男性の育休取得はとても大事

小酒部さやか(以下、小酒部):私は男性の育休取得っていうのがすごく大事で、男性の家事育児の参加っていうのと、女性が働き続けることっていうのがセットで大事だと思うんですよね。そこが合わさって初めて生活が変えていける、働きながら子育てするっていうリズムが打っていける。

それで、宮崎(謙介)元議員の不倫の問題があった時に……。

境治(以下、境):そこ行くの!?

田中和子(以下、田中):(笑)

小酒部:そろそろ行こうかなと思って、話題を(笑)。

田中:(ショーン)川上さんの問題も出てきちゃったし(笑)。

小酒部:いやーもう大好きだったのに! 話ちょっと脱線しますけど、11月10日だったかな、厚労省がマタハラの被害者の速報値っていうのを出して、正社員が5人に1人、派遣社員が2人に1人っていうのが出たときに、私宛にいろんなメディアさんから取材が来て、一番最後の撮影が報道ステーションだったんですよ。

報道ステーション撮影した後、私のVTRとデータの後に、ショーン川上さんがズバッと言ってくれたんですよね。「これは経営者の怠慢だ」と。古館(伊知郎)さんから政府のせいにするコメントが出そうになった時に、ショーンさんが、「経営者の怠慢以外の何物でもないですね。海外に持っていけない恥ずかしい数字ですね」って言ってくれて、「はー、ショーンさん素敵!」って思ってたので……。

(会場笑)

宮崎元議員 不倫騒動による悪影響

小酒部:もっと食らったのが宮崎元議員の件だったんですけど。マタハラ(Net)を立ち上げたときもバッシングがすごかったんですけど、やっぱり案の定育休反対だっていう人には恰好のニュースで、セットで書かれてしまうんですよ。

「育休宣言する男性なんてろくな奴はいない」とか「仕事をさぼろうと思っていた」「マタハラされる女性も、されるほうに問題があるんじゃないか」って書いちゃう人がいて、それがまたYahoo!のトップになっちゃったりして。

:ほうほう。

田中:これも政治部記者が取り上げたらいいんじゃないですか?

:(笑)。

小酒部:思ったのは、これで宮崎さんの次はなかなか出てこないだろうなと。男性で育休宣言する政治家。

:言いにくいよね。

小酒部:そうですよね。誰も育休宣言しないこの間にですね、超党派とかつくっていただいて、フラットな立場で議論していただいて、この後議員たちの育休をどうしていくかってことを整えてくれたらな、と。

田中:思いついちゃった。やっぱりさっきの話に戻して、「育児休暇」じゃないんですよ。「休暇」だとお休みしたがりそうな方が来てしまうから。「育児研修」にする。

:(笑)。

田中:お休みじゃなくて、育児っていう体験をね。あの……本当に大変なんですよ(笑)。

小酒部:そうですよね。

田中:子供相手って。

小酒部:宮崎さんていうお名前をみんな知らなかったけど、彼が育休宣言したことで彼の知名度が上がって、皆こうやって集まって盛り上げた。その一番高いところから自分で落っこちて行ったって結果なんですけど。

:最初に不倫してたって聞いたとき、過去かと思ったんだけど、あっ最中だったのって(笑)。これ、なかなか言わないよなって。不思議だね、この人。

小酒部:私としてはこの後、これ1月で、この後2月に謝罪されて議員辞職されて、3月に国会でマタハラ防止がどうされるかっていうところがあったので、「何てことしてくれたんだ」と思って、野党の議員さんとかにお会いしに行って、「なるべく予算案が終わった後に話し合ってください」ってお願いして回ったんですね。

そうじゃないと今回の国会って会期が短かったので、会期をまたいでしまうとまた施行が延びてしまう。女生活躍進法(※正式名称「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」、正式な略は女性活躍推進法)の施行がそうだったんですよ。またいでしまって施行が遅れていったんですね。そうなったらムーブメントというのは途切れてしまうし。

