投資家の仕事を選んだのはなぜ?
起業家を影で支える、ベンチャー投資家座談会

ベンチャー投資家座談会 投資の可否をわけるポイント #1/2

DeNA Career Vision Forum
に開催

2016年2月27日、DeNAが新卒向けのイベント「DeNA Career Vision Forum」を開催しました。「ベンチャー投資家座談会 投資の可否をわけるポイント」には、松山太河氏、佐俣アンリ氏、川田尚吾氏の日本を代表する投資家3名が登壇。前半パートでは、投資家の仕事と投資家の視点から見たスタートアップについてディスカッションしました。

提供:株式会社ディー・エヌ・エー

ベンチャー投資家座談会 投資の可否をわけるポイント

南場智子氏(以下、南場):このセッションでは、2つのテーマを感じてほしいと思います。1つは投資家という職業について、投資をする側はどういう仕事をしているのかという話です。もう1つは、投資をする側から見たスタートアップというのは一体どういうものなのか。

この2つの視点がありますので、「今どっちの話をしているのかな?」と混同しないでください。投資をする側の仕事とスタートアップについて語っている部分と2つ出てきます。

それぞれに私がめちゃくちゃ尊敬する3人で、いろいろな意味で接点を持っています。とりわけ川田さんは一緒に創業して、たぶんうちの旦那以上に私のことを知っているかなり濃い関係の創業パートナーです(笑)。

(会場笑)

それからアンリくんと太河くんは、業界で最も尊敬されているVC界の代表ですね。本当にこの3人の話を一挙に聞けるというのは贅沢です。帰るときには触って帰ること(笑)。まず1人ずつ、自己紹介をお願いします。

松山太河氏(以下、松山):East Venturesというベンチャーキャピタルをやっている松山太河と申します。

私は早稲田大学を出て、そのあとすぐに投資を始めたわけではなくて、ネットエイジという会社でインターネット・サービスを作る側をやっていました。そのあと、20代の終わりくらいから投資業界に入り、20年くらい投資をやっています。

代表的な案件としては、フリークアウトさんとかGunosyさんとか。未上場ですが、1000万ユーザーを超えたメルカリとかツイキャスなどのサービスに、だいたい数千万から数億くらいのレンジで投資をしています。

ファンド規模としては、いま100億円くらいをお預かりしていて、それを「この人はできるな」というベテランには少し多めに、「まだちょっとわからないけれど可能性がある」という若い方には少なめですが出しています。

あと年齢もあるのですが、僕は比較的若い人にも出していて、最近だと20歳とか21歳、去年一番出したのは21歳に1億円投資しました。年が若くても、すごく才能があると思えばけっこういっぱい出します。

そういう仕事をして、それがうまく上場なり会社が売れたりすると、キャピタルゲインが入ってきます。日本国内にいま50パーセント、アジアに30パーセント、アメリカに10パーセント、その他10パーセントくらいの割合で投資をしています。

南場:自己紹介の途中だけど、100億円は誰のお金か説明してくれる?(笑)

松山:まず、1つは南場さん(笑)(DeNAのこと)。あとはいわゆる国内のインターネット企業ですね。サイバーエージェント、DeNA、グリー、コロプラ、ミクシィ、Yahoo!、そういった会社もしくは創業者の方々から預かっているのが8割くらいで、残りの2割は金融系の方や投資ファンドの方々です。

南場:わかった? 自分のお金じゃないんだよね(笑)。

(会場笑)

南場:自分のお金でやる人とほかの人のお金をファンドとして組成してやる人とがいるということです。

松山:はい(笑)。なので、ほかの人のお金を預かって運用する人のことをベンチャーキャピタリストと言って、川田さんみたいに自分のお金で投資する人をエンジェルと呼びます。

南場:ありがとうございます。佐俣さん、お願いします

丁稚奉公からVCの道へ

佐俣アンリ氏(以下、佐俣):こんにちは! 元気にいきましょうかね。佐俣アンリといいます。

大学生の頃に行ったイベントにいたベンチャーキャピタルのおじさんが、DeNAに投資をした村口(和孝)さんでした。言っていることがめちゃくちゃで、明らかに物事を説明するのがうまくないなおじさんというのが当時の印象なんですけど……。

