評価制度の本質は周りからの「信頼」

堺大輔氏(以下、堺):「組織と人材」というタイトルなので、お決まりのパターンでいくと、(中の人を)どうやって評価して、どういう評価基準なんですか、というのが必ず出てくる話だと思うんですけど、それってどうなんですかね?

川畑隆幸氏(以下、川畑):評価の制度は、うちはいわゆる評価の世界で「9ブロック」と言われるような評価なんですけど、縦軸が業績評価で、横軸がスキルの評価、そのぶつかったところが総合評価ですという、ちゃんとした評価制度なんですけど。

:ちゃんとしてる。

川畑:個人的な意見としては、評価制度をなくしたいと思ったりもします。

:なるほど。

川畑:ちょうどチームラボさんでインターンをやっていたK君という。

:K君いましたねえ。

川畑:実は、K君はアイ・エム・ジェイに来たんですけど。

:知ってます。「エーーッ!」って言いましたもん。「取られたーーっ!」って(笑)。

(会場笑)

川畑:K君が、「川畑さん、1人前ってどういうことですか?」って話を……すごい哲学的なんですけど。

:哲学的なことを聞きましたね(笑)。

川畑:聞いてきたので、「先輩からお前に、『K、いい感じでやっといて』というひと言で仕事を任されたら1人前だ」と答えたんです。

結局、評価の本質ってそういう信頼だったりすると思うんですが、そうもいかないので評価制度というのは、いろいろな仕組みでやってるんですよね。

評価する人が信頼できる人だったら、どんな評価だって受け入れられるし、信頼するやつには仕事を任せるだろうというのが根本にあるので、個人的には評価制度はなくてもいいと思っています。まあ、「評価制度なくしたい」と言うと、いろんなところからいろんな意見がきます。

:いや、ぜんぜんぜんぜん。わかります、うちもほとんど一緒なんで。岩上さんは?

絶対評価と相対評価でゆれる悩み

岩上:一緒です。縦軸が業績評価で、横軸がスキルの評価、それぞれマネージャーとリーダーが見ます。絶対評価と相対評価があって……ずっと悩んでるんですね。

絶対評価のほうが明らかにわかりやすいし、バーンと全社に公表できるんですけど、どうしてもベンチャーで人がどんどん増えて、やってることも増えて、これからどんどん変化していくよというときに、絶対評価の絶対がどうしても固定できなくて、相対評価になりがちなところは、どうにかしたいなと思ってるんですけど。

成長していく過程なので、ずっと相対評価になり続けるのかなとは思ってはいるんですけど、人事の本とか見ると「絶対評価がいい」と書いてあるので(笑)。絶対評価ができるのかなという感じで考えてます。

:人事の本とか読むんすね(笑)。真面目っすよね。

岩上:Kindleすごいいいですよ。

:Kindleで(笑)。

スクーで活躍できる勇者になるための7つの装備

:森さんどうぞ。

森健志郎氏(以下、森):うちは2つの掛け算で出すんですけど。業績と人間としてのふるまい。

:ふるまい!

:うち、「スクークエスト」って言ってるんですけど。

:スクークエスト。

:「スクーで活躍できる勇者になるために、7つの装備が必要だ」というのがあるんですね。「しなやかなマント」と言って、なにか環境の変化があったとしても、ひゅっといけたりだとか。

:いいですね。

:「不退転の盾」というのもあって、「どんなトラブルにも負けずに頑張ったか?」みたいなのがいろいろあったりするんですけど、そっち側の行動の7指標に関しては絶対評価なんですよ。

:なるほど。

:全部「はい、いいえ」と。

:もとより関係なく。

昇給は全従業員が納得するまで、100円単位で詰める

:そうですそうです。もちろん業績のほうは、うちは別にグレードみたいなハードルじゃなくて、自己申告で「今の自分の月給はいくらです。今回、業績として任されたミッションのこれ何パーセント達成した。これ何パーセント達成した。これ何パーセントくらい伸ばした。だから、僕はあと5万上げてもらうべきなんで、5万円上げてください」というのを出すんですよ。

:へー! それを1年に1回とか、半年に1回とかやるんですか?

:半年に1回です。

:半年に1回、「5万円上げてくれ」って言われたら、けっこう大変ですよね。

(会場笑)

:それで、まあまあくるじゃないですか。これは全員共有してるんですけど、半年間の全社の業績も共有してて、人件費にあといくらバジェットを乗せますというのを、みんなに共有してるんですよ。

:なるほど。

:だから、最終的には相対評価なんですね。

:キャップを決めてるんですね。

:そうです。ぜんぜん数字は違いますけど、仮に1000万だとして、業績がすごい伸びたから、全従業員といっても1100万円を30人で割るようにします。100万円上げます。だから、普通にいくと3万3333円だけ上がるんだけれども、要は取り合いですよと。

それを言ったら、だいたい相場観が決まるじゃないですか。その中で、「僕は従業員の中でもけっこうパフォーマンス出したから、2倍の6万6000円上がってもいいんじゃないか」みたいなのを出してきて、それをみんなガッて集めて。

それで強気に言ってくるやつと弱気に言ってくるやつがいるんで、執行役員陣と本当に12時間くらい吟味して、最後100円単位で詰めて。

(会場笑)

:100円単位で詰めるんだ。すごいなあ。

:それを全従業員に納得してもらうまで、1on1で話して説明するというのを、役員にマストにさせています。

評価制度をオープンにするメリット

:役員は今、何人いらっしゃるんですか?

:常勤取締役は僕だけで、社外取締役が2人、執行役員が2人です。

:執行役員レベルまでが、一緒にコミットしてる?

:そうですね。

:すごいですね。社外取締役の方、それのためにそのとき、拘束されるんですね。

(会場笑)

:社外取は、給料査定入らないです。

:じゃあ、執行役員と3名で。

:そうです。事業側を全部見てる執行役員と、開発を全部見てる執行役員。

:へえ、すごいですね。それで給料が「ずっと決まりませんでした」みたいなことはないんですか?

:それはないですね。これがすごいところで、それくらいオープンにしてやると、わりとズレないんですよね。僕らの感覚と、本人が持ってる感覚がズレなくて。

でも、やっぱり若手はちょっと安く出しがちだから、そのへんちょっと調整してあげようかというくらいの、大きい取り合いなんですけど。

あとは、部門間同士のあれが多いですね。プラットフォーム部門とサービス開発部門なんですけど。うちは半々なんですよ。要は、営業とかコンテンツ、マーケティングと、開発、デザインと、半々なんですけど。

「あのエンジニアがそれくらい上がってるんなら、プラットフォームのこいつもそれくらい上がっても…」みたいな。そこの取り合いでやっていくと、予算をどんどん超えていくので。

:(笑)。

:部門間でどう調整しようかな、みたいなのが多いですね。

:みんな給料見えてるんですか?

:いや、他のスタッフががいくらもらってるのかというのは見えないです。

:なるほどなるほど。

岩上:その交渉は見える? 「6万上げて」と言ったのとか。

:それは見えないです。結局、上がってきたときにだいたいわかるじゃないですか。相対的に見たときに、自分がどれくらい評価されてたかというのは、だいたいわかるんですけど、誰がどれくらいかというのはわかんない。

:なるほどなあ。おもしろいっすね。ありがとうございます。だんだん、ドロドロした話が出てきたところで(笑)。

(会場笑)