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「北欧、暮らしの道具店」に聞く、ファンに愛されるブランドのつくりかた(全7記事)

毎日訪れるファンが約7割~数字が示す「北欧、暮らしの道具店」の特異性

食器、日用品、ファッション小物など、くらしにまつわるさまざまなアイテムを販売する『北欧、暮らしの道具店』。ECサイトでありながら、商品の使用風景や、レシピ、スタッフのコラムなどを通して日々届けられるその世界観のファンは多く、メディアとして大きく存在感を増しています。下北沢B&Bにて、「ファンに愛されるブランドのつくりかた」をテーマにイベントを開催。『北欧、暮らしの道具店』はどのような哲学に基づいて運営されているのか、同サイトを手がけるクラシコム代表の青木耕平氏の思想に、ゲリラPRで知られる砂流恵介氏が迫ります。本パートでは、メディアデータを紐解きながら同サイトの特異性を明らかにしていきます。

司会はゲリラPRを得意とする砂流氏

砂流恵介氏(以下、砂流):それでは「北欧、暮らしの道具店に聞く、ファンに愛されるブランドのつくりかた」を始めたいと思います。よろしくお願いします。

(会場拍手)

本日は、ご来場ありがとうございます。まず、青木さんをご紹介する前に、僕の自己紹介をさせてください。そもそも、こいつ何者なんだというのが、あると思いますので。まず僕の自己紹介から簡単に始めさせていただきたいと思います。

僕はもともと2年半くらい前まで、Acerというパソコンやタブレットを売っている台湾メーカーの宣伝広報を6年くらいやっていました。こういったNAVERまとめ(お金がないから頭を使う--元エイサー広報・砂流恵介のゲリラ戦術がやばい)を作ってくださった方がいらっしゃいます。

ゲリラ戦術みたいなことをずっとやっておりました。外資のメーカーではありますけども、多少、ブランディング的なものを担当しながらやっておりました。

今、フリーで活動しているんですけども、そもそも今回のきっかけになったのが、「広報会議」で僕はいろんなWebメディアの方々にお話を聞いたり、今日も会場にお話を聞かせてくださった方がいらっしゃるんですけども、Web編集者の方にお話を聞くという連載をさせていただいてました。

そのなかで、メディアとして見た時の「クラシコムさんすごいなあ」なんて、お話させていただいたりしたことなんかをきっかけに、今日のイベントで僕が司会をさせていただくことになりました。

さまざまな媒体で執筆、フリーでPRも担当

僕、いろんなメディアで書かせていただいてます。例えば「Engadget」、ガジェットの専門媒体のなかでは一番大きいと思うんですけども。あと、「東洋経済オンライン」さんではなぜかフリーの僕が人事の方にワークルールを聞くという連載をやっています。

あとは、「しらべぇ」といういろんな調査をするニュースメディアとか。あと「攻殻機動隊」とアニメの原作のコンテンツの2029年にその世界観を実現させようというプロジェクトのメディアとかでやっています。

あとはフリーでPRもやっていまして、例えばJUDY AND MARYのギタリストのTAKUYAさんのお手伝いをさせていただいたり。そのTAKUYAさんと、アメリカザリガニさんが、一緒にやってるコミックバンド「商店街バンド」、そういったものの広報をやっています。あと、ベンチャーさんのサービスを個々にお手伝いしています。

今日は僕が青木さんに、(イベント)タイトルにブランドと付けていますので、ブランディングについて聞いていきたいなと思っております。

もし、僕が話を聞いている最中とか、青木さんが喋られている最中に気になったことがありましたら、ぜひ手を挙げて声出していただければ、そのお話が興味惹かれる話でしたら、どんどん拾ってぶつけていきたいと思います。

あくまで、僕が聞く人の代表ぐらいに思っていただければと。あと、質疑応答の時間はとってあります。もしかしたら、いろんな話をしてしまい、あんまりそこの部分が取れない可能性がありますので、そういった意味でも気になったことは聞いていただければと思います。

クラシコム代表・青木氏登場

では、本日の登壇者のご紹介をさせていただきたいと思います。青木さんでございます。それでは、ご登場いただいてもよろしいでしょうか?

