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atteデザインの舞台裏(全2記事)

“プロデューサー的デザイナー”が新規事業を成功に導く ヒットに近づく3つの心構え

新規事業におけるデザイナーの役割とは? 地域コミュニティアプリ「メルカリアッテ」のリリースを記念し、2週連続で開催された「atte FeS」。同アプリのデザインを担当するソウゾウ・井上雅意氏が「atteデザインの舞台裏」をテーマに、今デザイナーに求められる“プロデューサー的視点”を持つために必要な心構えなどについて話しました。

「メルカリアッテ」デザインの舞台裏

井上雅意氏(以下、井上):よろしくお願いします。松本からソウゾウの組織についての話と、具体的な新規事業の立て方、コンセプトの立て方の話があったかと思います。

田辺からは、アイデア、コンセプトを具体的に企画に落とすというところを詳しく話してもらいました。僕からは、デザイナーとして、ある企画とかコンセプトを実際にどうかたちにしていったかという話を、具体例を交えて話せればと思っています。

まず最初に僕自身の紹介になるんですけれど、名前は井上雅意(がい)といいます。これはデザイナーだからあえてマサイをガイと読ませているわけではなくてガチの本名です。

(会場笑)

今の時代だったら「DQNじゃねえか」と思われてたかもしれないんですけれど、ちょっと早く生まれてきたのでよかったなと(笑)。

僕はIT業界どっぷりというわけではなくて、最初はサムスン電子ジャパンというところで、携帯端末を作っていて、主にそこのデザインチームでやっていました。年齢がバレてしまいますが、ガラケーの頃からUIを作っていて。

そしてガラケーがなくなってきて、新規事業をやっていたという過去があります。その後、なかなか新規事業をやっていても市場に出ないので、やっぱり出るところをやりたいということでヤフー株式会社に行って。そこで現ソウゾウ代表の松本と一緒に、いろんな新規事業とかサービスを作っていました。

その後、少しフラフラしてたんですけれど、縁あって今年、ソウゾウに参画させていただきました。

目指すデザイナー像“BCT”とは

今日お話する内容としては3つ。3つ目は余裕があれば話したいんですけれど、1つ目は、新規事業におけるデザイナーの役割とはどんなものなのかという、若干かための話をさせていただいて。その後に実際、メルカリアッテでのUXデザインってどうだったのか、どういう部分にこだわって作っていったのかという話ができればと思っています。

まずは、新規事業におけるデザイナーの役割について。

僕らソウゾウが目指すデザイナー像はこれです。これですと言われてもよくわからないと思いますが、「BCT」ビジネス、クリエイティブ、テクノロジーですね。これがバランスよく整ったデザインを目指していきましょうと。

当たり前じゃないかという話なんですけれど、世の中のいろんなところで働いた感覚でいうと、クリエイティブとかデザインをやっている人って、けっこうテクノロジーとは仲がいいんですね。実装とか自分が作るということにおいて、テクノロジーを知るということにはけっこうモチベートされてやっていくんですけれど。

ビジネスとなると、「なに、ビジネスっておいしいの?」みたいな、それぐらいの感じで。ビジネス視点がある人って少ない、特にデザイナーにおいては。ただこのビジネス視点ってけっこう重要なので、僕らソウゾウとしては、デザイナーにとにかくビジネス視点を持ってやっていきましょう、ということを目指してやっています。

プロデューサー的デザイナーになりましょう

端的に言ってしまうと、どんなデザイナーなのかということなんですけれど、プロデューサー的に振る舞ってくれるデザイナー。プロデューサー視点を持ってデザインしていきましょうと。

そもそもなぜプロデューサー的視点が必要なのかという話なんですけれど、アプリが主流になってきたせいもあるんですが、とにかく今はユーザー体験がサービスヒットの肝になっています。コンセプトとかよりも、ユーザー体験がいかによいかどうかということが、サービスがヒットするかしないかということの分かれ道になっているんじゃないかと。

けっきょく、そのユーザー体験を描きやすいのは、デザイナーでしょう。だからデザイナーがそのサービスをヒットさせる視点を持って、ビジネス的に当てる視点を持って、どんどん作っていく。

