チンパンジーから人間へ
人類はどのように進化してきたのか

Facts about Human Evolution

私たち人間がどこからやってきたのかという見解は、この50年の間に劇的に変わりつつあります。現在では、すべてが現代のアフリカ人の祖先たちに行き着くと考えられています。DNA調査による証拠は、アフリカから出た最古のヒト属の化石から「アフリカ単一起源説」が導かれるという事実とつながります。現生人類はアフリカでのみ進化し、2つの大きなグループに分かれ世界中に散らばっていったとする説です。では、チンパンジーからヒト属へはどのように進化したのでしょうか。

我々の祖先の革新的な進化

ハンク・グリーン氏:こんなのを想像してみてください。1871年、チャールズ・ダーウィンは、私たち人類が生まれた時は原始のヘドロのような状態で、実際は歩いているわけではなかったと考えました。

一方で著書『人間の進化と性淘汰』の中では、人類の起源はアフリカの類人猿だという説を唱えています。

当然ながら、彼と同じヴィクトリア朝の人々はみな仰天し、「ああ! 気つけ薬を取ってきてちょうだい」と叫んで真珠かなにかをつかんだわけです。

彼らを責めることはできません。140年近く経ってもなお、ダーウィンの説は人々にショックを与えているからです。

でもダーウィンは、ほとんど正しかったのです。驚くべきことは、古代人や類人猿に近い私たちの祖先を含むヒト属の化石がほとんど発見されていない時代に、人類の進化論を提唱したことです。

ダーウィンの学説を裏付けるための化石を集めるのに50年かかり、それらをつなぎ合わせ、比較し、それぞれの種の関連性を議論するのに、さらに数十年かかりました。実際、現在もこの検証はまだ続いています。

最近では、約24種類ものヒト属や、その可能性がある種が確認され、ヒト属の系統樹が、ちょうどトゲだらけの茂みのようになっている状態です。それらを統合すると、この化石たちは、類人猿に近い私たちの祖先が、いかに近代的で、人間らしい生物へ進歩していったかを示しています。

こうしてアウストラロピテクス属からヒト属への過程において、私たちの祖先は、革新的な進化を次々と遂げていきました。

特質や新しい習性を手に入れたかどうかに関わらず、それは進化前よりも勝る大きな利点を与えてくれました。私たちがこうして繁栄しているのも、この飛躍的進化のおかげなのです。

では、彼らは一体何者なのでしょう? 私たち現生人類と同じ系統樹にはほかに誰がいるのか? そして、もうこれ以上進化はしないのでしょうか?

私がみなさんを人類の進化の真相へ案内しましょう。

人間はどこからやってきたのか?

私たちがどこからきたのかという見解は、ちょうどこの50年の間に劇的に変わりつつあります。

もしあなたが1970年代の古人類学者だったら、数百万年の間、地球上には異なる人類の集団が存在し、彼らが互いに出会うことで雑種が生まれたと、おそらく考えたでしょう。

これは多地域進化説として知られ、たとえばヨーロッパにいたネアンデルタール人は現代のヨーロッパ人に進化し、中国のホモ・エレクトスは現代のアジア人へ、インドネシアで発見されたジャワ原人はオーストラリアのアボリジニの祖先となったとする説です。

しかし1980年代に研究者たちがミトコンドリアのDNAを調べ始めたことで、この多地域説は人気がなくなってきています。

これは私たちの細胞のミトコンドリアの中から発見された古代のもので、細胞核にあるDNAとはまったく違うもの、私たちの両親から受け継いだものです。

ミトコンドリアDNAは母親側からのみ子孫へ受け継がれます。つまり、そのさまざまな変異を人口全体で遡ることで、科学者たちは過去20万年以上の間の進化の過程がわかるのです。

そしてそれを調べると、すべてが現代のアフリカ人の祖先たちに行き着くのです。

このDNA調査による証拠は、アフリカから出た最古のヒト属の化石から「アフリカ単一起源説」が導かれるという事実とつながります。

これは解剖学の視点上、現生人類はアフリカでのみ進化し、2つの大きなグループに分かれ世界中に散らばっていったとする説です。

7万年前から12万5千年前に生まれたグループは、アフリカより東へ向かって、中東、アジア、インドネシア、そしてオーストラリアへ移住し、その後発生した、もう1つのグループは、ヨーロッパへ向かいました。

以上が、現在最も有力視されている起源説です。

二足歩行の習得

しかしどうやってヒト属が進化したかについては、わかっていることは、ほんのわずかです。まず、かつてはさまざまな人類の種族がいましたが、今はもう1種しかいません。

そして私たちのDNAの初期の大部分はチンパンジーと共有していますが、我々の共通の祖先は700万年前か、おそらくもっと前から生きていたと思われます。

チンパンジーと決別してホモ・サピエンスへとつながる系譜が始まり、約100万年経った頃、人類の祖先にあたる類人猿の一部が、進化の中において初の飛躍的進歩、二足歩行を習得しました。

