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大前研一氏式辞(全2記事)

「儲かるからやる」では成功しない--大前研一氏がナイキ会長から学んだこと

2016年4月2日、ビジネス・ブレークスルー大学大学院の2016年春期入学式が行われました。同校の学長を務める大前研一氏は、BBT大学で発足したアントレプレナーコースの説明と受講者に求められる起業家としての資質を語りました。

BBT大学のアントレプレナーコース

大前研一氏:実はBBTは、椿進先生にアントレプレナーコースのコース長をお願いしているんですけれども、今回がはじめてということで、なぜというところも含めてご説明したいと思います。

このアントレプレナーコースですけれども、起業家育成というのはBBT全体で力を入れて10年以上やってきているんですけれども、BBT大学、大学院、ボンド、アタッカーズビジネススクール合計で9652名を輩出しています。

アントレプレナーコースは今日発足なんですが、来週にこういう本が出るんですね。この本は、『「0から1」の発想術』ということで無から有を生みだす思考法に関するものです。10数通りのやり方をマッキンゼー以来温めていたものです。

「0から1」の発想術

クラスでももちろんこれをやりますけれども、それを本で出しましたので、みなさんのプレッシャーは従来よりもっと強くなります。

その辺で1400円でこの本を買った人と同じ程度で止まったら、一般の人と同じになってしまう。クラスで学び、書籍を凌駕するようなマスター、これを染色体に埋め込んでもらいたいと思います。

私もみなさんとともにさらに学んでいきたいと思いますが、心新たに0から1を生む、有を生むと。今は最も恵まれた時代です。私はいい年をしているんですが、もうやりたくて仕方がない事業がいくつもあります。

アタッカーズ・ビジネススクールではそれをみんなに渡して、どうぞみなさんやってくださいとやっていましたけれども、これからはみなさんに渡して、みなさんの中からアントレプレナーが出てくることを期待したいと思います。

スタートアップ支援プロジェクトの9社が上場

BBTは、起業家を応援するためのささやかなファンドを持っています。これはSPOF(スタートアップ起業家支援プロジェクト)というものですけれども、背中をポンと押すファンドという意味です。

私は長年ABS(アタッカーズ・ビジネス・スクール)をやってきて、逡巡しているときに、「まあ君、この辺でいいと思うから頑張ってやってみたら? こっちもささやかだけど金を出すよ」と言って背中をポンと押すと言う意味で、SPOFをやっています。

日本の政府も銀行の休眠口座に眠っているお金を使ってSPOFをやろうということで、だいぶ我々のほうに来てくれていますけれども、この中には上場した9社も入っています。

マクロミル、ケンコーコム、ミクシィ、アイスタイル、クラウドワークス、弁護士ドットコム、鎌倉新書というのは葬儀屋さんです。それから丸八は今週上場いたします。ということで、先輩として起業して上場した会社が9社ということになっています。

従来の経営管理コースMBAに比べて、このアントレプレナーコースは早めに自由研究をはじめて、2年目にビジネスプランの演習をします。

ただ、「このビジネスプランは、先生にも全部明らかにしたくない」「これは誰にも説明したくない」というときには、先生との対話を通じてビジネスのいろいろなアドバイスを受けることになっております。

ですから、後半のところはかなりの労働集約型で、さらに卒業した後も起業していくとなった場合には、その継続的な支援のためにビジネス・インキュベーションセンターというのがあって、そういうところを通じて助けていきたいと思っております。

アタッカーズ・ビジネススクールでも自然発生でそういうことが起こっていたのですが、これをもう少し正式にして、MBAとして持っていなければいけない知識などビジネスの勉強もしていただくと。

同時にかなりの時間を、自分の事業計画の立案、構想を練って、これを人に説明できるような状況に持っていくというところに使っていただく。

ナイキ会長 フィル・ナイト氏から学んだこと

我々教授側から見ると、サイバーと言いながらも、かなり労働集約型になるだろうと思っています。攻めの要素と守りの要素、ベンチャー魂。この3つを在学中に吸収していただきたいと思います。

私は01の発想の中でも書きましたけれども、「ラストチャンスだけは失敗するな」と。普通の言葉で言うと、「成功するまでやるんだよ」と。それから「好きなことをやらなきゃだめよ」「あなたが本当に好きじゃなきゃやめときなさい」と。こういうことです。

私はナイキの社外取締役をやっていましたが、フィル・ナイトさんは、「料理人は、23時間厨房にいてもいいという人じゃないとなるべきじゃない」ということを言っていました。

また、「私はどんなに金を積まれても、電機会社の会長は受けない」と。なぜかというと、誰が説明してもなんで電子があの導線の中を走るのか依然としてわからない。だけどスポーツは好きで、アスリートを見るとすごく興奮すると。だから好きなことをやると。

これは非常に需要な要素です。「好きじゃないことはやらない、好きだからやるんだ」と。儲かるからやるという発想では足りません。

0から1を生み出す力を身につけるには

そしてアントレプレナーに必要なミッション、ターゲット、アントレプレナーシップですね。これはもう0から1、新しいものを生み出す力。これは日本の会社にいるとちょっと違いますね。1.2のものを1.34にするとか、そのように細かい改善をしていくとか、そういうことが非常に求められます。

それに対して、0から1を生む、1でうまくいったら10をやる。10でうまくいったら、10.23じゃなくて100をやるんです。そのようにしてUBERにしてもAirBnbにしても一気に世界中に広がると。

このようにして、5年間で時価総額5兆円の会社ができているわけです。こういった環境が今、非常にそろってきている。コースの中でも詳しくやりますが。

そういうことで、従来のような品質改善、いろいろな提案、休止、その他のことももちろん重要ですけれども、アントレプレナーに必要なのは、「1まで持ってたら10のことを考えないとだめだ」ということですね。1.23なんてことを考えていると足元をすくわれます。

このコースの特徴としては、我々は1000人くらいの経営者の話をコンテンツの中に持っています。みなさんもエアサーチで見ることができますけれども、政元(竜彦)教授が、起業家精神論と経営者研究という科目で、このコースをとった人は100名の経営者、50名は我々の指定する人、あとの50名はみなさんの選んだ人の話を1時間ずつ聞く。

これはものすごく参考になります。私もとくに最近の若い人で起業した人の話をずっと聞いていて、「この国は変わったな」と思います。

このコースをとってない人も、みなさんはエアサーチにアクセスできますので、ぜひ見ていただきたいと思います。このコースは今日から新設ですので、その内容について説明させていただきました。

1年次には普通のビジネスを勉強していただきながら、経営者、起業家の心構えと志、それから起業に関するサポート、メンター、これは弁護士や会計士など、プロフェッショナルなヘルプも必要ですので、そういうことも紹介していくと。

そしてスタートアップ前、スタートアップ時、スタートアップ後成長期、そしてIPOの準備、IPOのやり方などを半期ごとに学んでいくことになります。このなかで、IPOの実務まで教えていく予定です。

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