高速増殖炉は普通の原子力発電よりも難しい

山田太郎氏(以下、山田):今日はそういう意味で、公務員改革も崩れたし、それからですね、この脱原発も崩れてしまったいうことで、なんかこれでいいのかなって思うところはすごくあるんですね。

ちょっと脱原発の話に関しては、少し話をしとく必要があると思うんですけども、まずですね、たぶん今、脱原発とか核燃サイクルが今どうなってるかってわかんない人もいると思うので、ちょっと簡単にだけ触れておきたいと思うんですね。

今これまで原子力発電所が動いてましたと。何を燃やしてるかというと、ウラン235というのを燃やしてるんですね。ただウランのなかには、燃料のなかにはウラン235と238が混じっていて、235が3パーセントに対して、238が95パーセントぐらい入ってるんですよ。

で、1パーセントも濃縮して3パーセントにして、235を燃やすんだけど、結局、238が余っちゃうと。で、238が何かっていうと、いわゆる劣化ウランっていう燃料にはならないものなんですよね。

この95パーセント余っちゃった劣化ウランをなんとかエネルギーにできないかということで、これに中性子を1個足して、プルトニウム239っていうのを作るんですよ。そうすると、今度はプルトニウム同士ではいわゆるエネルギーになってこれが燃えるということで、これが高速増殖炉と言われるものなんですね。

つまり、劣化ウランと言われてた238をプルトニウム239にして、そのプルトニウムを235のように燃やすのが、いわゆる高速増殖炉になったんですよ。

その夢のサイクル、なんでかっていうと、ものすごい余っちゃってる劣化ウランがまたエネルギーとして復活するということで、2000年分ぐらいウランが余るというか使えるというような計算なんかもあって、これを夢の高速増殖炉ということで研究してきたんです。

いわゆる、もんじゅっていうのが有名で、1995年にですね、実はもんじゅがナトリウム漏れ事件っていうのを起こしちゃうんですね。たしかに、プルトニウム239がうまく高速増殖炉として使えれば、たしかに夢のサイクルというふうに言われたんだけど、実はこれ非常にですね、普通の原子力発電より難しい、高速増殖炉っていうのは。

例えば、普通の原発のウラン235であれば、水を入れるだけで制御できるんですよ。だから、実は235の棒は水のプールに入ってるだけなんだよね。だけど、プルトニウムになっちゃうとお水だけではダメなので、金属ナトリウムの中に入れてるんですね。この金属ナトリウムというのは猛毒なんですよ。

で、これが前回もんじゅでナトリウム漏れっていうのが起こっちゃって、このナトリウム漏れがもう抑えられない、漏れちゃうと。人間が今の、例えば、震災のほうで福一で起こっているような状況下でなかなかコントロールすることができないということで、非常に技術が難しいということで、もんじゅの再開の目処が立たない。

プルサーマル計画は夢のシステムじゃない

今度はもう1つ、何が起こったかっていうと、プルサーマル計画っていうのを考えるんですよ。というのは、作っちゃったプルトニウム239をなんとかしなきゃいけない。

プルトニウム239を持っているということは、原爆を作るんじゃないかっていう疑いがあって、実際にIAEAのなかで日本だけが非核国なのにもかかわらず、プルトニウムを持つことを認められている。

これはなぜかというと、「被爆国だから核は持たないだろう」ということを前提として持ってるんだけど、周りから言われているので、それでこのプルトニウムが45トンぐらいあって、4000発の核が作れるぐらい日本にはプルトニウムがあると言われてるんですけど、これをMOX燃料に変えましょうと。

MOXっていうのは何かっていうと、プルトニウム239のままじゃなくて、ウラン235と混ぜて、もう1回使えるようにしましょうと。これがプルサーマル計画。で、混ぜると今度は、高速炉じゃなくて、普通のいわゆる原発でも使えるようにしましょうと。ただ、1回きりしか使えないので、これはぜんぜん夢のシステムじゃないんですよ。

MOX燃料にするっていうのは、どちらかというと、余っちゃってるプルトニウムを処分というか、疑われないようにするためにMOX燃料にしとくということでプルサーマル計画っていうのをやってるんだけど、これもうまくいかないと。そもそも、全世界ではプルサーマル計画はやめの方向なので、日本だけと。

ということで、これがいわゆる核燃サイクル計画ということで、イデオロギーはちょっと置いといてですよ、発電ができるんであればリスクはあるけれども、それは科学技術をもってコントロールしてやるということでいいんだけれども、実際にはこれは再開の目処が立っていないと。