これは類人猿が、おぼろげながら二足で直立し、歩き出したということです。

彼らは初期二足歩行をした類人猿属で、2、3種類存在していました。そしておそらく彼らが、私たちの祖父母と呼べる、アウストラロピテクスへ進化したのです。

アウストラロピテクスは、他の古代アフリカの類人猿と異なるわけではありません。彼らは体格も脳の大きさも、ほぼ同じでした。

実際、1974年にエチオピアで発掘された320万年前のアファール猿人の化石・ルーシーのような初期のアウストラロピテクスは、おそらく体長は1メートルほどで、現在のチンパンジーとそんなに見た目は変わりません。

しかし彼女の骨格、そして化石化した彼女の足跡から、ルーシーは直立二足歩行をしていたことがわかっています。

なぜ二足歩行に進化したかについては、いくつかの学説がありますが、密集していたアフリカの森林が、気候の変動により縮小してしまったのが原因と思われます。

そのため初期のヒト属は強制的に草原で生活せざるを得なくなりました。二足歩行になることで、地上で捕食動物を見つけたり、長い距離を移動したり、木から果物を取るのが楽になります。

しかしもっとも重要なことは、これにより2本の手が解放されたことです。もし、あなたがブラブラ何もしない手を2本手に入れたら、必ず石を拾い、ものを壊し始めるはずです。ほら! 道具を使う類人猿の誕生です。

そしてこの現象から、第二の大きな特徴的進歩、精密把握が生まれました。

器用な手が発達

ヒト属が進化するにつれ、彼らは手を使う機会がどんどん増えました。木の間を飛びまわるよりも、なにかを握ったり、小さなものを器用に処理したりするようになりました。

こうして時が経って、チンパンジーやゴリラを連想する大きく曲がった手は、力強い親指を備えた、小さくてより器用な手になりました。今、あなたの腕の先についているものと一緒です。

これらの手は道具を切り取るのにとても向いていて、最初に道具を作った私たちの祖先は、別名「ハンディ・マン(器用な人)」と呼ばれる、ホモ・ハビリスと考えられます。

ホモ・ハビリスは、化石の記録上、初めて現生人類に近いヒト属であり、また初期のヒト属であると考えられます。約240万年前に登場した彼らは、おそらくアウストラロピテクスの直系の子孫なのでしょう。

なぜ「おそらく」と言わなきゃいけないのかって、まあその場にいたわけじゃないですからね。それに化石の記録は、常に欠けている部分があるものです。

ホモ・ハビリスは、多分あなたの食洗機は直せませんが、岩でそれを細かく砕いてしまうことはできたでしょう。さらに、器用な手を持ったことで、ホモ・ハビリスは肉を食べました。

菜食から雑食へ

菜食だったヒト属にとって、こうして雑食になったことは革新的なことであり、ヒト属にとっては、また別の大変革をもたらしました。なぜなら大脳の発達、もしくは体重に関わる脳の成長が始まったからです。

頭を使い維持するには、多くのカロリーが求められます。初期の頃は、サーベルタイガーなどが残したガゼルの肉片をあさっていたのでしょうが、肉を食べることは、脳を早く大きくするのに重要なことです。

ホモ・ハビリスは初めて食料を調理した人類の祖先なのではと考える人もいます。

調理することで、植物や球根からあらゆる栄養を摂ることができますし、腐りかけた肉も安全に食べられます。

これらの栄養は彼らに大きな影響を与え、結果として脳は大きくなりました。しかし大きさだけではなく、脳の成長の仕方もまた重要です。

時を経て私たちの祖先の脳は、主に言語を司る側頭葉や、複雑な決断をして、社会的行動をコントロールする前頭前皮質が、ほかの部分に比べて偏って成長しました。

何人かの研究者は、この進化は改善された食生活によるところが大きいと考え、それと同時に集団社会の問題を解決する必要があったためだと考えています。そして、このことがもっともっと重要になっていったのです。

理由の1つはホモ・エルガステルの化石からわかります。彼らは約165万年前に姿を表し、多くの人がホモ・ハビリスの子孫だと考えています。

見た目はホモ・ハビリスより、もっと現生人類に近いです。小さい顎と鋭い歯があり背も高く、すらりとしています。また彼らは、おそらく初のほとんど毛がないヒト属でした。

おもしろい特徴は、介助なしで出産するのが難しいぐらい、彼らの腰が細かったことです。エルガステルの脳が大きくなるにつれ、彼らの赤ちゃんの頭も、以前のヒト属の赤ちゃんに比べて、おそらく相当大きくなったはずです。

女性の骨盤が小さくなると同時に、赤ちゃんの頭は大きくなってしまった。 解決策は、赤ちゃんの頭が成長しきる前に生まれてきてしまうことです。こうすることで、無事に産道を通ることができます。