すげえかっこよくて、村口さんの影響で大学生の頃からずっとベンチャーキャピタリストになりたいと思っていました。

社会人を2年やったあとに、松山太河さんのところに丁稚奉公で「働かせてください」と言って、初めてもらった仕事がアロンアルファと鮭おにぎりを買ってくるという仕事で、今でも忘れられません。あと、家の引っ越しというのがありましたね(笑)。そのあと、4年前に自分のファンドを組成しています。

僕はすごい変わり者で、みんながイチローを好きだと言うときに、「イチローのバット、すごくねぇ?」みたいなことを言う、若干ゆがんだタイプです。自分で起業せずに、起業家を応援する仕事がひたすらしたくて今に至ります。

僕も太河さんと同じで、わりと若い人に投資をしているので、みなさんはお客さんです。みなさんのような人に、お金をどんどん渡していくような仕事をしています。

いまファンドの規模が20億円。僕は26歳のときに独立しており、いっさいお金を持っていなかったので、いろいろな人に「500万円僕に預けてください」と言って、自分で集めたファンドがいま20億円です。今日はよろしくお願いします。

南場:川田さん、お願いします。

バブル時代に学んだ投資のリアル

川田尚吾氏(以下、川田):川田尚吾です。よろしくお願いします。

僕は、今からたぶん四半世紀くらい前ですが、ネットバブルではなく土地バブルの頃のバブル世代でもともと学生ベンチャーをやっていました。

いま学生ベンチャーというと華やかな感じがして、合コンに行くとモテそうですが、あの時代、学生ベンチャーをやるというと完全にドロップアウトで、大学を中退してパチプロになりますとか、ホストになりますというのと同義語で、かなりアウトローな感じでした。

だけど、本気で学生ベンチャーをやっていたのが、日本全国でたぶん100人くらいはいたと思います。僕もそのたぐいでした。まだネットがなくて、いいプロダクトが作れなくて、あまり儲からなかったです。とはいえ、いろいろなアイデアはありました。

当時は横にいる2人みたいな人たちはいなかったので、お金がなかなか集められず、銀行から借りるしかないわけです。あの頃のお金を持っている人たちは、新しいテクノロジーとかには(お金を)出さず、どうでもいい地べたにお金を突っ込んで、ゴルフ場とかを作っていました。

僕のもう1つの顔は、ドクターまでとっているので研究者というか、大学院で研究もしていたので、やはりテクノロジーに非常に興味がありました。そのテクノロジーにお金がいかないという現実を日本で見ていて、これはダメだと思いました。

年寄りに金を持たせては絶対いけません。「これは全部俺が改革」と思ったのが20歳くらいの頃です。

そこから長い旅に出て、ドクターを取ったあとコンサルティング会社に入って、南場さんと一緒に99年に起業してDeNAを上場させ、ようやくお金ができて投資する側に回れたのが2008年です。

そこから個人のお金でいま30社くらいに投資していて、上場した会社だと、太河のところと一緒で、フリークアウトとか今週上場したはてなとか、あとはまだ未上場だけど調子がいいところだと、スマートニュースとかウォンテッドリーとか。そういったところに投資しています。

投資家は日々何をしているのか?

南場:ありがとうございます。それでは、投資の仕事について、どういう毎日なのかとか、これまでのなかで一番迷った投資とか、あるいは後悔したときとか、迷った末に非常に良かったといった、一番思い出に残る判断を話してもらえますか。

松山:僕はフリークアウトが一番初めの投資先というか、もともとフリークアウトの本田(謙)氏は2社目の起業がフリークアウトなんですけれども、1社目と2社目の両方に投資させてもらっています。

本田社長はもともと僕の高校の同級生で、千葉東高校1年生の頃からの友達なんですけれども。彼は基本的にはエンジニア社長だったので、プログラミングはすごくうまいけど、営業とかその他のことは得意ではないタイプでした。

結果的には初めの半年くらいは、僕はどちらかというと、人の採用とかお金を集めてくるとかビジネス面を手伝って、彼はプロダクトに専念したという感じで、結果的にいまは社員百何十人の立派な会社の経営者になって、ビジネス面もぜんぜんできるようになってきています。

