「最低でもプロを超えないと叩かれる」キンコン西野が語る、クラウド時代のモノづくり

デジハリ特別講義「アーティストとして生きること、社会との接点」 #3/5

2015年12月14日、デジタルハリウッド大学の特別講義「アーティストとして生きること、社会との接点」が開催されました。特別ゲストとして登壇した、キングコング・西野亮廣氏は、副業として始めた絵本作りでプロを超えるために選んだ戦い方を紹介しました。(写真:Shoya Oyama)

吉本から振り込まれるお金の管理

田中研之輔氏(以下、田中):前半45分経ちましたので、この辺でなにか質問をどうぞ。どんな質問でもいいですよ。

西野亮廣氏(以下、西野):こういうときに1人目に手を挙げるって偉いですね。

田中:デジハリを代表する4年です。

西野:すっげーな。大したもんだね。

質問者1:さっき、テレビの仕事を全部切るって言ってたんですけど、切ってその次のことに手を出す間に、やっていくお金みたいな。

西野:いや……実は俺、デビュー当日からすげえ売れてるんですね。お金があったはあったの。

本当にお金に興味なくて。自分がいくらもらってるかぜんぜん知らないんです。今でも給与明細もらってないんです。

質問者1:へー。

西野:実家にいっちゃって。母ちゃんが。

田中:えー。

西野:そうなんですよ。だから月々……。

呉京樹氏(以下、呉):小遣い制なんですか?

西野:小遣い制というか、そこは非常に微妙なんですけど。小遣いじゃないですよ。僕はたぶん、あればあるほど使っちゃうんですよ。毎日富士そばしか食べないし。大してお金は使わないんですけど。本当に適当に使うんですよ。もうとにかく飲み代に使って、全部出すんですよ。

全部使っちゃうから、最初母ちゃんが心配して、吉本興業から母ちゃんの銀行に入って、母ちゃんの銀行から僕の銀行に月MAX30万円になるように入ってるんですよ。前から月5万円しか使ってなくて、25万円残ってたら5万円足して、みたいな。

そういう流れでずっと来てて、そうしたら、僕はそういうシステムだということをすっかり忘れてて、25歳くらいまで本当に月収30万円だと思ってたんですよ。その後もずっとそうだと思ってたんですよ。それで意外と(貯金が)集まってたの。だから大丈夫。

質問者1:それはちょっと疑問の解決にならないです。

西野:「(普通の人は)お金がないから」って言いたいの?

質問者1:いろいろ手を出そうとは思うんですけど、その間どうやって……。

:僕は(お金)まったくなかったですよ。

質問者1:本当ですか?

田中:そのときはどうされてたんですか?

:僕はもう本当にお金がなくて。

田中:ある人のほうが少ないよね。若いうちは。

:ある人は少ないんじゃないですかね。僕はちなみに19歳のときに300万円借金ありましたからね。

西野:うわー。

:1年で返しましたけど。

西野:やりましたね。おめでとうございます。

:まあ、飲み屋にハマっちゃって(笑)。現場に行くと、職人の間ではもう毎日大阪の老舗に連れて行ってくれるんですよ。

西野:でも、お金の問題はたぶんありますよね。

タレントが絵本を描くことへの批判

田中:ほかにもう1人どう? 一般の方でもぜんぜんいいですよ。

質問者2:すいません。一般で来てます。

田中:どうぞどうぞ、大丈夫です。

質問者2:素朴な疑問なんですけど。「世の中の大局に対して違うことをするのが、ある意味芸人や」みたいな話があったと思うんですけど。

自分で世の中に対して、まず世の中ありき以外の発想をいろいろお考えになってると思うんですけど、そういったものはどういうものがあるんですか?

西野:なんだろうな……。僕が「これしたい」みたいなことですか? 

質問者2:はい。たぶん創作活動だけじゃないんかなと。

西野:世の中ありきじゃなくて、自分が内から出したいものっていうことですか?

田中:(世の中に)反発していく感じじゃないところ?