そして早めに作っていって、それを見てワクワクするか、ゾクゾクするかみたいなところを、早いうちからどんどん練っていきましょう、という視点が必要かなと思っています。ですので、僕たちはプロデューサー的な視点を持ったデザインを目指しています。

失敗も多かった、これまでのプロセス

実際にこれまでの新規サービスは、こんな流れで作っていたと思うんです。ウォーターフォール的プロセスで、企画があって、最初の企画フェーズで、とにかくいろんなサービスコンセプトを練って、アイデア出しをして。

その市場規模や市場の伸びをひたすら分析して、さらに実際にどんなサービスを出して、それに対してどういうビジネスモデルでどう勝っていくかみたいなところまでつめて。

そこから最終的にようやく、サービスの企画、具体的な仕様や機能に落ちて、開発に入りますと。

ですが、実際これってけっこう失敗します。僕もよくやっていて、このやり方でめちゃくちゃ失敗をしてます。

というのは、この企画と、特にUI、UXのところを作る段階で、すごくギャップがある。たとえばすごく企画がよくても、戦略的にすごくよかったとしても、実際モノを作って見せた途端に、企画やコンセプトがぜんぜん体現できてない。ユーザー体験として落とし込めないというケースが、実際ありました。

僕自身もそれで失敗していて、企画まですごく頑張って、特に社外でやると、すごく頑張っていろんな承認、承認、承認を通してきて、結果ようやく作れるってなったときに、できない、みたいなことがすごくありました。なので、このやり方じゃないなと。

UI、UXを元に考える、これからのやり方

これからのやり方って、今まであったここのUI、UXというかたちを、とにかく前に持ってこようと。さっき松本からも話があったと思うんですけれど、サービスコンセプトとかアイデアの段階から、かたちにしていく。このかたちにしたものを持って、企画コンセプトも変えるし、戦略だって変わるし、下手したらビジネスモデルだって変わる、みたいなかたちで、どんどん揉んでいきましょうというやり方があるんじゃないかなと。

実際にアッテでどうやってやっていたかというと、テーマの設定、コンセプトの部分では、残念ながら私の入ったタイミングがもう少し後なので、先ほど松本が話してたように、基本的にインターンと松本で、ある程度の大枠のコンセプトを作っていました。

実際にそのプロジェクトをやろうという段階で、具体的なコア、肝の部分、先ほどの話にあったようなタイムライン、チャットらしさ、位置起点というところが決まっていました。ただこの時点で、それをどう表現するか、どうサービスとして見せるかという部分は決まってなかったので、この早い段階から入って、どんどん一緒に練っていったところからやっています。

いろいろ見ていただいたんですけれど、とりあえずプロデューサー的視点がデザイナーには不可欠だよねというのは、なんとなくわかっていただけたかなと。とはいえ、やはりデザイナーなので、デザインというものがコアにあります。ブランディングもしなきゃいけないし、UXの設計というのもしっかりやりますと。

ただし、それだけじゃなくて、コンセプト、ビジネスモデルの部分からしっかり考えて。さらに実際に作る段階から市場まで考える、というのをやっていくことが必要かなと。

プロデューサー視点を持つためには?

こんな感じで偉そうに話すとあれなんですけど、実際にプロデューサー視点を持つにはどうしたらよいのか? これは僕のなかにもまだ正しい答えはないんですけれど、だいたいこんな感じかなと。

まずは、いろんなサービスを知りましょう。これは単純に、アプリが僕たちのメインなので、気になるアプリはひたすら調べて。UX的によいというのも調べるし、あとは実際にそれがなぜヒットしているのか、実際にどれくらい売上があって、どういうビジネスモデルでしているのか、というところをとにかく調べます。そして要素を抽出します。

あとは、実際にサービスしようというときに、なんとなくざっくりの市場規模感。これはガッツリやるわけじゃないんですけれど、さっと調べられる程度で市場感だったり市場の成長度を調べることが必要なんじゃないかなと。結局、規模がなかったら、やっても意味ないということがあります。

