましたから、北京市との間の都市外交ではありますけれども、中国というのは共産党が支配する国ですから、一枚岩になっておられるんで、当然、北京市長に会うということは、習近平主席が共産党、つまり中国政府全体が後ろにあることはわかっております。出発の前には、安倍総理とお話して「これから行きます」と伝え、 安倍総理も日中関係を良くしたいという意志だということも、向こうにお伝えする。それから帰って一番最初にお会いしたのも総理なんで、そのご報告もしました。

その報告の中に安倍総理に対しては、非常に厳しい見方を中国は持っておられると、それも率直にお伝えしました。11月に北京でAPECが開かれます。それまでの間に、日中双方がいろんな努力をして、日中首脳会談がAPECの場でできることが望ましい。そういうことを、我々もサポートできることがあればやるし、中国側も日本側も、両方の中央政府もやっていただきたい。これはもう、あくまで努力をするしかありません。今、唐家璇(とうかせん)さんが長崎に来ておられますので、おそらく4月の末に私が北京に行きましたけれども、あれ以来「民間交流はやってください」「地方自治体間の交流やってください」そういう意味での政権分離、中央と中央の分離。政策転換を中国が行ったのはたしかです。逆に言うと、中央政府との間はやってないってことなので、ここまでなんとかいってほしいなというのが希望です。