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第5回「はじめてのラピュタ」(全4記事)

「王蟲は彼女のいない男たちの怨念」 ジブリ作品に描かれた、異形のモノ

『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』といったジブリ作品が嫌いだったと語る漫画家の山田玲司氏。「美少女と兵器の組み合わせなんてチャラい」「チェルノブイリの原発事故が起きた後でそんなことやってる場合じゃない」「コミケにいる人たちは二次創作のイラストしか描けないのに、オルジナルの漫画を批判してくる」など、当時感じていた不満についてぶちまけます。

「美少女と武器」なんてチャラい! ジブリが嫌いだった理由

山田玲司氏(以下、山田):じゃじゃーん! ジブリが嫌いだった理由!

おっくん氏(以下、おっくん):テンションの上げ下げがなんか(笑)。

山田:ごめんなさい(笑)。まず、僕ね、高校生だったんだよね。それで、オタクの人たちが周りにいっぱいいる「創作研究同好会」ってところにいたんだよね。

俺はもともとナウシカとか、チャラいね、「美少女と兵器」みたいなのが始まる前の世代なんだよ、実は。だから、男の子はヒーローになって戦って弱い女を助けなきゃいけないって信じこんでたんだ。

そして、社会問題。戦争は深刻だから、軽々しく扱っちゃいけないみたいな感じのところに持ってきて。まあ、これが登場ですよ。

実を言うと「少女と武器」って、この系譜があって。要するにチャラいんだよね。セーラー服となんとかみたいな。そこにね、君たち知らないかもしれないけど、くりいむレモン旋風というのが同時にあるわけ。

おっくん:くりいむレモンってなんでしたっけ?

山田:エロアニメの一番最初のやつなの。このあたりから非常に軟弱化というのと、性的指向が地下に潜ったやつがいろんなメディアに混在していくという状態が始まってくるので。

俺はすごい正義感の強い少年だったので、戦争を茶化されてる感じがして。ゲーム化されてる感じがして、すごく嫌だった。それと、「美少女見たい」って言ってるやつがエコ語るのが一緒になってる感じがダメなの。

おっくん:宮崎さんだね。

山田:まさにアニミズム、反戦とか言いながら、パンチラみたいのがイメージですよ。今回ラピュタ見て思ったんだけど。

おっくん:これはイメージですからね(笑)。

少女が空から降ってくるとか死ねよ

山田:なんでかというと、ここですよ。ルパンね、俺はハードボイルドルパンが好きだったんだよ。だけど、クラリスファンというのが現れて。これはいわゆるカリオストロですよ。

ルパンの話なのに、なんか知らないけど、クラリスの話をして、クラリスを下敷きに入れてる奴がいっぱいあらわれるんだけど。まあ、みんな気持ち悪い奴ばっかりだったんだよ。

そこに持ってきて84年。俺が大学に入る年なんだけど、ナウシカファンというのが登場するんだけど。この時にマクロスも現れる。ミンメイですよ。だから、もう美少女祭りですよ、80年代の頭。

これは松田聖子からの流れのあっちのチャラい奴も同時にいく、アーリー80's、早い時期というね。ここに86年、ラピュタぶつかってくるんだけど、俺この時パンクスだっからね(笑)。

で、86年にチェルノブイリが起こるんだよ。「チェルノブイリとか行きたくない」とか思ってる時に「なんだ、シータとかなんとか言って」みたいな。「ふざけんなよ。少女が空から降ってくるとか死ねよ」っていう感じ(笑)。「お前ら、いつまでやってんだ。この野郎」っていう感じ。

あと、先輩はモテててほしかったんだよ。俺は。クリエイターの先輩たちは、女も知ってる、なんでも知っている。「俺がお前らに教えてやろう」っていう、そういうスタンスでカッコいい人でいてほしかった。

おっくん:いいオトナでいてほしかったんですね。

山田玲司:富野由悠季さんはそれをやってるのよ。ちゃんと。富野さんはヘニャヘニャなところとダンディズムがちゃんとあって。だけど、俺から見ると、当時のこういう人たちというのは、「抱きたいなら抱きたいって言えよ」みたいな感じ。

ジブリ近辺にいる連中にムカついた

おっくん:富野さんは1個上ですよね?

