ピンクの湖の謎が解明

ハンク・グリーン氏:極限環境微生物はその適応能力において地球上で最も奇妙な存在です。塩湖のようなほとんどの生物が住むことができない場所にも住むことができます。

2013年に、私たちはオーストラリアのヒリアー湖についてのビデオを作りました。そのビデオではヒリアー湖をピンクにするミクロビオーム(微生物の集合体)について話しました。当時は誰もそれについて調べていなかったのですが、今では分析が行われるようになりました。

極限環境微生物を研究する学者たちがあらゆる極限環境について研究し、私たちのビデオを見て、これは研究に値すると考えたようです。

学者たちは、ヒリアー湖のミクロビオームを形成する藻類、古細菌、細菌を研究し、先月その結果が発表されました。

研究チームは、湖のあらゆる場所から沈殿物や水を採取し、メタゲノム解析を実施しました。メタゲノム解析とは、どのような生物が存在するかを確認するためDNAを抽出する分析のことです。

その結果わかったのは、湖には塩を好むミクロビオームが多く存在するということでした。同じくピンク色をしているセネガルのレトバ湖にも存在するドナリエラという藻類を発見しました。

この藻類がカロチノイドという太陽光を吸収し、赤っぽいピンクに見える色素を生み出すのです。

湖がピンクに見える理由はそれだけではありません。好塩菌と呼ばれるバクテリアや古細菌も発見しました。これらすべての生物は赤く、それが水の赤さに関連していると思われます。

また、ほかにDechloromonas aromaticaというバクテリアも発見されています。

ベンゼンやトルエンをよく分解するDechloromonas aromaticaがいるというのは驚きでした。このバクテリアは、溶媒によって汚染された場所によくいるバクテリアでもあります。

ヒリアー湖には1900年代に製革所があったので、そのような微生物が住んでいるのにも説明がつきます。湖に住む有機体から、その色や歴史までわかってしまうんですね。

有機体は人類の進化まで教えてくれる

有機体の活動は進化についてさまざまなことを教えてくれます。例えば人間を例にとってみましょう。『ネイチャー誌』に、2人の生物学者が人間のアゴに関連する研究を発表しました。肉食や石器使用などに関係する研究です。

200万年前、ホモ・エレクトス(人類の祖先)はアゴをより小さく弱く発達させました。しかしそれは奇妙なことだと思われていました。というのもホモ・エレクトスは大きな脳を持っており、自分を維持するためにより多くのエネルギーが必要だったからです。

もっと食べ物を食べなければいけないのに、なぜアゴが弱いのか? 進化に関する生物学者は、これについて長く研究した結果、ホモ・エレクトスは、少ない労力で食事からエネルギーを吸収できたことがわかりました。食べ物とその食べ方が原因だと考えられています。

人類は260万年前には肉を常食するようになり、330万年前には石器を使うようになりました。それにより食べ物を食べやすくなったと思われていましたが、それを実験したことはまだありませんでした。

研究チームは、34人に4種類の異なる食事を与えました。やぎの肉、ヤム、ニンジン、ビーツです。

それらはそれぞれ異なる調理法で提供され、研究者は被験者が飲み込む前に何回噛むか、そしてどのくらいの力がかかるかをチェックしました。

その結果、カロリーごとにみると、当時は野菜よりは肉のほうが食べるのに力がかからなかっただろうということがわかりました。また、薄く切ったりすり潰したりといった初歩的な加工も食べやすくなるという結果でした。

研究者は、3分の1のスライスした肉と、3分の2のすり潰した野菜で、当時の人類は噛む回数が17%減り、噛む力が26%抑えられたと計算しています。より多くのエネルギーを必要とした人類のアゴが弱かった理由がこれで説明できます。

さらに、焼くというプロセスも食べやすさに関係しています。50万年前、調理が一般的になった頃、人類はさらに効率的に食べ物を食べることができるようになったと思われます。マッシュド・キャロット、いかがです(笑)?