フォトクリエイト出身の起業家たち

──フォトクリエイトを卒業して起業する、スペースマーケットの重松(大輔)社長のような方も出てきましたね。

大澤:当社は採用するときに、起業したいという人はウェルカムで、どんどんそういう人たちも採用しています。実際辞めて起業する人は以前からけっこういました。ただ、重松はパワーがあるので目立っていますけど(笑)。

起業したい、経営者になりたいという人をあえて入れることによって、規模が大きくなってもベンチャー気質を残していけるというのはあります。

そのため中核メンバーであっても、「どこかで辞めて起業するだろうな」というのはありましたので、誰かが辞めることですごく雰囲気が変わったというのはあまりないですね。

もっとも重松の場合、あらゆるところでフォトクリエイト出身だということを宣伝してくれてありがたいですけどね(笑)。

やはり、理念を創業のときから社内に浸透させてきているので、誰かが辞めたとかそんなことで簡単にぶれるものではないのかなと思います。今後も理念を大事にするチーム作りというのは、変わらずやっていきたいと考えています。

──逆に、大澤さんは社長としてどのように会社に変化を起こしたいと考えていますか?

大澤:1つは先ほども申した通り、トップダウンじゃない組織ですよね。誰にも寄りかかることなく、それぞれが自分で考えて、自分たちで動いていく。

お客様への対応といったところは、1番目の社員として入社した私も含めて、みんなが継続して取り組んできたので、そんなに変えていくことはないのかなと思います。もともとお客様と一緒にサービスを作り上げてきたという経緯があるので。

上場後の新卒・中途採用の変化

──新卒、中途採用の割合などはどうですか?

大澤:あまり変わっていないような気がします。以前から新卒採用には力を入れており、毎年10人くらいを採っています。中途に関しては、第2新卒も取り始めています。事業の拡大のスピードに合わせて必然的に採りきれない部分が出てきているので。

管理系人材やシステム開発のようなプロフェッショナル人材は中途採用をしていますが、営業については新卒で採用して育成していくというスタイルです。新卒が社員の約4割を占めています。

新卒で継続的に採用ができている理由は、実は写真関係のベンチャー、スポーツに関わっているベンチャーとなるとあまりありません。だから説明がしやすい。

──上場後の人材採用という意味ではやりやすくなりましたか?

大澤:これが難しいもので、未上場時はベンチャーとしてゴリゴリ突き進むタイプの人材を採用しやすかったんです。上場してしまうと、そのような人材を採るのが難しくなってきました。

上場したから採用がしやすくなったというのは都市伝説で言われていますが、本当にそうなのかな、と思ってしまいます。

逆に安定している・上場しているから入りたいという人は「ベンチャー思考あるのかなあ…」と思います。

理念や想いで採用を進めていこうとなると、未上場のときのほうが、一緒にこの想いで世の中を創るんだという、物すごく尖った人が来ていたように思います。一長一短ありますね。

──マインドがもう、創業当初と変わってくる。上場しているからという理由で面接を受けてくる人に対して、ベンチャーというアピールをしてもあまり響かないですね。

大澤:新卒の親ブロックは減りますけどね(笑)。親に対して「上場している会社だよ」というのは親が納得しやすいところはありますけどね。未上場時には本当に親ブロックがありました。

──中途採用の嫁ブロックというのも減るかもしれない(笑)。

大澤:それは減ると思います(笑)。新卒の親ブロックで言えば、親も説得できないのかという話もありますが、やはり大学まで育ててもらった親に対して、親にもちゃんと理解してもらって入社したいというのはまっとうだと思います。

そもそも親と時代が違いすぎるので、なかなか理解しろと言っても難しい。とくにお母さんとかもう働いていなかったりするので、ますますわからないわけです。それを説得するも何もなくて、ただよかったねと言ってもらいたいだけですよね。子供としては。

中途と違い、世代も違うので大変です。そんなこともあるので上場したときに、めちゃめちゃ親に反対されて入社した社員から、「親が喜んでくれた」とか、「あなたが言っていた会社ってちゃんとしていた会社なのね」みたいな。そういう意味で、「親に対してやっと胸を張れた」という声はすごくうれしかったですね。

「現状維持バイアスを脱せよ」上場後に陥る落とし穴

──採用の話を聞いたところで、御社はベンチャー精神を維持するというところにすごく危機感を持っているという感じを受けましたが、どんなところに危機感を感じていますか?

