UXデザインとキャリアについて多方面から考える

坂田一倫氏(以下、坂田):みなさん、初めまして。坂田と言います。今日は雨なんですけれど、我々スタッフ一同、みなさんとお会いできるのを本当に楽しみにしておりました。今日は雨にも負けず、楽しい1日にできればと思ってます。ぜひ、よろしくお願いします。

パネルディスカッションに入る前に、まず、私が何者なのかということを簡単に紹介したいと思います。

今はリクルートテクノロジーズのサービスデザイン1部、ストラテジーグループというところで、主に事業戦略の領域を担当しております。私は昨年の夏に入社いたしまして、まだ1年経ってないんですけれど、ずっとリクルートの創業事業である「リクナビ」や人材関連のサービスの事業戦略に携わってきました。

「それまで何してたの?」というと、リクルートテクノロジーズは3社目でして、その前はデザインコンサル会社にいました。恵比寿にある「コンセント」というところなんですけれど、そこに2年ほど在籍しておりまして、メーカーなどのクライアントさんに対して新規事業の開発支援やWebサイトを中長期に渡ってリニューアルするプロダクトマネジメントをしていました。

新卒では、楽天に入りまして5年半勤めました。仕事内容としては今とあまり変わらず、企業や組織を横断したUXデザインを担当してきました。

今回のパネルディスカッションなのですが、テーマ1、2と分けさせていただきました。

テーマ1では2名のパネラーの方に参加していただいて、「UXデザイン/サービスデザインの可能性とは?」というお話をしたいと思います。ほかの2名もさまざまな会社を経験していますので、それを踏まえた上で、自身のキャリアの積み上げとともにUXデザインとどう関わってきたのかということを紐解きながら、みなさんと今回の主題である「UXデザインとは?」「サービスデザインってどういうものなのか?」ということを認識合わせしながら、テーマに移っていきたいと思います。

テーマ2では、話者も変わりまして、実際にサービスデザインやUXデザインがどういうかたちでリクルートという組織に装着されているのかということについて、3つの事例をお話いただきます。

そのあとにまたパネルというかたちでここに来ていただいて、みなさんと一緒にディスカッションする場を設けて終わりにしたいと思います。

1時間半という長丁場なんですけれど、お付き合いいただければと思います。一番楽しい回になればいいなと思っています。では、さっそくパネラーの方をご紹介したいと思います。竹部さん、松村さん、お願いいたします。

(会場拍手)

「点から線へ」キャリアを移した松村氏

では、ここからは座っての進行となりまして恐縮ですが、坂田、竹部、松村で話したいと思います。

先ほども少しイントロでお話した通り、我々3人は、ほかの会社を経験して、今リクルートテクノロジーズという会社に移ってきました。自己紹介も兼ねて、松村さん、竹部さんがどんなキャリアを歩まれて、どのようにUXデザイン領域に関わってきたのかということについて、お話いただけますでしょうか。

松村道夫氏(以下、松村):みなさん、今日はお越しいただきましてありがとうございます。松村道夫と申します。サービスデザイン1部のブランドグループというところでマネージャーをしております。

プロフィールには、「UXD×デザイン」となっていまして、デザインが被っていますけれど(笑)、私はビジュアルデザイナーとしてキャリアをスタートしました。受託制作を中心に、UIデザインとか、コーポレートサイトとか、とにかくたくさん作るということから始めました。

そんなに大きい会社ではなかったので、「ちょっとお客様のところに行って、要件聞いてこい」みたいなかたちで、徐々にディレクション、「何を作る」というところにも関わるようになりながら、やることがどんどん増え、ディレクター、プロデューサー、あとは組織を見るということをやってきました。

主に受託だったので、ずっとクライアントさんから話を聞いて、なにかものを作るということをしていました。それを何年も繰り返していたので、徐々に点の仕事ということに、言い方は悪いのですが、少し飽きてしまいまして。

もう少し、点ではなく線になるような、自分の作ったものをちゃんと誰かに届けながら、それを育てていくことをしたいなと思うようになって、キャリアを変えてみようと、次に株式会社ミクシィに入りました。

そこで初めて、サービスを自分で作るという役割を担いまして、すごくいろんなことを学びました。たくさんのユーザーさんに向けて、緊張感と責任感を持ちながら、サービスを提供するという非常によい経験をさせていただきました。ここでサービスデザインのベースを学ぶことができました。

