次期大統領は危機とチャンスに対峙しなければならない

ヒラリー・クリントン氏:この場で多くの友人に囲まれていることに幸せを感じます。これまでにAIPACで話す機会は多くいただきましたが、今回は最大の規模であり、若い方が大勢いらっしゃいます。

国中の何百というキャンパスから集まった、何千人もの大学生が集まっています。若者たちに拍手を送り、この重要な運動への参加を称えたいと思います。みなさんは、アメリカとイスラエルの強い関係性を今後も維持してくれるでしょう。

ニューヨーク州上院議員として、またアメリカ合衆国国務長官として、私はAIPACのメンバーと協力し、アメリカとイスラエルとの絆を強める名誉ある仕事をしてきました。すべての事項について同意が得られたわけではありませんが、2国の確固たる揺るがぬ同盟と、ユダヤ人の安定した民主主義の母国たる、イスラエルの将来は共有しています。

AIPACのみなさまには、安全保障と諜報活動の協力、アイアンドーム防空システム、国際的な協調体制による、史上もっとも強固な対イラン経済制裁などについて、支援をいただきました。

35年前に初めて訪問して以来、私はイスラエルへ訪問を重ね、たくさんの友人を得ました。イスラエルのすばらしいリーダーと行動を共にし、多くを学びました。しかし故イツハク・ラビン首相には、煙草を吸う時に、ホワイトハウスのバルコニーに追い出した一件に関しては許していただけなかったかもしれませんが。

(会場笑)

私が大統領選に立候補した今、みなさんは、この選挙において危機に瀕しているのはなにかをよくご存じだと思います。アメリカの次期大統領は、来年1月から大統領執務室にて、危機とチャンスの、2つの世界に対峙しなくてはなりません。持てる力とスキルを駆使して危機に対応し、チャンスの前髪を掴み、足がかりとするのです。

次期大統領は、デスクに就き、全アメリカ人の生命と生活や、世界中の友人の安全を左右する決断を下さなくてはなりません。ですから、我々には正しい選択が必要なのです。

中東の混乱は大きな困難と錯綜のさなかにありますが、これを捨て置くことはできないことは、AIPACのみなさまにはよくおわかりかと思われます。

(会場拍手)

中東の安全保障を独裁者に任せるべきだとか、この地域にはアメリカにとって重篤な国益がないと考える他大統領候補者の考えは、危険で間違っています。アメリカが責任を放棄し、世界平和と安全保障を担うリーダーシップを投げ出すことは誤りです。

アメリカとイスラエルの同盟は必要不可欠

我々がここに集ったのは、3つの脅威が迫っているからです。武力侵略を続けるイラン、広い範囲の不安定の弧(注:紛争多発地帯)に隆興する過激化の波、世界各地で起こっているイスラエルの合法性を認めない動きの集結は、アメリカとイスラエルの同盟をますます不可欠なものとしています。

我々は、より強固な安全保障と協調外交により、これらの動きと戦わなくてはなりません。アメリカとイスラエルは、これまで以上に寄り添い、力を高め、断固として共通の敵に打ち勝ち、価値観の共有を進めなくてはなりません。

これはとくに、イスラエル国内のテロリストの残忍な刺殺行為、銃撃、車両爆弾テロなどに言えます。親たちは、子供を外に出すことを心配し、家族は怯えて暮らしています。

つい先週も、ヤッファポート付近で、若きアメリカの退役軍人である、米海軍士官学校卒業生テイラー・フォースが、パレスチナのテロリストにより殺害されました。このような攻撃は、即時に止めさせなくてはなりません。そして、パレスチナの指導者たちが暴力を扇動し、テロリストを殉教者として称え、その家族に報酬を与えることを今すぐに止めさせなくてはなりません。

(会場拍手)

なぜなら、アメリカは、イスラエルが直面している脅威をよく理解しているからです。イスラエルとアメリカの同盟の力や両国の努力の成果を、当たり前のものだと思ってはいけません。

