日米バブルの違いから読み解く、今後の経済発展に必要なものとは?
モルガン証券随一の日本通が解説

TEDxTokyo - イェスパー・コール #1/2

2007年に表面化したサブプライム問題は、発信源の米国のみならず、世界経済に多大なダメージを与えましたが、日本のバブル崩壊を振り返るとそれほどではありませんでした。この違いはいったいなぜ生まれたのか? 日本経済通として名高いイェスパー・コール氏が両者の差を解説し、今後の世界経済のトレンドを占いました。(TEDxTokyo 2010 より)

日米バブルのメカニズムを比較する

イェスパー・コール氏:オハヨウゴザイマス。さあみなさん、座席を元の位置に戻して、シートベルトをしっかり装着してくださいね。みなさんは今から、世界の経済がどのように変化してきたか高速で振り返るのです。そして、みなさんは今なお急激に変化する世界経済のまっただ中にいるのです。   みなさんは疑いの目で私を見ていますね。それも仕方ありません、私はパイロットではないからね。私は経済学者です。しかも、みなさんはトルーマン大統領がエコノミストについていつも誹謗中傷を言っていた事を覚えているかもしれませんね。「経済学者はいつもいつもこう言うが……」とね。

そう、経済学者の存在なんて、お漏らししちゃった子供のズボンみたいなものです。お漏らししちゃった本人は恥ずかしくて熱くなるけど、ズボンは少しすれば冷え冷え。経済学者本人はやけに熱弁するけど、周りの人はみんな寒々してしまう。

(会場笑) 

とはいえ、私たちの生活は、経済とは切り離せないものですよね。私たちみな、経済という恐ろしい名の何かに捕われているのです。そこで、今日はみなさんに、世界経済において何が起きてきたのか、今何が起こっているのか、そしてこれから何が起こるのかということについてお話ししていきたいと思います。それによって、経済とは何か、その中身が見えてくると思います。世界経済、といっても、日本に20年間も閉じ込められていた私が話すのもちょっとおかしいですけれどもね。

(会場笑)

デフレーション、銀行の破産、無能で役に立たない政治家……。耳に覚えがありますよね。特にバブル経済の破綻後にはよく耳にしたかもしれません。では早速、日本のバブル崩壊と現在の世界経済(アメリカのバブル経済〜2007年をピークとする)を比較していきましょう。そこにある相違点を見ることによって、世界経済を把握する助けになると思います。

みなさんスライドをご覧になってください。数字ばかりのつまらないスライドで滅入ってしまいますね。しかしこの表は、バブル経済の日本での影響はどのようなものであったか、またアメリカではどうだったか、という事を表しています。 

この表は、国民所得の1単位(1ドル)を上げるために、どの程度の金融資産が必要なのかを表しています。まずは、両国のバブル経済の共通点についてお話します。

表によると、アメリカでは1985年から1995年の間、国民所得を1ドル上げるため、3ドルの金融資産が必要だったのが分かります。その後、アメリカでは経済が不安定になり、1996年から2006年を見ますと、国民所得を1ドル上げるために6ドルの金融資産が必要となったのです。この変化は、金銭流通額が増えるぶん、銀行や特定の業種にとっては良い事だったかもしれませんが、実際の経済にとっては悪い兆候でした。

更に進んで、アメリカのバブル経済のピーク(2007年)には国民所得を1ドル上げるのに8ドルが必要になりました。

では、日本を見てみましょう。日本はバブル経済の前(1980年から1985年の間)国民所得を1円上げるため1.7円が必要でした。バブル経済の時期(1985年から1990年の間)には国民所得を1円上げるため3円が必要になりまして、バブル経済のピークの1987年には約5円が必要になりました。

この表から、基本的な経済の原動力がバブル経済を通して同じように働いている(バブル経済のピークにかけて金融資産が増えるメカニズム)、という点では、アメリカと日本とは共通していることが分かりますね。

日米バブル、3つの違い

では、何が違ったのでしょうか。アメリカと日本とのバブル経済の、3つの違いを指摘したいと思います。

一つめは、明らかですが、バブル経済ピーク時の金融資産の数字の違いです。日本が3円、アメリカが8ドル(1ドル=約100円とすると、差異が大きい)。アメリカはすべてが大きい国ですからね、経済的な変化も大きく差がついてしまいますね。

二つめは、これはバブル経済の中身に入っていきますけど、日本のバブルの原因は主に銀行による貸付によるものでしたよね。後に価値が下落してしまうと知らずに、土地だけを担保に、銀行が金を見境なく貸す。そして回収不能に……そんなことがありましたよね。

