おもしろい仕事しか受けない

絵本作家のぶみ氏(以下、のぶみ):今、『情熱大陸』の過去の番組をずっと見てるんですけど、そこのなかで、出雲の旅館の人がいるんですよ。

西野亮廣氏(以下、西野):見ました、僕。

のぶみ:出雲の旅館の人はずっと昔からやってるんですけど、決めてることが1つあって、礼儀の正しい客しか入れないというのを決めてて。

西野:それ、いいですね。

のぶみ:礼儀の正しくない人はごめんなさいって言うんだって。そしたら、礼儀の正しい客しか来なくなったって。

西野:へえ。それ、おもしろいですね。

のぶみ:「ごちそうさまでした」とか、「ありがとうございました」とか、ちゃんと丁寧にしてくれる人しか来ないと、そういうふうになるらしいですよ。

西野:へえ。もうわかった。だからもう、本当におもしろい屋さんになろうと思って。もう1番は「おもしろい」。

のぶみ:へえ。

西野:でも、お金とかはもうぜんぜんいらない。いらないというか、後回し。優先順位としてはだいぶ後ろのほうですよ。

のぶみ:だいぶ後ろのほう。2番は何なんですか?

おもしろいが1位でしょう。あと2番……なんだろうな? もう本当にそれ以外いらないんですよね。だから、無理やりスケジュールを埋めるのも絶対やらないです。みんな忙しいほうが安心みたいなのあるじゃないですか。一応、毎日仕事が埋まっているほうが安心みたいな。

あれも一切やめて、もうおもしろい仕事がなかったら、仕事は月に1回でもいい。もうその代わり、おもしろいことしかしないみたいな。

山口トンボ氏(以下、トンボ):なるほどね。

西野:もうそうしました。

トンボ:もうルールだ、それが絶対的な。

のぶみ: だけどそれ、絶対おもしろい人になりますね。

西野:それをやってたら講演会がすげえ来るんで、それは受けますね。

それを受けるのは、講演会をやってバってしゃべったらお笑いのファンが増えるから。講演会はどんなやつも、スケジュールが空いてる限り絶対に受けます。

日本人は本音を言いづらい

のぶみ:俺、西野さんとこうやってやらせてもらって、一番勉強になるのが話し方なんですよね。西野さんって腹から声出してないですか? 今もそうだけど。

西野:ああ、そうかもしれない。

のぶみ:腹から声出してて、けっこう強めにしゃべるんですよ。ということは、たぶん自分が本当にそう思ってることしかしゃべれないんじゃないかなって思うんですよね。

西野:なるほど。

のぶみ:それはすごい大事なとこかもしれない。人って口先だけでしゃべると伝わらないんですよね。

西野:はいはいはい、なるほど。

のぶみ:心の底から声を出さないと伝わらないところがあって、たぶんみんなが西野さんの話を聞きたがるのは、腹の底から(声が)出てるからだよね。

西野:なるほど。良かった。

のぶみ:その人にとって間違ってるとか正しいとかじゃなくて、「俺はそう思う」ということをはっきり言ってる人って。

西野:俺、それ好きなんですよ。最近そっちが好きなんですよ。例えば、赤信号渡ったらあかんっていうことぐらいもうわかってるじゃないですか。だからもう、そんな話は聞きたくないんですよ。

そんなんじゃなくて、「でも俺は赤信号渡ってええと思うけどな、というのは……」みたいな、どんな理由で赤信号渡っていいのかという。

トンボ:なるほど。

西野:世の中の、完全に間違ってると言われているようなものを信じ切ってしゃっべている人の話って超おもしろいですよね。

トンボ:確かに。

のぶみ:そうだよね。

西野:そういう人の話。赤信号渡ったらダメですよって、そんなんもうWikipediaに書いてあるから。そんなことに時間使いたくなくて。「こいつやたら戦争したがってるけど、なんでこんなしたがっているのか?」ってそっちの話を聞いてみたい。