(会場拍手)

砂流:よろしくお願いします。

青木耕平氏(以下、青木):お願いします。

砂流:さっそく始めさせていただきたいと思います。ビールが飲める本屋さんということで、まずは乾杯から入りたいと思います。堅苦しい雰囲気のまま、お話聞くのもあれなので。すいません、手酌させてください。

じゃあ、みなさんお持ちですか? 大丈夫ですか? こんな雰囲気で今日は始めていきますので。途中でも、ぜひビールとか飲んでください。よろしくお願いします。それでは、いいですか? では、いきます。乾杯!

参加者:乾杯!

チケットは2日で完売 参加者はどんな人?

砂流:実は、今日、2日間でチケットが完売したということで。僕、ここで何回かイベントさせてもらったことがあるんですけど、2日間で完売したのは初めてなんです。すごいなと思うんですけど、どういう方が今日いらっしゃってるのか、さっぱり把握できません。

ちなみにメディア関係の方は、どれくらいいらっしゃいますか? 

(会場挙手)

半分いかないくらい。

メーカーとか企業とかでブランド系担当されてるとか、マーケット関係担当されてる方とか、いらっしゃいますか? 

(会場挙手)

おお、けっこういらっしゃいますね。

広告関係やってますという方は? 

(会場挙手)

1、2、3……おお、けっこういます。では、広報的な。広報はいない? 1人。

じゃあ、メディア関係とかメーカーのブランディング系を担当されてる方が多いんですね。把握しました。

「北欧、暮らしの道具店」って?

さっそく説明させていただきたいと思うんですが。まず、もちろん始めに「北欧、暮らしの道具店」とは何かという話。もう、みなさんご存じだとは思うんですけれども、改めて数値で見ていきたいなと思います。これ、写真撮っても大丈夫ですか?

青木:大丈夫です。

砂流:気になった方は写真撮っていただいて大丈夫です。これメディアデータと書いてあるんですけども、説明いただいてもいいですか? みなさん、これ見たことあります? この資料。

青木:これは公開してない……。

砂流:そうなんですね!

青木:広告のクライアント様、代理店向けにお渡ししてるメディアデータです。

砂流:僕ら、婚約発表してるみたいですね(笑)。カシャカシャカシャといろんなとこから(笑)。

青木:こんなにカメラを見せられることはないですね(笑)。

Instagramのフォロワーは日本企業4位

砂流:すごいですよね? まず月間アクセス数約1,200万PV。月間訪問者数110万UU。これハンパない数値ですね? ざっといきますね、先に。Facebook、33万9「いいね!」。4月25日時点、Instagram、36万8,000フォロワー。

青木:いま37万8,000くらいです(イベント開催は5月9日)。

砂流:え? 1万、増えてるんですか? この10日間くらいで。フォロワー数ランキング4位。日本企業のInstagramアカウントで4位?

青木:そうですね。この間、半年間の純増数では3位いただきました。

砂流:ちなみに上は?

青木:上は、東京ディズニーランドさん、ディズニーリゾートさん。スターバックスさん? いや、MUJI Globalさんです。

砂流:無印さんですか? 無印さん(の次が)、御社?

青木:でした。

砂流:すげえ。それ、みなさん知ってました? リアクション薄いな(笑)。

(会場笑)

ほかの媒体の数字と比べてみると

砂流:でもこれすごい数値で、御社をメディアとして見るかネットショップとして見るか。なにで見たらいいかわからないので、両方の視点で見ていきたいんですけど。まず、1,200万PV、110万UU、メディアやっている方なら、超すごいとわかると思います。事業者側の方に、このすごさを少しだけ僕から説明させてください。

さっき僕がお手伝いさせてもらってると言った、「しらべぇ」という媒体ですけど、もうすぐ2年ですね。まだ2年経ってないサービスなんですが、日に15本とか16本くらい更新していてページビュー1,600万PV。ユニークユーザー440万UU。

2年にしては頑張ってるメディアだと思いますし、ファンも多いメディアであると思います。更新も頑張っていて、最近は下世話なものから高尚なものまで扱っているんです。調査しながらやっているメディアで、これ(数字)はそんなに大きく御社と変わらないですよね?