しかしアメリカでは、銀行による貸付だけが原因ではなく、その他さまざまな要素が重なってバブルを引き起こしました。封鎖的な銀行システム、デリバティブ取引、サブプライムローン……その他も含め、さまざまや要因がバブル経済の背景にあったのです。要するに、日本のバブル経済の要因はとてもシンプルなもの、アメリカのそれはとてもとても複雑な、ひっちゃかめっちゃかなもの、だったのです。

三つめは……これが最も重要な相違点ですが……日本のバブル経済は、誰が起こしたのでしょうか? 日本人ですね。その頃の日本は、国際的な金融資産に頼ることはありませんでしたし。日本の銀行が、日本人に貸付をして、そしてバブル経済を引き起こしたのです。アメリカの銀行やヨーロッパの銀行はほとんど関係ありませんでした。バブル経済が崩壊したとき、誰が苦しんだのでしょうか? 日本人ですね。

アメリカのバブル経済は、これと異なります。封鎖的な銀行システムが原因となり、それによって生み出された金融資産75%のうち、70%は外国の資産だったのです。中国の銀行、日本の保険会社、ブラジルのファンド……という具合で、その資産は世界各国のさまざまなところに散在していました。

要するに、日本のバブル経済は内部的なもの、アメリカのバブル経済は対外的なもの、と言えるでしょう。

日本ではバブルが崩壊したときに日本人だけが傷ついたのですから、破産、失業率低下、資産低下等の被害を受けたのは日本人だけでした。しかし、アメリカのバブルが崩壊したときには誰が苦しんだでしょうか? 世界中の人々です。全世界の全員が苦しんだのです。みんなが同時に苦しんだなら、みんなで解決していけるようにも思えますが、何しろその世界的な影響力の強さから、経済回復は困難極まるものとなりました。

世界経済という点からこれらの差異を見ていくと、日本のバブル経済とアメリカのバブル経済はとても異なるものに見えてきますよね。

急速に変化している世界の経済

新しい表をごらんください。ここ最近アメリカでは、失業率が5%から10%と2倍に増えていますね。国が経済成長するときは、多くの働き手が必要となります。簡単な経済の法則です。この表を見ますと、アメリカが今の10%という失業率の状態から6%の失業率に回復するためには、2年間では毎年6.1%の経済成長が、3年間では5.1%の経済成長が必要となります。

これは大変難しいことです。実現可能だと思えますか? アメリカだからといっても、なんでも可能というわけにはいかないですよね。これは本当に大変な問題で、経済学者を悩ませているのです。日本、アメリカはどのようにして経済回復を図っていくべきなのでしょうか。

それを学ぶためには、今世界でさまざまな新しい経済の動きが起こっていることを忘れてはいけません。供給面重視の国々(供給面重視:減税で供給を増加させて経済成長を刺激しようとする経済理論)の発展もその一つの例です。ドイツ・インド・ブラジル・パプアニューギニア等ですね。

供給とは、いろいろなものをさします。物・人を問わず、使える物はすべて使って、このような国々は革新的なサービスを、低価格で提供し続けています。このような供給面重視の国々が成功してきたのには、既存のルールをこわし、固定概念にとらわれず、革新的な発想をすることが出来たからでしょう。

今までの固定観念はもう通用しない

また、こちらの例も近時の新しい世界経済の動きの一つと捕らえることができると思います。それは、中国の成長です。この表は、経済大国の変化とその比較を表しています。1881年時点では、英国とアメリカが経済大国でした。そのときの英国とアメリカの賃金格差は1.21でした(英国が、アメリカより21%賃金が高かった)。

その後アメリカは世界の生産工場である英国を生産力で追い抜きました。そして1979年、日本が世界で生産力を持ってきましたね。そのときのアメリカと日本の賃金格差は約140%です(アメリカの賃金は、日本より40%高かった)。

その次に2002年に中国が日本を超えまして、この時の中国と日本の賃金格差は、なんと30倍位もあったのです(日本の賃金は、中国の30倍高い)。この表から、世界経済は急激に変動していることがわかりますね。今までの固定概念にとらわれていたのでは、世界経済に乗り遅れてしまいます。

ですから、みなさんに始めにシートベルトをきちんと締めてくださいと言ったのです。みなさんは世界経済の変動を急速に振り返り、そして今なお急速に変動を続ける世界経済のまっただ中にいるからです。  日本はすばらしい技術と、創造力と、デザインを持っていますよね。それらを使って、急速に変化する世界経済においても十分戦っていく事ができるはずです。そして世界経済においてはそのようなチャンスが待っているのです。

もちろん、簡単に成し遂げられるものではありません。激しい競争の中、悪戦苦闘するかもしれませんね。しかし忘れてはいけません。どんなきつい道でも、かならず到着点があるのです。そしてその先には素晴らしい未来が待っているはずです。

ご清聴ありがとうございました。

<続きは近日公開>

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