のぶみ:なんで戦争したがるかというと、たぶん日本人だからなんですよ。日本人ってけっこうまじめにやって誠実に生きてるんですよ。

だから自由にやってる人とか、自分の固定観念から外れた人を見ると、「私はこんなにまじめにやってるのに、この人ちゃんとしてないじゃない!」と言って、たぶん日本人って自分が本当に心の底から言いたいことがあっても、なかなか言わない気がするんですよ。

たぶん西野さんのことが好きな人は、言ってることうんぬんじゃなくて、「この人、本当に心の底からしゃべってるな」というのが好きなんじゃないのかな。

キングコング・西野亮廣の話し方

トンボ:「発声訓練の方法とか教えてほしい」って(コメント)たくさんありましたよ。

のぶみ:本当にぜんぜん違うよね。

トンボ:なにか気をつけてることとかあるんですか?

のぶみ:しゃべり方とか話し方について。

トンボ:別に腹式呼吸しようとしてしゃべってないですよね? たぶん意識はしてないですよね。

のぶみ:そうなんだ。意識してないんだ。

西野:ないです。オンオフがないですよね、まずね。

トンボ:確かにないですね。

のぶみ:でも、飲みに行くときとかと話の声のトーンは若干違う。

西野:そりゃTPOは、静かにしなきゃいけない店だったら一応静かにしてると思うんですよ。だからといって、機嫌が悪いとか落ち込んでるみたいなことはないですよ。後輩としゃべってるときもこうだし、女の子としゃべってるときもこうですよ。だからオンオフはぜんぜんない。

のぶみ:そうなんだ。

西野:だからずっとワーワー。あんまり喉がもたないですけどね。

のぶみ:テレビ出たときのしゃべり方で、なにか気にしてることとかあるんですか?

西野:どうなんだろう。声デカイですか?

トンボ:声大きいんじゃないですか。

西野:耳が遠いのかもしれないですね。耳つぶしてしまったら声がデカくなる。

テレビに出るときの事前準備

のぶみ:この前、番組が終わったあとに聞いた話なんですけど、「テレビ出るときに、コメントとかエピソードトークを事前に用意しますか?」って聞いたんですよ、西野さんに。

そしたら西野さんが、「初めはやってたんだけど、それをやるとものすごいいい点は取れないんだよね」という話をしてて。(その代わり)ものすごいスベるかもしれないですよね。

だって、この前の『ゴッドタン』でTシャツ破られたじゃないですか? 劇団ひとりさんに。あんなのどう対応していいかわからないですよ。なにが正解なのかよくわからない。

トンボ:あれは新しいですもん。やっぱり。

西野:ゴッドタンに関しては、僕が用意していくもなにも、まず企画を教えてもらってないですから。

のぶみ:あ、そうなんだ。

西野:「この時間に来て」だけなんです。

のぶみ:西野さんってそういうとき多くないですか? なにも知らない状態で、「とりあえず来い」みたいなのは多いかもしれない。

西野:多いですよ。「来い」とか「とりあえず2時間しゃべって」とか。

(一同笑)

西野:今はもう当たり前になっちゃってて。2時間ですよ。たぶん昔だったら、1年目とかだったら僕震えてたと思うんですよ。急に呼ばれて、「じゃあ、どうぞどうぞ」みたいなすごい雑なのあるじゃないですか? そういうので2時間しゃべってとかすごい無茶ぶりありますよ。でも、のぶみさんもけっこうトークあるんじゃないですか?

