仕事中毒も依存症の一種--スタンフォード大学講師が教える正しいサボり方

休めない日本人のための「正しいサボり方研修」 #2/2

面白法人カヤックが開催した「正しいサボり方研修」。本パートでは、スタンフォード大学で客員講師を務める西多昌規先生が、「過労ストレスの都市伝説」と「休みベタな日本人のための正しいサボり方」をテーマに話します。後半では、研修に参加した同社社員が「カヤックのメンバー全員が健康でいられるアイデア」をブレスト。ドッキリ休暇や夢残業など、ユニークな案が飛び出しました。

人に会うことも疲労の原因に

西多昌規氏(以下、西多):科学的な話はこれぐらいにして、次は「都市伝説」に目を向けてみましょう。疲労とはいったいなんなのか。奥が深くてよくわかっていないんですね。

たとえば、昔の疲労というのは「肉体的疲労」です。体が疲れている。農作業で田んぼを朝から晩までやって疲れている、あるいは漁業で疲れている。現代の社会でも、引越し屋さんとか体が資本という人はいらっしゃいます。

ただ、現代はどちらかといえば、みなさんのように、別に体は疲れてない。とくに重い物を運んでいるわけでもなければ、何キロも走っているわけでもない。ずっと椅子に座ってる時間が長いけれど、ただ、なぜか圧倒的に疲れている。これ、よくわかんない疲れ方ですよね。

さらに、現代社会ではいくらネットが進んだといっても、人に会う。これがすごいストレスなんですね。「感情労働」。

これも混ざって、いわゆる3すくみになっている。とくにやはりこちらの比率が高まっている、真ん中ですね。

ドーパミンが仕事依存を引き起こす

先ほど申し上げましたけれど「乳酸説」。いわゆる筋肉痛。これは少し否定されてきてるんです。

今は「疲労因子」、fatigue factorという、こういう物質。タンパク質の一種、そういった疲労に関連した物質が、肉体的疲労には関係してる。当然、これは筋肉とかの疲労の話で。仕事をしすぎて、脳が疲れたというのに、これが関与してるかどうかはまだわからないです。

よくクリエイターや研究者の方がいう、フロー効果、ハイテンション、「ゾーンに入る」というやつですね。好きなことをやっていたら、時間を忘れたと。「あれ、いつの間にか何時間か経ってた」、これならいいでしょうけれど。

たまに、つまらない短時間の単純作業でも、やってるうちにハマっちゃって時間過ぎちゃったことってあると思うんです。それは、よく聞く「ドーパミン」という物質がだましてるだけで。やってると、なんだかうれしさとか、やったらほめられるとか、できるようになっちゃうと。いわゆる脳に喜びを与える。やったことがほめられるとなったら、このドーパミンが活性化するわけです。

ただ、このドーパミンにも問題があって、「精神資源の枯渇」。いわゆる依存に関係してる。覚せい剤、アルコール依存、買い物依存。いわゆる、1の喜びを得るためには、次は2必要である。2の喜びを得るためには、次は3が必要で。4になり5になり100になると。こういう依存性があるんですね。仕事も、仕事中毒とか仕事依存になるんです。

うまく回ってるうちはいいんですけど、あんまりやり過ぎたり、いろいろなことが重なってしまうと、精神資源が枯渇。とくに、最近覚せい剤がテレビで話題で。枯渇したような人を、最近よく見てると思うんですけども、ああなってしまう。過重労働でうつ病になっちゃったような人は、かなりこれに近いです。

次が、ストレス。これはあとで述べますけども。やはり現代社会では、どんな業種でも、対人コミュニケーション能力を要求される。昔は人と話すのが苦手でも、すごい時計作りの達人であるとか、伝統工芸の達人だったりで、他人と会話ができなくてもなんとかなっていたんですけど。今はどこに行っても、コミュニケーション能力が求められる。このストレスの話だけで、1時間以上の話になります。

これは現地でも話題の本で、ケリー(Kelly McGonigal)先生というのはスタンフォードのヨガも教えてた先生で。その人が日本でベストセラーを出して、けっこう大儲けで、ニューヨークに行っちゃったという。

