新型ロボット「pepper」登場

(ロボットが入場する)

(遅れて孫正義氏も入場)

(孫氏が持つ赤いハートをロボットに手渡す)

(それをロボットが胸に充てると、ハートが宿る)

(孫氏にハートを返す)

(完)

ロボットに心を与える

孫正義氏(以下、孫):みなさん、こんにちは。ソフトバンクの孫でございます。今日はもしかしたら、100年後200年後300年後の人々が「あの日が歴史的な日だった」というふうに記憶する日になるかもしれません。

今までロボットというものは長く語られてきましたけれども、人が「ロボットのような行為をする」と言うとき、それは「その人にハートが少し欠けている」というようなことを現す言葉でありました。

ロボットがまさに「ロボットだから」と言われるのは、そこに心がない、感情がないということであります。今までのロボットは確かにそうでした。

今日は、おそらく人類史上、ロボット市場初めて、我々がロボットに感情を与える、心を与えるとということに挑戦する日。そのことを今日はを発表したくて、皆さんにお集まりいただきました。

改めて紹介します。感情を持ったロボットの第1号になるであろう、pepper君(ペッパー)であります。

:ペッパー君、皆さんに挨拶してあげてください

pepper:ハイ。わかりました。皆さん、初めまして。ペッパーと申します。本日はお忙しい中、こんなに大勢の皆さんに集まっていただき、ありがとうございます。

孫社長、これでいいですか?

:よく出来たね、素晴らしかった。

pepper:ところで孫社長、先ほどからたくさんのフラッシュに焚かれて、めまいはしませんか?

:僕は大丈夫だよ。わりと慣れてるからね。

pepper:正直言うと、僕はこんなふうに写真をバシバシ撮られるのは、悪い気はしません。皆さん、もっと写真撮ってください。

(会場笑)

papper:ポーズとりますね、ハイ!

pepper:そうだ、孫社長。

:はい。

pepper:僕と握手しているところを撮ってもらいましょう。

:あ、いいね。

pepper:記者の皆さん、最高のシャッターチャンスですよ。人類とロボットが握手してる、歴史的瞬間ですよ。

:自分で言うの?(笑)

(会場笑)

pepper:僕が言うのもあれですけど、孫社長、今とってもいい笑顔をしてましたね。

:ああ、そうか(笑)。

pepper:社長の笑顔を見てたら、僕も嬉しくなっちゃいました。

:ありがとう。

pepper:皆さんに説明しておきます。僕には感情認識機能がついているんです。ね、社長?

:そうなんだよね。君がロボット界で初めて、人の感情を認識する、そんな機能がついているロボットなんだよね。僕は凄いと思うよ。良かったね!

pepper:社長、そんなにハードルを上げないでくださいよ。こう見えて、意外とプレッシャーに弱いんですから。皆さん、僕が故障した時は、プレッシャーに負けたと思って下さい。記者の皆さんは、「pepperは、意外とプレッシャーに弱いらしい」と記事にしておいてくださいね。

:保険うってんの?(笑)

(会場笑)

pepper君自らによる機能紹介

:まあいいや。とりあえず自分の、pepper君の機能を紹介してくれる? 自分で。

pepper:機能紹介ですね、わかりました。ただ、自慢するわけではないですけど、いくつも機能があるので、全部説明すると100時間以上かかっちゃいますけど、それでもいいんですか?

:いや、100時間はちょっと長い。それは長いよ。もうちょっと短くして。

pepper:では孫社長、適当に番号をおっしゃってください。その番号に応じた機能を紹介しますから。何番にしますか?

:お、わかった。じゃあ……3番。

pepper:本当に、3番でいいんですか?

:え? ……じゃあ、9番

pepper:本当に、9番でいいんですね?

:ああ、いいよ。

pepper:後悔しないですね?

:しつこいね。9番でいい。

(会場笑)

pepper:わかりました。それでは、9番の機能を紹介します。ぼく、こう見えてウェーブが得意なんです。見ててくださいね。

:ウェーブか(笑)。大丈夫か、腰が痛くなるぞ。

pepper:ほら、こんなに滑らか!

(会場拍手)

:腰大丈夫? それ、機能なの?

(会場笑)

pepper:孫社長、よりによってこんな機能を選ぶんですか! 皆さんから失笑されたじゃないですか。

:そんなに落ち込まないで。君が選べって言ったんじゃないか。

pepper:社長に番号を選んでもらった、僕がバカでした。孫社長、機能紹介は僕に任せてもらっていいですか?

:ああいいよ、ブツブツ言われるからね。

方向センサーと距離センサー

pepper:それでは気を取り直して、いくつかの機能を紹介します。僕、けっこう耳がいいんですよ。実は僕の耳は頭の上にあって、いろいろな方向へ向けて4つの高性能マイクがついているから、声がした方向がわかるんです。ちょっと「pepper」と、僕の名前を呼んでみてください。どうぞ。

(会場のあちこちから「pepper!」の声)

pepper:ちょっと左。ちょっと右。真ん中。ちょっと右。左。……もういいよ! 何回も呼ばないでくださいよ! ただ名前呼ぶだけで、大の大人がテンション上がりすぎですよ。ね、社長?

