2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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ひ:じゃあプレゼンのほう言ってみましょうか。もともと小林先生がこんな感じの本だよっていうのを紹介して頂くための。じゃあサンデル先生の授業で使った質問の三つめ。援助交際、売買春は合法化されるべきかどうか。これはハーバードで聞かれたやつなんですか。
小:これは日本で放送されたハーバード白熱教室が取り上げられてなくて、彼の書いた先ほどのベストセラーになった本ですね。そこで若干触れている問題です。でもやはり同じ種類の問題をハーバードの講義でも扱っています。
ひ:合法化されるべきかっていうので、でも合法化されていないっていうんですけど、すでに社会には存在してますよね。
小:法律的にはされてないですよね。道徳的に正義か不正義化によって、法律を変える可能性が出てくるわけですよね。
ひ:結果の方は合法化されるべきは、61%。6割。そうするとすでに違法なんだから弾圧して、援助交際をや売買集を完全になくすべきだと思ってるのが、4割ってことなんですかね。
小:現在の法律を維持すべきだということになりますけど。これは思想的に言うと、リバターリアリズムだとかリベラリズムに関わる質問で。特にリバターリアリズムというのは基本的に自由を最大限擁護するわけですけども。その自由っていうのが自己所有っていって、自分の身体を所有するから自分の身体をどうするかっていうのは自分で決定できるっていう。
ひ:その売買春をして苦しむのは自分なんだから、別にそれは自分の判断でやるんだから好きにさせてくれよと。それは国がそこを制限する必要はないよねっていう。
小:そうですそうです。そういう論理に立てば、合法化案も出てくるんですね。
ひ:そうすると日本政府はやっぱりリバタリアンではないということですか?
小:今までの法律はそうではなかったということですね。
ひ:たとえばバイクのヘルメットかぶらないといけないとかもそうですよね。あれ自分が怪我するだけなんだから、頭打って死にたい奴はヘルメットしなくていいじゃんっていうのがアメリカなんですけど。日本はなぜか警察が止めて、ヘルメット被らないと罰金取るよって。これは過保護ですよね。
小:もともと明治以来法律がありますから、昔作られた法律には公序良俗とかね。こういう道徳的な要素が多かったわけですね。それが維持されてる部分もかなりあるので、一部は変革されてますけど、一部はそのまま残っていると。
ひ:変革されてるってことは、わりとリバタリズム的な考え方になってる部分もあるんですか?
小:道徳の領域でそこまで大きいわけではないですけど、市場経済に関わる部分では、小泉政権の時にもずいぶん変わったわけですよね。だからこのリバタリズムが一番使われているのが、市場経済に関する理論で、自分の身体で労働して得た成果は自分のものだ、だから自分の資産や財産を福祉のためとはいえ、国家が課税によって強制的に取り上げるのは不正義だと。
ひ:つまり援助交際OK派の人たちにとってみれば、損するのは自分なんだから自分の判断で決めるんだから何やってもいいだろうと。国が干渉するなと。国は最低限のことだけやってればよくて、自分たちの生活に干渉するなっていう考えの人が6割いたと。じゃ次の質問いってみましょうか。でもそう考えると、だんだん過保護になってきていますよね。
小:過保護の方向から、自由化する方向に少なくとも10年くらい前までは動いてましたね。
ひ:マイケル・ジョーダンやビル・ゲイツに、貧者に福祉を行うために重い課税をすべきか? マイケル・ジョーダンやビル・ゲイツは自分でお金を稼いだんだから、福祉をやりたかったら、自分でやればいいと。実際ビル・ゲイツはそういう財団作ってますからね。国がわざわざ取り上げてやるっていうのは、マイケル・ジョーダンやビル・ゲイツの選択の自由を奪っているのではないかという論理ですね。でも日本人こういうの他人の金だから、すべきの1を押しそうな感じしますけどね。おお! そうでもないんだ。重い課税をすべきか、すべき36%。
小:この結論は圧倒的にリバタリアンの方が多いっていうことになりますけど。
ひ:でもネットはリバタリアン多いって言われますよね。