のぶみ:僕は最近ちょっとだけテレビに呼ばれてやるときに、台本もらってコメントをちゃんと書き込みまくって。もうそれをドキドキして忘れちゃったりしますからね。難しい……ドキドキしますよ。だけど、確かに「それ話さなきゃ!」って思ってそれ以外の話がうまくできないんですよね。

西野:あー、そうですよね。諦めたな、なんかそういうの。

のぶみ:そうですか。

西野:あとスパーンってスベるのもおもしろいですよ。スベってから、「ほんまに引いてもうてるやん」みたいなところから、「ADさんも笑ってくれてへん」みたいなことあるんですよ。

ADさんが本当に退屈そうに見てる。「この状態からどうすんの?」みたいなので。『ゴッドタン』がそうだと思うんですけど、そこからちょっと行こうと思って。だからだいたい、そういうときは文句から入るんですけど。「スベらせやがって!」みたいなところから。

のぶみ:そうなんだ。でもそうしてる。

トンボ:そういう状況も好きってことですよね。

西野:好き、好き、好き。すごい好きです。

のぶみ:そうなんだ。

西野:でもわかりますよね。芸人さんでそれが好きな人と、そこを絶対に避ける人って。芸人でも絶対に嫌がる人いますよ。

バラエティ番組の芸人の掛け合い

のぶみ:僕、この前サンドウィッチマンさんとご一緒だったんですけど。芸人さんと一般の人のしゃべり方って明らかに違うんですよ。あれ、なにが違うんですかね?

西野:なんだろう? 場数なんかな。ぜんぜん違いますか?

のぶみ:違いますよね、なんなんだろうね。

トンボ:確かに「この人、芸人さんだ」ってわかりますもんね。

のぶみ:あとネタがうまい人としゃべりがうまい人で、2つ持ってないといけないじゃないですか。

西野:はいはい。

のぶみ:それも難しいとこなんですね。

西野:確かにね。どうですか? 最近テレビけっこう出られてるじゃないですか。

のぶみ:明後日も『ニノさん』っていう番組で、

トンボ:『ニノさん』いい番組ですよ。

のぶみ:かなりバラエティ、バラエティした番組なんですけど、嵐の二宮さんの番組で。劇団ひとりさんとかバカリズムさんがいたんだけど、同じ質問を2回されたんですよ。

西野:へえ。

のぶみ:僕、もう考えてそれ言ったのになと思ったら、ディレクターの人がカンペでもう1回それと同じやつを出してるんですよ。

西野:えー。

のぶみ:「えー、俺2回目ないな」と思って。「今は絵本作家なんだけど、不良だったときのことを思い返してやってしまうことってありますか?」っていうのを2回質問されたんですよ。

西野 へえ。

のぶみ:一瞬黙ってしまって、「それはさっき言ったのにな」と思って。「うーん……」って言ってたら、バカリズムさんがすぐに、「その絵本にタイマンとかって書いちゃう」とか言ったんですよ。すごい助かったんですよね。

けっこう救ってくれるし、ものすごく気も遣ってくれるし、お笑いの人はもうすごいなと思って。

西野:いや、それはのぶみさんだからそういうフォローが入るわけで、僕は本当に2回言わされますよ。

おぎやはぎ、劇団ひとりはもうぜんぜん、「さっきの話、もう1回してください」みたいな感じで。「ウケるかな?」みたいな感じで1回しゃべってみて、さっきしゃべったから違うと思うんですけどね。

しゃべって、そんですべらされて、なんか笑えないなみたいな。「いや、だからさっきやったからね」みたいな。絶対やらされるもんな。

のぶみ:Facebookでちょっと見たんですけど、今度『アメトーーク!』と『ゴッドタン』にまた出るのは、もうクリアやったんですか。

西野:『アメトーーク!』ですか。

のぶみ:うん。

西野:『アメトーーク!』はちょっとお断りしたんです。

のぶみ:そうなんだ。

西野:ちょっと最近、いろいろあるじゃないですか。

のぶみ:そうなんだ、断ったんだ。

西野:スケジュールのこともあったんですよ。

トンボ:ちょっとじゃあ、そろそろ時間的に有料のほうに。

西野:有料のほうでしゃべりましょう。

トンボ:ここら辺で、このあとは有料のほうで。

制作協力:VoXT