六ヶ所村はもう核のゴミがたまっている

先ほども言いましたけれども、じゃあ結局ですね、維持のためにどれぐらい金がかかっているかというと、さっき言ったプルサーマルだけでも、3000億円ぐらい。発電をしなくても、実際にはコントロールするために使ってたりとか。

先ほどのですね、高速増殖炉の件からすると、これも3000億円から4000億円ぐらいお金を使っちゃってるということで。結局、数兆円これまでも使ってきたし、あと実際にですね、プルサーマルまたはもんじゅを実施するまでに、2、30兆円かかるんじゃないかと言われていてですね。

で、もしこれが失敗してしまえば……。あともう1つはですね、けっこう核プールがいっぱいになってきちゃっているというところがありまして、95パーセントぐらいまで六ヶ所村はもう核のゴミがたまっちゃっていると。

各原発のそれぞれいわゆる一時保管している所も75パーセントぐらいたまったかたちで、今、原発が止まっている状況なんだけれども、これがいわゆる出口がないゴミ箱っちゅうか……。

坂井崇俊氏(以下、坂井):トイレがない。

山田:トイレのない……と言われているんだけれども。

遊佐:はい。

山田:つまり、この核燃サイクルができないと、そのさきが始まらないんだけど、これ自身が見通せないと。

で、政府はわりと強気で、政府のなかでも「見通せないし、この計画をやめようじゃないか」という議論が、実は2004年にかなり喧々諤々行われたんだけど、これをやめちまうとですね、電力会社としても責任になると。

で、この金は電力会社にとっては痛くもかゆくもないのは、実は原価としてですね、要は電力っていうのは総括原価方式っていうのがありまして、かかっちゃった原価に利益を乗っけて電力料金として請求しているので、実はですね、なんぼでも電力会社はですね、このへんの高速増殖炉の研究っていうのはやれちゃうんですよね。

遊佐:へぇ。

「脱原発をやらない」と言ってるのと等しい

山田:だから、リスクの問題はどうするかなんだけど、経済な側面から見た場合には、とてもじゃないけど、これを維持するというほうが難しい状態にあるというふうに思うんですけれども、さてどういうことかと。

ということで、脱原発っていう考え方は、もともと震災で原発が止まっちゃったんだけど、それ以前から、それだけお金がかかっちゃって、実際に核燃サイクルもできないんであれば、このまま原発を中長期的に維持していくのは難しいだろうと。

ただし、電力が不足するという状態を起こすのはまずいから、できるだけ最小限のいわゆる原発を動かして、40年にわたって廃炉にしていく。その間、ほかのものを見つけようと。だから、わりといきなり停止ではなくて、現実的に中長期的にやめていこうっていう考え方を取る考え方、折半的な現実路線っていうのかな、だったんですね。

ただ、このプルサーマルであれ核燃サイクルであれ、これ自身は将来的にはやっていくっていう意味ですから、基本的に。そうすると、これは脱原発とは逆の方向なんですよね。

遊佐:推進ということですか?

山田:そうなんです。そのままなんですよ。だから、これをそのまま賛成してしまうっていうのは、脱原発をやらないって言ってるのと等しいんですが、議員はわかってて賛成しているのかよくわからんということでして。

もちろん原発政策、今日は問いません。賛成の人も反対の人もいるでしょう。ただし、僕はね、政治家っていうのは守るべき約束とか、政策があるよって思ってまして、3つあると思ってるんですよ。

1つは、最重要政策。最重要政策っていうのは何かっていうと、その人がもっとも大事にしたい政策はなんなのか。僕だったら、例えば、この番組でもずっとやってますけど、表現の自由とかね。こういうものが、僕にとっては最重要政策なわけですよ。あるいは児童養護の問題であったりだとか、まあ、やってるわけですね。

次が、重要政策って言われるものがあって、これが政党等の公約。それによって、とくに比例なんかはそうだけれども、政党のマニフェスト、あるいはアジェンダって言われるものでもって立候補した、それで認められたわけなんだから、それに準拠しないっていうのはまずいよね。

それからもう1つは、国政政策っていうのがたぶんあると思ってて、これは何かっていうと、立候補するときには公約ではなかったけども、世論を二分するような大きな国の進路。

例えば、機密保護法だったりとか、それから安保法制なんかもそうだと思うんですね。例えば、機密保護法とか安保法制なんていうのは、僕が立候補したとき、2010年にはまったく議論としてはなかったわけで、そのあとから起こってきたものなんですよね。

