「金融機関の常識=世間の非常識」だった
マネックス松本大氏を奮い立たせた憤り

No.2では生き残れない。No.1企業の作り方 #3/4

MFクラウドExpo2016
に開催

「No.2では生き残れない。No.1企業の作り方」をテーマに開催された「MFクラウド Expo 2016」のセッション。アスクル岩田氏、マネックス松本氏、C Channel森川氏、マネーフォワード辻氏という、トップ経営者たちが登壇し、強い企業の作り方を語り合いました。本パートでは、主に、顧客志向をどのように徹底し、お客様の満足度を高めていくのかということについて話されています。

お客様満足はビジネスのセオリー

川上昌直氏(以下、川上):辻さん、いかがですか? この辺り、今、経営されているなかで?

辻庸介氏(以下、辻):僕はお三方とはあれなので。聞きたいことを聞いていいですか?

岩田彰一郎氏(以下、岩田):どうぞ。

:お客様のためって、全会社が言うんですけれど、それはメンバーもみんなそう思ってるんです。ただ、いざ、仕事をするとどうしても目の前の仕事をやらなきゃいけないとか、それをやるためにはどうしても隣のチームを説得しないといけないとか、瞬間的に大変なことが多かったりしますよね。

成功しないかもしれないですし、リスクを取るだけのリターンがあるのかとか、いろんなことを人間は考えてしまうと思うんですけども、それを超えてお客様のためにやるんだっていう意思決定をするチームにするために、どんな工夫をされてらっしゃるのかな、というのをぜひお聞きしたいです。

岩田:さっき愚直という話をしましたけれども、社内で勝手な格言を作っていて。「河童も川流れ」は、ありそうな格言なんですけど、勝手に作ったんです。お客様が上流にいらっしゃる。我々がお客様のところまで泳いで近づいていこうとする、河童だからどんどん近づいていける。でもよそ見していると、あっという間に川下でお客様との距離が離されてしまうんですよね。

本当に努力し続けても近づけないのが、お客様の満足だと思うんです。やっぱり泳いでないと、絶対にどんどん下流に流されていく。だから手を変え、品を変え、あらゆる状況のなかでそれをどう意識するか、体現するか、どう言い続けていくかというのが経営者の仕事かなとは思います。これはセオリーなんですね。

最初からお客さまのためになんでも努力します、そういう優しい人間、できた人間はそういないと思うんですよ。でも成功するためには、お客様満足というのは、これはビジネスのセオリーなんです。それを定期的に見るかどうかっていうのがビジネスマンの理念。

お客さまに対して真摯に向かい合うというのは、むしろ理性であり、そういう力がないとお客様指向はできないのかなと。自分もすぐダメになってできなくなって、河童みたいに川下に流れてしまうんですけども。それに気がつくと、一生懸命泳いでるんですけども。その連続じゃないかなと思います。

いかに消耗品にならないように価値をあげるか

松本大氏(以下、松本):証券会社はご存知のようにすごく難しくて、結局、マーケットが上がるか下がるか、誰もわからないですよね。だから我々オンライン証券は、積極的になにかを勧めることはしないわけです。ですが、棚・店頭に並べている商品・サービスをお客様が買われたりして、損することもあるんですよね。

そうするとなにが我々にとって重要になってくるかというと、お客様に向き合う姿勢です。例えばこのサービス・商品を自分の親にでも見せられるか、親にそれを勧められるのか。それが自分が約束できる唯一のことだと思います。それはよく社員にも言っいてます。簡単じゃないんですけど、でも、最後はそういうのが金融機関としては大切な境地だと思います。

森川亮氏(以下、森川):そうですね。僕の場合は、みんながハッピーになるのは難しいと思ってまして。みんながよいと言うものはむしろ、みんなが悪いという可能性があり、ある程度、成約条件とかを限定した方がいいような気がしてるんですよね。

ものすごく好かれる人は、ものすごく嫌われるわけですよ。ものすごく好かれてるということがイコールブランドなんです。そういう意味だと、この人たちを幸せにしたいっていうグループがあり、イメージがあり、そこに超絶に価値を提供するほうが長く続くような気がしますね。

川上:そう言う意味では、ある種、セグメンテイションというか、選んだほうに対して場を張るといいますか、一生懸命やるというイメージですかね。

森川:そうですね。その人たちにとってのマインドシェアが高いことを信じようみたいな感じですかね。誰でもできるものは競争も厳しくなるし、忘れられやすくて消耗品になると思うんですよね。だから、いかに消耗品にならないように価値をあげるか、それを継続的にやるためにはむしろ捨てることの方が重要かなと思いますね。

川上:辻さん、お話しをうかがってどうですか?

:いやあ、深すぎて。

(会場笑)

:すごくおっしゃる通りですし。それができないからいろいろ取ろうとして、いろんな人たちの意見を聞いて、中途半端なプロダクトができるというのが普通の会社で。普通にやっていればそうなり勝てなくなるのかなと思い、聞いていて納得です。

川上:辻さんも、すごくグラグラしてぶれそうなときはあるんですか?

