オバマ大統領の決断と勇気に敬意を表したい

安倍晋三氏:昨年、戦後70年の節目にあたり、私は米国を訪問し、米国の上下両院の合同会議において、日本の内閣総理大臣としてスピーチを行いました。

かの戦争によって、多くの米国の若者たちの夢が失われ、未来が失われました。その苛烈な歴史に改めて思いをいたし、先の戦争で倒れた米国のすべての人々の魂にとこしえの哀悼を捧げました。

そして、この70年間、和解のために力をつくしてくれた日米両国すべての人々に感謝と尊敬の念を表しました。

熾烈に戦い合った敵は、70年の時を経て心の紐帯を結ぶ友となり、深い信頼と友情によって結ばれる同盟国となりました。

そうして生まれた日米同盟は、世界に希望を生み出す同盟でなければならない。私はスピーチでそう訴えました。

あれから1年。今度は、オバマ大統領が米国のリーダーとして初めてこの被爆地広島を訪問してくれました。

米国の大統領が、被爆の実相に触れ、核兵器のない世界への決意を新たにする。

核なき世界を信じてやまない世界中の人々に大きな希望を与えてくれました。

広島の人々のみならず、すべての日本国民が待ち望んだこの歴史的な訪問を心から歓迎したいと思います。

日米両国の和解、そして、信頼と友情の歴史に新たなページを刻む、オバマ大統領の決断と勇気に対して、心からみなさまとともに敬意を表したいと思います。

痛切な思いを受け継ぐことが今を生きる私たちの責任

先ほど私とオバマ大統領は、先の大戦において、そして、原爆投下によって犠牲となったすべての人々に対し、哀悼の誠をささげました。

71年前、広島そして長崎では、たった1発の原子爆弾によって、なんの罪もないたくさんの市井の人々が、そして子供たちが、無残にも犠牲となりました。

一人ひとりにそれぞれの人生があり、夢があり、愛する家族があった。この当然の事実を噛み締める時、ただただ断腸の念を禁じ得ません。

今なお被爆によって、たいへんな苦痛を受けておられる方もいらっしゃいます。

71年前、まさにこの地にあって、想像を絶するような悲惨な経験をした方々の思い。それは筆舌に尽くしがたいものであります。

さまざまな思いが去来したであろうその胸のなかにあって、ただこのことだけは、間違いありません。

世界中のどこであろうとも、再びこのような悲惨な経験を、決して繰り返させてはならない。

この痛切な思いをしっかりと受け継いでいくことが、今を生きる私たちの責任であります。

核兵器のない世界を必ず実現する。その道のりがいかに長く、いかに困難なものであろうとも、絶え間なく、努力を積み重ねていくことが、今を生きる私たちの責任であります。

そして、あの忘れ得ぬ日に生まれた子供たちが、恒久平和を願って灯した、あの灯にちかって、世界の平和と繁栄に力を尽くす。それが今を生きる私たちの責任であります。

必ずやその責任を果たしていく。日本と米国が力を合わせて世界の人々に希望を生み出す灯となる。

この地に立ち、オバマ大統領とともに改めて固く決意しています。

そのことが、広島・長崎で原子爆弾の犠牲となった数多の御霊の想いに応える唯一の道であると、私はそう確信しています。