しかしこれは、生まれたての赤ちゃんはまだ未熟であり、以前より育児に手間と時間をかけることを意味していました。

このことはエルガステルや、その後のヒト属の種族に、洗練された大きい脳がないとできない、新たな飛躍的進歩を生じさせました。

それは複雑な社会的行動を始めたということです。経緯について話しましょう。

社会性の獲得

これより以前のヒト属より、さらにホモ・エルガステルの人々は互いにそれを必要としました。互いの赤ちゃんを取り上げ、成長するまで手間がかかる子供の世話をし合い、みんなが生きていくのに十分な食べ物を見つけ、狩りもする。

こういったことを、おそらく彼らは集団で行っていた。またホモ・エルガステルは、初めてアフリカ大陸を出た人類の可能性があります。もしかすると、より獲物がいる土地を求めたのかもしれません。

約175万年前のエルガステルの骨格が、アルメニアとグルジアの国境あたりで発掘されています。

そして、その後間もなく、ホモ・エレクトスが登場します。アフリカ以外の土地でたくさん化石が発見されている初期の人類です。生き残るために移動したと思われます。

エレクトスは、180万年前から150万年前もの間、アフリカからアジアの大部分へルートを作り、わずか2万7千年前に絶滅しました。 彼らは人類で初めて航海をし、住処を作ったと考えられます。

ホモ・エレクトスは、私の祖父や大叔父に当たるぐらい近い種族ですが、誰も確信は持てません。なぜなら、彼らの全盛期である約40万年前から60万年前、別のヒト属がいたからです。

ホモ・ハイデルベルゲンシスは、一部でホモ・エルガステルの直系の子孫と信じられています。いくつかを除いて、彼らがとても似ているからです。

ハイデルベルゲンシスはエルガステルよりかなり大きい脳を持っています。頭蓋骨の化石のいくつかは、現生人類とほぼ同じ大きさの脳を持っていたと推測され、より高度な社会的行動をしていたと思われます。

たとえば一部の学者たちは、彼らがヒト属で初めて死者を埋葬した種族だと信じています。

しかしおそらく彼らについて一番重要なのは、現生人類であるホモ・サピエンスの直系の祖先であることでしょう。

また、僕らのいとこであるホモ・サピエンス・ネアンデルターレンシス、もしくはホモ・ネアンデルターレンシスと呼ばれる、ネアンデルタール人の直系の祖先だと考えられていることです。

ある学説によると、ハイデルベルゲンシスの一部はアフリカに留まって、彼らが現生人類へとつながり、一方でほかのハイデルベルゲンシスはヨーロッパへ移動し、この集団がネアンデルタール人に由来するとされています。

人類の進化において、こういった数多くの説が熱く議論されています。

祖先の物語は新たな発見により更新される

私たちがわかっていることは、約3万年もの間、ネアンデルタール人と現生人類は共存していたということです。20万年前から2万8千年前まで、ネアンデルタール人はヨーロッパ各地で暮らしていたのです。

そして彼らは私たちより眉隆線が大きく、発音も低いですが、見た目はとても現生人類と似ていました。

脳は私たちより若干大きく、死者を埋葬したり、芸術作品を作ったり、争いで道具を使ったり、明らかに現生人類といくつかの習慣を共有していました。

そしてもちろん、彼らは互いに性交する機会もありました。私たちはネアンデルタール人のゲノム全体を、ほぼ再現できるし、私たちのDNAのうち約2.5パーセントが、ネアンデルタール人由来のものだとわかっています。

おそらく私たちの、ひいひいひいひいひいひいひいひいひいひいひいひいひいおばあちゃんが、その人とイスラエルの洞窟でクレイジーな夜を過ごしたんでしょうね。

現生人類を通した、こういう話は私たちを驚かせてくれますが、祖先の物語は常に変わるものです。なぜなら興奮するような発見はいつの時代にもあるからです。

たとえば2004年。研究者たちは、ホビットの愛称を持つ、ホモ・フローレシエンシスの化石を発見しました。現在のインドネシアで、約1万3千年前まで生きていた小型の人間です。

さらに最近だと、2008年に新人類、デニソワ人の化石が発見されました。研究者たちは、現生人類と一部共通した、雑種の可能性があると見ています。

そして同じく2008年のアウストラロピテクス・セディバの発見は、ヒト属の直系の祖先か、もしくは初めて道具を作った可能性があるとして、一部の古人類学者を驚かせました。

こうした私たちの起源を探す研究は、とてもおもしろい。

ちなみに彼らがなにによって殺されたかは、はっきりわかっていません。いくつかの学説では、気候の変動か、巨大火山の噴火のような天変地異か、もしくは単純に生存競争で負けたかによるとしています。

おそらく私たちは脳を大きくさせ、互いに協力することを覚え、最終的におよそ1万年前から農業を発展させたことで、生存競争を生き残れたのでしょう。そしてこれは、現在も続いている巨大な人口爆発を引き起こしました。

今はもう私たちの種族しか存在しない。それを考えると少し寂しくなります。

もし地質学の講演をした昨日の午後みたいに、ちょうど10万年前に戻れるのなら、6種類もの人類たちと地球で共存することになる。それを想像すると、変な気分です。

もしネアンデルタール人とマリオパーティーで対戦したら、すごい経験がたくさんできるかもって思いついても、私に知る術はないんです。

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