今日、アメリカとイスラエルは、両国の関係や、両国の将来を揺るがす重大な選択に直面しています。

第1の選択は、アメリカとイスラエルは、両国の同盟を次の段階に移行させる準備ができているのかどうか、ということです。これまでの両国の関係は、マスコミが示唆する以上に強く、深いものでした。両国の協力の賜物であるアイアンドーム防空システムは、ハマスがロケット弾攻撃を開始すると多くのイスラエルの人命を救いました。

私は、2012年ネタニヤフ首相と会談し、ガザにおける停戦に向けた交渉に合意した際に、システムの効果を目の当たりにしました。もし、私が幸運にも大統領に選ばれれば、イスラエルの安全保障問題について、両国には強く長期的な国益があることを再認識するでしょう。

(会場拍手)

また、我々はイスラエルの敵に、両国の関係性に楔を打ち込むことが可能だと思わせてはなりません。どんな友人でもそうですが、両国には違いはあります。しかし敬意を以て速やかに解消することができるでしょう。

また、アメリカが、より平和で、安定した、安全な中東の実現に対して、継続的な関心と責任があることが明らかになるでしょう。実現のために、段階を追って努力を続けるのです。

(会場拍手)

アメリカとイスラエルは共に団結し、闘う

この地域の予測不能な混迷と紛争の時代において、アメリカは、イスラエルに対して、敵を抑止、防衛し、共通の問題に共に取り組み、和平実現に大胆な策を取れるよう、強くあってもらう必要があります。

それゆえに、同盟を次の段階に移行する必要があるのです。遠い将来にわたるイスラエルの安全保障のニーズを満たす、10年防衛の了解覚書を、新たに締結する必要があるのです。

(会場拍手)

これにより、アメリカとイスラエルは共に団結し、闘うという明確なメッセージを、イスラエルの敵に発することができます。また、私は次期大統領として、イスラエルの質的な軍事的優位を確約します。

アメリカは、イスラエルが受ける脅威を抑止し停止させられるよう、高度に洗練された防衛テクノロジーを提供します。これには「アロー3」「ダビデスリング」など、イスラエルの新型迎撃ミサイルへの支援も含まれます。ほかにも、より精密なトンネル検知法や、武装密輸、誘拐、テロリストの攻撃を阻止するテクノロジーを共同開発します。

私が政権を得てまず最初にすることは、イスラエルの首相をホワイトハウスに招くことです。

(会場拍手)

また、ペンタゴンの代表団とアメリカ統合参謀本部をイスラエルに派遣し、早期に協議会を開きます。

両国の協力体制を安全保障からさらに広げ、シリコンバレーとイスラエルのIT企業や企業家たちとの絆を強める、活気あるイノベーションのカルチャーを作るのです。サイバーセキュリティ、エネルギーセキュリティ、水質安全管理から日常の草の根レベルまで、アメリカ人がイスラエルから学べることはたくさんあります。

過去の交流を知らない若い世代でも、アメリカとイスラエルの交流を続けることはとくに大切です。両国の交流の未来を担うのは若者であり、ぜひ促進する必要があります。今日この会場には、ボイコット、資本引き揚げ、経済制裁を行う「BDS運動」に反対する戦いの最前線にいる若者が大勢集まっています。

反ユダヤ運動が世界中で、とくにヨーロッパで顕著に巻き起こっている今、イスラエルとユダヤの人々を中傷し、孤立化させ、害そうとするすべての動きを拒まなくてはなりません。私はずっと警告を発して来ました。昨年はアメリカの主だったユダヤ人の団体の責任者に手紙を書き送り、BDSに対抗するために手を結ぶことを訴えました。

BDS主唱者の多くは、イスラエルの科学者や知識人、学生すらも危険視して来ました。キャンパスでこれらの不愉快な目にあって来た大学生のみなさん、どうか強くなってください。声を上げ続けてください。とくにカレッジや大学などの勉学の場において、みなさんが沈黙させられ、いじめられ、議論を封じられることは、あってはなりません。

(会場拍手)

イスラエルと世界の安全保障のリーダーに

反ユダヤ主義は、アメリカ、ヨーロッパ、どこであろうと、文化的な社会にあってよいものではありません。

イスラエルの合法性、安全保障の拡張、経済的連携、同盟の段階の上昇が可能か否かは、安定したユダヤ人の民主主義国としてのイスラエルの未来と、アメリカの世界のリーダーとしての責任を、個人として真に認識した人材を、大統領に選出できるか否かにかかっています。

