脂肪のエネルギー量はタンパク質や炭水化物の2倍以上

脂肪は個体がエネルギーを貯めるために使われるもので、脂肪のエネルギーは個体を動かすエネルギーに変わります。たとえば、植物のなかで育つ種や、脳の中で働く神経細胞のようなものなのです。

脂肪はエネルギーを貯めるのが非常に得意で、1グラム当たりの脂肪のエネルギーは、タンパク質や炭水化物の2倍以上あります。

私たちが食べる脂肪は、からだのなかで使用可能なエネルギーへと変わります。 このことが、脂肪の摂取量の多い人は、不健康になるという事実に結び付けられています。

ただし、脂肪は人間のからだに悪いというだけでなく、食事の一部としてなくてはならないもので、健康を増進するものもあります。

脂肪の種類はさまざまなものがあります。主に、トランス脂肪酸、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、硬化油脂、多価不飽和脂肪酸、オメガ3脂肪酸などが有名ですが、実際どんなものなのかはまったく知られていません。今回は、そこを明らかにしていきましょう。

原子で見る脂肪の構造

脂肪は炭素が対になっていない4つの電子を持っていて、個々の炭素原子は、そのほかの4つのものとつながりやすくなっています。

これがメタンで、4つの水素に炭素がくっついたものです。さあ、これからSnatomsという分子モデルキットを使っていきますよ。ワクワクしますね。

もし炭素が飽和した炭素の連鎖のなかにあった場合、そのうち2つは連鎖の終結点でなければ、そのほかの炭素とつながります。

これら2つは水素になりますが、もし炭素の連鎖が大量の炭素原子と一緒にあるようだったら、それぞれが2つの炭素と2つの水素に繋がります。

これが飽和脂肪酸と呼ばれるもので、硬くてほとんどは動物から生成されますが、ココナッツからも取ることができます。

飽和脂肪酸は水素で飽和しています。すべての炭素は、3つの水素とつながっている端のものを除いて、2つの水素と繋がっています。不飽和脂肪酸は飽和していないので、持っている水素は少ないです。

それぞれの二重の連鎖は、水素が2つ少なく、不飽和脂肪酸が持っている水素は、炭素1個当たりが持つことのできる量よりも少ないのです。

そう聞くと大したことのない変化に思えますが、一重の連鎖は、軸を中心にして回ることができます。しかし二重の連鎖になると、構造をロックしてしまいます。

本来、脂肪連鎖の二重のつながりは、ねじれた状態でロックされます。これは脂肪分子が格子状になるのをふせぎ、液体にします。

不飽和脂肪酸は液体になりやすいため、オイルに使われることが多く、植物や魚から摂ることができます。

このねじれた形状は「シス異性体」(cis isomer)と呼ばれ、まっすぐなものは「トランス異性体」(trans isomer)と呼ばれます。

「異性体」とは、分子が同じ科学式を持っていて、かたちが違うものを指すのですが、かたちが違うと大問題なのです。飽和脂肪酸が不飽和脂肪酸よりも身体に悪いのは、簡単に詰まってしまうからです。

また、動脈のなかでプラークを作り、血流のなかでプラークを構築するコレステロールと一緒に働きます。シス不飽和脂肪酸、世間的には不飽和脂肪酸と呼ばれるものは、血流のなかで詰まらず、プラークも作りません。

トランス脂肪酸は心臓病につながる恐れも

もっと悪いのはトランス脂肪酸です。これは水素が「部分水素化」されたもので、大豆油のようなものです。だからトランス脂肪酸と水素化油脂は同じなのです。

このトランス脂肪酸は二重の繋がりを持ち、飽和脂肪酸よりも詰まりやすく、分解されるようにはできていません。さらにコレステロールと一緒に悪さもするのです。

トランス脂肪酸の摂取量を毎日2%増やすと、心臓病になる確率は23%上昇するにも関わらず、驚くべきことに、トランス脂肪酸は飽和脂肪酸に代わる健康な成分だと思われていたのです。今では、アメリカでは完全に禁止されるようになりました。

多価不飽和脂肪酸や、二重以上の連鎖を持つ脂肪の健康の度合いは、モノ不飽和脂肪酸と同じぐらいです。

生きるために、適量の脂肪は必要

しかし、メリットもデメリットもあるので、賛同する人は誰もいません。連鎖が二重になっていれば問題になるのです。端から3つ目の炭素が二重の連鎖になっている場合は「オメガ3脂肪酸」と呼ばれ、幅広い効果をもたらします。

これは2つの不可欠な脂肪酸のひとつで、身体を機能させるために必要な化学物質です。ただし、自分で生成することはできませんので、脂肪を摂取する必要があります。つまり生きるためには、適正な量であれば脂肪は必要なのです。

脂肪はたくさんのエネルギーを持っていて、カロリーが必要なときには役に立ちますが、過剰摂取してしまいがちですし、トランス脂肪酸などは死に繋がってしまうかもしれません。みなさん気をつけましょう。