小:これは問いとしては、正義についての二番目の立場の中に、リベラリズムとリバターリアリズムというのがあって、リバターリアリズムの方は課税すべきじゃない。それに対してリベラリズムという側はジョンロルズというアメリカの哲学者が言い出したことですけど、平等というものを重視して、福祉を正当化する思想なんですね。だからこのリベラリズムの立場に立つと課税すべきだということになってくるというわけですね。
ひ:僕は課税すべき派ですね。
小:リベラルの方ですね。
ひ:理由としてはマイケル・ジョーダンの稼いだお金というのは、純粋にマイケル・ジョーダンの能力だけによるものではないと。やっぱりバスケットボール発明したのお前じゃないとか。わりと社会が積み上げてきたものを利用して、はじめてマイケル・ジョーダンが金稼いだわけじゃないですか。だからある程度は社会に還元したほうが、で、還元されたおかげでまた、バスケットボールみたいなのを発明する人が出てきて、またマイケル・ジョーダンみたいな人がそのスポーツで現れるみたいな。で、社会に還元してもいんじゃねって僕は思うんですけど、6割の人は思わないと。
小:リベラルのリバターリアンに対する批判なんですね。やっぱりリバターリアンは自分の立場でやったーって言うけど、チームのみんなだって協力してるじゃないかとか、マイケル・ジョーダンがその運を持てているのは、彼個人がやったことじゃないじゃないかってそういう形でリベラルの人はリバターリアリズムの批判をするんです。
ひ:僕結構税金も払ってるんですよ。関係ないんですけど。
小:先ほどの売買春を合法化すべきかっていう立場でも、今の設問ではリベラルの方に支持する人もいるわけですね。二つに分かれてくるわけです。
ひ:僕はリベラルなんですね。
小:今のところリベラルですね。
ひ:この質問を解いていくと、自分が何者かっていうか。そうするとリベラル派になってると、大体リベラル派の人と僕って話が合う感じなんですか。
小:今の感じではね。さらにその先も出てくるので、やってみないとわからないですね。
ひ:そういう感じでリベラルとリバタリアンの二つに分けられるんですか。他の観点の人っているんですか。
小:色んな立場が考えられますけど、政治哲学で最も重要なことで言いますと功利主義が第一の立場、第二がリベラルかリバターリアン。第二の立場っていうのが自由とか権利を実施する立場なんですね。
ひ:次の質問いってみましょうか。戦争責任は戦後世代が責任を負うべきかどうか。あーこれきた!
小:これはサンデルが日本に来て、8月中にやった時に出たテーマですね。
ひ:謝罪するっていう話ですよね。日本もよく言われてますけど。
小:そうですそうです。同じくアメリカの原爆投下責任についても、大統領が謝罪すべきかどうか。2つを噛み合わせて聞きましたね。
ひ:(結果を見ながら)おお~!だいぶ結果…
小:やっぱりリバターリアンが多いという結論が出ますね。
ひ:負うべきが、2割。負うべきではないが8割。
小:これは論理からいますと、日本というコミュニティがあるわけで、戦後に生まれた人は当然ながら戦前日本がやったことに関しては、自分がやったことじゃないんだから責任を負う必要はないと。そういう個人の責任の取り方っていうことになるんですね。それに対して、コミュニティの一員としての責任があるという立場に立った場合には、日本というコミュニティの一員なんだから、戦前の世代がやったことに関しても自分たちが責任を引き受けるべきだ、謝罪すべきだというこういう理論になるんですね。
このリベラル、リバターリアンに対立する第三の正義の立場はですね、善とか美徳を強調するんですけど、コミュニタリアリズムといわれていて、コミュニティに帰属する、コミュニティとしての責任、コミュニティの一員としての責任ということを強調するので、この場合責任を引き受けるべきだというのが、コミュニタリアンの人なんです。逆にリベラル、リバターリアンは個人としての責任を強調するわけですから、自分は関係ないよと、そういう話になってきます。
ひ:戦争責任を受けるべきになっちゃった場合、たとえば生まれた瞬間にすごい悪い戦争をした国の人だったとして、いきなりものすごい重税を課せられることになるわけですよね。生まれた瞬間にものすごいお金を。おれなんもしてないのになんで、みたいな状態になる気がするので、さすがにそれは社会の発展を阻害するので僕は負うべきではない派だったりするんですけど。
小:やっぱり今の話の流れでいくと、リベラルですね。
ひ:おかしいな~。じゃあ次の質問にいってみますか? 僕はリベラルであることが自分でわかりました。でも負うべきっていう人がいるんですね。でもそれって下手をすると人種差別になりません?
