チケットキャンプの転機

小泉文明氏(以下、小泉):おもしろいですね。各社苦労してローンチしたと思うんですけど。皆さんマーケットプレイスモデルなので、そのあとはけっこう2次曲線でバッといくと思うんですよね。

ずっと積み上がっていって、どこかでティッピング・ポイントでボーンって2次曲線で。そのポイントになる機能開発だったり、なにか思い出深い出来事があれば教えていただきたいと思います。笹森さん、どうでしょう。

笹森良氏(以下、笹森):チケットキャンプだと、4月にリリースして5ヶ月くらいトラフィックという波がまったく訪れないで、どうしたもんかなみたいな感じで、毎日試行錯誤してたんですが。

転機があって、サマーソニックというイベントが、毎年夏に東京と大阪で行われるんですけど、チケキャン上でサマーソニックのチケットが売買されるというタイミングが1年目の夏に訪れたんですね。これが初めての手応えでしたね。

小泉:「この機能追加してやばかった」みたいなのなかったの? 

笹森:CtoCの機能でブーストかかるものってたぶんなくて。僕らのKPIだと、何人訪れてそのうち何人が買って、いくら使ったか、MAU×決済率×単価というのを見てるんですけども。そこをブーストさせるものってあんまりないんですよ。単価はコントロールしにくい要素ですし。つまんないけど、地道だと思ってますね。

ココナラのマーケットプレイスの活性化

小泉:地道そうな新明さんはどうですか?

山田進太郎氏(以下、山田):ココナラはすごい変わりましたよね。初めは500円で買えるんだけど、アップセルできるみたいな機能ですごく変わった印象があるんですけど。どうなんでしょう?

新明智氏(以下、新明):もともとわかりやすいように、500円で全部やれるようにしていたんですけれども、そこからココナラに出品してくださってる方が活躍し始めていて、だんだん窮屈なモデルになったのも事実だったんですね。

どのタイミングでこの窮屈さを広げていくかすごく悩んでいたタイミングで、ちょうど2013年の終わりぐらいにそのモデルをだんだん崩し始めました。

崩すというか、どういうふうに上げていくかというイメージを持ちながら、プライシングを広げていったというのが実際の話です。

やっぱりそれをきっかけに伸び始めたカテゴリとか、今まで500円だったら出なかったんだけれども、1,000円、5,000円と上げることで、いろんなタイプの出品者さんが来るようになって、マーケットプレイスが活性化したというのはありますね。

山田:メルカリもさっきの笹森さんの話と同じで、何がきっかけでどうなったというのがすごい見えづらくて。もちろんプッシュをちゃんと送るとか、購入画面をどうするとか、チュートリアル変えてみたりとか、いろんなことをやって少しずつ数字が上がったりはするんですけど、なにかによって劇的に変わったというのはなくて。

やっぱり、各社を見てて思うんですけども、このモデルというのは本当に最初きついんですよね。最初の半年とかは本当にニワトリと卵みたいな感じで、出品者がいないから購入者もいないみたいな感じになって。

それでも地道にある程度インストールした人、もしくはWebを訪ねてきた人が出品してくれると、ほかの人が購入してくれるみたいなものを地道にチューニングしていくことによって、ようやく人がまわるようになってきて、一点を超えるとワッと増えていくみたいな感じで、うちも何かが良かったというよりは、日々地道に改善していくことかな、という感じがしますね。

起業時の仮説モデルを再検証

小泉:中長期な話で、今後の機能開発、もしくはまったく新しいプロダクト、この辺にチャレンジしたいんだよみたいな話をもらえればなと。

今後こんな感じで発展していくよとか、社としてどう思っているかというのでいいんですけれども。

新明:ココナラを始めて3年ぐらいで、いろんなことをやってきたんですけど、最近バック・トゥ・オリジンという感じで、起業時にプロダクトを作ったときの仮説とか、モデルみたいなものをもう1回全部見直していたら、そもそもその時に立てたモデルの理解度も深くなっていて、実際はそこのモデルは正しかったというのがだいぶ見えてきた最中です。

なので、今から機能を追加するというよりは、どちらかというとかなり減らしていく。それからユーザーをちゃんと特定して、そこに当てていくような、そういったスリムにバシッとモデルに即したかたちにもう1回ファインチューニングしていこうかなと思ってます。