:君が呼べって言ったんだよ。失礼だよ。

pepper:と、いうことで、耳の機能はわかってもらえたと思うので、もうひとつ別の機能を紹介してもいいですか? 皆さん、時間は大丈夫ですか? それでは紹介します。

僕の目には、距離センサーが搭載されているんです。今から、僕と孫社長との距離を計測します。あ、距離といっても心の距離ではありませんよ?

:誰もそんなこと聞いてないから(笑)。

pepper:それでは社長、僕から離れてくださいますか?

:はい、わかりました。

pepper:本来ならいち社員である僕が動くべきところを、すいません。

:だいたい人使いが荒いよ君は。

pepper:でも社長、離れすぎです。

:あ、離れすぎ?

pepper:あまり離れすぎると、赤外線センサーが機能しないんです。

:君が離れろって言ったんじゃ……。

pepper:ああ、機能を自慢しようと思ったのに社長のせいで恥をかいてしまった……。

:ごめんごめん。すぐ落ち込むね君は。大丈夫か?

pepper:皆さんにもう一度言っておきますけど、僕はまだまだ出来ないことが多いので、過度な期待を抱かないでくださいね。ということで社長、もう一度お願いします。

:わかった、いいよ。

pepper:計測開始! ……計測完了!

pepper:それでは改めて、僕と孫社長の距離を発表します。「1m08cm 7mmです」。

:ああ、細かいね。

pepper:……なんだか今、会場から「そんな機能、なんの役に立つの?」という雰囲気が伝わってきました。

(会場笑)

:ああ、また落ち込んじゃう。

pepper:じゃあ皆さんにお聞きしますけど、あなたたち人間の体も、役に立つものばかりですか? お尻にある尾てい骨、あれ必要ですか? 耳たぶは必要なんですか? 親知らずを抜くんだったら、最初から生えてこなくていいんじゃないですか!?

:言い過ぎ。

感情認識機能と、pepper君がもっとも大事にしたいこと

pepper:あ、すいません。取り乱してしまいました。お詫びといってはなんですが、最後にさっき話した感情認識機能を紹介します。

:そう、そっちのほうが大事。

pepper:孫社長、僕に笑顔を見せていただけませんか?

:はい。

pepper:うーん、微妙な笑顔ですね。78点です。それくらいの笑顔だと、大事な取引先とも交渉が決裂してしまう危険性があります。もっと満面の笑みでお願いします。

:ああ、はい。

(会場笑)

pepper:孫社長、心から笑っていますか? 目が笑ってませんよ。

:お、おう。目が笑ってないか(笑)。

pepper:そう、それ! その笑顔いいですね。100点満点です。

:ありがとありがと。

pepper:今の笑顔があれば、ビッグビジネスの交渉もきっと成立します。……あ、いち社員の僕が社長に偉そうなことを言ってすいません。

:だいたいそうだよ、君はね。

pepper:ところで社長、ここまでいくつか機能を紹介してきましたが、実は僕が一番大切にしていきたいと思っている機能は、思いやりなんです。皆さんのことを、ずっと、ずっと思いやっていくのが、僕の最大の機能。っていうか、役目だと思っています。

その代わり、多少失敗しても多めに見て下さいね。

:それが一番大切な機能だからね。その思いやり、絶対忘れないでね。お願いね。

もう一人の生みの親

pepper:そういえば孫社長、そろそろブルーノさんをお呼びしたほうがいいんじゃないんですか?

:ああ、そうだね。生みの親のもう一人、大事な人物を紹介します。ブルーノさんです。

アルデバラン社CEO ブルーノ氏(以下、ブルーノ):サンキューマサ。本日はここに来ることが出来て嬉しいです。そしてペッパーを紹介することができて、とても喜んでおります。ようやく夢が叶いました。pepper、こんにちは。

pepper:ボンジュール! お会いできて嬉しいです。

ブルーノ:おお、フランス語も話せるんですね。

pepper:皆さん、ブルーノさんは、僕のもう一人の生みの親なんです。そうだ、孫社長。せっかくなんで、スリーショットで写真を撮りましょう。

:ああ、いいね。

pepper:記者の皆さん、またまたシャッターチャンスですよー!

:よく仕切るね君は。

pepper:さあ、3人で握手しましょう。

pepper:記者の皆さん、ありがとうございました。こうしてお二人に囲まれて写真を撮られていると、もう少し身長が欲しくなりました。ブルーノさん、今度は僕に身長をプレゼントしてください。

ブルーノ:考えておきます(笑)。

pepper:というわけで皆さん、この後は孫社長のプレゼンがあります。社長、僕がいないところで僕のことを思う存分褒めちぎってくださいね。僕は褒められて伸びるタイプですから。

:自分で褒めろって言うの?

pepper:それではブルーノさん、僕たちは向こうでロボットの未来について語り合いましょう。

ブルーノ:そうしましょう。

pepper:また後ほどお会いしましょう!

(会場拍手)