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グローバルで活躍する起業家に学ぶ(全6記事)

「メルカリは、金も体力もあるイケてる会社」US版の手応えと今後のグローバル展開

2015年12月10日、IVS SEEDS 2015 Winterが開催されました。Session2「グローバルに活躍する起業家に学ぶ」には、モデレーターを務める琴坂将広氏、エウレカ・赤坂優氏、コロプラ・千葉功太郎氏、メルカリ・小泉文明氏の4名が登壇。本パートでは、小泉氏が日本で2000万、アメリカで600万ダウンロードを突破したフリマアプリ「メルカリ」のグローバル展開について語りました。

メルカリのグローバル展開

琴坂将広氏(以下、琴坂):では次に、メルカリの小泉さんお願いします。

小泉文明氏(以下、小泉):おはようございます。小泉と申します。

今ちょうど千葉さんから、グローバルなプラットフォームみたいな話があったと思うんですけど。僕らの会社は今、丸3年経ってないですね。

2年半ぐらいの会社でして、会社を作ったときからグローバル展開。なぜかというと、スマートフォン発で始まった会社なので、「むしろそれを視野にいれないと、結局世界では勝てないよね」という前提で、最初からグローバル展開を意識して作った会社になっています。

日本は2年半ぐらいやってるんですけれども、アメリカも1年3ヶ月やっています。今、日本は2000万ダウンロードを突破していて、アメリカは600万ダウンロードを突破してる状況です。おそらく、日本発でノンゲーミングで一番アメリカでちゃんとやってる会社じゃないかなと思っています。

従業員数でいくと、日本が今カスタマーサポートを入れて、だいたい150〜160名ぐらい。アメリカが今30名ぐらいいます。アメリカのカスタマーサポートはサンフランシスコだけでなくフィリピンでもアウトソーシングしてるので、フィリピンでもさらに20名強のメンバーがいるという感じです。社歴は短いんですけれども、すごくマーケティングをうまくやって、ここまで急拡大してきています。

実はアメリカも日本も同じような状況が起きていて。日本もやっぱりPCのときの「Yahoo!オークション」みたいな、大きいC2Cサービスがあって。スマートフォンの時代になって、僕らメルカリみたいなものが新しく出ていくと。

アメリカも「eBay」とか「Craigslist」みたいな、すごく巨大なマーケットプレイスがあるんですけれども。やっぱりそれはPCで、ちょっと古くなってきているんですね。それで今、アメリカにも進出していこうとしています。アメリカは今、そこのマーケットが強烈に盛りあがっています。

僕らでいうと、コンペティターになるんですけれども、OfferUpという会社はこの前100億円をファイナンスしたり。どの会社も軒並み20〜30億円のファイナンスをやっています。

僕らも過去2年半で一応40億円以上ファイナンスできているので、ある程度もう体力勝負ですよね。グローバルで勝負するということは、ちょっとの金額ではぜんぜん勝てないので。大きな金額を投資していって大きな果実を得るという、リスクを取るような経営を日米でやっていってる状況です。

東南アジアよりもアメリカ、イギリス

唯一僕らがゲームと違うのは、どうしても配送や決済みたいなところで、現地の企業とパートナーシップを組む必要があるんですよね。言語を変えればいいだけではないので。

僕らが今アメリカでやっているのは、FedExやUSPSのような配送会社や現地の決済企業とアライアンスを組んでるんですけど。今、UKでもそういう裏側の会社さんとの連携を準備しています。

赤坂:UKはもう始まってるんですか?

小泉:UKはまだ始まってないですけど、だいぶ準備は進んでいて、来年にはお話できると思います。

千葉功太郎氏(以下、千葉):現地法人もあるんですか?

小泉:もありますね。

千葉:なんでUKなんですか?

小泉:結局、決済と物流が発達していないと、商品送るとかクレジットーカード決済ができない。

赤坂:じゃあ、東南アジアでも難しい?

小泉:そうなんですよ。あと2次流通のクオリティが高いかどうかでいうと、先進国のほうが非常に合っている。なので、日本、アメリカ、イギリス。そうすると次、ドイツとか西側諸国ですよね。

赤坂:ヨーロッパの戦略とか。あとで個人的に聞きたいですね。

千葉:UKの次はどこいきますか?

小泉:まだ未定ですね。

おかげさまで日本ですごい成功していて黒字なので、そのキャッシュと過去の42億円というファイナンスも含めて、全部アメリカにぶっこんでいます。

けっこうアメリカのスタートアップのなかでも、「メルカリは金も体力もあるし、イケてる会社」みたいな感じは徐々に出てきているかなと。向こうのベンチャーキャピタルからもミーティング依頼など、かなりオファーをもらったりしています。

US版メルカリの競合サービス

千葉:USのメルカリの競合は、どういうサービスなんですか?