小:人種に関わらずその国のメンバーであればいいだけなので。
ひ:その国のメンバーが単一の人種で構成されていた場合って、たとえばその仮にユダヤ人だという名前だとしました。世界中で戦争をしました。その後、生まれてきた。で、負けましたと。そしたら世界中の人から賠償責任を負わされるわけじゃないですか。ユダヤ人さんは。それで世界中の人から金取られてく状況になるのって、たぶん国家としてやったことなんですけど、ユダヤ人を見た瞬間に、「あ、あいつら」っていう風になっちゃうわけじゃないですか。それは人種差別になっちゃう気がするんですけど。
小:これは差別という風にみられる場合と、逆に良いことした場合にもあるので、どちらでも集団としての関係性が自分に関わってくる。家族とか大学とかいろんな集団においても考えられるということですね。全部自分が引き受ける必要があるわけじゃなくて、あくまでもその一部とういことになるわけですけど。
ひ:僕なんかいいものだけ引き受けて、悪いものは引き受けない派なんですよね。
小:そのなかなかどちらだと論理的に成り立たないというのが、みそですよね。
ひ:まあ相続税みたいなもんですよね。親の遺産を引き受けるんだったら、代わりに親の借金も払わなきゃいけないみたいな。
小:まさにそうですね。
ひ:というわけで、パワーポイントの方いってみましょうか。
ひ:「ロールズの魔術を解く」。まずロールズってだれやねんというとこから聞いて良いですか。
小:この人はですね。政治哲学をある意味では復興させた、そういう意味で非常に重要なアメリカの政治哲学者ないし、法哲学者なんですね。
ひ:日本でいうところの、小林先生みたいな感じですね?
小:アメリカのハーバード大学の教授で、ある意味サンデルという人はこのロールズを批判したことによって有名になった人なんですね。だからサンデルの理論を知るためにはまず、このロールズを知らないとわからないと。
ひ:いくつくらいの人なんですか?
小:もう亡くなってます。で1970年代の初めに、『正義論』という本を書いて、それ以来正義というテーマが、政治哲学でとても大事になりました。
ひ:てことはロールズさんがいなかったら、アメリカでもここまで正義が何たらとか言われてなかったかもしれないんですか。
小:アメリカの政治の中では、正義っていう概念はとても大事ですけど、これを学問的な理論として復古させたのは、ロールズ。
ひ:アメリカ人って正義って好きですよね。
小:はい、とても好きですね。
ひ:すぐ正義が何たらとかいう。日本の政治家で正義について語ってる人あんま見たことないですけど。なんかの病気なんですか?(笑)
小:アメリカでは国を建国するときから、神に使命を与えられたっていう思想が元々あり、第二次世界大戦でも自分達は正義の戦争をしたっていう自負心があり、そして社会全体で正義が何かを問うているんですね。だけど、学問ではですね、化学が影響してきて、そんな政治哲学じゃできないんじゃないの?っていう考え方が増えてきた。その中でロールズが現れて、こういう議論をすれば正義論が学問的に出来ますよって、こういう風に言ったんですね。
ひ:確かに何が正しいかそもそも、学問の範疇じゃないってみんな思ってますもんね。
小:そうなんです。
ひ:それをじゃあ学問の範疇に収めたのが、ロールズ。優秀ですね。
小:それを復古させた、その意味で偉大な思想家ですね。
ひ:で、そんなロールズの魔術を解くって、わりとなんかロールズが悪いことしたみたいな題名ですけど。
小:これはサンデルの立場から書いてるからなんですけど、ロールズという人は先ほどのリベラリズムという立場を作り出した出発点の人なんですね。彼の思想はどういう思想家というと、仮に自分がたとえば男か女かどういう立場かどういう能力か知らないと仮定してみようと。これを無知のベールというんですね。無知のベールのもとに立ってる人々が何が正義かを考えて、合意すると。
その結果現れてくるのが正義の論理だと。その正義の論理を二つあると言ったんですね。一つめは、基本的に自由だと。これはみんなが平等に自由だということは同意するだろうと。二つめが非常に重要で、格差原理ですけれど。もっとも貧しい人、最もみじめな人にとっても意味があるような、そういう格差は社会的に許される。逆に言えば、それ以上の格差は許されない。
ひ:じゃあある程度の格差は許容する?
