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フォトクリエイト大澤朋陸氏(全2記事)

自撮りや動画の普及はチャンスと捉える 写真ビジネスで勝負を続ける「フォトクリエイト」の強み

インターネット写真サービス、フォトクラウド、広告・マーケティング支援を3本柱に事業を展開する、株式会社フォトクリエイト・大澤朋陸氏のインタビュー。大澤氏は、「感動をカタチにしてすべての人へ」の理念のもとに、同社の事業の強みと時代の変化に合わせた取り組みを紹介しました。※このログは(アマテラスの起業家対談)を転載したものに、ログミー編集部で見出し等を追加して作成しています。

「感動をカタチにしてすべての人へ」フォトクリエイトの挑戦

──現在のフォトクリエイトさんの事業状況について教えていただけますか?

大澤朋陸氏(以下、大澤):当社の事業は、インターネット写真サービス事業、フォトクラウド事業、広告・マーケティング支援事業という3つの事業分野に分かれています。

1つ目のインターネット写真サービス事業は、創業当初からやっている、インターネットを通じて写真を販売するという、当社がカメラマンも手配して撮影に行くようなモデルです。

2つ目のフォトクラウド事業は、もともとやりたかった写真販売の仕組みをプラットフォームとして、写真館様、撮影事業者様に使っていただくというモデルです。

3つ目の広告・マーケティング支援事業は、写真販売プラットフォームに集まった会員様に対し、企業のマーケティングやプロモーションのお手伝いをするような事業です。

──3番目の広告・マーケティング支援事業については、2012年12月に白砂社長(現会長)にインタビューしたときにはなかった事業になりますが、詳しく教えていただけますか?

大澤:はい、プロモーションしたい企業とユーザーとのマッチングする事業です。例えば、当社は日本の9割のマラソン大会で撮影をしていますので、そのランナーの方に向けてプロモーションしたい企業が会員に向けてサンプリングを行う、メルマガを打つ、タイアップイベントを開くといったかたちで、当社のユーザーを活用していただけることで、企業からお金をいただくというビジネスモデルです。

学校のイベント写真は、いまだに手渡し注文販売

──フォトクリエイト全体としての方向性も教えていただけますか?

大澤:方向性としては、フォトクラウド事業に注力しています。とくに学校写真を扱う教育写真事業に力を入れています。学校は大学・専門学校まで含めると国内に8万校ありますが、インターネットで写真を販売しているのはまだ1割弱くらいしかありません。

ほとんどの学校は、廊下の壁に写真を貼って、封筒に書いて、お金を入れて、注文するという私たちの世代が子供の頃からのビジネスモデルを続けたままになっている。

これだけスマホを持っている人が多くて、ほとんどの人がもうネットで買い物もする時代に、写真は未だに学校に行って、貼り出しているのを選んで、封筒にお金を入れ、先生は集金するというモデルが変わっていません。

──その仕組みはまだ残っているんですね、驚きです。

大澤:そう、まだまだですね。当社はもともとこの教育写真事業をやりたくて事業を始めたのですが、2002年の創業当初はネットで写真を販売するということ自体が写真館様も学校も含め誰も理解できないという時代でした。

そのなかで、当社がリスクを背負って撮影まで行わなければ、普通の写真館様は使わなくなるだろうと思い、当社が直接カメラマンを手配して自らが撮影するというところからビジネスを始めました。

そしてネットで写真を買うということがある程度広まってきた段階で、当社の仕組みを使いたいという写真館様がいくつか出てきました。

彼らは、自分たちで撮影はできるけれども、ネットに詳しくないのでサイトを作れない。だったらフォトクリエイトのサイトを使いたいと言っていただけました。

そしてこれは当社がもともとやりたかった事業なので、賛同し自らが撮影にしに行くモデルから写真館様にシステムを使っていただくモデルに変えていきました。

営業についても、学校に直接行くスタイルから、写真館様に行き写真のネット販売の事例を説明するスタイルに変えました。

当社が直接撮影すると写真館様とバッティングするだけなので、学校に営業に行くのを一切ストップして写真館様と一緒に事業を作っていこうという協業モデルに変えていきました。

このモデルは写真の売り上げに応じて写真館様からお金をいただくので、売れなければ一切費用はかからず、写真館様にとってリスクが少ないです。

──現在教育写真事業のユーザー数はどのくらいになっていますか?

大澤:今は約3,300校の学校で使っていただいています。全学校数が約8万校なのでまだまだ足りないですし、ユーザー数はこれから増やしていかなければならないと考えているところです。

──学校別・地域別などユーザーの特徴としてはどんなものがありますか?

大澤:学校別では幼稚園・保育園での導入が多いです。エリアでいうと、人口が多いので首都圏と関西圏は多いですが、47都道府県すべてに参入しているので幅広い範囲から顧客を獲得できています。

(子供の生き生きとした瞬間を写真にして届ける、スクールフォト販売サイト「スナップスナップ」

自撮りとの「差別化」をどのように図るか

──創業当初から取り組んでいるインターネット写真販売事業についてはどのような状況でしょうか?