大澤:新しいことを仕掛けようとする際の、社内の反応ではないかなと思います。新しいことをやろうとすると、ほかの部署と摩擦が起きるとか、そういうことが100人を超えた規模でも起き始める。

また100人を超える社員がいて、利益も出ていて、上場もしてとなると、今のままでいいのではないかという現状維持バイアスに陥る傾向があるなとも感じています。

だけど、それを意識して新しいことを仕掛けよう、変化していこう、ということを徹底しないと中小企業になってしまうと思います。

ゆえに私は「現状維持バイアスを脱せよ」という話をしています。現状維持に陥り中小企業になるのか、それともベンチャー企業としてさらなる成長を目指せるかの分かれ道に来ている、だから現状維持バイアスを脱し、再度新しいことをやらなければいけません。

──上場後、成長が止まってしまう企業が圧倒的に多いですからね。今のままでいいんじゃないかというような。

大澤:それで、そうしている間に当然ほかのベンチャー企業が現れ、成長してくるわけじゃないですか。今までは既存の古いものに攻撃的に立ち向かう立場だったものが、安心しているうちにほかのベンチャー企業がどんどんきて、防戦一方になってしまう。

──御社を見て真似しようとする企業はたくさんありそうですね。

大澤:たくさんありますし、完全にベンチマークにされているなという気はします。ただ、市場を作るという意味では真似してくれてどんどん競合が増えたほうが、ネットで写真を販売することがより当たり前になるということにも繋がる。それをうまく利用したいと考えています。

スタジオアリスや富士フイルムなどの大手も参入してきました。小さなベンチャーも参入してきている。写真をネットで販売するということが1つの産業として、インフラとして当たり前のことになりつつある。そういう意味では競争はウェルカムです。

しかしそんな中で、「先行しているんだし、今のままでいいのではないか?」という空気感が会社のなかにあると、あっという間に追いつかれてしまう。だからこそ先行し始めたノウハウがあるうちに、次の一手を打っていくということの大切さをメッセージとして出し、社内で共有するようにしています。

チャレンジした人が評価される仕組みづくり

──そうした現状維持バイアスを打破するために、どのようなことが重要だと考えていますか?

大澤:その解決策としては、それぞれの個人が考えて動ける組織をどう作れるかという点にかかっていると思います。例えば権限を移譲し、失敗してもぜんぜん構わないので、部とかチーム単位でも新規事業をどんどんやっていくというところが大事かなと考えています。新規事業って成功確率が低いし、なかなか評価されにくいじゃないですか。

成功しないと給料上がらないよ、ということになりがちなんですよね。そこをいかにして、成功しなくてもチャレンジしたところを評価してあげられるような仕組みに変えないといけないと思っています。 チャレンジしやすい、チャレンジしたことが評価される仕組み、それをこの100人規模でどう作れるか、というのは小さいときは簡単だったんですけどね。

(会長の)白砂から「この事業やろう」と言われたから、大丈夫だなという感じでやる。しかもみんながそれをわかっている中でやるので、チャレンジはしやすい。他部署との調整もいらないんですよね。

ただ、会社が大きくなっていくとそうはいかなくなる。部門ごとに小さな改善・小さな挑戦をそれぞれ起こしていく、失敗しても次から次へと新しい試みが出てくる仕組みにならないといけない。

