短時間のストレスでも体に影響する

マイケル・アランダ氏:自分がキレている場面を想像してみてください。

例えば……後1歩で完成するジグソーパズルを壊されたとしましょう。

すると怒りで自分の顔が真っ赤になっていくことに、自分も、パズルを壊した相手も気づきます。血液は沸騰しそうになって、耳からは今にも蒸気が吹き出しそうな勢いです。

もちろん、本当に耳から蒸気が出てくるまではないにしても、神経系の反応によって起こるそうした現象は、とくに脅威に晒された時に表れます。

ではパズルを台なしにされた程度のことが、そんなに脅威だったんでしょうか? 神経系に聞いてみますか?

しかしながら交感神経系は、ちょっとした動揺のような短時間のストレスすら脅威とみなしてしまいます。

例えば、誰かに砂のお城を潰された時や、ダース・ベイダーがルークの父親だとネタバレされた時でも、脅威と戦おう、もしくは逃げ去ろう、という反応を示すのです。

こうした反応は、脅威と戦うにしても離れるにしても全身に影響を与えます。しかもこれは怒りに対してだけではなく、恥ずかしさやイライラに対しても起こるのです。

起こっている時は大抵、逃げようとするより戦おう、という反応になるでしょう。どちらの場合でも同じような反応が起こります。

数秒の間に瞳孔が開き、動悸は早くなり、全身の血管は広がって、血流をよくしようとするのです。

これによって、筋肉へ血液をさらに送って酸素をたくさん供給し、立ち向かったり逃げたりできるようにするわけです。顔の血管もその結果として、同じように広がって血流がよくなります。

さらにそうした血管は肌の表面近くにあるので、増えた血流が赤く見え、ほっぺが怒りで真っ赤になるのです。

こうした反応は明るい肌の色の人ほどわかりやすいですが、同じことは肌の色に関係なく起こっています。

しかも残念ながら、この一連の反応は自律神経系の命令により自然と起こるので、自分で制御することができません。

研究者たちは、「フラッシング」と呼ばれるこの反応が人間だけに見られるため、進化の過程で重要な役割があるのではないかと研究を続けています。

顔が赤くなることは、感情を他者へ伝える上で役立っているのかもしれません。顔を赤らめればまわりの人たちは、あなたがなにを感じているのか、どう対処すればいいのかを感じ取れるからです。

次に何かで怒って顔を赤くした時は、自分の体が感情を表現しようとしていることを感じ取ってください。

ただし、怒りを爆発させないように。たかが、パズルを台なしにされた程度、なんですから。