指紋の大部分は遺伝子によって決まる

ハンク・グリーン氏:もしもあなたに指があるなら、もちろん指紋もありますよね? あなたと同じ指紋を持つ人は1人もいない……はずです。

だからこそドラマに出てくる犯罪者は手袋をつけているのです。

一卵性双生児であっても、指紋は同じではありません。しかし、指紋ができる過程は遺伝子によるところが大きいようです。

大抵の人は指紋がランダムなものだと考えていますが、大まかな形は遺伝子によって決まります。

指紋には3つの基本的な形があります。

渦状紋という、渦巻きや円を描いている形。

蹄状紋という、同じ方向から出てまた同じ方向へ戻る形。

弓状紋という、片方から出て反対方向へ向かう形です。

どの指にどういった指紋のパターンができるかを遺伝子が直接コントロールしているわけではありません。しかし左右対称の指紋になるかどうかというような、パターンを生み出す上である程度の影響を及ぼします。

特殊な幹細胞の組織が指紋を決定づける?

これは6週から8週目の胎児の写真です。胎児は指や掌、足に「ボーラ―パッド」と呼ばれる分厚い塊のようなものができます。

なぜこれができるかというと、間葉と呼ばれる特殊な幹細胞の組織が、皮膚の下で膨張するためです。間葉は最終的に肌や血管といった結合組織へと発展していきます。

人間の胎児の場合、ボーラーパッドはそんなに長い期間残るわけではありません。手は成長し続けますが、10週目ごろになるとボーラーパッドの成長が止まってしまいます。

次の5週間でボーラーパッドは手や足の中に飲み込まれ、見慣れた形へと変わっていきます。

遺伝子が影響を与えているのは、手がどのように成長していくかということや、指紋がいつ形成され始めるのかという部分です。そのため、必ずしも指紋が左右対称であったり同じ形になるわけではないのです。

例えば、指の片側の方が早く成長すれば、ボーラーパッドは盛り上がってしまい左右どちらかに向いた傾斜ができます。先に現れて盛り上がって、傾きができたヒダがあれば、指紋は蹄状紋となります。

しかしボーラーパッドが傾かないままヒダが現れると、左右対称に近い形状の指紋ができます。研究によれば、ボーラーパッドが平らで、かつ飛び出して膨らんでいれば渦状紋となり、ほとんど膨らんでいなければ弓状紋となるようです。

こうした指紋パターンは遺伝子よって形作られるため、家系ごとに特徴があります。

しかし! 家族内でも指紋が一人ひとり違うことには、まだ込み入った仕組みがあるのです。

はっきりとは解明されていませんが、研究者たちは子宮内での胎児の位置や、羊膜に触れているか、羊水の濃度成分などの環境要因が影響していると考えています。

こうした要素が総合的に関係して、指紋のヒダの数やどんな形になるのかを決定するのです。そのため、一卵性双生児で指紋が同じパターンをしていたとしても、厳密には異なるというわけです。