ということで、最重要であれ重要であれ、国のいわゆる国政政策であれ、やっぱり議員は選挙を経て議員をやっているわけですから、まず最重要政策っていうのは当然……。最重要政策がないんじゃないかっていう議員もいるんだけど。

坂井:(笑)。

とくに脱原発の問題についてはきっちり議論すべき

山田:少なくとも重要政策と言われるものには依拠してるわけで、少なくとも三極と言われる人たちは公務員改革と行政改革、それから消費税の問題、とくにこの脱原発の問題ですよね。これについては、きちっと議論をする必要があるじゃないかなと。

坂井:約束ですもんね。

山田:ということで、僕はですね、この重要政策と言われるものを捨ててでも……っていうことは、メディアが厳しく問うてもいいんじゃないかなと。ある意味で、お金にうんぬんというのも大事ではありますよ、個人の支出という意味では。

だけど、やっぱり議員は政策を実現してなんぼのもんですので、そのときに国民に対してどういう公約で。そうじゃないと、国民はなんで選んだのかっていうことになっちゃうから。これは非常に重要で。

で、誤解しないでもらいたいのは、別に僕自身も脱原発の立場に立ってるんですけど、別に脱原発の人じゃなくて推進の人でもいいです。即廃止っていう考え方の人でもいいです。だけど、その議員がもともと何を約束していたのかっていうことですよね。そのことがやっぱり問われるということで。

いや、別に推進をしている人は、別にどんどん推進っていうのを押せばいいと思っているし、ただ脱原発を言った人はなんだったのかっていうことを、もうちょっと議論するべきなんじゃないかな、というふうに思ってます。

遊佐:先ほどコメントで質問が来ていて、「外国はどうやって補っているんですか?」と。

山田:何を?

遊佐:日本が脱原発をしたとして、日本は外国みたいなシステムでは生きてはいけないのか、っていう質問だと思います。

山田:ええと、現実的に言うと、原発依存度っていうのはどの国にもあるんですよね。ただ、ドイツは「脱原発をしますよ」ということで、基本的には今は原発の依存度っていうのはどんどん下げていっていると。

ただもちろん、要は火力とか、自然にやさしいかと。だって、原発が自然にやさしいかどうかって議論もあるんだけども。

坂井:一応やさしいっていうことになってますよね。

山田:それはCO2を出さないっていう、COXを出さないっていうだけの話なんですけども。そういうふうに、エネルギーミックスをどういうふうにしていくのかっていうことは、各国が悩みながらやってますよね。

だから、脱原発路線っていうのは基本的に、即原発停止ではないんですよ。その依存度を下げていくべきかどうか、ということなんですね。

現実に合わせながら議論をしないといけない

遊佐:そこが重要になってくるんですね。なんか私、今の話を聞いててよくわかってなかったんですけど、どんどん依存度を下げていくっていう言葉を聞いて、やっと納得しました。

山田:どういうこと?

遊佐:脱原発っていうのは、ほんとにちょっとずつ原発を停止していくっていう、各箇所にある原発をどんどん停止していくっていう意味かと思ってたんですけど。

山田:停止していくのよ。

遊佐:あ、停止していくんですか。

山田:廃止していくんだけど、明日突然やめちゃうっていうのは難しいから、トータルの経済の状況とか電気の使用料とかをきちっと考えたうえでどうしていくのかっていうこと。

で、(コメントにて)「原子力よりも二酸化炭素のほうが問題だよ」っていう人もいるんですけど、原子力もですね、私に言わせるとオンカロ問題じゃないんだけど、これは捨て場所が問題であれば、これが自然放出されると大変なことになるので。

必ずしも原発なのか二酸化炭素問題なのかっていうのは二律背反でもないと思うし、二酸化炭素っていうのは固定化の技術だったりとか、それに依存しない形っていうのもいくつかあるので、そういう道を探っていく必要があるんじゃないかな、というふうには思っています。

ただ、逆にイデオロギッシュにやりたくないので、私はあらゆる科学的な可能性については、最初から「これはダメだ」というふうには言いたくないし。

もちろん放射線っていうのはああいう事故が起こったからすごく多くの人は毛嫌いしてるし、放射能って聞いただけで「ダメだ」って言ってるけど、だけど、治療にも使っているものだったりとか、自然界でも放射線っていうのは、例えば、石灰石とかすごく発してたりもするので。

