UXリサーチのノウハウ

坂田一倫氏(以下、坂田):では、ここから、酒井、反中より、実際にUXを事業に装着させるためのノウハウやアプローチについて発表いただきたいと思います。まず酒井さんから発表いただきます。

酒井洋平氏(以下、酒井):みなさん、こんにちは。「UXリサーチ」について私から説明させていただきます。

自己紹介なんですけれど、酒井洋平と申します。リクルートでは、わりとニックネームで呼ばれるのですが、よっぴーと呼ばれております。若干、ここでほっこりと(笑)。ありがとうございます。

おもしろいヨッピーとつまらないよっぴーがいて。おもしろいヨッピーさんはたぶんみなさんネットでご存知のおもしろい記事を書く人なんですけど、僕はあまりおもしろいことを言わないのでおもしろくないよっぴーと(笑)。

経歴を簡単にご説明しますと、スライドには書いてないんですけど、私は最初、長野の高専で電気工学を学んでました。途中でドロップアウトして、心理学勉強したいと思って、早稲田で認知心理を勉強して。

学生時代に、ミツエーリンクスさんというWeb制作会社があるんですけれど、そこでバイトをして。今で言う、フロントエンドエンジニアをやっていました。

そこで「Webデザインおもしろいぞ」。もっと言うと「デザイナーさんって、すごくきれいな物をさくさく作れてすごいな」「デザインプロセスってどうなってるんだろう?」と思って。これは実際にデザインをやってみないと分からないなと思って、多摩美の情報デザインの大学院に行って、デザイン自体を学んで、というかたちで学生時代は過ごしてきました。

そのあとは、たまたま、富士通のUIデザイナーとして採用していただけたので、5年間ぐらい、大企業向けの業務システムのUI設計やデザイン、あとは自社製品で、今で言う、クラウドコンピューティングとかいろいろあると思うんですけど、サーバーに載っけるミドルウェアの設定画面のUI設計とか、そういったことをやって。

そうすると、ユーザビリティがすごく重要なんですよね。なので、UIデザイナーとして、どうしてもユーザビリティのことを考えながら設計していかないといけないということで、ユーザビリティに軸足が移ってきました。

そのあと、いろいろ紆余曲折あって、それはまた懇親会で話せればいいかと思いますが、ネットサービスに行ってみたいと思いまして。今、LINE株式会社に名前が変わったんですけれど、当時はまだネイバージャパン、検索をやろうとしてた時期のネイバーにジョインして、UXスペシャリストとしてのキャリアを歩み始めました。

そのあとまた紆余曲折あり、ここにいる松村と同じミクシィに行って、UXデザインのプロセス導入をお手伝いしたり、新規事業を立ち上げたりしたあとに、今ここ、リクルートテクノロジーズにいます。

オンラインコミュニティを利用したリサーチ手法「MROC」

今はマーケティングリサーチグループというところに、私は所属しています。マーケティングリサーチグループのミッションとしては、次の事業をどうしていくべきなのかというニーズの把握だったり、現状どう受け止められているのかという価値観を探索したり。そういったところがミッションかなと思っています。

そのなかで、やはり「マーケティングリサーチ」と一言で言っても、専門領域としてはけっこう広いので。定性リサーチが得意な人、定量リサーチを専門にする人。あと、定性・定量合わせつつ、「MROC」と、スライドに書いてありますけれど、Marketing Research Online Communityという。

このあとで詳しく説明しますけれど、このMROCという手法を活用するためのコミュニティマネジメントを専門にしているメンバーもいたり。わりと幅広い人たちが集まってやっています。

今日はMROCの話を中心にお話していきます。MROCというのはどういうものか、簡単言うと、Facebookグループみたいなものだと思ってもらうといいんですけど。

オンライン上に、あるテーマに基づいたコミュニティを作って、そこにお客様に来ていただいて、そのなかでコミュニケーションをしながらニーズの探索をしたりという。普通だったら対面でインタビューしながら把握するようなところをオンラインベースでできるんじゃないかということで始まった手法なんですね。

これを今リクルートでは、「ココロバ(cocoRoba)」というリサーチプラットフォームを作って実際に運営しています。

IDに紐付けて、実際のユーザーを母集団とできる強み

定性、定量リサーチそれぞれに良いところ・悪いところがあって。

とくに定性リサーチは、「本当にそれ信じていいんですか?」みたいなことを言われるんですよね。なぜかというと、N数、母数が少なかったりすると「10人、20人の意見聞いちゃっていいんでしたっけ?」というような話になりがちなので。

そのあたりは、このココロバですと、実際にリクルートのサービスを使っていただいてる方、リクルートIDというものがあるんですけれど、そこに紐付けて集客をしていますので、きちんと使ってくれている人が100パーセントの母集団として形成できるということがあります。