小:そうです。つまり社会主義や共産主義のように、全く平等にしてしまうと、いくら働いても同じ所得になってしまうわけだから、働くインセンティブが無くなってしまうと。
ひ:そしたらとりあえず働かなくなるという。最近のワーキングプア論争もそんな感じですよね。お金くれたら働かなくていいからっていう。ワーキングプアじゃないや、ベーシックインカムだ。
小:逆にですね、その差があんまり開いてしまった場合にですね。自分がもし最もみじめな人であった場合は、ひどい目に合っているわけだから、それはやっぱり不正義だと。だから自分が最もみじめな立場でも、ある程度は所得を縮めてもらうと、復習してもらうと。そのことによって、正義というのが確保できるんだと。だから所得と格差の問題に関する正義というのは、全く平等ではない。かといって、今までのアメリカのように極端な格差でもない。そういう中間レベルの格差になるというわけだから、福祉がある程度必要だし、これが正義なんだと。これがロールズの議論で。
ひ:ものすごい上の人は全然作っていいですよ。ただ、ここから下に下がる人を作るのだけはやめようと。
小:ただその人たちを低い人を救うためには、すごい人たちに課税をしなくてはならないですよね。先ほどのやっぱりマイケル・ジョーダンやビル・ゲイツに課税をして復習をしようという話になってくるので、ロールズの議論はやはり課税を正当化する議論。その意味で福祉国家論あるいは福祉政策を正当化する理論なんですね。これがロールズの理論で、それによって正義という考え方が政治哲学に復古をした。また、政治哲学そのものが復古したというわけなんですね。
ひ:でもロールズが出る前から、弱者保護みたいな政策はあったんですよね? 教会のとかご飯あげますとか。
小:だからそういうことは、労働運動の成果として、ヨーロッパでも起こっていたし、アメリカでもある程度あったわけですけれど。論理的に正当化する論理がなかったと。それを正義だという風に説明して、さらに促進しようとしたのがロールズ達。平等主義的なリベラリズム。
ひ:促進も考えたんですか?
小:ロールズの議論の結果としてはですね、政策としても福祉政策を強化すべきだという議論になるので、彼らは平等主義的なリベラリズムと呼ばれています。
ひ:弱者の人に何らかの保護を与えることで、その人たちが何らかの価値を生むんだから、そっちのほうが全体の幸福が増えるよねっていう功利主義の可能性もありますよね。
小:実は功利主義の論理でも、福祉政策の擁護をする場合もあるんですね。ですから、論理としては功利主義的な論理を使うこともあるし、リベラリズムの論理を使うこともあるし、またあとで出てくるコメイタリアンの論理で復習をする場合もあります。
ひ:で、わりといいこと言ってそうなロールズさんに反論してるのが、サンデルという。
小:ロバートノジックという人がリバターリアンで、ロールズ対ノジックが非常に重要な議論だったんですが、サンデルは福祉そのものには賛成なんだけど、ロールズの論理が良くないんじゃないかと批判しているんですね。つまりロールズの議論っていうのは、結局自分がどういう人か知らないという自己を考えているわけだけれども、実はそんな自己世の中に存在しないではないかと。実際は我々は家族を覆っているnationのなかの一員である。ある立場や能力を持っているという具体的な状況の中の自分、それを彼は負荷ありし自己っていっているんですけどね。ロールズの議論は負荷なき自己で抽象的で現実性を持たない。ですから、ロールズの議論の立て方がおかしいと。
ひ:そもそもありえないような前提の話をされても、完全な人なんていないんだから、そんな奴の話をしてもしょうがないよみたいな。
小:それにある意味ではそういう福祉の正当化というのは、結局福祉をするときは貧しい人はかわいそうとか、あるいはそれを放置できないとかいう論理で正当化するわけですし、ロールズの議論はまさに無知のベールをかけて、自分がもしかしたらもっとも貧しいかもしれないんだからという論理だと思ってるんですね。だから結果的にはそういう形で福祉を正当化してるけれど、これはいってみれば魔術にはめてるような話で、それを解いてみれば実は福祉というのはコミュニティの中で貧しい人を救うための論理として考えるべきではなかろうかというこういう論理ですね。
ひ:ロールズのまやかしが解かれ始めてきたと。
小:サンデルに賛成する立場の人たちは、コミュニタリアンというわけですけど、彼らはそのようにロールズを批判したわけですね。
ひ:では次のパワーポイントの資料に。
ひ:共和主義の再生を目指して民主制の……そもそも共和主義ってなんですか?