そういう意味でいうと、人というのはそのときはできないことでも、だんだんできるようになるものだなということが、結果的にすごくよくわかりました。

佐俣:ベンチャーキャピタルの仕事は基本的に2つしかなくて、お金を集めることとお金を投資することです。ベンチャーキャピタルは空っぽなんです。基本的に自分はお金を持っていないので、人のお金を預かってやる商売です。誰かに「お金を預けてください」と言うことと、誰かに「お金を預かってください」という2つしかありません。

1つは、DeNAさんみたいな大きい会社とか、成功している会社に、「こういうふうにファンドをやって、成功しようと思っています」というのを話しに行くこと。

もう1つは、みんなと、「なんかさぁ、今度はこういうインターネット来ると思うんだよね」みたいなことを話しながら日々お茶をするということで、1日に6件くらいお茶をしています。一番の勝負はコーヒーで胃がやられないかという(笑)。

松山:人に会うタイプ、会わないタイプというのがいて、僕はどちらかというと人と会わないタイプで、アンリはすごく会うタイプで、それは両極端です。僕の場合は断るのが下手で、会うとなんとなく断るのが難しくなるので、いろいろなタイプがいるなということです。

川田:僕もどちらかというと会うのがあまり好きではなくて、一番幸せなのはなんか手を動かして書いていることとか。投資家向けの資料なんかは、「いいよ、オレが作るよ」と言って書いちゃったり、「このランディングページイケてないから俺にいじらして」とか言って10パーセントくらい数字が上がったり(笑)。

本当にやりたいんだけど。実は最近、僕が出しているバリューの8割くらいは夜の席ですね。

南場:マジ?

川田:なにかというと、2つあります。1つは、会社ってちゃんと回っているときは実は投資家のサポートはあまりいらなくて、ちょっとリクルーティングで人を連れてくるというサポートはいるのだけれど、ちゃんと立ち上がってきた会社は、ランディングページをやらせるというのは別にいらないのです。

投資先のありえないトラブル

本当に投資家が求められるのは、例えば内紛が起こるとか、あるいはすごい事件が起こるとか。それは後ろ向きですが。

前向きは夢を含めた大きなアライアンスの話とか、資本がからむような前向きな案件が多いですね。法人営業的なものから調停みたいな話がきますね。

投資家というか資本家の役割として、マネジメントレベルでは解決できない問題が上がってきてしまうんです。前向きなものもあるけど、後ろ向きなものもけっこうあって、それをやはり夜の席で呑みながら調停しているみたいな……僕が一番嫌いだった(笑)。もう政治家みたいな。

南場:そうだよね。私も会社を立ち上げたときには、今だとぜんぜん慣れているけど、大惨事でシステムが突然ダウンしたとか、データセンターで誰かがちょきんと切っちゃうとか、信じられないような言いがかりをつけられるとか。

そういうのって、最初はやはりすごく大きなことなんだよね。どう対処していいのかわからないので、DeNAに出資していた村口さんに相談したり。そういうときは会社に駆けつけてくれたりしたもんね。

川田:そういうディザスターがあって行くと、最初はA4で5枚くらいの論文みたいなお詫びメールが出てきて、昔南場さんがやってたみたいにこれいらないよとか言って、僕と起業経験のある2人で添削して短くしたり(笑)。

佐俣:投資家は事業に直接さわっていないので、わかるとすると、僕もとんでもない数のトラブルを見ています。最近、自分の中でマイブームだったトラブルは、投資先の一社が社員の1人がソースコードを持っていなくなったという事件がありました。これは死ぬほど笑って、「大変です! 行方不明になりました! 連絡がつきません!」っていう事件があって、それは解決したんですけど。

南場:解決したの?(笑)

佐俣:それは見つけ出すっていう。「大変です、行方不明になりました」と言って死ぬほど謝りまくったことがありました。

投資家のやることは、そういうトラブルのときに、「死なないから大丈夫だよ」と言ってあげるっていう。妊婦さんに対する産婆さんのようなもので、「逆子です! どうしましょう?」と言われても、「20人に1人だから、だいたい大丈夫だよ」みたいなことを言ってあげること。