ただ、マネジメントのウェイトが徐々に大きくなったので、もう少し現場に戻りたいという気持ちと、「ビジネスをつくる」というところをもう少し深く学びたいと思い、リクルートにキャリアチェンジをしました。現在は、リクルートでみっちりとUXデザインをやらせてもらっています。

過去の職場では、UXチームの立ち上げを経験

坂田:では、竹部さん、お願いします。

竹部陽司氏(以下、竹部):みなさん、こんにちは。竹部陽司と申します。自分も、先ほどの松村とほとんど同じなんですけれど。もともとはWebデザインを独自に学生時代から始めて、そこからWebデザイナーとして最初の会社に入りました。

ちょうどインターネットバブルと言われていた時期なので、会社が買われたり、潰れたりということを繰り返して。Webを受託して作っている会社だったんですけれど、そういうことを繰り返していくうちに、徐々に自分でコントロールできないということにあまりおもしろみを感じなくなりました。

サービスを作って関与していきたいのになあ、と思ってクライアントの方に提案してもなかなか予算も得づらいですし、我々が提案するものが本当に良いのかどうか効果がわからないということもある。

徐々に自分たちでコンテンツを作っている会社に行ってみたいなと思うようになって、ちょうど2004年、楽天に転職をいたしました。

楽天には最初「infoseek」というポータルサイトのWebデザイナーとして入ったんですけれど、会社が徐々に外注化を進めていきまして。内部にデザイナーやコーダーを抱えていたんですけれど、大手のWeb受託会社に来ていただいて、そちらでデザインをするように切り替えが進んでいきました。ですので、自分の身の振り方として徐々に、自分で手を動かすというよりは、Webディレクターのような立場で活躍をしていけないかなと模索して、Webディレクターとしてのキャリアを歩み始めました。

そこでユーザービリティについてや、UI、UX、そういった知識をつけることによって、徐々に自分自身のプレゼンスを高めていこうと考え始めました。

最終的に、楽天では、UXの専門部署を立ち上げました。そこでちょうどお隣にいる坂田と一緒に、全社に対して「ユーザーに向き合ってやっていく活動が重要なんですよ」というお話をして、仕組みを導入する、組織を立ち上げるということをやっていきました。

楽天では、大方そういった動きをしたのもありましたし、自身がけっこうマネジメントのほうに行ってしまったので、現場でもう少しやっていきたいなあと思い、ちょうどその頃モバイルで飛ぶ鳥を落とすような勢いだったディー・エヌ・エーに転職をいたしました。そこで、モバイルの知識を得たり、あとは今までもサービスに携わってはいましたけれど、ECや求められて使うサービスではなく、エンタメの領域、どちらかと言うと、嗜好品的なサービスにおいて、UXってどう活かせるんだろう、と考えていました。

ディー・エヌ・エーでは、ソーシャルゲームのUXを担当したり。後半の1年間は、遺伝子検査サービス「MYCODE」の立ち上げに関わって、UXデザイナーとして立ち回りました。

その時に、ちょうどリクルートから専門性が高い人たちが集まった組織を作って、いろいろ活動を行っているというお話をうかがって、興味を持って、リクルートに転職したという経緯になります。

リクルートでは、最初はリクルートライフスタイルに出向して「Airレジ」のアプリ開発を担当したり。今は、リクルートキャリアでアプリケーション開発に携わっています。

「どのように」より重要な、「なぜ作るのか」という話

坂田:ありがとうございます。お二人の話をうかがって、いくつかキーワードが出てきたと思います。1つが「点を線にする」というところ、これがUXデザインやサービスデザインを紐解くキーワードになるのかと思っています。

実は、この3名に共通していることが1つありまして、キャリアが「ビジュアルデザイナー」スタートだったんですね。ちなみにご参加いただいている方のなかで「ビジュアルデザイン」を専攻、あるいは趣味でやっている方ってどれぐらいいらっしゃいますか?

(会場挙手)

少ないですね。ありがとうございます。

私の場合だと、大学生のときはプロダクトデザインをやっていたんです。ただ、先ほどの竹部の話の通り、インターネットバブルの影響があり「IT系の企業に行きたい」という思いから、ビジュアルデザイナーに転身しました。

0からのスタートだったんですけれど、主に、みなさんがよく見るようなメールのバナーとか、特集ページをずっと作っていたんですね。わりとそこでは、「想像力をどう働かせるか」ということが醍醐味で、仕事を毎日の楽しみとしてやっていたんですけれど。当然、導線の素となる画面だったり機能を改修しないと、「もっと多くの人に来てもらえないよね?」という疑問をすごく抱くようになったんです。