そんなことを裏で私が地道にやっていた時に、保育園問題がばーっと出てくれたから、「うわーやってくれた!」と思って。宮崎議員の話を挽回するくらい女性たちがやってくれて、しかもうまかったと思うんですよね。

(民進党議員)山尾(志桜里)さんが言ってくれて、Change.orgの署名があれだけ集まって、すぐにそれを渡すシーンが撮れて、ニュースになっていったっていう、SNSの上手な使い方。

無言の賛同者をいかに取り込んでいくか

小酒部:このへんを境さんがどう思うか。

田中:いいのかどうか。

小酒部:SEALsみたいなやり方も1つだと思うんですね、デモとか。私たちマタハラNetはそういう風にはやっていかなくて、同じようにChange.orgさんの署名を使ったりとか。私が思ってきたのは、無言の賛同者をいかに取り込んでいくか。ここに一番使えるのはSNSだと思っていて。

SEALsが安保反対だって言って、反対の人もいるんだけども、あんな国会に叫びに行くほどではないっていう人は、どうしていいかわからないっていう人のほうが、パイがでかいと思うんですよ。そこをうまく取り入れていく方法の1つがChange.orgさんだったりとか、SNSの上手な使い方だと思うんですね。

:そうですね。国会前の動きを呼び掛けたご本人にお話を聞いたんだけど、非常にポリシーが明確になってて、国会でああいう発言があったからそれに対して、「保育園落ちた人誰だ」っていうんだったら、「私はここにいる」って言う、それに絞ってるわけですね。

「その後に何をするかっていうのは別に決めてないし、誰かが何かをするのは私たちは別に止めないし、誰かがやってくれるといいと思う」と。だから、自分の目標はそこにだけ(ある)ってことだし、とくに彼女自身が呼びかけたわけじゃないんだけど、彼女がお仲間とtwitter上で言い合ってたら、自然に皆が「じゃあ私も行く」って。全部自然発生。

言い出しっぺの人は、白いボードを持ってたんだけど、他に集まった人はカラフルなボードを持ってて。それはまた別の人が「『保育園落ちたのは私だ』ってボードをつくるので、これセブンイレブンで簡単にプリントアウトできるから使ってください」って。全然関係ない人なんだって。

そういう知らない者同士で連鎖反応をしていっただけなんですよ。だから、そこは多分すごく大事なところで。

現場にいたときに、ちょっとこの人はそういうグループやってるのかな、みたいな人がいて、「ちょっと皆さん集まって!」って言ったときに、言い出しっぺの人が止めたわけよ。「私はまとまった行動はしないつもりで呼び掛けたので、もし今から何かそういうことするならやめてほしいんです」って。

「私言い出しっぺだけど、こういうこという権利ないかもしれないけど」ってうまく言って、その人も「ああ、じゃあやめておきます」みたいなね、ことになったんだよ。

おもしろかったのは、そういういい加減な時間が過ぎていったんだけど、記者さんがそれぞれにインタビューしていって、気持ちはわかったと。最後のほうで、新聞のカメラマンの人が「国会をバックに並んでもらってもいいですか?」って言って(笑)。そういう写真がとれたわけね。

それはそれで記号的でわかりやすくていいのかもしれないけど、それをもって、右翼系の人たちは「コントロールしてるんだ」「こんなに揃っているのはおかしい」とか言ってるわけね。あれがよかったのかなって気がしてる。

デモは過激な人も入ってくるという問題がある

小酒部:デモの難しいところは、その温度感で終わってればいいと思うんですけど、そこに過激な人が入ってきて、この「保育園落ちた、日本死ね」をムーブメントに、安部反対だとか安保反対だとか、そういうことを言っていこうとになると、おかしいことになってくると思うんですよ。

:そう、僕もそこだけはそうならないほうがいいと思ったからブログも書いたんだけど、今のところそうなってないし。

小酒部:そうですね、そこで止まってほしいと思うし、切り分けてほしいと思うんですよね。

:皆、そういうことすごく意識をしてるんだと思うんですけども、署名を呼び掛けた人も話を聞いたんだけど、署名を集めてそれを山尾議員に渡すとき、「自分は事情があってカメラに写れないので」っていうので、あまり前に出てこなかったの。最初のほうだけ、皆の後ろにいてそれだけだったのね。