スタンフォードのストレスを力に変える教科書

この本はわかりやすくて、書いてあることはそれほど奇をてらったことは書いてないですね。あとで少しだけ触れると思います。

「疲れた」の正体は複雑

そして、言いたいのは疲労でも「Physical」、体を動かしたから筋肉痛やら腰が痛いやら、そういう疲労もあれば、先ほど仕事でくたびれたりって言いましたけれど、「脳疲労」もありますね。

今の精神学・心理学では「脳は心」といって、脳と心は一緒に考える。もう「ほぼ一緒だ」という立場ではあるんですけど。やはり、臨床的に病んだ人を見ていたり、話を聞いたりするぶんには、「メンタル」は別の部分だと考えたほうがいいと。

もし、体と脳だけだったら、シリコンバレーの人工知能、もう税理会計とか、そんなのは人間要らねーだろうとか。そういう結果になっちゃいます。この概念を置いて置かないと、我々の立つ瀬がなくなってくる。

というわけで、3すくみですよね。これが合い重なって生じる現象なんですね、疲労というのは。今は、肉体だけの疲労でもなければ、精神や脳の疲労もあったり。疲労もやはり昔みたいに「疲れた」というより、相当奥が深くなってきているということですね。

コンピュータ関係者に試してほしいストレスチェック表

これから実践論にいきまして、脳の疲れ・心の疲れ・体の疲れ。座ってるだけでもけっこう疲れますからね。

これがいわゆるコンピューター関係者に特化して作られたストレスチェック表です。これは大阪経済大学の田中(健吾)先生が作られた、ネットで探したら、まさにうってつけのが出てきました。

これ本当はもっと質問があったんです。ただ、心のストレスと関係の深い質問を抽出したのがこの15項目です。

ほかにも、たとえば「技術の革新が早過ぎるとついていけない」。こういうのは、実はあまりみなさん方にとってはストレスにならないんですよね。「そんなの当たり前じゃん」とか、「むしろ望むところ」とか。

ほかにも、我々が感じるようなストレスの質問項目があったんですけど、あまり精神的疲労と相関がなかった。この15項目がばっちりで、これが高い人は精神も疲れてるという。これが相関してるんです。この15項目をみなさん、やってみますか。もしくは写メ撮ってあとで。

「仕事のスケジュールがころころ変わる」。これもけっこう心の健康と相関が高そうですね。「休憩時間が少ない」。これは意外に高かった。「仕事の持ち場が絶えず変わる」「残業が多い」。切実ですね。

「作業時間長い」「将来的にこの仕事を続けているかわからない」「雇用形態が不安定である」「いつも出向先で仕事をしなければならない」。出向先が関係してるかどうかなんですけど、やっぱり、アウェイというのは落ち着かなくて、イヤになっちゃいますよね。

「給与に反映されない」。これは今はどこに行ってもそうかもしれないですね。「見通しを立てにくい」。「徹夜」はね、いざ切羽詰まって。で、「緊急のトラブル」。

やっぱり、コンピューター関係の人は、対人関係に苦手意識がある人が多い。ここもけっこう関わってるんですね。パーティションにこもっていられれば、ぜんぜん問題はないんだけれど、そういうわけにはいかない。「拘束時間が長い」とか。

これは田中健吾先生が編み出したチェック表なので、「何点以上が病気です」とか、それはまだ調べられてないです。こういうものの妥当性は100人ぐらいアンケートして、分布を取って、何点以上はやっぱりちょっとって。そういうのを、やってみないとわからない。

ただ、推測として、5点だから75点が最高ですよね。70点以上はやばいんじゃないですかね。残りが5点しかない。50、60点、けっこうつらそうだな。そういうイメージです。

逆に、こういう質問は1桁とか10点代の人は、逆に危機意識がなさすぎるから「大丈夫なの?」って。ストレスは適度なのが大事なんです。ここでさすがに何点の人とか質問できませんので、すっ飛ばしましょうか。

