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「北欧、暮らしの道具店」に聞く、ファンに愛されるブランドのつくりかた(全7記事)

読者が嫌いなのは“嘘と退屈”--「北欧、暮らしの道具店」の記事広告はどうして最後まで読まれるのか

日用品やファッション小物など、くらしにまつわるさまざまなアイテムを販売する人気サイト『北欧、暮らしの道具店』。同社が、2015年から始めたのが「BRAND NOTE(ブランドノート)」という記事広告コンテンツだ。5月9日、「ファンに愛されるブランドのつくりかた」をテーマに開催されたイベントに、同サイトを手がけるクラシコム代表の青木耕平氏と“ゲリラPR”で知られる砂流恵介氏が登壇。いったいなぜECサイトが記事広告に取り組むのか? 「BRAND NOTE」誕生の背景を聞きました。

“記事広告の専門集団”として

砂流恵介氏(以下、砂流):ありがとうございます。いいお話をいただいた分、時間を押してしまったので、ブランディングの話はそろそろ。このままいくとそれだけで終わってしまうかもしれないので、話題を変えますね。

最近、広告を始められたのを知っている方っていらっしゃいますか? メディアに近いのかもしれないですけど、その広告をされている部分についてお話を聞きたいんですけれど。

青木耕平氏(以下、青木):去年(2015年)の夏くらいから広告ビジネスを始めまして、おかげさまで我々の制作能力いっぱいくらいの受注を、すでに秋口くらいまでいただいているという状況です。広告としては、いわゆる記事広告というものを販売しています。「BRAND NOTE」というタイトルで主に国内のナショナルクライアント様のブランドについてのコンテンツを作ってご提供しています。

このビジネスをやることになった一番のきっかけというのは、そもそもよく考えてみれば、「僕らは記事広の専門集団じゃん」と思い至ったんです。つまり、物を売るためのコンテンツを作るということを主たる仕事としていて、それを自分たちで売るのか、他者の販売をアシストするのかは結局リンク先の問題でしかないじゃん、ということと。

一般のメディアさんと違って、我々の場合、そのコンテンツをもって実際に物が売れなかったらここまで食ってこれなかったという事業者なので、物が売れるコンテンツの作り方に精通している記事広の専門集団という見方もできなくはないよね、という。

実は低いコンバージョンレート

先ほどからありますように、いろんな記事がある、コンテンツを楽しんでいただく、ということと裏腹で、我々ECサイトとしてはコンバージョンレートが異常に低いんです。

これはまったく許容していて、コンバージョンレートは下がってもいい、それを凌駕するだけ人が来てくれればいいということです。ビジネス自体は10年間、ほぼ毎年1.7倍ずつくらい伸びてきているので、ビジネスとしては伸びているんですけど、実はコンバージョンレートとしてはすごく低いと。

「1,200万PVもあるのに、このくらいなんだ」ということですが。来て楽しんでいただくだけで収益に結びついていく、というマネタイズの方法も持たなければ、長期的にサステイナブルではないなという思いがありました。物販と広告の収益を合わせていけば、今のやり方をどんどん発展させていけるだろうなという思いもありました。

その上で、もともと自分たちの強みとしては物を売るためのコンテンツを継続的に作っていくというノウハウがあります。これを企業のマーケティングソリューションとしてご提供できないかということで始めました。

砂流:めちゃくちゃ丁寧に作られてますよね。

青木:そうですね。頑張ってます。

手間を惜しまず丁寧に作り込む

砂流:プロがやってもメディアの関係の方が見たら思うと思うんですけど、そこまで作りますかというくらいまでやっているのがすごくて。みなさんで話し合って、こうやろう、ああやろうというのをかなり練られるんですか?

青木:そうですね。最初は30分くらいのブレストで方向性が決まって。

砂流:そんなもんなんですね。

青木:一人の担当者が作って、その担当者が期間内にコンテンツを作っていきます。もちろん間にディレクションが入ったりというやり取りはありますけれども。

いろんな考え方があると思うんですけど、コンテンツを見ていただくと、ほかのWebメディアさんの記事広告と比べても相当に手はかかっていると思います。物販をするときでもそうですけど、我々で買うよりも楽天市場とか、アマゾンさんで買ったほうがポイントはたくさん付きます、早く届きます。場合によっては少し安く買えるということがありえると思うんですけど。

我々は一切セールをせずに、全部の商品を正価で売っているんです。だからこそできるサービス・体験というものがあります。

それは、マージンがなければ投資ができない、それだけのものができない。今まで、自分たちが作ったコンテンツできちんと物が売れる、課題が解決できないと食ってこられなかった事業者として考えると、課題に取り組んで、その課題を解決することに全力を尽くしたいと思っています。

そのためには必要な収益があると思っていて、記事広告でいうと今は月間で2社さんしか受けられないというくらいにコストをかけてやっています。そういう希少性や充当具合を見ていただくと、けっしてスケールしてザクザク儲かるような世界観というよりは、しっかりと対価をいただいてその課題を解決するために全力を尽くすという意識でやらせていただいています。

「ちゃんとしたものをやりたいんです」

砂流:広告で儲けていそうなイメージ、あまりないですもんね(笑)。そういう意味では、月間2つというのはすごく納得できる部分でもあります。

青木:もちろんそれは制作リソースの逼迫で2つしか受けられないという状況なので、順次拡充してもう少しできるようにしなければいけないなとは思っています。

ちゃんとしたものをやりたいんです。ちゃんとしたものをちゃんとした値段で売れないならやめたいんですよ。なにがなんでも広告の事業を起こす必要はなくて、物販で十分収益が出ているので、この広告事業が立ち上がらないと困るということはまったくないんですよね。

砂流:そうですよね。

青木:我々にできることがあって、世のなかにニーズがあって、そこに事業機会がある。きちんとしたお仕事をきちんとした対価を持ってやらせていただける状況があるのであれば、しっかりとやっていきたいです。

逆に、「その値段じゃ合わないよ。誰も買わない」となれば、やめるしかないという感じですね。ディスカウントしてでも仕事を取りたいということはないですし、安くやったからパパッとやろうという感じもまったくなくて。とにかく、受けた仕事に対してしっかりと自分たちで物を売るときと同じ情熱を使って広告事業もやりたい。

その広告のコンテンツが、色眼鏡をかけずに見たら普通のコンテンツよりおもしろいというものを作りたいと思っています。実際に読了率も広告のほうがよかったりということもあって。

砂流:すごいですね、それ!