西野:絵が一番わかりやすいかもしれないですけれど。絵を描くときも、反発になってくるのかも知れないですよ。まずタモリさんに「絵を描け」って言われて。絵本作るかみたいなことになって。

その時に、どうしようかなと思ったんですよ。タレントが絵を描いたら、絵本なんか出したら、僕はだいたい絵本を出してるやつの悪口言ってたんですけど。「あいつら、絵描きやがって」「タレントだから描けたんでしょ」と。

みなさんのように勉強されてる方からしたら、タレントが急に絵本なんか出したら、ムカつくじゃないですか。

絶対ムカつかれるなと思って、それを黙らせようと思ったんですよ。僕がタレントに対して思ってたのは、僕は絵本出すとき絶対に「お前タレントだから出してるんでしょ」って言われるなって思って。

プロじゃない人間の戦い方

これを黙らせよう、どうしようかなと思ったときに、まず最低ラインとしてプロに勝たなきゃ意味がないので、最低でもプロを超える。じゃないと絶対叩かれるだろうし、黙らすことができないなと思って。

じゃあ、自分のアドバンテージはどこかなって考えたときに、画力負けてるなとか。出版のノウハウ知らないなとか。コネが一切ないなとか。絵本の描き方よくわからないなとか。結局プロの人に負けてるところだらけで。勝ってるところがあんまりなかったんですよ。

どこが勝ってるのかなと思ったときに、「時間だったら勝ってるな」と思ったんです。要は1冊作るのにかけることができる時間です。

プロの方はそれを生業とされていて、それで家族の方々を養われたりされてるので、けっこう短いスパンで作品をバンバン出していかなきゃいけないと。

僕は絵本はあくまで副業なんで。要は収入のメインではないので、極端な話1冊作るのに10年かけられるなと思って。これはプロじゃない人の戦い方だなと思いました。

それで文房具屋さんに行って、一番細いペンを買って、物語はちょっと長めにして。そういう絵が好きということじゃなくて、時間がかかるようにしたってことです。

時間がかかるようにしたら、そもそもプロの人と競うことがなくなるから、勝つなと思って。こういうのはあんまり世の中で見たことがないなと思って、それは僕にしかというか、副業で手を出してる人にしかできないなと思って。そういう理由です。

絵本ってかわいらしいもんだから、そういうものを紐解いていったり、世の中にないような作り方というか。

クラウド時代のモノづくり

あともう1個ありました。喋ってて思い出しました。実はずっと時間稼ぎをしてたんですよ。

携帯ある人は「ウィシム 西野」で検索してみてください。俺はとにかく、地球が始まってから人間が見たことないものを作りたくて。

まず絵本をやってるから、絵本で考えていこうと思って、これまで絵本を3冊出したんです。3冊出して4冊目を作ろうってなったときに、「そういえば、絵本ってなんで1人で作ることになってるのかな?」って思ったんです。(多くても)せいぜい作と文の2人じゃないですか。

でも、映画って分業制じゃないですか。監督さん、助監督さん、照明さん、音響さん、俳優さん、メイクさんとか。

全部分業制で、みんなそれぞれの必殺技、得意分野を持ち寄って1個のすげーもん作るじゃないですか。でも、絵本だけは1人で作ることになっているというのは「あれ?」って思って。だって文章を書く能力と絵を描く能力はぜんぜん違うじゃないですか。

絵1つとってもキャラクターを作る能力と背景を描く能力はぜんぜん違うし、背景1つとっても背景を白黒で書く能力とそれの色を塗る能力はぜんぜん違う。

「絵って意外と分業制なんじゃないか?」と思って。絵本も1回分業制で作ってみたらどうなんだと。

「私は文章だったら負けないぞ」とか「背景はダメだけど、キャラクター作らせたらすげーぞ」とか「色塗らせたらすごいよ」とか「雲の感じは世界で誰にも負けないよ」というクリエイターの人たちを20~30人集めて。だから映画と作りはまったく一緒なんですけど。

そういう絵本を見たことがないな、何でないんだろうと思ったんです。(要は)絵本って単純に発行部数が見込めないから、制作費をかけることができないんです。

だったらクラウドファンディングで集めて、お金さえ用意したらできんじゃんと思って。

イラストレーターの方も、クラウドソーシングでイラストレーター特化型の「MUGENUP」という会社があって。そこの社長と飲みに行ってるんですけど、3万人のイラストレーターの中から選んで、チーム組んでやっちゃいました。

今、作ってる途中なんで、「ウィシム 西野」で検索したらたぶん出てくると思います。

とにかく時代の流れとかどうだっていいし、マーケティングとかも本当にどうだっていい。とにかく人間が見たことないもんを作りたいと思ったときに、単純に。

それって10年前はできなかったと思うんですよ。クラウドソーシングとかクラウドファンディングもなかったし、TwitterとかFacebookで拡散してお金集めたんですけど、10年前は難しかっただろうなと思って。

これは今の時代にしかできないなと思って。だからやんなきゃと思って。そういう社会の流れとかぜんぜん関係なく。

田中:じゃあ、1回ちょっと休憩しましょうか? 西野さんとツーショット撮りたい人は、500円ずつ僕に払ってください(笑)。アップしてもらってもいいので。

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