青木:はい。

砂流:いわゆるネットニュースという、コンテンツにニュース全般を扱ってるところです。もうひとつが、これ普通に「しらべぇ」が公開してる資料から引っ張ってます。今日時点の資料を見てます。

これは、Engadgetですね。Engadgetの媒体資料をEngadgetのページから引っ張ってきたんですけど、1,500万PV。ユニークユーザー350万UU。平均シェア数が多い媒体です。

こんな感じで、Engadgetは専門媒体なので、ガジェットというところから考えると、かなりの数字を出していると思います。どちらも僕が手伝っているから、持ち上げてるわけではなくて(笑)、イケてるメディアだと思うんですけど。

青木:たぶん、PVは我々どっこいどっこいよりすこし少ないくらいですが、ユニークユーザーががっつり少ないと思うんですよね。

砂流:そうなんです。

毎日訪れるユーザーが約7割のすごさ

青木:440万に対し僕らが110万とか、350万に対して110万とか。これは、要するに1人当たりのユーザーが稼ぐPVが、とびぬけて大きいということなんですね。特筆して、たぶんここの部分がそれを裏付けてるんでN3,000くらいのアンケートの結果を表示させていただいてるんですが。

「ほぼ毎日来てる」と答える人たちが1日に何回もという人がいるので、合わせると68.6パーセントくらい。3,053人の内の68.6パーセントが毎日訪問と答えていて。「1週間に1回以上訪問する」が95.6パーセントいるというかたちですね。

砂流:ハンパないですよね?

青木:たぶん、その限られたユーザーに何回も来ていただいていて、たくさんのページを見ていただいているところが、今、4つ比較していただきましたけども、その媒体のなかで我々のユニークなポイントだということができるかもしれないですね。

砂流:ほんとにすごいですね。あとで秘訣を聞きたいと思うんですけど。あと、メールマガジンも多いですよね。

青木:でもECとしては、飛び抜けて多いとこはないかもしれないです。

砂流:開封率が約70パーセント想定は異常値ですよね?

青木:異常値だと思います。どういうことかと言うと、メールマガジンを送ると、だいたい50パーセントくらいの訪問数が得られるんですね。7万2,637人にメールを送ると、3万強くらいの訪問が得られるということがあるんですね。

そうすると「開けてる人は70パーセントくらいじゃないの?」という数字の出し方になります。そして、46パーセントくらいの訪問数が得られることが多いですね。若干、上下はありますけども。

読者の97パーセントは女性

砂流:ではいったい、「どういう方がサイトを見られてるのか?」というのが次の資料です。読者の属性。

青木:圧倒的に女性向けのメディアと考えていて、サイト構成でいくと97.3パーセントが女性です。このへんはFacebookの「いいね!」とかの属性を見ても、同じような結果が出てきます。

25歳から45歳くらいの間の人たちが8割5分くらいを占めているということで、我々としてはこの属性の方のうち、我々の提示しているスタイルに共感してくださる方にだけ一致すればよいとのことで、そこは徹底的にそういう方針でやってるんです。

砂流:すごいですね。シングルや、主婦の方もかなり多いですね。

青木:半々くらいかなという感じですね。

「北欧」読者は恋愛に興味がない!?

砂流:次の資料が、読者の価値観。読まれてる方の価値観がどういうものかということですよね?