トラブルをいっぱい見ていて、だいたいのトラブルはなんとかなるんですよね。初めて見るとわけわからないから、たくさんトラブルが起こっていると、「まあ、それはよくあるよ」みたいな感じで動揺しない。動揺していても、それを出さない。僕はどちらかというとそういうのが好きで、火事場が来ると「よし来たっ!」っていう。

この前のソースコードを持って消えるというトラブルは初めてだったので、うれしかったですね。「これでオレもさらに強くなれたな」と(笑)。

南場:そういう意味では、川田さんとアンリは似ているよね。「来た来た!」というのは。

川田:やっている側としては、悩みもあります。よく経営者には「選択と集中が重要だ。やはりイケてるところにリソースを集中すべきだよね」とさんざん言っておいて、自分は夜どうしているかというと、会社がうまくいっていない、イケてない問題が起きているところに呼ばれるわけです。イケてるところでは、僕がいてもかえって邪魔なわけです。ちゃんと体制もできて回り始めているところは。

そのへんの矛盾も感じつつ、まあ投資家というのはそれが仕事かなということが、最近わかってきました。

ベンチャーキャピタリストの良し悪し

南場:太河くんは最初コンサルティング会社に行って、それからネットエイジに行って積み上げて、やはり信頼があったよね。私はネットエイジのときに出会っているのだけれど、業界でもう有名な人だった。

川田さんも創業して上場させて、自分でもしっかりとアセットを築いたし。アセットというのは財産だけでなくて、レピュテーションを築いて、信頼を得てやっている。

アンリさんは、最初からベンチャーキャピタリストになりたくて、若くして大学を卒業したぐらいで投資家を選んだのだけれど、「どうなのかな?」というのは、正直私もあるんだよね。

もちろん経験だけではなく、リレーションとか人格とかいろいろあるから、経験がなくてもできる人は実際できているのだろうけど。だけど普通だと、起業した経験がなくてトラブルにビビらないというのも「大丈夫かな?」と思ったりするわけ。そのへんちょっとアンリくんとか太河さんとか、川田さんも忌憚なく言ってほしいんですが。

佐俣:基本的には、なんらかの経験があるに越したことはないなとは思います。ただ、僕がいつも思っていたのは、「やりたくなったらしょうがないでしょう」というのが大前提ですね。

逆に、失礼というか、もったいないと思うのは、若い人に「オレ、すごく投資家になりたいんで。投資家になるための経験を積むために起業してるんですよね」と言われたら普通にムカつくんです。「落ち着け」みたいな。長くかかるし、そんな「ステップとして起業してるんですよね」みたいなやつに投資家として一緒に戦いたくないなと思います。

南場:太河さんはどう思う? アンリさんが太河さんのところで丁稚奉公したりしてるし、いろいろ見ているわけじゃない。

松山:そうですね。けっこう大変な仕事ではあります。ほかの人のお金を預かって損をさせたりということも可能性としてはありますし、投資したベンチャーが潰れるということも起こりうるので。

そういう一定のストレスに耐えられるのか。成功だけではないので、僕はやはり修行は必要なのかなという気はしています。

ただ修行と言っても、起業からそっちに行くのか、もしくはベンチャーキャピタルとして修行していくというやり方もあるかなと思います。

日本だと、一番大きいジャフコというベンチャーキャピタルもあり、そこは新卒で入れます。独立系も10社から20社くらいの我々のようなベンチャーキャピタルがあって、そういうところでアソシエイトとして若いところから修行していくというやり方もあるのかなと思います。

南場:誤解を恐れずに言うと、日本の金融系のベンチャーキャピタルってさ……これはオフレコだけど、基本的にはみんなサラリーマンだよね? 