今夜みなさんは、地域と世界各地へのアメリカが果たすリーダーシップについて、さまざまな大統領候補から、多種多様な見解をお聞きになると思います。未来を語る外交政策の中には、同盟国と手を取るのではなく、侮辱するもの、敵対国を打ち負かすのではなく、勢いづけるものもあるかと思われます。

イスラエルと世界の安全保障のためには、アメリカは尊敬すべき世界のリーダーであり続け、世界の秩序を守り促進することに責任を持つ必要があります。イスラエルを孤立させ、攻撃するものを阻止することのできるアメリカであり続けるのです。ほかの選択肢はありえません。

そうです。信念のぶれない大統領が必要なのです。交渉のさじ加減で、月曜には中立を宣言したのに、火曜にはイスラエルを支持し、水曜にはどちらになるかわからない、といった大統領はいりません。イスラエルの安全保障は、交渉のさじ加減で左右するわけにはいかないのです。

私は、イスラエルの病院の病室で、テロリストの爆弾により、体も人生もぼろぼろにされた男女の手を握り、脚や腕、時には頭にも残ってしまった榴散弾の破片について、医師が語るのを聞きました。

だからこそ私は、イスラエルの安全保障や国家の存続について、アメリカは中立たりえない、と強く思うのです。住宅街にロケット砲が雨あられと降り注ぎ、民間人が道で刺され、自爆テロリストが無辜の市民を狙う限り、中立ではいられません。交渉次第で見過ごしてよいものなどは存在しないのです。

それが理解できない人間は、アメリカ大統領にはふさわしくありません。

イランに対峙するだけの力とコミットメントがあるか

我々が次に直面する選択は、我々を脅かす敵、とくにイランに対峙するだけの力とコミットメントがあるかどうかということです。

我々は長年、イランの核兵器保有という、実在する危機に向き合ってきましたが、イスラエルの崩壊を目論む過激派政権は、存続してきました。だからこそ私は、外交の力で、制裁を用いて打撃を与え、イランを交渉の席に着かせるよう努力してきましたし、核開発の停止を求める合意を強く支援してきたのです。

今日、イランの濃縮ウランはすべて過去のものとなり、何千という遠心分離機は止まり、ブレークアウト・タイム(注:核爆弾1個を製造する期間)は延び、新型の検知法により、欺瞞を検知し抑止できるようになっています。その結果として私は、アメリカ、イスラエル、そして世界が、より安全な場所になったと信じております。

しかしながら、昨年にブルッキングス研究所でのスピーチで述べた通り、「信用と確認」では不十分です。我々のアプローチは、「不信と確認」でなくてはなりません。

この合意は、強い強制力、強力な監視、侵害に対する明快な報復、イランが地域に対し行う侵略行為に対峙する幅広い戦略でなければなりません。忘れてはならないことは、シリア、レバノンからイエメンまで、中東のどこの紛争にも、テヘランの指紋がついていることです。

イスラム革命防衛隊とその代理者は、イスラエルを脅かすために、ゴラン高原に拠点を構えようと試み、パレスチナのテロリストに資金を調達しています。レバノンでは、ヒズボラが、イスラエルの主だった都市に砲撃を打ち込めるよう、より高度なロケット砲と砲兵とを増やしています。

今夜、みなさんは、他候補者からイランについてさまざまなレトリックを聞くと思いますが、「テヘランに責任を取らせる」と言葉で話すことと、実行するのとでは、大きな違いがあります。次期大統領は、グローバルな協力体制を束ね、少しでも合意に相違した場合には、きちんとした処罰を与えなくてはなりません。

法的、外交的な構造を維持し、必要があれば、すべての制裁を元通りに戻さなくてはなりません。私が大統領に選ばれたなら、イランが核兵器を研究、開発し保有する動きが少しでも示された場合には、アメリカは即座に行動し、必要があれば武力をもって制止することを、イランの指導者たちは知るべきです。