:競合を見なくてお客様だけを見るというのは、すごく精神的には安定するというか、お客様のためにやってるので。よく社員には言うんですけども、別に競合が10やっても、だいたい成功するのは2個か3個くらいじゃないですか。全部が成功するわけじゃないので。その10に対して、10対応するのは疲れるので、お客様のほうだけを見ていることがすごく健全だし、頑張れると思います。

「金融機関の常識=世間の非常識」

川上:お客様満足というのは、みなさん、どこの会社でも必ず掲げられるところだと思いますけれど、なかなかこれが上手くいかないというところもあって。

これは松本さんにお聞きしたいんですけど。マネックス創業のときに、お客様のニーズをもとに商品設計するという当たり前のことが金融業界ではなされてなかったと。そこでいろんな取り組みをされるわけですが、そういったときに障害になったような、生々しいお話とかがあれば、ぜひお聞かせ願えますか。

松本:世の中のすべてのビジネスはお客様が最初ですよね。いくらだったら買うか、どういうものなら買ってくれるか。そこから始まるのに金融だけは、供給者側で全部決めて出しているわけです。あり得ないですよね、すべてのビジネスのなかで金融だけがおかしいんです。

「世間の常識=金融機関の非常識」「金融機関の常識=世間の非常識」みたいな、そういうことがいっぱいあるんです。それではいけないから供給者側に立つのではなく、利用者側の視点を持たなければいけないと考えました。それが、マネックスを創る起点になるんです。

私、実は前職を含めると、証券業界とか公証業界とかの役員を20年以上務めてきているので、日本中でおそらく役員経験が一番長いんです。大手証券やオーナー系の証券会社は20年経つと経営者が変わるんですよね、息子の代とかに。私が一番長経験があるので、さすがに最近はあまりイジメられなくなりましたが、

(会場笑)

松本:昔は、私がいろんな新しいことをやろうとすると、とにかくもう大騒ぎでした。あまりに大騒ぎになり証券業界のなかで「あれは本当にいいのか」という議論が始まったり、金融庁を巻き込んでいったり。いろいろな方面に働きかけていました。

それから、(辻氏を指差して)マネーフォワードさんの得意なアカウントアグリゲーションを我々は2001年くらいに日本で初めて始めたんですよ。当時、某大企業数社で10億円くらいのパテントを払い、カナダの会社からアグリゲーションのライセンスを買って始めようとしていたところ、我々はインドの会社で500万円程で開発を行っていました。

(会場笑)

松本:当社のお客様がアカウントアグリゲーションを使って銀行の口座情報を見られるとしたんですね。そしたら、「困るんだよな」「こういうことをやられると、経常の商いを止めざるをえない」と言われてしまったのです。でも当社としては「すみません。でも我々はお金を1円も借りていないし、御行に預金してるだけなんですが……」と(笑)。我々はお金を貸しているのであって、それを止めるざるをえないというのは、よくわからないですよね。

と、こんなこともあったりと、とにかく本当にこの15年くらいでずいぶん状況は変わりましたが、昔は、本当に普通の常識で考えるともう驚くような反発を買うみたいなことは多かったですね。最近はずいぶんないでしょ、そういうこと。

自分が続けるために譲れないものがある

:最近は。10何年か経って、NTTさんとか、SBIさんとかもやられて。たぶんマネックスが一番早かったんですよね。やっぱり10年くらいかかってますよね。

僕も松本さんの下で働かせてもらっていて、「よくこんなことをやるな」と思ってました。「こうあるべきだ!」とか言って、社員がみんな「いや、そうなんだけどそこまでいくの大変だなあ」みたいな。なんでそんなに?

松本:やり方とか価値感とかを妥協すると、続けられないですよね。自分が続けるために譲れないものがあるんだと思うんです。

川上:午前中にちょうど野口先生(野口悠紀雄氏/早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問・一橋大学名誉教授)が、フィンテックの話をされて。どんどんテクノロジーでできることは増えているんだけど、規制がそれを邪魔する。あるいは慣行がそれを邪魔するということだったので、まさに今のお話はそれなんです。

松本:フィンテック! いいですか? フィンテックで思うところがあります。オンライン証券の一種がフィンテックだと思うんですが、僕らが創業したときには東証があり、保管振替機構という国がやっている株券を預かる場所があり、先ほども言ったように野村證券さんとかが株券の移管を簡単にしてくれた。そうするとあとできることは、アプリケーションやサービスの部分なんです。

たとえばソニーの株だったら、どの証券会社で買っても同じ値段で国が管理してくれるので、あとは手数料やサービスをどうよくするか。そこで戦うから我々は野村證券さんと対等の立場で戦えたんです。だからさっき言ったように、あっという間に8割の取引をオンライン証券が扱うようになった。