あとは、企画で、常々「こういうのやりたいよね」というけっこうラフなアイデアがあるんですけれど、そういうのをどんどん周りにぶつけていってみる。ソウゾウには、プロデューサー視点の方が多いので、話してみると思いもよらない回答が返ってきて。

「確かに、それありだね」みたいなかたちで進んでいくことがあります。ここからは若干、運的なこともあるんですけど、すごく近道としては、ヒットするサービスにたまたま携わっていた。この感覚が、すごく重要なんだろうなと思っています。

プラス、今回「ロールモデルから学ぶ」と、ちょっとゴマすりな感じなんですけど(笑)、たまたま近くによいロールモデルがいます。松本というよいプロデューサーがいるので、そこからいろいろ盗む、やり方を盗むということを、僕は今やっています。ただ、とはいえこれを全部僕ができるかというと、できませんということで、今、勉強中です。

「作りたいものを作らない」デザイナーの心構え

ここからはプロデューサー視点というのを離れて……いや、完全に離れはしないんですけれど、デザイナーならではのこだわりってたぶんあると思うんですけど、それをプロデューサー視点になったときに、あえて変えよう、違うこだわりの仕方をしようと。これは自分自身にもいえる、心構えでもあります。3つあるかと思っています。

1つ目は、「作りたいものを作らない」ってことですね。僕個人としてはこういうの作りたいです。格好いいものを作りたい、美しいものを作りたいという葛藤は常にあります。こういうのを作って「俺が作ったよ」と、みんなにどんどん出していきたいんですけれど、基本これはやっちゃダメですよと。

実際にやらなきゃいけないのは、これです。

あえて自分の作りたいものを封印して、サービスが今回ターゲットとしている市場はここで、どんなユーザーを想定してて、実際これがヒットする要因なのかを見極めて、そこに寄せていく。

アッテの例で言うと、メルカリがそうであったように、あえてダサさを出したり、あえて情報としてゴッチャリ感を出してみたりということを意図的にやっていたりします。

2つ目の考え方としては、さらすことを恐れないというのが重要だなと思っています。デザイナーあるあるなんですけれど、正直、途中のものを見せるのってめちゃめちゃ勇気がいります。途中なので、ちゃんとグラフィックを描いてないし、まとまりきってないしみたいなところがあるんだけど。

実際にそれを見せると、すごく言い訳をしたくなります。「いや、俺まだ本気出してないし」みたいなこと言いたくなるんだけど、あえてそれをどんどん見せていく。感覚値的には、60パーセントくらいできたら、どんどん見せちゃっていいんじゃないかと。

けっきょく早めの段階で、企画からやっているので、どんどん見せることで結果思いもよらない方向に変わっていって、アイデアがジャンプする瞬間みたいなのがあって。それが出やすいという感覚があります。

壊すことをいとわない

3つ目は、これも精神論になっちゃうんですけれど、とにかく作って壊すことが重要だなと思っています。デザイナーならではなんですけれど、作るともう壊したくない。なぜなら、すごく考えて作ったから。

でも、すごく考えて、時間を労力をかけても、「それいらないよね」ってなった瞬間、「こっちのほうがいいよね」ってなった瞬間に、すぐ変えたり、「じゃあ、止めましょう」と言えることがすごく重要かなと。

実際に今、メルカリアッテのサービスのなかでも、かなりそういうことは起こっていて。投稿された方はわかるかもしれないですけれど、投稿する際に画像が必須になっているんですね。ただ当初は、必須ではなくてオプションでした。オプションだけど画像を上げてほしい。

だから、こんな画像を上げてほしいみたいなことをイラストに描く。しかも、カテゴリーごとに全部違うイラストを描きました。なんなら1週間くらいそればっかりやってたんですけど、「よし、(画像を)必須化にするぞ」ってなった瞬間に、全部捨てました。

でもそれも、こういう気分があったから、そういうことを言われても「いいですよ」って普通にできました(笑)。そのくらいの心持ちが必要なんじゃないかなと思っています。

以上が新規事業におけるデザイナーの役割、心構えみたいなところの話でした。

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