山田:ちょっとね。団塊なんだけど、ちょい前ぐらいですね。日大の、いわゆるすごい熱かった頃の人で。そんなこんなで何が悪いって、ジブリが悪いんじゃなくて、ジブリ周辺にいる連中がムカついたっていうのもあってという話ですね。

こいつらはあれなんだよ。初期コミケ連中なんだよ。こいつらは二次創作を始めるわけだよ。俺はオリジナル信者というか、絶対主義。手塚イズムだから。だから、自分で漫画作って売っていくというので頑張って何作も描いてるの。ちゃんと完成させてたの。

こいつらファンですよ。イラストしか描かないですよ。で、人の漫画の悪口ばかり言いやがってみたいな。そういう個人的な怨念が宮﨑駿に乗っかる現象(笑)。

おっくん:その教祖みたいな(笑)。

山田:だから、俺は反省してるんだよ、いろいろと。なんか悪いことしちゃったなと思ってるけど。でも、あいつらがいけないんだよ。あいつらは右向きしかないイラストみたいなやつしか描けないくせに、俺に「デッサンが狂ってる」とかふざけたことを言いやがって。

このへんのことは詳しくは『アリエネ』って漫画で描いてありますけれども、辛かったんだよ。そんなこんなで、戦争バカにしてるのが嫌だなと思ってたの。

王蟲は彼女のいない男たちの怨念

あと今回ね、すごい思ったんだけど「異形のモノ」。今回もすごい思ったんだけど、なんでこんなに宮崎アニメ気持ち悪いのかなと思ってたの。見てて辛くなる。わかんない顔してるけど、俺は辛くなるんだよ(笑)。

おっくん:いや、うちらはその判断がつく前に「これが型だよ」「これが美少女っていうものだよ」とか、「これが悪人だよ」みたいな。

山田:「違うんだよ。あれは人形なんだよ」みたいなさ(笑)。

おっくん:今日どうしたんですか!?

山田:だからさ、「違うんだよ。女だって人間なんだよ」みたいなさ、そういう熱い少年だったわけ、俺は。悲しき異形もモノたちがいっぱい出てくるんだけど、いわゆる王蟲(オウム)ですよ。

王蟲ってなんじゃいって話なんだけど、しゃべんないじゃん? で、悲しいじゃん? あれってフロイト的に言ったらあれじゃん。そして、それを受け止める1人の美少女じゃん。大量の王蟲じゃん?

おっくん:そういうことね。

山田:宮崎作品って途中で大量のナントカになるのね。最初に出てきたものが、「うわっ、ナントカがいっぱい」ってなって、ポニョがあんなことになったり、今回もロボットがいっぱい出てきたり、なんか知らないけど、いっぱいになる。

おっくん:いっぱいの異形のモノが。

山田:王蟲がまさにそうで。最後うわ~って来るんだけど、あれは明らかに彼女のいない男たちの怨念ですから。わかりますか? それがなんのメタファーになったか。これが、フロイト先生だったら当然ありますよね。

これの反対側に何がいるかというと、『キャプテンハーロック』を思い出してください。みなさん、知らないでしょうね(笑)。

おっくん:思い出してくださいって言ったところが(笑)。

山田:キャプテンハーロックというのは、マゾーンというのと戦ってるの。すごいでしょ? マゾだからね。マゾーンというのは植物形宇宙人で、全員女の形してるの。女性性、植物。

そして、女王の名前がラフレシアですよ。はーい、出ました。女、花の名前、巨大。そして、アルカディア号の形を思い出してください。先端は?

おっくん:いや、知らない。アルカディア号わからないもん(笑)。

山田:わかんないか。いいや。

山田:とにかくマゾーンの戦艦ってぜんぶ花みたいな形してるんだよ。で、大量なの。そこに女王ラフレシアに向かって、アルカディア号一気に突っ込んでいくわけ。これナウシカの逆です。意味わかりました?

おっくん:なるほど。

山田:これがアートなんだよ。とっても豊か。やばい。やばくて豊か。今考えると「最高じゃん!」という話なんだけど(笑)。

おっくん:え?

山田:最高なんだよ、ナウシカ(笑)。

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