2024.12.10
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ノースウェスタン大学 卒業式 2006 バラク・オバマ(全1記事)
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バラク・オバマ氏:2006年卒業生の皆様、おめでとうございます。あなた方をとても誇らしく思います。親族の皆様もおめでとうございます。本日はお呼びいただきありがとうございます。ジョン、バイデンや委員会、家族の方々にも感謝申し上げます。この場に立つことができて光栄です。
数ヶ月前に、校内新聞でイレーンの記事を読みました。イレーンはいるかな? あ、いた。イレーン、手を振って! 卒業できてよかったね(笑)。イレーンは私についての記事を書いたわけですが、タイトルは「かかってこい、オバマ」でした。
(会場笑)
これはこれでアリだなと思って読み続けました。イレーンが、この日の卒業スピーチを期待していたこともわかりました。
記事によれば、私はインスピレーショナルだけどわざとらしくはない。
意識高いけど安っぽい感じではない。
政治家だけど政治オタクというわけでもない。
でもジェリー・ファルエル(注:過激な発言で知られる、キリスト教福音派のファンダメンタリスト)をスルーできるほどにはデキないみたいです。
(会場笑・拍手)
さらに言うと、親切なことに、私が過去に話したノックス大学でのスピーチをイレーンが長々と引用してくれたおかげで、今年は使い回せなくなってしまいました(笑)。
(会場笑)
プレッシャーしかないですが、イレーンが次に書いていた内容は、まさに今回、私が話そうとしていたことでした。
彼女曰く「スピーチで政治について聞きたくないというのは、ある意味、外の世界の問題を知りたくないのと同じ。大学の4年間で十分痛めつけられたのだから、スピーチの30分間くらい解放されたい。厳密には25分ですが」
(会場笑)
「現実世界への門出となるこの日にはとくに」
これにはグッときました。コリント書の一節を思い出さずにはいられませんでした。コリント書の13:11。「私が子供のころは、子供のように話し、感じ、考えた。しかし今では大人になり、子供っぽさはもう捨てた」。
この文章には、大人になるということは年齢の問題で、自然の流れであり避けられないという示唆があります。でも現実には、30代、40代、50代、60代ですら、まだ大人になれていないという場合があります。私の妻によれば、私もたまにそういう時があるみたいです。自己中心的でちっぽけな自分の殻をやぶろうともがいてはいますが。
議員になった今でも、若い頃の教訓を思い出すことがあります。自分の価値観やアイデアに素直になるといったことです。
最初の教訓を得たのは、あなたたちよりもまだ若い1年生の時でした。母曰く、私は自分の将来についてちょっとカジュアルすぎると思われていたみたいです。若者らしい反抗もしましたし、厳しく働くなんて古い慣習は自分には関係ないとも思っていました。勉強はその場しのぎ程度で、正直、ちょっと遊びすぎていました。
ある時、夜通し飲んでいて、部屋をめちゃくちゃにしてしまったことがありました。翌日、清掃員の女性がそれを見て泣き出してしまったのです。そして女友達が私にこう言いました。「バラク、これを掃除してたのは私のおばあちゃんだったかもしれないんだよ」この一言が私の教訓となりました。「世界は自分中心でまわっていない」ということを学んだのです。
よく国家予算赤字という不足の話を聞きますが、これとはまた違った不足について話すべきだと私は考えます。それは「共感の不足」です。他人の立場に立って考え、自分とは違う人間の目線で考える。飢えた子供、解雇された鉄鋼業者、かつて私の寮を掃除した移民の人達などの立場について考えることです。
人生が過ぎるにつれ、この共感は難しくなる一方です。それを誰も強制もしません。近所の人間も似たような状況です。ただ目の前のことだけに感心を持てばいいという状況です。共感を勧めないような文化で、富を築き、体型を維持し、若々しく、名誉を得、安全を担保し、そこそこに楽しむ。そういった自己中心的な刺激を追求する世の中です。
「路上で生活し物乞いするアメリカ人は、心身ともにだらしないだけ」「荒廃した学校では子供は学べないし、学ぼうとしないから見捨てるしかない」と言う人がいます。地球の反対側で、迫害され、殺され、家を失う人達は、他の誰かの問題だという態度です。