小泉:「Poshmark」というのが一応老舗で、どちらかというと女性系のアパレルに強い、C2Cだったり、さっき言った、100億円のファイナンスをやった「OfferUp」だったり、数はめちゃくちゃ多いですね。

「Craigslist」と「eBay」がかなり大きくて、もう成長鈍化とわかっているので、そこにめちゃめちゃスタートアップがバーッといってる感じですね。

千葉:今、ちなみに何位ぐらいなんですか? USのカテゴリーランキングで。

小泉: USのショピングのカテゴリーがあるんですけど、僕らはその中で20番以内に入ってますね。1位はAmazon。そういう列強な人たちから僕らのようなスタートアップまであるんですけども、カテゴリー中では比較的ずっと上のほうに入れているかなとは思ってます。

琴坂:そうすると、ある程度地域ごとに競争のランドスケープというか、競争環境、市場の状況が違うというのは正しいですか? アメリカがあって、欧州があって、アジアがあって、日本というように、やはり市場で勝つために必要な要件が違うようなかたちなのでしょうか?

小泉:そうですね。世界中でここのマーケットは勃興しているんですけれども、さっき言ったように、決済と物流は国によって違うので、ビジネスモデルがみんな微妙に違うんですよね。

東南アジアでやっているスタートアップは、そもそも決済と物流がないんですよ。だからマッチングだけさせちゃって、あとは手で運ぶか、なにかしらで運んでみたいな。決済も当事者間でやってみたいな。

赤坂:ちょっと「ヤフオク!」っぽいですね。

琴坂:この決済の仕組みや物流の違いがビジネスモデルとか、その市場の事業の作り方の違いにつながってる?

小泉:そうですね。そこはやっぱり、けっこうユーザーさんにとって一番ストレスだったり、もしくは肝だったりするので。

琴坂:そうしたところで付加価値を高めて差別化すると。

小泉:そうですね。僕らは日本でヤマト運輸さんとかなり深い連携をしているんですけれども、そういうようなかたちです。インターネットの世界と、リアルな世界という、この両方をきちんと押さえた上でサービスを設計してるということですね。

海外でマッチングサービスを提供する難しさ

琴坂:なるほど。赤坂さん、マッチングサイトの事業領域ではどうですか? 各地域ごとにどういう企業があって、どういう地域ごとの違いが出てくるのでしょうか?

赤坂:もう、ぜんぜん違います。日本と台湾の恋愛文化がそもそも違う。

琴坂:恋愛文化?

赤坂:当たり前だと思いますけど、僕が台湾人とこれから恋愛するとなったら、台湾人にとっての恋愛の当たり前と僕の当たり前は違うし。

琴坂:ちなみにどんな考えですか?

赤坂:例えばですけど、まず遠距離恋愛の定義が違うんですよね。例えば、日本で遠距離恋愛と言ったら実利的な距離、「何キロメートル離れてる」の距離なんですけど。台湾だったら、本当に「電車や新幹線が通ってるかどうか」がまず重要になってきて。

琴坂:電車が通っているか?

赤坂:要は、最北端と最南端でも電車が通っているので、時間的に言うと1時間で行けるんですよ。なんですけど、隣県でも電車が通ってないと2時間かかったりするので。そうなってくると、僕らとしては近隣の女性を提案するのが最適なアルゴリズムなのですが、近隣を提案していてはダメという。台湾だとそういうのもありますし。

そもそも台湾に進出した理由は、台湾が比較的近かったからというのと、親日、カルチャーが違うというのが大きかったんですが。(日本と)近いところでいうと、例えば女性の晩婚化が進んでいるエリアなんですよね。本当に女性がなかなか結婚しないエリアなので。

日本人女性よりキャリアを重視する女性も多いし、そうすると、マッチングのロジックも日本と変えなくてはならない。文化がお隣でも違いをきちんと理解するというのは、すごく重要ですね。

琴坂:逆に、配送のインフラとか決済手段とかではなくて、ユーザーサイド、消費者の趣向とか行動様式の違いがあるからサービスのあり方が変わっていくということですか?

赤坂:そうですね。例えば日本は、ほぼ無宗教じゃないですか。ただ、アジアは本当にたくさんの宗教が混在しているので。「相手の宗教」という項目自体も、この人と結婚していいかというところのジャッジポイントになる。

琴坂:そもそも、この条件の人をお付き合いする相手として検討していいのか、という条件から入ってくるんですね。

赤坂:僕ら日本人は目が黒いですけど、目の色によってセグメントできなきゃいけないとか、髪の色によってセグメントができなきゃいけないとか。あと趣味でも、日本人は「趣味:狩猟」なんてないじゃないですか。

なんですけど、アメリカでは、「Hunting(狩り)」という趣味があったりするので。そういうのもまた入れていかなきゃいけないとか。もう大変ですね。

カルチャライズを徹底したコロプラのゲーム

琴坂:千葉さん、ゲームはどうですか? 地域ごとにどういう違いがあるのでしょうか?

