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休めない日本人のための「正しいサボり方研修」(全2記事)

サボると脳は活性化する--カヤックが全力で取り組む“休息”のススメ

2015年12月、社員のストレスチェックが義務化されたことをきっかけに、従業員の健康管理を重要な経営戦略としてとらえる「健康経営」が注目されています。積極的にこの課題に取り組んでいくとして、面白法人カヤックが「正しいサボり方研修」を開催。柳澤大輔代表からは「社員が健康でなければ、会社は健康にならない」と、取り組みへの思いが語られました。ゲスト講師としては、スタンフォード大学で客員講師を務める西多昌規先生が参加。休息が脳に与える効果やワーキングメモリを活性化する方法について、科学的な観点から話されました。

カヤックpresents「正しいサボり方研修」

三好晃一氏(以下、三好):今日はお集まりいただきまして、ありがとうございます。人事の三好です。ゆるゆると始まってしまいましたが、今から始めたいと思います。

今日のテーマは、「正しいサボり方研修<休憩のとり方レクチャー>」です。これから1時間半ぐらいかけて、ブレストと、あと今日来ていただいた西多先生から「休息のとり方」のレクチャーをしていただきたいと思います。

最初にまず、なぜこんなことやろうかと思ったのかという大前提のところを。やなさん(柳澤大輔代表)が1月最初にアップしたブログ(カヤックが考える「健康経営」の話。#面白法人カヤック社長日記 vol.2)の話を1分間ぐらいでしてもらいたいと思います。お願いします。

柳澤大輔氏(以下、柳澤):おつかれさまです。今日は外部の方もいらっしゃいますが、ブログに書いた話について改めてお話したいと思います。

健康な社員が会社を健康にする

(カヤックは)もともとクリエイターが9割の会社なので、職種をそろえて、「この仕事が天職だ」という人を集めれば、それだけで職場環境が楽しくなるし、健康でいられるだろうと思っていたんだけど、必ずしもそういうことでもない。

健康というのが、ここ最近自分のなかでも「だいぶテーマとして大きくなってきたな」と感じていたところ、世の中でも「健康経営」という言葉が言われ始めました。

たとえば会社、つまり法人という、人間が作った人工物に対しての“健康”というのは、財務の話になると思うんです。結局、利益が出ていれば健康的な会社ということになる。

ですが、そういうことじゃなく、「健康経営」と、今、言われているのは、会社のなかにいる「社員の健康」という意味で使われているんだと思います。

外部の方から見れば「会社の健康とはそういうことじゃないよ」という指摘もいろいろあるかもしれません。ただ、会社のなかにいる社員が健康じゃないと、当然、作られている会社も不健康になってしまうから、それにしっかり取り組んでいく、と。そういう決意のブログを書いたというのがここまでの流れです。

3つの軸で「健康経営」を考えていく

そのなかで実は人事部と一緒に、今、3つに分けて考えていて。1つは、まず意識を変えていこうと。健康に対して、しっかり取り組んでいくと意識を変えること。それは、たとえば、今日は西多先生ありがとうございます、こんな風に専門家の立場からお話をいただいて、意識を変えることとか。今、社員自身も自らの健康法をメルマガで紹介しあってくれたりしていて。そういうことをやってます。

2つ目は、具体的にしっかりデータを取って、科学的に健康を促進することです。KPIを立てて、人事部として指標を設けて、健康保険料を下げるとか。いろんな指標ができると思っています。そのデータを基に、ちゃんとやっていこうというのが2つ目。

3つ目は、これを今日ブレストしていただくと思うんですが、面白法人カヤックって「会社自体が面白くありたい」という会社だから、考えた健康施策が外から見ても「面白いよね」って言われるように。

実質的なほうがいいんだけど、もしかしたら、ネタになっちゃうようなものもあるかもしれない。それでも、意識があがることになると思うし。外向きに発信できるものができればいいし、なくてもいいし。そんなこともできればいいなと。

この3つの軸で人事部は考えているということで、今年1年の目標となります。

三好:ありがとうございます。

スタンフォード大学の西多先生

こんな感じで始めていきたいと思います。じゃあ、先生のご紹介を。

西多昌規氏(以下、西多):簡単でいいですよ。

三好:こういう方ですね。スタンフォード大学の精神行動科学の先生になります。今日は、休息と仕事効率のお話をしていただきます。そのあとに質問タイムも設けているので、ぜんぜん関係ないことでも気になることがあればぜひ聞いていただければと思います。それが終わったあと、20、30分みんなでブレストをして、次の施策とかを考えていきたいと思います。では、さっそく。