そういった声を聞くのではなく、感心の幅を広げてほしいのです。義務的にではなく、借りがあるからではなく、「個人の救済は、集団の救済の上に成り立つ」という人生の自覚によってそうやってほしいのです。自分より大きなものにチャレンジする時に、大人になるポテンシャルに気づくのですから。
この考えは2つめの教訓に関係しています。低所得地域でコミュニティ・オーガナイザーになるというクレイジーなアイデアを持っていた頃の話です。
自分でもよくわかっていなかったのですが、とにかく母と祖母はロースクールに行くべきだと考えていたようです。私の友人はウォールストリートで職を探している間、私は自分が知る限りのすべての組織に求職しました。すると、シカゴ南部の小さな教会から連絡がきました。
80年代の鉄鋼所の閉鎖にともない、荒廃した地域のオーガナイズ依頼でした。年俸12000ドルと、車の費用1000ドルを提供してきました。そして人生初のシカゴへ赴いたのです。
私のことを知らない人ですら、私の行動に疑問を持っていました。シカゴに行く前に話した、ある老人との話を今でも覚えています。
「君は見た目もいい、すらっとしてる、声もいい。一言わせてくれ。このコミュニティーでオーガナイズなんて考えるな。世界は変えられないし、君が感謝されることもない。だから君はテレビ業界へ行け。そこなら君の未来は明るい」。
母や祖母のアドバイスにのることだってできました。テレビ業界というのもあながち間違ってませんね。でも私は違うことをトライしたかった。つまり2つめの教訓は「自分に挑み、自分を試し、人生にリスクを持つ」です。
でもこれはノースウェスタン大学を卒業するあなた達にとっては難しいことかもしれません。学位を得て、大きな家と給料を追い、いいスーツを着て、カネ社会の世間が勧める体験を追っていく。ただ、あなた達にはそこで止まってほしくない。
お金を目標に生きるというのは便利ではあります。でも、家族を養えはしますが、野望としてはちょっとばかり貧相です。そんなに難しくもなさそうですし、達成感も得られなさそうです。
よくアメリカの若者について考えます。60年代に公民権運動をテレビで見ていたティーンエイジャーや、まさにあなたたちのような学生のことです。彼らは、行進やスピーチだけでなく、犬の鳴き声やホースの音、催涙ガス、暴行される無害の人達、そして日曜日の学校で死んだ4人の女の子のことも見たでしょう。
テレビの前の若者達は、家にいることが安全と直感的に感じたことでしょう。しかしそれらが間違ってると考え、正しくしなければと考えたジョージア、ミシシッピ、アラバマの同士達もいました。そしてフリーダム・ライド(自由のための乗車運動)のバスは南部へ行き、世界を変えたのです。安全パイを勧める声だけを聞くのではなく、リスクを負ってでも気になる自分の声を聞くのです。
3つめの教訓。私がシカゴで学んだことです。ギャングの暴力に関するもコミュニティーミーティングをセッティングしていたときのことです。警察を誘い、電話をかけ、フライヤーを配りました。シカゴの縄張り争いや政治は難航を極めると警告されていましたが、私は無視して自分の行いに自信を持っていました。
その日のためにたくさんのイスを準備し、待ちに待っていると、老人の団体が会場に入ってきました。そしてあるおばあさんがイスに座りこういったのです。「ビンゴゲームはまだ?」。
(会場笑)
結果、13人が集まりましたが、警察の責任者は現れませんでした。そのミーティングも悲惨なものでした。後ほど、彼らはもう出席することをやめた旨をボランティアから聞きました。ずっとやってきて、何の成果もなかったそうです。
疲れた私が窓の外を見ると、空き地で少年達が遊んでいました。板張りのアパートの前で石を投げていました。そこで私は言いました。「やめる前に1つ聞きたい。私達が戦うことをやめたら、あの少年達はどうなる? 誰が彼らにチャンスを与えるのか?」。
その時、第3の教訓を得たのです。「固執もたまには必要」。
世界に爪痕を残すのは難しいです。でも簡単なら皆やってます。忍耐とコミット、そして数多くの失敗の上にそれは成り立ちます。失敗を回避できたかどうかではないのです。どのみちそれは無理なので。行動しないことを恥じ、学び、継続して追い求められるかどうかという部分が自分へのテストなのです。
あの日の私のスピーチの後、ボランティアが1人また1人と、あきらめないことを表明していきました。そうして私達が小さな勝利を維持した結果、時間をかけてコミュニティーは変化しました。
共感力を培い、自分にチャレンジし、反感の中でもしつこく挑む、これらは私が人生で大事だと思うことです。ただ、おもしろいことに、個人に有益なことは国家にとっても有益です。