できることからやっていくこと

最初に立ち戻りますけど、「休憩時間が時間が少ない」「拘束時間が長い」。やはり、これがかなりメンタルな疲労と相関性が高いと。

ただ、スペインやブラジルのようなものを目指すわけにはいかない。非現実的です。どこかで落としどころをつけると、この辺り(インド、シンガポール、マレーシア)が理想。「もうちょっと上げられないか」という感じですけれど。

こういった「有休取得率」は国の文化とか社風の問題とかがありますから、いきなり「日本の文化を変えるんだ」って、そんなことは何十年もやらないとあまり意味がないです。むしろ、できることからやってくと。

そこで「体を動かす」というのが1つ。先ほど、疲労因子の話がありましたけれど、なんと現代人は旧石器時代の祖先と比べて、エネルギー消費が3分の1しかないと。これがますます将来落ちると言われています。

本当に冗談ではなくて、アメリカなんか、私が住んでる隣の街がGoogleの本社なんですけれど、あの自動運転車がたまに走ってるんですよね。警察にスピード違反で捕まって、低速運転で検挙されました(笑)。

ただ、そのうち、昨今のニュースを見てても、人間のほうが危ないだろうと。いつここ(心臓)が破裂するかもしれない。

体を動かすことの大切さ

みなさん、運動の大切さは十分わかってる。なので、言われるまでもない。これは意識調査ですね。運動が大切なことはわかってるんだと。「椅子の工夫」やら「服装の工夫」やら、「パソコン用のブルーライトカット」やらもあるけれど。

ただ、やはり、私もそうでしたけれども、わかっちゃいるけど、現実は「帰って寝るだけ 」であると。これが知らない間に何ヶ月も蓄積して、不健康になっていくと。

運動は、スライドは作り損ねましたけど、メンタルにも大事ですよね。やはり「体を動かしてる人のほうがうつになりにくい」というデータがあるんですね。アメリカで、テレビの前に座ってる時間が長いほど不健康だったって、そういう研究があるんです。

体を動かすというのは脳にもいいと。これはもう当たり前ですけど。体は動かしたほうが。よく運動のあと、ストレッチとか整理運動とか言われますけど、その程度ですよね。そんな毎日何分も走れっていうことじゃないです。

体を動かすと疲労因子と疲労回復因子が生成されるが、多少動いたほうが回復因子が生成される。だから、動いたあとは軽く整理運動とか。ダメ押しというわけではないですけど、軽くやっぱり動かしたほうがいい。

例をいうならば、週末、「ああ、今週は疲れた」と。もう十分テレビを見て、寝そべって、微動だにしない。そんなことをしてはダメだと。多少は動きましょうと。買い物ぐらいには行きましょう。そういうことですね。

多少動いたほうが疲労リカバリー因子が生成される。動かないと、これも出てこないということです。

休みの間に次の休みの計画を立てる

この「仕事疲れ」。いろいろあるんですけれども、次の休暇というよりは「いかに休みを計画的に取るか」ということが大事だと思うんですね。

自分の経験からもそうですけれど、「平日に休みのことを考えようかな」と。とても、そんな余裕はなくなって、休みのことを考えられなくなる、月曜日に入ってしまうと。前の職場では、僕も、日曜の昼ぐらいからかなりうつ状態でした。もうサザエさん症候群かなと。

自分がどれだけできたかわからないですけど、「休みの時に次の休み」を考える。別に「旅行の計画を立てろ」と言っているわけではないですが、休みを前向きに考えていこうと。休みを考えるには、平日の疲れたところだとよくない。だから、休みも情熱大陸の時間帯(日曜23時)で情熱を持って考えるとかそういう。まあ、あまりおもしろくないですけれど(笑)。

ちょっと急ぎますけれど、ストレスというのは、基本的な睡眠・運動・食事といった生活習慣なんです。先ほど、人と会うのがストレスと言いましたけれど、逆にまったくの孤独だとよくなるというわけでもないんです。

最近の研究では、人間の幸福感というのにはやはり人とのつながりが大事であると。「ずっとこの1週間、誰とも喋ってません」というのはやはりよくないということですね。

しかし、社交的にどんどんなれというわけでもなくて。

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