小:そもそも共和主義というのは古典的にはギリシャローマから始まっていくわけですけど、もともとレスプーリカという公共性のあるものを実現するという目的なんですね。そのためには人間が自分自身のことは、自分自身で決める必要がある。自己統治。でもそうすることはある意味エネルギーや労力を要するから、そうするってことは人間に美徳が必要だと。これを公民的美徳、シビックバーチューっていうんですね。そういうような考え方で政治に実際に参加をする。その思想が共和主義といわれる思想です。
ひ:みんながみんな幸せになるために、ある程度モラルのある人が集まろうよっていうのが共和主義っていうことですか?
小:そして実際に政治に関わろう、自分たちで決めていこうっていうそういう発想ですね。実は近代の時に王権あるいは貴族が自分たちの私的な利益を実現するために専制をしたという風にみんなが行き踊って王権をつぶしたわけですね。
ひ:王様が自分の利益を増やすために、たとえば豊臣秀吉が朝鮮に攻めるぜって言って、別に朝鮮攻めたからといって俺ら何のメリットもないけどなぜか兵隊みたいな。ちょっともう攻めたくないっすみたいな。
小:そこで公共性を実現するために、王権や貴族制を打倒して人々が自己地統治を行うような政治を作っていこうと。そこで、王権無き政体のことを共和政治、共和政体という風になるわけですけど。
ひ:日本は起きてないですけど、他の国はフランスだったらルイ何世をみんなで叩き落として、みんなで議会を作って、話し合いで決めようねって。王様を引き落として、みんなで話し合いで決めるっていう主義をつくったと。
小:だからフランス革命があって、アメリカ独立革命があって、両方とも共和国になったと。アメリカという国をサンデルは歴史的に追いながら、実はアメリカの政治や経済を始め作っていた考え方はそういった共和主義の考え方だった。
通説ではですね、自由主義ないし、リベラリズムが中心だと考えられたけれど、もともとアメリカは共和主義が中心の国家で、それが20世紀特に戦後になってリベラリズムに覆ったと。その結果さまざまな問題が現れて民主制に不満が現れたんだと。そこで、もう1回元に戻して共和政主義を復古させるべきだというのが、民主制の不満というサンデルの政治哲学の主著の議論なんですね。
ひ:具体的にはどんなずれが発生したんですか?