今見せている画面みたいに、いろんな事業から「こんなテーマでリサーチをかけてほしい」と言われたときにこういうテーマが設定されて。

実際にやった事例で言うと、ゼクシィでこれからコンテンツマーケティングに力を入れていこうという話になって。

どんな動画を作ったらユーザーさんの心に刺さるのか。とくに結婚式検討のフェイズにいるような人たちに向けて、あるいは家族に向けて「どういった動画を作っていったら胸に刺さるシーンを作れるんだろうね?」という課題があったんです。

なので、それは実際に結婚式で感動した瞬間の話から、なにか仮説が作れるんじゃないかということで。「結婚式で、心が動かされる瞬間ってどこですか?」というテーマを設定して、ココロバの参加者のみなさんに質問してみました。

そうすると、実際にゼクシィで今まさに結婚式を検討しているフェイズにいる方から、いろんなコメントがいただけます。

例えば、「数年前の姉の結婚式で、姉とお父さんがヴァージンロードを歩いたとき、お父さんがロボットのようにカチカチになって歩いている姿を見て、そのときは思わず笑ってしまいました。でも、そのあとお母さんが『お父さんは音楽をやっていたから、リズム感はいいはずなのに。やっぱり娘の結婚式だと、歩く余裕もなくなるのね』と言って。いつもシャイなお父さんも口では平気そうなこと言ってたけど、やっぱり思うことがあるのかなと思うとなんかジーンとしました。2ヶ月後は私の結婚式。お父さん大丈夫かな? でもそんな不器用なお父さん大好きです」みたいな、ほっこりエピソードが集まってきます。もう1個あるんですけど、時間の都合でスルーしますけれど。

実際コミュニティを担当している私もこのコメントを読んで、返信したり、深掘りしたりするんですけれど。こういったコメントが大量に集まってきて、読んでるうちに思わずそのシーンを想像して泣いたっていう(笑)。3人が目を通してるんですけれど、3人とも途中で涙ぐんで席を立つということが実際に起きたりして。かなりいいコメントが集まってます。

これをベースに動画が作れたら、すごく胸に刺さりそうなコンテをきれそうだね、と。

顔を合わせて深掘りする「お茶会リサーチ」も

それから、ココロバに参加いただいている方の中から、さらに実際にリクルートまで来ていただいて、お茶を飲みながらお話を聞くみたいなものを試しに毎週実施してみています。ゼクシィで「お茶会リサーチ」を実はやってるんですけれども、これもけっこういろんな方が来て、毎回、事業側でも把握できてなかったような発見があったりして。

あと週1でやってますから、今流行りのデザインスプリントみたいなところに将来的には持っていけると思っていて。定性リサーチとデザインの仮説検証スピードをあげるというところに将来的にはうまく噛みあわせていきたいなと思っています。

アウトプットは分厚いリサーチ資料で小難しいことが書いてあるんじゃなくて、なるべく事業側の人がぱっと見て、2、3分くらいで簡単に把握できるような、ペラ1のものを毎週出していくというような工夫をしています。

実際にココロバでいろいろ協力していただいた方には、実施になった改善をこういうかたちで「みなさんの意見を載せましたよ」というものをきちんと伝えて、より深いコミュニケーションができるようになったり、感謝をきちんと伝えられるようにするというところも含めて、コミュニティマネジメントをしています。

コラボレーションのループを回していくこと

リクルートのサービスの作り方だと、コラボレーションのループを回していくということが本当に大事なんです。

私たちリサーチ部門としては、「カスタマーの本音を聴く」というところを本当に専門に強くやっていますし。それをもとに、サービスを実現していく。どうしていったらいいのかというところに着地させる。

さらにその結果、使っていただいたものを、またユーザーさんからいろいろと意見を取り入れて、「実際にはこう思われてますよ」と現実をきちんと把握していくかたちで共に創っていく。共創というところをすごく大事にやっています。

カスタマーの本音というのはなかなか把握が難しいところなんですけれど、そこを探りにいく専門スキルを発揮して、「今、本当はこういうものが求められてますよ」とか、「こんなふうに思われちゃってるから、ここを変えていかないとまずいですよ」みたいなことを、きちんと集めて、向き合いながら、サービスを作っていきたいし、作っています。ということで、以上となります。ありがとうございます。

(会場拍手)

坂田:ここで1つキーワードが出たんですが、冒頭の岩佐さんの話でもあったように、人生の転機に関わるサービスを我々は提供しています。転機に関わるということは、それだけ重い決断に我々が携わるということになるので。

酒井の話にあった、「いかにユーザーと密着できるか、その決断の裏にある背景とか文脈を理解できるか?」というところに立ち返って、我々もカスタマーの重要な決断を支援する。助けになるところに着地させるというところを日々やってるという事例の紹介でした。