彼女もね、あまり何か押し出したりは全然しなくて、いろんな意見を聞いて、自分も参加したいって集まってきた普通のお母さんたちが結局メディアに出て行った。その辺のバランスが結果的にすごく取れてて、いい流れができたんですよね。

そういう感じだから、皆「私もわかる」って共感しやすかったのかなって。

田中:すごく日本的だな、と聞いてて思った。

:あーなるほど。

田中:欧米系の言語の考え方の軸はI thinkで私はこう思いますとか、I want to doで「私は何がしたい」だと思うんですね。でもそうじゃなくて、Iを消して、総数の中での発言としてやってくれるなら、やりますみたいな、すごく回りくどいやり方なんだけども、それが結果社会に全部受け入れられていく、っていう。

:そうですね。

デモや過激なことはやらないと決めていた

小酒部:私、(マタハラNetを)立ち上げるときすごく気にしてきたのが、マタハラという問題なんであるかというと、それでいいと思っている加害者の思考の人がいるからこの問題があるわけで、「マタハラやめてください」って言うことに対して、バッシングすごいだろうなって覚悟を最初からしてたんですね。

最初すごい少人数で立ち上げたんですね。立ち上げたときから私はメインストリームに行くことはみていて、安倍さんと並ぶ、安倍政権に呼ばれるようになる。

田中:かっこいい~(笑)。

小酒部:本気だったんですよ! 本気でマタハラっていうものを議論するんだと思ってて。そのためにどうするかというと、どこの政党にも属さない、過激なことはやらない、ただでさえマタハラって言ったらバッシングされるんだからデモはやらない、っていくつか決めていったんですよね。

それをやっていったことによって、政府から呼ばれるようになるとか、政治家が振り向いてくれる、意見を聞いてくれる。やっぱり過激なことをやっちゃうと、そのときバーンとニュースになるかもしれないけど、続かないんですよ。法律にもつながらないし。

実を取るためには、いかに無害ですよ、別に攻撃的なことしませんよ。でも、こうしてほしいと思いますよ、法律こういう風に変えてほしい、こういうのつくってほしいっていう風に言うと。そういうときに、初めて無言の賛同者がついてくれるんですよね。

過激なことをやっちゃうと、過激な人しかついてこなくて、過激なままに空中分解して終わっちゃうっていう。ある意味、1つの日本のムーブメントのやり方っていうのが、少しできてきたのかなぁって。

スウェーデン、北欧がどうやって男女平等やっていったかっていうと、そういう市民運動が起こったり。フランスでも、ヒッピーの運動とかそういうのが起こってやっていったって。でも日本の場合、日本人はやっぱりそういうの苦手で、どちらかというと、静かにパイを取っていくのを見せるっていうのが日本には馴染むのかなと。

田中:ママの立場からすると、村であり島であるという文化の中で、子どもの学校の中でも人と違ってるっていうことを気にするのよね。

小酒部:あー。

田中:PTAでも変な発言をすると、その後どうなるのかっていうのがとっても不安になってくる。

:あー。

小酒部:結局、署名運動して署名出したときに、ママさんたちが着けてた子供だっこするヒモ、私ちょっと子供いないんでわからないんですけど。「あれがすごいブランドだった」って。

田中:あ、あれか。エルゴ。

小酒部:「だから、そんな保育園入らなくたってリッチな人たちのくせに、だまされちゃいけない。この女性プロ集団に」みたいなことが書かれてて、なんじゃそりゃ、みたいな。

:ひどいよね……。

小酒部:そんなところ、って。

:高いっていったって2万円ぐらいなのに、何年も使うんだからいいじゃん、別に。

小酒部:幸福のポジションじゃなくて、不幸のポジションに人を引きずり下ろして合わせようとする、このいじわるさみたいな。

マタハラ問題 (ちくま新書)

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