クライアントからも大好評なアンケート

青木:平均読了率です。広告の記事のほうが、力の入れ方も半端なく入れているので。広告だからおもしろくなくてもしょうがないとは思っていないということですね。

砂流:最後まで読むだけで満足されているんだと思うんですけど、そもそも読了率が高いってめずらしいことじゃないですか。ほとんどの記事なんて途中までしか読まれなかったりする確率が高いし。そのなかで読者の方の満足度とクライアントさんの満足度ってどんな感じなんですか?

青木:読者の方の満足度は、そういうデータとほとんどのケースで記事の末尾にアンケートフォームを付けているんです。ブランドに対する見方がどういうふうに変わったかとか、フリーワードのコメントを入れられるところを入れていて。いろんなご意見をいただきます。最近ですと、花王のアタックというクライアントさんの洗剤のブランド広告を作らせてもらったりもしたんですけど。

そういうなかでも非常にたくさんのアンケートがノンインセンティブで集まります。自由記入欄もびっちり埋まっているので、非常に興味を持って読んでいただけていてリアクションもあるということで、一定の評価はしていただいているんだと思います。

もちろん、広告をやるということに対していろんな見方があるかと思いますけれど、いずれにしても非常に関心を持って見ていただけています。クライアント様からご評価いただいているポイントは、それぞれいろんな指標を見ていただいていると思いますが、やはりアンケートは非常に喜んでいただけていることが多いですね。

砂流:そうですよね。最後まで読んでアンケートを書いていること自体、すごいことですもんね。

青木:だいたい、300、400くらいは、1週間くらいで集まります。いろんなところに広告を出してこられた企業の担当者様からしても、新鮮な経験ではあると思いますね。

読者が嫌いなのは「嘘と退屈」

砂流:事業者からするとビックリします。もし、広告を見られてない方は、なんの思いもなく……、すみません、すごく失礼なこと言いますよ。今、記事を読むとここの話が聞けないので、記事をサーっと流していただければいいんですけど、けっこうな長さがあるのをわかっていただけると思うんですよ。スクロールするだけで。

それを全部読まれて、アンケートを書かれている方が300、400名いるということを踏まえてお話を聞いていただけると、すごさがわかると思います。

青木:僕らが理想を掲げて、それができているかどうかはお客様に評価していただくしかない問題なんですけど。我々としては、その企業様の問題を解決するということと読者に喜んでいただくということは、並列し得ると思っています。

砂流:そうですね。お話を聞いてると並列しますね。

青木:ご提案するときによく申し上げているのは、「広告っぽくなるので、商品とか会社のことはちょこっと書いてくれればいいんです」みたいなことをご相談の段階でいただくことがあるんですけど。

僕らとしては、「読者は商品や商品の背景、会社に興味があるはずです」。だからこそ、テレビや雑誌で会社の潜入特集とか工場の様子がコンテンツとして魅力があって、視聴率がつくわけです。「読者が嫌いなのは、商品や会社の情報じゃなくて、嘘と退屈です」と申し上げているんですね。

本当におもしろくやれば、しっかりと商品や会社のことを語ってもいいんじゃないかなと。そういう気持ちで全部の仕事をしたいと思っています。

砂流:そうですよね。オフィス訪問の記事をずっと書かせていただいていたんですけど、オフィス訪問なんてまさに会社の紹介しかしてないですもんね。それでもすごく読まれるんですよ。

『カンブリア宮殿』のすごいところ

青木:僕らは女性向けの『カンブリア宮殿』みたいなコンテンツを作りたいといつも思っていて、『カンブリア宮殿』って想像してもらうとわかるんですけど、1時間その会社の社長が自社のいいところを語りまくっている番組じゃないですか。

砂流:そうですよね(笑)。

青木:普通に考えたら、見てられないはずなんです。

砂流:『プロフェッショナル 仕事の流儀』みたいに苦悩とかしないっすもんね(笑)。

(会場笑)

青木:だけどあれは、村上龍さんと小池栄子さんという視聴者の立場から見て、フェアな見方をしてるんだろうなって。ある程度、信頼できる方が聞き出しているから、しゃべれるんですよね。社長が出てきて一人で語ってたら、政見放送みたいになっちゃうんで(笑)。

そういう意味では、メディアとして、その会社の有り様とか商品の有り様のおもしろいところを聞き出してあげるから語れる、という構造は必ずあるはずだと思っています。僕、『カンブリア宮殿』はけっこう好きな番組で。商品のことや会社のことをコンテンツとして読むということは、それがペイドであろうがなかろうがフェアに見たら楽しめるはずではないかと思っています。

ただ、ペイドだからってことで、色眼鏡で見て読んだらどういうふうに見えるかどうかはそれぞれだと思いますけど。我々としては、「色眼鏡で見ずに読んだらおもしろかった」と、「広告だと思って読んでもおもしろかった」と思って読んでもらえるものがなんとかできないかと一生懸命考えて、毎回できているかどうかはご判断いただくしかないんですが、そういう気持ちでやっています。

砂流:ありがとうございます。

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