今、かつてないほど、アメリカに必要なのは、山積みの困難を進むためのガイドです。かつてあった成熟が、失われたかのような現状の中、未来についての現実的な対話です。
アメリカの子供たちへのチャンスではなく、株式で偉大さをはかる時、それは幼さへの贔屓です。力で戦争を終わらせるという発想もそうです。必要な物ではなく、欲しい物のために赤字を生む時、それも大人になりきれてないサインです。
そういった社会が終わるきざしが見えた瞬間もありました。911以降、瓦礫の山に上に、1つの団結が生まれました。若者が声を上げ、両党が協力し、新たな疑問が世界に生まれたのです。
しかし今再び、共和党と民主党が解決すべき問題について考えあぐねています。私達の税金を犠牲に、帰って来くることのないアメリカの若者を戦場に送ってしまっています。相手を批判するだけのポイント稼ぎの政治になってしまっています。注目を絶やさないようにセンセーショナルなことばかりメディアは報道しています。
そうしている間に、私達の問題はまさに膿んでいます。そして今までになく競わせる国際経済が存在します。インターネットと熟練した技術があれば、場所を問わなくなってきています。中国やインドは私たちよりも長く良質な教育をほどこしています。職はそちらに向かうでしょう。
学校を直し、大学教育を手の届くものにし、労働者を保ち、リサーチとテクノジーにより多く出資すれば、そういった困難に立ち向かえます。やらなければいけないことはわかっているのです。今必要なのは、政治の意志です。
健康保険の危機が存在しています。4600万人が保険を持たず、共同負担でビジネスは破産寸前。しかし健康保険システムを整えればこの問題に立ち向かえます。そうさせないのは、政治の意志です。
エネルギーの危機も存在します。ガス料金は高騰し、気候を破壊し、それを続ける国に大金を送り込んでいます。ガスタンクに打って変わる車や代価エネルギーを扱えば、それらの問題に立ち向かえます。そうすれば大量交通にも投資できます。そのために必要なのは、実現する意志です。
テロの戦いには新たな戦略が必要です。テロリストが街や国にとけ込める現代の世界では、殺したり投獄だけでは頼りになりません。これが兵力ではなくアイデアの戦いだということを理解すれば、この困難に立ち向かえます。
第二次世界大戦後にトルーマン、アチソン、キーナン、マーシャルがやったように施設や協力を強められれば、ジハードが職よりいいという絶望的発想に希望をもたらせられれば。それができないのは、政治的意志の欠如です。
これらすべてが、今より目的を自覚し、大人になったアメリカを必要とします。教訓を反映したアメリカの姿です。皆のためのアメリカです。苦難に対し大きなリスクがとれるアメリカです。そしてそれらをやり通すことができるアメリカです。
あなたたちの前には、150年の卒業生がいます。ただただ進級した人もいれば、アメリカの過渡期に携わった人もいるでしょう。1860年の卒業生は、南北戦争に引き裂かれたアメリカを見たことでしょう。大統領の声のもと、立ち上がり、団結し、人々を解放しようとしたことでしょう。
1932年の卒業生は、経済恐慌に苦しむアメリカを見たでしょう。車いすから立てなかったのに、国を立ち上がらせることはできた男の「邪魔をするのは恐怖のみ」という言葉に、人々は恐怖を克服したことでしょう。
1960年の卒業生は、社会や人種の闘争の時代の始まりを目にしたことでしょう。国のために何ができるかをとう大統領の言葉を聞いたことと思います。フリーダム・ライダーズで正義のために戦い、戦争で戦い、戦争について語り、戦争が必要とならないように働きかけました。
そして今、2006年度、目の前にはいまだかつてない困難が待ちかまえています。想像できないようなこともあるでしょう。選択肢はあなた自身にあります。ささやき程度の歴史で終わるのか、未来でこの時代を振り返るような世界へと変えていくのか。
時のみぞ知るとは思います。あらたな挑戦に試され、失敗もするでしょう。でもそれに立ち向かう力があるということを忘れないで下さい。先人達も、当時の未知に立ち向かい、同じ恐怖を味わったのですから。
互いの負担を共有し、大きなリスクを背負い、大きな試練に挑み続けたなら、アメリカは地平線の彼方、よりよいその日へのすばらしい旅を続けることができるでしょう。
期待してますよ、2006年卒業生。卒業おめでとう。あとイレーン、私のスピーチちゃんとできてましたか?
(会場拍手)
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