大澤:今は事業規模拡大というよりは、1枚でも多く買っていただけるにはどうすればよいのか、1人でも多くの人に買っていただくにはどうすればいいのかというような質のほうに注力しています。

ほかにも2015年の湘南国際マラソンから、マラソンを走ったその日の内にネットで写真を見られるようにするなど、新たな試みを実施しています。

──最近だと、自撮りとかGoProとか、写真を気軽に撮影するツールが増えてきています。写真撮影という市場における御社のポジショニングに変化は出てきていますか?

大澤:基本は、プロが撮る写真というところで差別化を打ち出しています。写真撮影に関してさまざまなハードが登場し、さまざまなシーンで写真に触れ合う機会が増えれば増えるほど、写真の大切さ・写真の持つ力というところに気づきやすくなり、写真が身近なものになってきています。

それは、より写真が欲しいという思いを強くするため、当社にとってもチャンスになっていると思います。

また、新しい写真の撮影の仕方や新しい商品について研究を続けています。例えばドローンや360度カメラなどを研究し、写真販売にも生かしています。

ただ、新たな写真撮影手法や撮影機器の登場は、単に学校行事で写真を撮って販売するというだけでなく、プロだからこそ撮れる写真を届けるという部分については、当社含め写真ビジネスの勝負になってきていると感じます。

動画の流行に対応する新たなサービス

──最近では写真だけでなく、動画も注目を集めていると思いますが、その点ではいかがでしょうか?

大澤:最近では写真と動画の境目がなくなってきているという印象を受けます。写真屋が動画を撮ったり、動画を撮っていた人が写真を組み合わせたりするというケースが見られるようになってきました。それは私たちも同様です。

私たちは「感動をカタチにしてすべての人へ」という理念で経営を行っています。「感動をカタチにして届ける」ということはすごく大事だと思っていますが、そのカタチは時代とともに変化するので、必ずしも写真というカタチではなくなってきているのではないかなと思います。

フィルムで撮っていた写真がデジタルで撮るものに変化したように、写真というカタチ自体がこれからどうなっていくかはわからない。

写真をプリントしない人も増え、スマホに写真を入れっぱなしという人も増えている。このようにお客様自身がどんどん変化し、写真の楽しみ方も変化しています。

その中で動画が登場してきました。しかも動画が4K、8Kと変化し、動画から写真を切り取るという動きが出てきた。そうした中で、私たちは画像解析を始めとする動画のことも考えた研究をやっていかなければならないと感じています。

──具体的に形にしたものはありますか?

大澤:2016年2月15日より、撮影した写真をスマホにかざすと、スマホ上で写真が動きだすというAR(Augmented Realityの略。拡張現実と呼ばれ、人が知覚する現実環境をコンピュータにより拡張する技術)を使ったサービスを開始しました。

写真をスマホにかざすと、スマホ上にその写真を撮影した6秒前からの動画が流れて購入画面に飛ぶというもので、料金は動画をスマホにダウンロードするごとに写真と同額(約100~200円)に設定しています。

今年の卒園式から始めており、卒園式の写真をスマホにかざすと、卒園式で“はい”と声を出している動画が見られるというものです。

幼稚園以外の領域にも展開していく考えです。例えば、マラソンの写真にスマホにかざすとゴールの瞬間が動画で流れるというようなものも考えています。

社長が変わっても、写真への想いは変わらない

──私が御社と付き合いを始めた頃(2006年頃)は、動画という概念がそれほどなかったのでずいぶんと進歩したなと思います。普通にガラケーを使っていましたしね。

大澤:その時期は写真がデジタルになってやっと、という感じでしたから。ネットで写真を買えますよ、と言われてもほとんどの場合、ネット環境がない人はどうするんだという反対の理由が返ってきた時代でした。今だとスマホでさまざまなものが買える。ずいぶん変わったなと思います。

──大澤さんが社長に就任した後の会社について、変化したなという部分があれば教えていただけますか?

大澤:やはり、組織というところが大きく変化したなと思います。白砂(前社長・現取締役会長)は、トップダウンで経営し組織を作り上げてきました。

しかし、正社員が約110人、アルバイトも含めて150人くらいの規模となってくると、社員それぞれが本当に組織のことを考えて動かさないと回っていけないようになってきました。

ですので、社員が100人を超えたくらいから、ボトムアップ的な組織作りに変えようと動いています。ただフォトクリエイトは、創業者であり、強烈なリーダーシップを持つ白砂の元でやってきた組織なので、そこを変えていこうというのはかなり大変です。

──トップが変わり、社風に変化はありますか?

大澤:社風自体は変えようとは考えていません。当社は理念をすごく大事にしている会社で、入ってくる社員も理念に共感して働いている社員がほとんどを占めます。

採用の際は、スペックなども見ますが、一番重視するのは何のために働いているのか、どこを目指しているのかというところにあります。そこはぶらさずやっていきたいと思います。

やり方は変わっても、写真を通じて感動の満ち溢れる社会を創っていこう、という思いは変わっていないので、社風が大きく変わるとは思ってはいません。その社風を作っていくためにどう自分が動くのか、いかに自分が主体的に作っていけるかというところをより強くしたいと考えています。

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