「どのように作るのか」というところをすごく意識してやっていたんですけれど、「どのように」をさらによくするためには、「まずなにを?」とか、そういったことをもっと上流から考えていかないと難しいなと思いました。

実は私は、竹部と同僚なんですが、次に情報設計を担当するようになりまして、ビジュアルデザインの前段階として、当時はWebディレクターという肩書きでやっていました。

とはいえ、画面設計をしていったなかでも、「そもそも、なぜこのサービスや機能を作るのか?」「この画面を作る必要があるのか?」「このサービスは必要なのか?」というところを、さらにジャンプして考える必要があると思うようになりまして。

徐々にサービスデザイン、そもそもサービスの提供価値から変えていかないと、来てもらいたい人にも来てもらえない、最終的に作ったアウトプットを使ってもらえない、考えた機能を使ってもらえない、ということが繰り返されるので、そこから脱却したいという思いから、今のキャリアにいたっております。

“デザインの言葉”で話さないことを意識

お二人の話をうかがっていて、「点を線にする」ということ、その時代の流れとともにやられてきたことが、徐々に変わってきた話として、みなさんもお聞きしたと思うんですけれど。お二人は「点を線にする」なかで、キャリアを変えて進化させていく過程で意識されてきたこと、周りとの関わり方や日々の業務において、とくに「ここを意識していた」みたいなことがあったら、教えていただけますでしょうか? 竹部さんいかがですか。

竹部:周りとの関わり方として、すごく意識していたのは、やはり自分が大事だと思ってることをなるべく理解してもらうために、なにか成果と結びつけて話すようにしたりとか。

あとは、当然、成果に結びつきづらいこともUXの領域には多くあるので、そういう部分では、納得を得られるように、ほかの人の意見を募ったり、周りとコミュニケーションを頻繁に持つことで自分の考え方を導入しやすく進めていったり、ということをすごく大事にしていたように思います。

坂田:松村さん、いかかがでしょうか?

松村:デザイナーは、どうしてもデザインの言葉で会話してしまいがちなんですが、チームメンバーだったり、クライアントさんだったり、もちろんユーザーさんだったり、伝えたい相手の今困っていることや、期待していることを理解し、できる限り、相手のコンテキストにより沿ってコミュケーションすることが大切だと思っています。僕がよくチームメンバーに言うのは「相手の言葉でデザインを説明しましょう」ということ。そのあたりはすごく大事にしています。

坂田:実は、私も、過去に尊敬する人に言われたことがあるんですけれど。UXデザインに携わる人がプロジェクトとか進める上でも、そもそも、そこのUXデザインを考えないと難しいよねという話があったり。あとは、ビジュアルデザイナー上がりだったので、わりと1人で作業することが多かったんです。

ですが、情報設計だったり、それ以上のプロジェクトのマネジメントだったり、今やってる事業戦略という領域に関わってくると、周りともっと関わって、共創していかないといい物が作れない、というところに意識が変わってきました。

そういったことが、2つ目の「周囲とのコミュニケーションと共創」というキーワードとして挙げられるかと思っています。

コミュニケーションとして成立するものを作りたい

もう1つ質問なんですけれど、最初に入られた会社でやってきたことや、それ以降で培ってきたスキルや経験があると思うんですけれど、それが今のお二人がやられている業務やマネジメントには、どのように活かされてると思いますか?

松村:あまり変わっていなくて。原点としては、自分が作っているものをちゃんと意味のあるものとして成立させたいという気持ちでやっています。

普遍的に、ちゃんと意味のある、伝わるものを作るぞというところをユーザーに対しても、チームに対しても、組織、会社に対しても、そういうスタンスでいつづけることを意識しています。

竹部:自分が今、非常に意識して取り組んでいるのは、自分自身の考え方って本当に自分だけの視点だけでしかないんだろうなということで。

これが「話す相手の立場だったらどうだろう?」とか、「プレゼンをする上司の立場だったらどうだろう?」とか。あとは「これを最終的に受け取るユーザーだったらどうだろう?」みたいなかたちで、いろんな角度から自分の考え方とかアイデアを多角的に眺めてみて。

そこで何か変えていけるものとか、もっとブラッシュアップしていけるものがあるんじゃないかということが、今、非常に大切にしていることですね。

本質的なことを考える必要性

坂田:私は、今、松村さんがおっしゃった「普遍的」というのも、もう1つのキーワードかと思っていて。

時代の流れと共に、さまざまな方法論や手法体系がものすごく世の中に出てきていると思うんです。UXデザイン、サービスデザインとか、HCD(Human Centered Design:人間中心設計)とか、デザイン思考、リーンスタートアップとか。