コントロールがもし本当にできて、経済的に採算が合うんであれば、イデオロギーの問題は除いたうえで、検討の余地は僕はあると思ってはいたんですが、現実的には経済的にも合わないし、リスクとしても極めて高いし、現実的に30年近くもやってきてできてないなかで、あと何十年やるんですかね、ということを現実的にもう考えるときに来てるんではないか、ということなんですね。

だから、あまりすぐ、僕は政治の世界で、この番組でもさんざん言ってきたんですけど、例えば安保に関しても、実際にはね、いわゆる国防っていうのは必要なんですよ。

だけど、じゃあ、それがいいとか悪いとか、すぐ戦争とかしてないとか、すぐイデオロギーの二律背反の、それこそ白組紅組みたいな議論をしてはいけないと。何を結果として取らないといけないのかっていうことを、やっぱり議論しないといけない。

で、平和で安定するっていうことが大事なんであって。たしかに、いろいろ考え方はあると思うんですよね。

軍事的に、それこそ核を持つことがいわゆる軍事緊張で均衡するんだったら、まあ北朝鮮の言い分なんだけど、そういうことでの平和安定っていうことを主張する人もいれば、そういうことを全部なくすということが平和につながるんだと(主張する人もいる)。

いろんな議論があるから、それは最初からどっちがいいということよりも、現実に合わせながら議論をしないといけない。この電気に関しても、やっぱり電力をなしでっていうのは無理なので、現実的に。であれば、じゃあ、その電気っていうものを……。

省エネっていうのも1つ、エネルギー効率を高めるっていうことは前提としてあったとしても、どういうエネルギーミックスでやっていくのかっていうことは、中長期的に考えないと。これ借金を残す話とたしかに同じで、今の我々が電気を享受して、たくさんの核のゴミを次の世代に残していっちゃっていいんですかね、ということだと思うんですね。

メタンハイドレートは採算性が合わない

もちろんエネルギーも最近いろいろ……なんとかサンドだとか、いろいろ出てきたリとか。

坂井:オイルサンドですね。

山田:オイルサンドだったりとかシェールガスというのも出てきていますので、もっとエネルギーミックスに関しては研究を続ける必要が……。

(「次はメタンハイドレートだな」というコメントを受けて)メタンハイドレートだって。メタンハイドレートもたしかに口で言うほどそう簡単ではなくてですね、かなり地中深く埋まっていてですね、採算性が合わない。

ただ、採算性が合わないんだったら、原発だって採算性が合わないなかでやってきてるんだから、フェアにもうちょっといろんなエネルギーミックスを考える必要があるなと思うんですが(笑)。

やっぱり電力会社、電事連と言われる人たちがいわゆる既得権益になっていて、たしかに電力供給っていうのは今まで独占状態だったから、彼らに都合がいいようなエネルギーミックスっていうのを考えてきて、我々は総括原価方式のなかで電気を強制的にというか、買わざるをえなかったと。これが電力自由化によって変わるかどうか、ということなんだというふうに思ってます。はい。

遊佐:はい、ありがとうございます。

山田:ただ言いたかったことは、なんとなくこうなると今日は原発の話みたいになっちゃったんだけど。

坂井:(笑)。

山田:そうじゃなくて、政治家っていうのは政策とか公約に対してどういう立場であるべきなのかということですね。僕もさんざん批判されたし、批判は甘んじて受けなければならないと思いますが。

例えば、某おおさか維新さんに行くときにどうしてやめたのか、っていうのが1つそれの理由だったわけで、表現の自由の運動ができないということで、本当にいいのかっていうのが問われたわけだし。

じゃあ、それで……あれはあるんですよ。いったんは乗り越えて当選したほうが、当選の確率が高いんだったらそうやるべきだ、っていう現実路線を言った人もいるかもしれないけれど、でも、自分にとっての最重要政策をいったんでも捨てて政治家を続けるべきなのか、っていう議論もこれは問われたと思います。

そうであれば、どういう判断をしたのかっていうのは、僕自身はですね、そういう政治家としての矜持として、今回はそういう決断をした。もちろん、それについてはいろんな批判もあったし、それはもちろん甘んじて良くなかった面もあったと思いますけれども、そういうふうに思っています。

ただ、本当に今回、公務員改革、それから次の脱原発ということをここまでないがしろにしてしまって、選挙公約ってなんだったんだろうなっていうことは、非常に考え深げだと思いますよね。