私は会社を立ち上げて、川田さんと2人で大変な相撲をとっていたときに、日経新聞に「元マッキンゼーのハーバードMBAの南場智子さんが、ソニーとリクルートの出資を得て会社を立ち上げた」と出た日から、すごい勢いでベンチャーキャピタルの人が訪問してきて、なんの話も聞かないで「5000万円融資させていただけますか?」「1億はダメでも、5000万だけでも」とか言ってきて、最後の帰り際に振り返って、「そういえばなんの事業をしているんでしたっけ?」って(笑)。

松山:それについては、日本のベンチャーキャピタルにはかなりの差があることは知っておいたほうがいいと思います。僕が尊敬しているマイケル・モリッツやジョン・ドーアというベンチャーキャピタリストがアメリカにいるのですが、彼らはAmazonとかGoogleとか、ある意味世界経済を支えるような会社に投資をしていて、いまNASDAQに上場している内のおそらく10パーセント以上を投資して作ってきたというようなレベルの人から、南場さんがおっしゃった普通の銀行の営業マンみたいなレベルの人もいて……。

南場:そういうところで修行しても身になるものですか?

いい起業家は投資家を選ぶ

松山:いいえ。ベンチャーキャピタルはいわゆる金融業とは違います。ベンチャーキャピタルは属性としては金融業ではあるのですが、ファンナンスではなくて、むしろオペレーションというか、事業に限りなく近い業種です。

川田:実務で金融っぽいのが5パーセントくらい。ファンドのストラクチャーを組むとか投資の契約を結ぶとか以外の95パーセントは、本当に雑務の塊です。

松山:例えば、公認会計士の資格を取ってキャピタリストになるというルートはあまりなくて、大きな投資会社に入ってからキャピタリストになるというのもあまりないと思います。

佐俣:ちなみに南場さんの話でいくと、僕は逆にすごいチャンスだと思います。日本のベンチャーキャピタルというのは、世界で唯一サラリーマンだらけというとても変わった市場で、独立系とすごい差があるんです。これは起業のマーケットとして見ればすごいチャンスです。

インターネットがこれだけ普及しているのに、インターネットベンチャーがDeNAしかなかったら、DeNAの真似をするだけでもなんとかなるんじゃないかと思います。起業家としてベンチャーキャピタルをしている人はまだぜんぜんいないのです。

川田:独立系が出てきたのはここ数年だよね。だから逆に言うと、まだ独立系がぜんぜん足りないので、これからは独立系であるというだけで、ちゃんと仕事ができる時代があと数年くらいあるかもしれないのだけれど、一方でその先も見ていったほうがいいです。

10年後、20年後を見ると、やっぱりいい起業家は投資家を選ぶと僕は思います。どういう投資家を選ぶかというと、基本的に2つしかないと思っています。

1つはプロのVC。これはやはり、金融の仕事があまりないと言いつつも、昔に比べれば、いま例えば優先株を使ってラチェットが入ったり、いろいろな金融的な仕組みを使って株価を上げて、あまり創業者の持ち分を薄くせずに投資をするというリスクヘッジの手法がけっこう複雑になってきているのです。

そういういろいろな複雑な資本の調達のやり方を、どういうタイミングで、どういう手法でやっていくかというのはけっこう難しくて、ここはやはり専門的なアドバイスが必要な領域だと思います。

それをちゃんとできるプロっぽいキャピタリストと、もう1つは、事業の現場で相当苦労した人。そういう人からのアドバイスは、実際ほしいし、そういう人に「20人に1人は逆子ですから」みたいなことを言ってもらえれば安心できる。その2つのどちらかがあったほうがこの先、やっていきやすいのではないかと思います。

投資家が見る日本のチャンス

南場:最近DeNAとしても、この3人とのつき合いが増えているのですが、ほかのベンチャーキャピタリストって自分の持ち分を1パーセントでも多くしようとするけれど、この人たちは起業家がどれだけやる気になるかということがどれだけ大事かをわかっていると感じます。起業家の側に立つというか、そういう良さを、別の立場で付き合っていて感じるところがあります。

それで今、このような独立系の一流のVCが出てきましたと。その前は村口さんだけみたいな感じだったのが、いま一流のエンジェルやVCが独立系で出てきた。

そうは言っても、去年のアメリカのVC投資が5兆円で、日本は1000億なんですよね。50分の1という、数字も違うし、レベルもまだ差がある。このギャップについて感じるところはありますか?