毎年のように新しい概念がどんどんと出てきて、それに適応するためにはどうすればいいのかということを考えていることがけっこう多くなってきている感じがするんですけれど。

たぶん原点に帰ったときに、松村さんや竹部さんがおっしゃったように、意味のある伝え方、意味性を見出すとか、相手の立場に立ったコンテキスト、文脈をどう汲み取って進めるのか、というところは、おそらくそれが組織内であろうと、対ユーザーであろうと変わらないんじゃないかなと感じる部分がすごくあります。

わりとそこがすっぽり抜けている印象があったりして。「どう作るか?」というところに、会話が寄ってしまっているんですね。「どのように作るか?」となってしまって、「何を作るか?」という議論があまり成立していない、抜けてしまっている気がしていて。

竹部さんと松村さんは、これまでのキャリアでやってきたことがそこを埋めるように活かされているのかなという印象を受けたんですけれど。

松村:ムダなことをしたくないので(笑)。「ボタン作ってください」って言われたときに、最初は「このボタン、青にしようかな、赤にしようかな?」とか考えるんですけれど。

「そもそも、ここになんでボタンがいるんだっけ?」というのを、どんどん突き詰めて「なぜ」を繰り返していくと、「そもそも、このページいらないんじゃない?」とか、「そもそも、ここでUIとしてなにかを成立させる必要はないんじゃない?」とか、「そもそも、その課題を解決するには別のタッチポイントがいいのでは?」みたいなかたちで。

「本質的なことをちゃんと考える」ということを、いつも大事にしたいなと思っているので。そうですね、普通に、自然とやるようになりましたね。なので、「デザイナーとしてのキャリアスタートでよかったな」って思ってるんですけれど。

ツールを使うことが目的になってはいけない

竹部:自分も、今お話にあったように「普遍的」ということはすごく感じるところがあります。結局、「ペルソナ作りましょうよ」とか、「カスタマージャーニーマップ作りましょう」とか。いろんなかたちで、人間中心設計のプロセス、「こういうかたちでやっていきましょう」と、いろんな事業の人とお話をしていくにつれて、「それってなにがいいの?」ということはやはり当然のように感じて。

「自分はなんでこれをやるんだっけ?」ということを常々自問自答しながら、「これはなんのためにいいんですか?」「だから、これをやるんです」という話をちゃんと説明できないと、ツールを使うことが目的になっていっちゃうんじゃないかなと思って。

そこで、やはり、それって別にツールがなくても、実は今までもリクルートであればすごく泥臭いやり方でやってたりすることがあるんですね。

ですので、今までやってきたという人たちも当然いますし。これから、どんどんまた新しいツールも出てくるかもしれないですけれど、自身で「なんのためにそれをやっていくのか?」という、本当に本質的な課題のところをちゃんと捉え続けながら仕事をしていくというのが非常に重要だとは思っていますね。

坂田:そうですね。さっきの話の繰り返しですが、さまざまな手法体系、例えば、UXデザイン、サービスデザイン等のデザイン手法とかを取り入れてやるというのは、さまざまな知識にもなりますし、すごく挑戦としていいと思う反面、デメリットもあると思っていまして。

例えば、そこで仮に失敗したり、うまくいかなかったりした場合の矛先が、わりと「どうやって作ったの?」というところに目が行きがちになって、「作り方が悪い」という判断になりがちなんです。

本来は、プロダクトとかサービスに対して目を向けるべきなんですけど、「やり方が悪い」となって、「次の新しいやり方はなにか?」という会話を繰り返しているのが昨今の流れだと思っていまして。そこをいかに見失わずに生きるかということですね。

松村:そうですね。竹部も私も、UXの組織を楽天とミクシィで立ち上げたんです。さっき言ったように、HCDのプロセスみたいなのを社内に導入することをやったり。

でも、その本質のインプットを周囲にしていない状態で、新しい手法を振りかざしてしまうと、それによって得た失敗体験が「HCDのせい」となってしまったり。私自身の失敗の体験でもあるんですけれど。そういうツールに踊らされちゃうような失敗体験がすごくあって。

なので、やはり最初の本質的なところのインプットとかマインドセットがすごく大事だなと今、思っていて。「そこからだな」という感じです。

坂田:そうですね。次のテーマ2にもつながっていくんですが、具体的にどのように本質を捉えるのかとか、変数の要素がないのかというところを、テーマ2では事例もあるので、それを踏まえてみなさんのなかでも「たぶん、こうなんじゃないかな?」「これを大事にリクルートの人は仕事してるんじゃないかな?」というのを、汲みとっていただけると嬉しいなと思ってます。