そんななかで、新しい機能ということではないですけど、ココナラはもともとやっていた世界観がわりと広くて、当時「モバイルでやれば?」と言われていたんですけど、モバイルでやるにはちょっと難しかった。

あまり想像ができなくて、モバイルのところをやらずにPC、Webで伸ばしてきたんですけれども、今から少し……アプリの領域ですね。

提供するユーザーにどういうものを届ければいいのかというモデルがだいぶ見えてきたので、ちょっと絞ったかたちでアプリを出していければなと思っています。

チケットキャンプが描く理想のサービス

笹森:仮にチケットキャンプ2.0みたいな姿があるとしたら、今、スマートフォンが中心になっているじゃないですか? チケットキャンプも70〜80パーセントぐらい、アプリ・ブラウザもふくめてスマートフォンからの取引になっているんですよ。

エンタメを扱っている商材なので、スマートフォンの中身ってめちゃめちゃその人の音楽に関する趣味嗜好が詰まっていて、それはiTunesのデータだったり、カレンダーの予定だったりするんですよ。

これまでは、例えば欲しいライブのチケット検索をして、それを取りにいくみたいな集客行動が力点だったんですけど。

これからは、スマートフォンのデータを解析して、最近始めたのだとiTunesのデータ等にチケットキャンプのデータベースをくっつけて、「あなたが今聞いている奥田民夫のライブが、広島で明日あるんですよ」「チケキャンなら半額」みたいなそういうプッシュが届いたらスマートだし、そんなサービスが実現できたらおもしろいなと思っています。

実は一部始まっていたりするんですけど、そこに位置情報をかけると、「今日、渋谷公会堂で、あなたが聞いてる音楽に近いチケットが70パーセントで売っているんですけど、しかも最前列みたいな、どうですか?」みたいなものがどんどんプッシュで流れてきたら、すごい音楽体験が増えていったり豊かになってくるかなと思うので、次はそういうフェーズでやっていきたいなと思っています。

メルカリの新しい顧客体験

山田:メルカリはもともとグローバルをけっこう意識してやっていて、ちょうど今アメリカにフォーカスしていて、エンジニアやプロダクトのプロデューサーが40人ぐらいいるんですけど、9割ぐらいはアメリカの優先順位でやっています。ソースコードは基本的には1つなので、アメリカの改善は、日本にも当然影響はするんですが。ということで、とにかく海外をやっていきたいなというのがある。

それから、CtoCはけっこういろんな可能性があるなと思っていて、これからUberとかAirbnbみたいな広義の意味でのCtoC。シェアリングエコノミーみたいなものだと思っているので。

今ちょうど、ソウゾウという子会社をつくって、松本(龍祐)君が1個新しいアプリを作っていますけども、メルカリのログインとかIDを利用して、我々の中で経済圏みたいなものを回していくということもやっていきたいと思っています。

もう1つあるのがコマースのほうですね。やっぱり楽天とかアマゾンみたいなモデルが最終的なものだとはぜんぜん思わないので。もっとモバイルで新しい体験をBtoCでも、つくっていけるんじゃないかと思っているんで。

基本的にはその3本柱でかなり全方位に拡張していきたいなと思っていて……今ちょっと無理が出始めているという(笑)。

(会場笑)

求めるのはサービスへの共感度が高い人

小泉:隣で聞いててドキドキしてきた(笑)。最後聞きたいのは、今日は採用色があるイベントなので、会社のカルチャーとか。今3人とも社長とか創業メンバーなので。

会社の大事にしたいカルチャーとか、今いるメンバーはこういうメンバーが多いとか、こういう人に来てもらいたい、仲間にしたいみたいなメッセージを綺麗に締めていただけたらなと思います。

新明:うちは、先ほど言ったようにけっこう難しいプラットフォームだという認識が僕ら自身もあります。

なので、やっぱり今来ているエンジニアも、メンバーも、まずサービス。誰でも気軽に自分の知識、スキル、経験を出品できる社会って、やっぱりすごいおもしろいよねという単純な共感があるメンバーと(一緒にやっていきたい)。