小:つまり共和主義の場合は今言ったように、自分のバーチュ美徳によって、政治や経済を自分自身で決める動かすと。政治においてはまさに民主主義ですけど、経済の場合はですね、農家とか商業の店主が自分自身で運営するっていうことですね。
ひ:モラルを持った人が自分自身で判断して物事を決めていきましょうねっていうのが共和主義で、リベラリズムだと儲かるんだったら何やってもいいやみたいになってしまって、モラルのない人が増えてしまう。
小:そういうような批判もあるんですけど、戦後に起こったこととしてはですね。どちらかといえば、今度は権利の主張が中心になっていくと。だから福祉においても福祉の権利というお話になるわけですけど、自由、権利。それを尊重するような憲法の解釈になったり、あるいは政治や経済においてもそういう発想で運用するようになった。
ひ:じゃあいちいち権利が権利がっていうんじゃなくて、それぞれのモラルで判断しろよっていうことですか。
小:逆にリベラルやリバターリアンの立場はですね、モラルとか何が良いかとかそういうことは政治に反映させちゃいけないんだと。あくまでもみんなが合意できる、権利で決めるべきだというんですよ。でも実際の政治はそうじゃなくて環境問題にしても福祉問題にしても、何が良いか、何が良い生か生き方か、というところから考えなければいけないんじゃないかというのがサンデルたちの批判なんですね。
ひ:もともと日照権みたいなものはなかったわけだから、明文化されてない日照権みたいなものは欲しがる必要ないよねっていうのがリベラル派ですけど、さすがに太陽当たんない家はかわいそうだろっていうかわいそうルールから、何らかの保護を与えようっていうのは共和主義の考え方?
小:リベラルの論理から言ってもですね、日照権っていう権利を作って、解決しようっていう考え方がリベラルの論理。そして、そんな権利なんて言わなくても、これは環境への配慮とか人々の配慮によって政策で決定してけばいいんじゃないかっていう風にコミュニタリアンの人は考えてる。
ひ:別にじゃあ法律でそういう権利があるから、あなたにはこれが与えられるんですって言わないで、かわいそうだからやるわっていう。
小:として、法律を作ればいいわけですね。別に権利に基づかなくても法律は作れるわけだから。
ひ:でもそれってなんか作った法律を説明した時に、じゃあこれは何々権ということにしようという名前付けの問題なのか。
小:どういう法律を作れるかっていう中身は変わっていくわけですね。権利として認められない法律は作れなくなってしまうわけですから、たとえばさまざまな政策を行うときに環境に優しい企業とかに、税を低くしようと。これはなかなか近年の発想では難しくて。そういう人々の価値観によって政治が決まる。
ひ:エコ権って権利じゃないですよね。エコにわりと増進してる会社は安くなるっていうのは、それは権利ではなく国が決めた補助ですよね。
小:ですから、多くの人々がやっぱりこれは環境に優しいそういう政策を促進しようとすれば、自己投資ですからね。自分たちでそういう政治を決定して法律を作ろうと。そうすれば環境であれ、福祉であれ、様々なことに配慮する法律が作れるはずだ、という風に共和主義なら考えるんですね。
ひ:ところがリベラルが多くなって最近はじゃあ共和主義に戻り始めてきた?
小:サンデルたちがこの批判をした段階ではですね、リベラルがリバタリアンより圧倒的に有利だったんですが、それに対する批判をしたのが、サンデルたち。
ひ:その頃のサンデルたちって、何年くらいなんですか?
小:ロールズの正義理論があったのが1970年代。それに対する批判が始まったのが80年代ですね。で、サンデルたちが90年代。
ひ:日本はバブルの。その頃日本は確かにモラルとか考えられない時代でしたね。金持ちだったら正義だったり。
小:すでにその段階から批判は始まってたけど、それがだんだん大きな存在感をもってきたのはやはり、バブルがはじけたり、アメリカでのリーマンショックがあってからですね。それは現在サンデルがブームになってるっていうのは、政治経済の状況が影響してると思いますね。
ひ:儲かるんだったら何をやってもいいよねっていうところで、アメリカのウォール街の人たちがものすごいお金の儲け方をして、一気に失敗しちゃって、やっぱりそういうのは制限すべきだよねっていう。
小:まさにそのアメリカの発想が、リバタリアニズムと関係してたので、リーマンショック以来、コミュニタリアンから見ればやはりリバタリアンの議論は間違いであったという批判をするようになっているんですね。ある意味ではオバマ大統領の誕生はそういったコミュニタリアンの方向にアメリカの政治が変化したということに現れてると思います。
ひ:弱者は死ね、というところから国民みんな保険に入ったほうがいいよねっていう国民介護保険始めますみたいな。
小:だからオバマ大統領が、金持ちの経営者がジェット機で大統領府に乗り付けて救済行ったこと批判したよね。
ひ:GMの救済してほしかったらジェット機で来るなみたいな。
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