青木:はい。

砂流:「シンプルに暮らすことにこだわりを持つ」。「安さより信頼を重視」。なんとなくわかりますね。

青木:このメディア向けの資料を作る際に定番の興味や関心というアンケートを入れて、だいたい30項目くらいのなかから複数選択できますというようなものをやったんです。

その選択肢のなかで、さっき女性が97パーセントと話したんですけども、完全女性媒体なんですが興味・関心のうち、普通女性向け媒体で必ずトップ3以内に入ってくる恋愛・結婚の項目があるんですが、これがなんとワースト2位だったんです。

それくらいに価値観軸ってことでセグメンテーションされてるメディアだということが、アンケートからもある程度掴めてきていることがわかります。

読んでいる雑誌からわかる読者の関心

砂流:なるほど。このサイトに、結婚とか恋愛のものはぜんぜん求めていない?

青木:「お前らに、それ求めてない」と(笑)。

砂流:すごいですね。そこまで低い。ワースト2位ですよね?

青木:そうなんですね。これ、僕らもびっくりしましたね。

砂流:基本、一番PV取りやすそうなやつじゃないですか、イメージとしては。読んでる雑誌見ても、なんとなく想像はつくんですね。『LEE』とか。パッと見て『ESSE』と『LEE』って似てると思われますけど、『ESSE』は効率をけっこう重視して書かれていて、『LEE』は楽しく生活をしようという方向の雑誌だったり。

『暮しの手帖』とかは丁寧に、ですもんね。『BRUTUS』とかも効率を求めるのとは、またぜんぜん違うところを見てる。読んでる雑誌からしてもその方の想像がつきますね。すごいですね。その方々は女性で、しかも25歳から45歳の間ですね。これまでの配信コンテンツ例ということで。いろんなことされてますよね?

青木:いろんな方にインタビューする記事であるとか、あるいはインテリアをご紹介する。一般的な女性向けのライフスタイル誌で扱われているようなベーシックな内容が中心なんです。

ただ、意外に有名な方のインタビュー記事とか、そういう方のお家を紹介するコンテンツよりは、スタッフの家を紹介するとか、スタッフが書くポエムみたいなコラムとか、そういうのが圧倒的に読了率が高いです。

砂流:そうなんですね!

一番人気のコンテンツは「スタッフの愛用品」

青木:僕らとしてはすごくコストも手間もかけてる、例えばこういう香菜子さんという有名なモデルの方とか、取材に行ったものよりも、こちらには出してないんですけども「昨日、もやもやして散歩したら心スッキリした」みたいな、そういうものが読了率が高いことがあったりします。

僕らECなので、実際一番の人気コンテンツというのは実は「スタッフの愛用品」。福利厚生の制度で、スタッフ全員がウィッシュリストというのを提出していて。

そのウィッシュリストに載ってる物で、いまバイヤー的に売りたい物があると実はもらえて。もらってから1ヶ月くらい使えて、もらった人はレビューを書かなきゃいけないと。そういう仕組みになっているんですけど。

砂流:そうなんですね。値段ピンキリですか?

青木:ピンキリですね。要はそれを貸して、愛用のコンテンツ書かせて、回収するみたいなことはできなくはないですけど、やり続けてると必ず嘘っぽさというのが出てしまいます。かと言って、買わせるわけにもいかないので、福利厚生の制度としてほしい物をあげるということをして、その代わりコンテンツを書く。

コンテンツ書いたものを、だいたい入れると平均でコンバージョンレートが3倍くらいになるんですね。なので、それの上がり方でなんとなくのランクがついていて、ランクの高い人ほどもらいやすくなる(笑)。

砂流:そうですよね(笑)。御社は基本、みなさん書けるんですよね?

青木:そうですね。一部の専門職の人はそういうテストを受けないで入ってくるんです。ほとんどの一般職の人たちは、どういう職種でもいわゆる採用選考時に書くこと、スタイリングして写真を撮るというロールプレイングのテストを受けて入ってくるので、基本的には書く素養がある状態で入ってきているという感じです。

砂流:すごいですよね。ありがとうございます。

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