千葉:これまたぜんぜん違うんですが、やり方は2つあります。地域差を無視して統一のゲームを出すという戦略と、地域差をしっかりと意識して別々のゲームを作っていく戦略。コロプラは後者ですね。前者は『Clash of Clan』とか、『Candy Crush』があります。世界統一デザインのゲームに言語だけ対応させていくと。

コロプラは言語を対応させる以外になにをやるかというと、カルチャライズ。文化に合わせてゲームを変えていくんですね。大きなところでいくと、まずデザイン、UI。

デザインでいうと、色とかキャラクターの顔つきとか髪の毛の色とか、そういう細かいところが重要になってくる。例えばRPGとか戦いモノになれば、すごくセンシティブな話、東南アジアや韓国、中国い出すときに、日本刀を想起させるモチーフはダメだとか。

琴坂:なるほど。

千葉:韓国の昔ながらの刀に変えたり、そういう歴史的な背景も踏まえて、触れちゃいけないところをちゃんとコンバージョンしていく。当然、ゲームもただ翻訳するだけじゃなくて、中身のセリフとか物語も現地の文化に合うように全部書きおろしています。

『黒猫のウィズ』なんてクイズじゃないですか。だから、「日本の総理大臣の名前をあげろ」というクイズを翻訳してもしょうがないので、全部書きおろすわけですね。

さらに、実はゲーム性までテコ入れをしています。例えば、中国市場であれば課金をした人が目立たないと、実は売れなかったりするので。目立ちたいんですよ。

赤坂:文化ですね、それは。

千葉:日本人だと、課金してるのがちょっと恥ずかしいみたいな。「俺、無課金でがんばってるぜ!」みたいなのが、ゲーム上の美学だったりするんですけど、中国だと真逆。とにかく課金してるのがわかりやすく、色がついたりしてないといけないし。なんだったら100万円課金してる人だけの特別な色がないと、ユーザーの満足度が得られなかったり。

その文化によって、エンターテインメントはまったく変わってくるんですね。そこまでやりきって、それぞれの英語圏、中国語圏、韓国語(に翻訳する)。中国語圏といっても、台湾と中国ではまったく違うし。そういったことを地道にやっていくんですね。

琴坂:なるほど。するとどちらかというと、一人ひとりのユーザーの趣向にプロダクトの形を合わせていくという感じですね。

千葉:そうです。先ほどのエウレカさんとまったく一緒です。

小泉:確かに。僕がミクシィの取締役をやってるとき、中国の担当役員だったんですが、中国では、ミクシィの名前とかオレンジのポップな雰囲気とか、ファンクションは比較的近いんですが、中の見せ方はぜんぜん(違う)。

やっぱり日本人の奥ゆかしさというか、恥(という感情)をどうやってケアしてあげるみたいなところからすると、どうやって派手に見せられるかみたいなほうに、コミュニティの設計を変えました。

仮説を積み上げても、正解にはたどり着かない

琴坂:こうした海外市場に対する理解というのは、どのように醸成されていったのでしょうか。今はもう現地市場の特性や、勝つための方向性をある程度以上理解されていると思います。

しかし、それに至るまでには、どういう失敗や試行錯誤があったのでしょうか? もちろん、最初からすべてがわかっていたわけではないと思うんですね。あるタイミングかなにかをきっかけにして、何が重要なのかをつかんだと思うのですが、それは何がきっかけなのでしょうか。それは失敗(によってわかった)なのか?

赤坂:いったん出すというのが……。

小泉:「百聞は一見にしかず」なので、まず1回出してみると。そうするとだいたい、「あれ?」と。

赤坂:そう。だいたい失敗して。

小泉:「あれ? 失敗?」というところが感じられるので、どんどん改善していくという感じですよね。だから、そういうところはあまり変わらないんじゃないでしょうか?