リクルートに根付く、本質を問う“WHY”の文化

あとは、リクルートの文化ですごく特徴的だなと思っていることが1つありまして。さっきの「なぜ」と聞くという話なんですが、リクルートの会議ではすごく聞かれるんですよね。「なんでこれをやるんですか?」「なぜこれなんですか?」と。しつこいぐらいに聞かれることがあるんですよ。たまに嫌になることもあるんですが(笑)。

とはいえ、でも、それってすごく本質的だと思うんですね。やはり物を作っていると、Howのほうにいきがちだったり、アウトプットに目がいきがちなんですけれど。そこにいたる過程だったり、その本質みたいなところを自分自身が見失うときもあるので、それに気づかせてくれる環境があるというのがいい点で1つ素晴らしいかなと思っています。

松村:UXDみたいな言葉がもてはやされる前から、すごく「なぜ?」と繰り返す文化がリクルートにはあって。つねに本質やゴールと向き合うことを求められる感じが、ありますね。

坂田:竹部さんとか、そういう機会とかありました? 

竹部:「なぜ?」って聞かれる? もうすごいやられましたね。やはり自身がリクルートのなかに入ってから、すぐになにかアウトプットを出せるわけではないので。常に自分が見られているなという意識はすごく感じました。

ですので、なにかしらやる度に、アイデアを提案したりとか、こういうことやっていきたいと言う度に「なぜ?」って聞かれるので、それに対して自分は今進めているプロジェクトの課題であったり、なにが求められてるのかというのをしっかりトレースしていくことで、そこをなんとか推し進めていこうということを心がけていますね。

坂田:もう時間が残りわずかなんですけれど。最後に締めの質問をさせていただきたいと思います。

さまざまなサービスや組織の立ち上げなどを経験して、ITバブルの頃から働いていたお二人なんですけれど、今後どのようなキャリアを歩んでいきたいかというのがあったら、最後にみなさんへのメッセージも兼ねて、お聞かせ願いますでしょうか?

松村:私は仲間と作ったものが、顧客とかユーザーさんにちゃんと届いて喜んでもらえたみたいなことが、本当にただシンプルに好きなんですね。私はデザインという畑にいるので、デザインすることを通して、誰かの何かを解決していく、それを50、60歳になってもやっていたいなと思っています。

まだ、我々の仕事って50、60歳のロールモデルがないので、そこを我々が作っていくんだろうなと思っているので、よい見本になれればなあと思っています。ちょっと格好よく(笑)。

竹部:自分がすごく、これから大事になっていくだろうなと思っているのは、今あるサービスをちゃんと疑い続けなければいけないだろうなということで。そういう視点を持つことが大事なんだろうなと思います。

今ある提供価値というのは、今の時点でのベターとかベストかもしれないんですけれど、今後また技術的に発展していったり、あとは今までぜんぜん異業種の経験を持った方が今、ITとくっついたりしていると思うので、そのなかから生まれてくる新しいサービスの提供価値が当然どんどん出てくると思うんですね。

ですので、必ずしも「今あるものがいい」と、ただ漫然と受けいれるんじゃなくて、「なにか、これって漏れがあるんじゃないか?」とか「もっとこうできるんじゃないか?」と疑い続けることが、今後サービスデザインや、UXを考えていく上では必要になってくるんじゃないかなと思います。

坂田:ありがとうございます。時間が来てしまったので、いくつかこの25分で出たキーワードをおさらいしたいと思います。3つあるかと思っていて。

まず1つは、キャリア形成として、この3人が携わってきたなかで得られた発見としてあるのが、まず点を線にするという考え方が1つあるかなと思ってます。

2つ目が、周囲とのコミュニケーション。コミュニケーションの進め方の変化みたいなものが1つ、UXデザインとかサービスデザインを取り囲む環境の変化の特徴かなと思いました。

3つ目が、本質を問うというところで。これは担当しているプロダクトもそうなんですけれども。我々も含め、UXデザインやサービスデザインを担当する者として、手法やプロダクトを扱う者として、本質は何かというのを見失わずにそれをいかに続けていくのか、というところが今後のカギかなと感じました。

短かったですが、テーマ1は、ここでいったん終わりにさせていただきます。どうもありがとうございました。

竹部:ありがとうございました。

松村:ありがとうございます。

(会場拍手)