西多:それでは、皆さん、こんにちは。西多昌規といいます。今日は『「休めない日本人」のための正しいサボり方』。タイトルは本当にこんなのでいいのか、サボることを大々的に正当化していいのか、という問題がありますけれど。

ここ(カヤックオフィス)に来るのは、私は初めてですけれど、やっぱりシリコンバレーの会社とよく雰囲気が似てるなという感じですね。真似して作ってるのかもわかりませんけど(笑)。

パッと見、さらっと10分くらいみなさんのことを見てる限りでは、みなさん若くて健康そうだなと見かけでは思ったんですけれど、果たしてどうかと。というわけで、今日は30、40分くらいでかいつまんでお話ししたいと思います。

話の途中で、主にみなさんの職種向けのストレスチェックみたいなものを発見しましたので、やりたいと思います。妥当性は不明です(笑)。

「風邪でも休めない」日本人の特性

まず、このコマーシャルを見ていただければ。別に私はここの製薬会社の回し者でもなければ、この製薬会社をdisるわけでもないんですけれど。

(有吉弘行出演。「風邪でも、絶対に休めないあなたへ」というコピーのCM)

「風邪でも、絶対休めない」。これ、日本らしいですよね。有吉さんぐらいの方だったら「風邪のときぐらい休みましょうよ」と思うんですが。日本人的な。

これ、外国人だとなかなか理解できないかもしれません。風邪のときは休む。いないなら、いないでなんとかする。もうしょうがないと。

日本人はどうしても無理をして働こうとする。このコマーシャルは最近のものらしいですけど、これはいかにも日本的ですよね。

ほかにも日本だと、私はアメリカ人になったわけではないですけれど、風邪をひくと「自己管理がなってない」と(言われてしまう)。

ただ、風邪とかインフルエンザは、ウイルスと免疫、自分が弱ってるかどうかの兼ね合いですので、自己管理をしていても、どうしようもない場合があるんですね。完全な自己管理は自宅警備員に徹して、冬は外にいっさい出ないと。それは無理ですよね。だから、どうもよくない。

主に今日は「休む」とか「サボる」というお話ですけれど、休みとか休暇について大学や研究機関はいっさいそういう調査をやってないです。だから、民間会社に頼らざるを得ない。

とくに国際比較などは、調査対象のチャンネルがなさすぎるので、どうしても、WorldwideなExpediaとかに。

これを見ると、このように、予想できるありがちな展開ですけれど、日本は「支給された有休」も下のほうであれば、支給された有休の「消化率」も圧倒的に少ないという結果なんです。

医療現場も休みづらい

わたしは以前、大学病院に勤めていました。大学病院は医者がたくさんいて、休みやすい環境だと思うんですけど、会議やら雑務が多くてなかなか休めないんですね。結局、休みは繰り越し繰り越しで。だから、今日、こんなことをえらそうに喋る資格が本当にあるのかと、そういう問題もあるんですけれど。けっこう医療業界も休みづらいんですよね。

たとえば、当直がある。「風邪ひいたから変わってくれ」。なかなか言いづらいですよね。私が研修医の頃は、インフルエンザでもこっそり出勤してたり。38度ぐらい出てたり。今はないですけど、ただ、あとで「インフルエンザだった」っていうやつはいますね。若手で出てきて、全員が感染をするという。笑えないですね。

これはどうにかならんのかと。逆に(消化率が)100パーセントの国というのは、これはこれでかなり問題なんですよね。郵便物が届かないとかってことが、けっこう平気で起きます。この左2つ(スペイン、ブラジル)とか、とても僕は住みたいとは思わないですけれど。

クロネコヤマトや郵便のようにはいかないと。「(荷物が)なくなりました」って言っても、「知りません」って言われます。電話がつながらないことがしょっちゅうある。アメリカでもそうなんですよね。こういう状態があります。

サボるの意味は?