あともう1つは、やっぱり難しいところが好きなメンバーです。PDCAをごりごり回して、その中から仮説をどんどん絞り込んでいって、伸ばしていくみたいなことが。けっこうでかいプラットフォームなので。

その中で、やっぱり1人だけの仮説で全部伸ばしきることはできなくて、それよりもほかの一人ひとりのメンバーが、自分なりにこのプラットフォームの仮説を持って、しっかりトライをするというところが、かなりサービスを伸ばす上で大事になってきます。

やっぱり僕らのグラフが上に来たのも、採用でかなり優秀なメンバーが来てくれて、一人ひとりが仮説を持ってしっかり伸ばすようなことができるようになって、急にグラフも伸びてきたという中で、求めるメンバーとしてはこういったサービスへの共感度が高いということと、これは難しいかもしれないけど、おもしろがって仮説を持って、一人ひとりがしっかりPDCAを回せる。そういったやる気というか、プロダクト、サービスを伸ばすんだみたいな気概が(ほしい)。

あとは、かなりフラットなカルチャーで、みんなほぼすべての情報が公開になっているような会社です。

なので、言いたいことを言って、それが全部会社やサービスのためになるというのがおもしろいと思ってもらえるような人がいいと思います。以上です。

フンザのエンジニアの責任とやりがい

笹森:どんなエンジニアと働きたいかということなんですが、冒頭に申し上げたとおり、やっぱり5人のエンジニアでさばくにはサービスが大きくなりすぎて、サービスを安定提供するという意味でさまざまなリスクや不安を抱えながらやっています

6人目7人目のエンジニアを必要としており、この会場でもし興味を持っていただいたらお声をかけていただけたらうれしいなと思います。

フンザの1つの運営カルチャーとしては、少数制で1人当たりの生産性だったり、責任を抱え込む範囲を広げていきたいなと思っています。5人で月間500万人というと、1人100万人の責任があるわけですよ。

そういった責任の中で仕事するのが自分はすごく楽しかったし、ちょっと紹介の中でも漏れちゃったんですけど、僕は進太郎さんと3年間ぐらい一緒に働いていて、進太郎さんが創業したウノウという会社なんですけど。

その会社もまさにそういうカルチャーで、3年間の中でたぶん1回くらいしか指示を受けていなくて、なんでも自由にやらせてくれたんですね

山田:けっこう言っていたつもりだったんだけど、聞いていなかったでしょ(笑)。

笹森:その1回というのも、ゲームの仕様の話で「武器は壊せって」言われて。「ガチャでせっかく買ったのに、その武器壊しちゃっていいのか?」みたいな。僕は壊したくなくて。進太郎さんは壊したくて……みたいなその1回だけなんですよ。

フンザでもそういう諸先輩社長のマネジメントを自分に生かしながら一人ひとりの個性と力量、責任範囲を広げていきたいなと今でも思っていて、そういうメンバーにきて欲しいなと思ってます。ありがとうございました。

海外での成功を見据えたメルカリのバリュ

山田:メルカリは、さっきの笹森さんの話にもあったウノウからの人が10人位いたり、小泉さんもふくめてミクシィの人も多かったりするんですけど。

極めて自由なカルチャーかなと。朝もぜんぜんうるさいこと言わないし、みんな思い思いに働いていて適当な感じで非常に自由なカルチャーかなとは思っていますね。

あと会社の中のバリューで「Go Bold」というのを言っていて、要するに大胆にやろうということなんですけど。

日本のネットベンチャーが海外で成功した例ってほとんどないんですよね。特にアメリカというのはほぼゼロだと思うんで。

そういう前人未到のことをやるためには、失敗を恐れずGo Boldにやっていかなきゃいけないなとすごく思っていて、今日もたまたま社内面談していたら、「社内で何かをやるときに、『それってGo Boldだよね』とか『Go Boldじゃないよね』と議論されている」という話を聞いて、僕としてはうれしかったし、そういう今まで誰もやったことのないことをやってやろうという気概のある人が来てもえるとうれしいなと思っています。

小泉:ありがとうございます。この後懇親会もありますので、続きはまたその時に聞いていたいただければと思います。どうもありがとうございました。

(会場拍手)