松山:まあ歴史がぜんぜん……。感覚的には40年くらい遅れています。ただ、僕はこれからものすごいチャンスだと思っていて、結局、今ものすごく大きな目で見ると、完全にアジアの成長の時代に入ってきているということです。

今までは、アメリカ、ヨーロッパが中心の経済成長が1960年くらいから40年くらい続いているのですが、ここに来て、向こう20年、30年はアジアのグロースが来ると思っています。

そのなかで、インド、中国……僕はインドネシアにも投資をしているのですが、そういうところが伸びてくるなかで、日本が場所的にはシンガポール的な立ち位置を取れるような気もしています。時差がないからかなり有利なんです。

時差があると、夜中にスカイプ・ミーティングをしなければいけなくなります。その地政学は重要です。その利点を日本で取れているところがあるかというと、まだまだ少ないのですが、僕はけっこうチャンスが来ているのではないかと思います。

あと、日本がものすごい低金利で、いま銀行に預けるとほぼゼロ、0.001パーセントです。これは、運用次第ではすごくチャンスだと思っていています。要するに、お金が眠っていても増えない時代になっている中で、リスクを取ってでも事業収益、投資収益を取っていこうという流れになるのではないかと思っています。

総量としては足りないのですが、ただ気持ちを切り替えれば、仮にみなさんが起業家になるとしたら、日本はそういう環境にあるわけです。

アメリカの50分の1のファンナンスのお金しか流れていないですが、マーケットをちゃんとグローバルで見て、投資家もグローバルに集めていくのだという気持ちを持った瞬間に、それは言い訳でなくなると思います。

日本とアメリカのVCの差

南場:そうだね。川田さんは?

川田:今のはマクロな話なのでミクロな話でいくと、例えば僕が今よく一緒に投資をしているアメリカ人がいます。彼はもともとジフ・デービスというコンピューター雑誌の元社長だった60歳くらいのナイスガイで、僕は仲良くしているのですが、彼はいまだに現役でどんどん投資をしていて、Pinterestがまだバリュエーション1億円くらいのときに出資をしていたとか、あとMashableというアメリカで有名なIT系のメディアがあるのですが、これも初めての外部投資家として入れていたり、けっこういいところにいっぱい入れています。

彼のコネクションでRichという、アメリカのネット系では課金モデルをうまく回している『ウォール・ストリート・ジャーナル』のネット版を立ち上げた人がいます。その人が、スマートニュースに入社してくれたりとか、そういう人のつなぎも全部やってくれる60歳がいるんです。日本にそういう人いるかというと、いないですね。

それくらい歴史が違うんです。アメリカには、そういうグレーヘアで、業界にコネクションがあってお金もあって出資するみたいな人がいっぱいいて、その積分値だから当然金額も多いんですが、日本ではそういう人はいないです。

佐俣:アメリカには、起業して成功してお金持ちになった人が、その知識とお金を次の人に渡すというサイクルがある。シリコンバレーには50年くらいの歴史があって、たぶん7周目くらいまで来ています。日本はまだ3周いっていない。

孫正義は世界No.1の投資家

川田:さっきの話に戻ると、僕が学生ベンチャーをやっていた頃には、本来そういう新しいテクノロジーとか新しい領域にお金を突っ込むべき人たちがゴルフ場に金を突っ込んだ。ゴルフ場に(笑)。かたやPinterestとかに入れたわけですよ。この差ですよ。

20年前には、ビル・ゲイツもスティーブ・ジョブズも現役でバリバリやっていて、そこにはマイク・マークラとか有名なエンジェルの投資家が出資している。そういう人たちが、あの時代からいたのです。

松山:日本でもすごく大きい投資家が出る可能性はあって、実例も出ています。孫正義さんという人です。あの人は社長ということになっているけど、僕は投資家だと思っています。

ソフトバンクは、実体としての評価のうちの8割くらいが投資事業だなと。中国のアリババとかインドへの投資とか、孫さんもマーケットをグローバルで見て、いい会社に投資して、実績を上げている。

もし日本にいい会社がなければ海外に投資すればいいという発想を持っていれば、それはそれでかまわない。

佐俣:MIDASというベンチャーキャピタリストのランキングがあるのだけれど、去年1位の人のキャピタルゲインの5倍から10倍くらいを孫さんが稼いでいて。すごすぎて意外にふれられていないんだけど、孫正義というのは世界ナンバーワンのベンチャー投資家です。

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