赤坂:同じく。とりあえず出す。もう、明確に数字が悪いんですよ。日本とまったく同じサービスを提供してるのに、課金転換率が低いとか、ぜんぜん集客がうまくいかない。そういうのがいっぱい出てくる。そこの「なぜだろう?」を(改善していく)。僕らは現地に行って、台湾でインタビューをいっぱいやりながら数字を改善していきました。

琴坂:それ大事ですよね。これがイケてない企業の、現場を知らない経営企画部だと、まずアンケート調査をして、それから……。

赤坂:それはもう、意味ないんじゃないですかね。

千葉:意味ないです(笑)。

琴坂:完全否定されました(笑)。

小泉:とりあえずリリースがまとまらないと。

赤坂:リリースしてからじゃないと。だって実情感を見ないと、たぶん誰も信用しないですよね。机上の空論。

小泉:結局サイレント・マジョリティなのか、ノイズなのかというのをちゃんと見ないといけないので。やっぱり、データをしっかり見ないとわからないというのはありますね。

赤坂:学校のゼミとかもそうだと思いますけどね。

琴坂:出ていって、まず出していって。それで拾い上げてくる声をもとに変えていく。

千葉:そうです。いくら仮説を積み上げても、正解にはたどり着かないですね。

シリコンバレーで活躍するインド系アメリカ人

小泉:僕らは、2年半の会社なので、人数が少ないなかでやってるので、今、日米で同じ日本のエンジニアがやってるんですね。日本のエンジニアがアメリカに行ってたケースもあるんですけど、今はアメリカを優先的に開発してますね。

エンジニアの9割は、アメリカ用の開発ばっかりやってます。アメリカのユーザーが今ほしい機能をどんどん開発していって。

日本側をあとから、「日本版にこれ反映する? しない?」みたいな議論をしてますね。そのぐらい割り切らないと、やっぱりアメリカは取れないというか。さっき言ったように、すごいコンペティティブな環境なので。それは割りきっちゃってますね。

赤坂:日本人は改善が得意ですよね、やっぱり。

千葉:好きですよね。チマチマ……(笑)。

小泉:アメリカでなにをやってるかというと、FacebookやInstagramを使ってオンラインでマーケティングをやろうとすると、だいたいアジア系の人が優秀なんですよ。シリコンバレーでもアジア系ばっかり。

赤坂:うちもMatchグループの分析系はほぼインドですね。インド系アメリカ人。

琴坂:じゃあ、その対象としては台湾かもしれないし、アメリカかもしれないけど、実際関わっている人たちというのは、いろんな国籍の人がたくさんいて、アジア系かもしれないというような状況なんですかね。

小泉:アメリカは、CTOとかエンジニア陣はインド系がいないと話にならないというのがありますよね。アメリカは今、エンジニアの取り合いも半端ないんですよ。みんなすごいサラリー払いますし。「Uber」とか「Airbnb」とかはSO(ストックオプション)も出すので、取り合いで僕らサッと取れないんですよ。

そうすると、CTOだけインド系でとりあえずシリコンバレーに置いて。開発チームをインドに置くとか。あとは、アメリカのなかでも少し地方に置くとか。今、シリコンバレーで本当に開発している会社は、けっこう減ってきていて。

赤坂:インド系の人が増えると、インド系の英語が本当に聞き取りにくくて。

小泉:シリコンバレーに行ったら、「インド系の英語が聞き取れるようになったら1人前」と言われてますもんね(笑)。

赤坂:最初はなに言ってるか本当にわからないですよね。

小泉:実際に、日本人はすごく苦手だと思いますね。

金髪・ヒゲ・坊主の学生時代

琴坂:ちなみに会場のみなさんは英語どれぐらい話せるんですか?

赤坂:ちなみに僕は話せないです。

琴坂:じゃあ、英語で海外に住んだことがある人、手を挙げて。

(会場挙手)

琴坂:あれ、けっこう多い。

赤坂:海外に住んだことがある人はすごいですよね。

琴坂:それは1年間とかの交換留学ですか? 2年以上住んだことのある人?

(会場挙手)

赤坂:あ、いなくなった。

千葉:1年ですね。

琴坂:1年ぐらいという感じですかね。これから海外で事業してみたいと思っておられる方は、いらっしゃいますか?

(会場挙手)

けっこう多いですね。なるほど。

赤坂:それは、起業して海外なんですかね?

琴坂:起業ですか、それとも普通に働きたいだけですか? 誰かいらっしゃれば。

(会場挙手)

働きたい? 起業したい? ばくぜんとした状況なんですね。

小泉:大学生の頃は、こんな真面目に考えてなかったです。

琴坂:まあ、たしかにね。そうですよね。

小泉:僕、本当にみなさんの(年齢の)頃は、大学あんまり行ってなかったです。金髪でボウズでヒゲ生やしてました。

赤坂:さっき、免許証の写真を見せていただいたんですけど、もうひどい。金髪だし、ヒゲだし、もう悪い人ですよ(笑)。

小泉:大学、早稲田だったんですけど、ほとんど行ってないんじゃないですか。毎晩高田馬場で呑んでました。

赤坂:イベントサークルですもんね(笑)。

小泉:イベントサークルじゃないんだけど(笑)。早稲田でたぶん一番大きいテニスサークルの代表やってました。

赤坂:でも、今のリーダーシップにちょっとつながっている的な。

小泉:そうそう、まとめてたかも。

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