今、フィンテック企業は銀行さんとのお付き合いがいろいろ多いと思うんですけど、それは銀行にとっての1アプリケーションなのか、あるいは銀行業務の一部がフィンテックスタートアップでもできるように法律とかが変わるのか。そこにスペースができると、いっぱい入ってくるわけですよね、俺がやるんだと言って。そういうふうに現場を変えていかないといけない。

金融庁とかが、フィンテック企業を盛り上げよう、助けようと動いていますが、そんなのいらないと思うんですよ。支援金のようなお金もいらない。スペースだけあればいい。ところが法律は銀行法とかで銀行がもっといろんなことができる方向に変えようと進んでいる。それは違うと思うんです。スペースを作ることが一番大切だということを、我々、フィンテックに関わる人間は、もっと国に対して言わないといけない。「スペースを作ってください」と。

シンガポールは新フィンテックオフィサーというフィンテック大臣を政府のなかに作り、特区を作り、2020年までにフィンテックでGDPを12パーセント増やそうって言ってるんです。シンガポール内の経済を12パーセント増やすのではなく、そういう特区を作ることで、世界から呼び込んでしまおうということですよね。スペースを作るからいろんなタレント(才能)とかお金とかいろんなものが入ってくる。

日本も金融庁とか経産省にもかけあったりして、そうしていかないといけないと思います。マネーフォワードさんのためにも。

:(笑)。

チャレンジャーとして、いかにお客様の支持を得るか

松本:ただ、実際に銀行さんと一緒にお仕事されている企業はなかなか言えなかったりすると思います。私は、直接に関係があまりないのでいろいろ言っておりますが、そうなるとよいかなと思っております。

森川:日本はあいまいな法律が多いじゃないですか。会社フローによっていけそうなんだけど、大手が別の解釈によって潰しにくるって、そういうのありますよね。そうすると法律ができちゃって「結局、ダメだ」みたいな。だからもう、明確にしたほうがいいなと思うんです。

岩田:それは民間でも同じで、我々もアスクルがスタートしたときに、今でも忘れないんですけども、「もう買いに行かなくていいね」というチラシを撒いたんです。そしたら俺の商圏にチラシを撒いてけしからんという話になって。“アスクル問題”として、業界では問題になりまして。新聞等にも載って、不売運動をしようとかという話しにもなって。

だから、お客様がいて自分の欲しいサービスを普通に買えばいい、法律もなにもないなかでも、そういう構造というのが、金融というのはもっと厳しいし、これからもっと時代が変わっていくなかで日本の自主規制というか、法律がないところでの規制というのが、みなさんがこれからいろいろチャレンジしていくときの障害になっていくんですけど。

それを支持していけるのは、お客さまなんですよね。お客さまに支持していただいたら、社会自体も変わってくるので。そういう意味で、チャレンジャーというのはいかにお客様の支持を得るかということが大事だなと思います。

「これは絶対失敗する」と毎回言われて

川上:みなさんにひとことずつお聞きしたいんですが、そういう意味では一般的な経営者の方が考えていらっしゃるお客様満足という基準は甘いとご判断なさいますか?

(登壇者全員、考え込む)

川上:まだまだ、もっとお客様のことを考えなきゃいけないぞ、と思われますか?

森川:BtoBとBtoCでまた違うという気がしますけどね。BtoBの場合はお客さんがついてこれない場合もある、お客さんが自粛しちゃうとか、委縮しちゃう。クラウドファンディングはまさにそうでしたね。法律上、別になんの問題もないのにみんなクラウドは怖いという概念があって。なんかこうやりきれなくなる。そこらへんが日本は難しいような気がしますけどね。

:そうだと思います。全員が使うサービスってすでに存在するべきなので、新しいサービスは本当に一部のアーリーアダプターとか、イノベーターの方が使い出して、そこでよいものだったらリスクを軽減しながら価値を上げて、デメリットを下げていくみたいな。それは最初の作り手の責任というか、やりがいなので、セグメントを決めるのは大事だなって思いますね。

森川:おっしゃる通りですね。僕の場合はだいたいBtoCが多いんですけれど、いつもやり始めると、「これは絶対失敗する」と、毎回言われるんですよね。一番言うのが、だいたいオジサンなんですよ。オジサンから毎回「お前やめろ」と言われて、ある程度いくと、「やっぱり当たると思ってたよ」と。

(会場笑)

森川:BtoCの場合は、子供とか、若い女性とかが比較的柔軟に受け入れて、最後にオジサンが来るという感じですね。

川上:そういう意味ではBtoBというのは顧客の像が見えにくいので、より?

森川:BtoBが難しいのはオジサンが相手だからですよ。だからなかなか変わらない。なるべくオジサンでも若いオジサンがいる会社を相手にしたほうがいいかなと思いますね。

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