ただその状況で1人だけがチャレンジしていると、周りはあいつだけが仕事をしていて面倒なことやったな、という他部署との軋轢が発生してしまう。ただ、みんながやっていれば、このときに世話になったから、このときに手伝ってやろうというものが起きると思うんです。今年はチャレンジする文化作りに取り組む1年になると思います。

──一方で上場企業の経営者としては、新たな取組みをしながらも目先の売上・利益も結果を出していかなければならない。

大澤:そういう意味でいくと、もう株主のみなさまに、長期的に見ていただきたいと前回株主総会のときにお願いしました。私たちは1年ごとの業績にはもちろんこだわりますが、5年後、10年後に今手を打っていかないと当然大きく伸びないし、今1年で利益最大化を目指してやっていると事業自体が作れない。

そういう意味では、当社はまだまだその1割もないという市場状況の中で、どうやったらここを半分以上とれるのか、そういったところに対して投資していくというのは対外的にも謳っていますし、社内にも浸透させようとしているところです。まだまだベンチャーフェーズとしてやっていこうと。

フォトクリエイトに参画する魅力

──今のフォトクリエイトさんに参画する魅力を教えていただけますか?

大澤:私たちは「感動をカタチにしてすべての人へ」という理念をすごく大事にしていまして、この理念を大きくしていくことに1つの魅力があると思います。そこに向かって、さまざまな人が出てくるんですね。

それぞれがこういう世の中を創りたいとか、自分が仕事をすることによって何かを変えたいとか、いろいろ持っていると思いますが、私たちは「感動をカタチにしてすべての人へ」という想いがあります。そして、今いる社員全員がそこを目指している。だからこそ強いのだと思います。

人の生き方はいろいろです。すごく遠回りをしていく人もいれば、まっすぐ走っていく人もいますし。さまざまな人がいて、さまざまなシナジーが生まれるからおもしろいのであって、多様な人がいていいと思います。

だけど、目指すところが一緒じゃないとそれぞれ違う方向にいってしまったり、引っ張られてしまったりする。さまざまな個性の、さまざまなタイプの人間がいますが、あくまでも目指すところは一緒だからこそ、おもしろいチームが作れると思っています。

結局、人ってそれぞれが個人事業主じゃないですか。自分の人生のオーナーですよね。自分の人生こうしたい、と決めるのは自分。それと一緒で会社が何かをしてくれるわけじゃなくて、それぞれの個人事業主・オーナーが決めて、想いが一緒なだけ。会社は「場」でしかないと思っています。

だから会社がなにかしてくれるというよりも、会社を利用して自分の作りたい世界を作ってほしいと思っています。

ただ、目指したい方向がみんな同じ世界だから、会社になって集まっているというだけで。だから自分の実現したい社会が当社の理念と近いのであれば、ここでさまざまなことができるのではないか、という。この会社をうまく利用して自分の作りたい世界を作ってもらいたいなと思います。

若い会社ならではの福利厚生制度

──フォトクリエイトならではの福利厚生制度などはありますか?

大澤:当社独自の制度としては、「フォトクリウィーク」という制度があって、有給を5日間連続してとらなければならないという制度があります。土日をあわせると9連休なんかもできたりします。

これは長期休み以外、ゴールデンウィークなどの混んでいる間ではなくて、空いている時間に連続してとって、さまざまな経験をしてほしいというメッセージです。

フォトクリエイトは若くて活動的な人が多いので、そのような人のための制度でもあります。2002年に創業しているので、平均年齢が30歳ぐらいです。みんなが取れば、誰かに迷惑をかけるということはないし、じゃあ、みんなで協力して穴を埋めようということになります。これは実にうまくいきました。

海外に行ったり、長期で旅行に行ったりというところで、さまざまな経験をしてきて、それをまたみんなに話したりして、世界がどんどん広がっていくというような。

──活動的なフォトクリエイトさんらしい制度ですね。最後に御社の社是は非常にいい言葉だと思うので、大澤さんから読者の方へお願いいたします。

大澤:「感動をカタチにしてすべての人へ」

──ありがとうございました!