そして「サボる」と。私はこの数日、「サボる」をちょっと研究したんですけれど、wikipediaで(笑)。論文検索しても「サボる」ってないんですね(笑)。

これは「仕事などを怠ける」という意味ではあるんですけど、ご存知の方いるかもしれないですけど、もともとはこういう意味なんです。

「過失に見せかけ機械を破壊する。仕事を停滞させるなどして、経営者に対して損害を与え、事態の解決を促進しようとする労働争議の一種」であると。

すごいですね。こういうのをやられたら、三好さんはたまったものではないですね。

三好:そういうのは困ります(笑)。

西多:こういうことはしないようにしましょうね。条件闘争とか。

フランスのサボタージュ(sabotage)を動詞とした、ちょっと過激な言葉だと。日本ではそれを動詞に活用して「サボる」と。

さらに、「過重労働の割に効率がさっぱり上がらない日本の労働環境をサバイバルするために、有志が独自に編み出した生存戦略」というのはWikipediaには書いてなくて、私が勝手に考えたものです。Wikipediaじゃないですよ(笑)。

これは今後生きていく上でけっこう大事ですよね。過重労働、あるいは過重労働じゃなくても、どうも効率がさっぱり上がらないと。

ここにいるみなさんは20代、30代、40代の方もいるかもしれないですけど。健康に関心は……。今、グルコサミンとか買ってたら、そっちのほうがやばい。たぶん、のちのち効いてきます。

あとやはり、このぐらいの年代の方が、気をつけなきゃいけないのはメンタルですね。体はあと10年、20年後に来ますけれど、若い人の死因で1位なのは自殺なんです。「メンタルを気にする、うまくやっていく」ということは大事です。

「効率よくサボる」というのを取り入れて、考えないと。いかに生産的にサボるとか、生存戦略。こういう考え方もあっていいんじゃないかなと思います。

これを病院研修なんかで言うと、袋叩きにあうような定義ですよね。怖い看護師さんが読んだら、「なに考えてんだ?」みたいな。

今日の主題は3つ

今日の話は主に3つになります。「休むほうが仕事がはかどる科学的根拠」と。

申し遅れましたが、私のもともとの職業は精神科の医者なんです。サブで睡眠研究というのをやっていて、それを今、少し余裕をいただいて、アメリカで睡眠の研究をしてるんです。裏の顔でビジネス・商売をやっている。そういう人です。

エビデンスとして「レベルが少しあるかな」というものを、今日は簡単にご紹介します。

2つ目が、「疲労・ストレスの都市伝説」。あとで話しますけれど、疲れると乳酸が溜まると。乳酸というと、ヨーグルトのような酸っぱいものが筋肉に溜まってきて、いかにもだるくなりそうなイメージを抱かせるんですけど、実はそうでもなさそうだとか。

そして、最後にかなり不安ながらも、どうしたら休めるかという本当に一般論的なアウトラインだけを示すと。

「休む」について取材を受けても、「どうやったら連休が取れるんですか?」とか、「上司にどう言ったらいいの?」とか、いろいろ言われるんですけれど、そんな方法が簡単にあったら、なかなか困らないです。

大枠を知っておいて、そして、試行錯誤でなんとかサボって、自分の時間とか、そういうのを編み出していく1つのきっかけになればと思います。

休んでいる時にこそ脳は働いている

左上は、いわゆるぼーっとして太陽浴びて原っぱにいる。あんまりなにも考えてない状態です。こちら(右下)はいわゆるお仕事と。

一見すると、こちら側(仕事)のほうが、脳のエネルギー消費量が多いように見えますよね。脳研究だと、計算させれば脳は活動するとか、モノをパッと見せれば脳が反応するとか、そういう研究が主体だったんです。脳のあちこちが活動するだとか、変な脳波が出るとか。

ところが、それが、最近はむしろ活動の低下なんだと。ぼーっとしているときに活動している脳「Defeault Mode Network」が最近の概念なんです。これは聞いたことあるかもしれませんが。

なににもしてないときに活動している脳というが、実に脳にはこれだけ。これは脳をこちら(頭頂部)からみたやつです。これは前頭葉ですね。これが前のほうですね。少し後ろの脳幹部分とかあって、主には前頭葉なんです。

ここ(黄色部分)が、ぼーっとしているときでも実は活動していると。逆に言えば、なにか仕事をしたり計算したり、用事をしていたりメール打ったりしているときはそっちのしょぼい活動に取られて、この活動が妨害(Disturb)されてると。そういう見方もできるんですね。

ぼーっとすることもとても大切

そして、研究によって異なりますけれど、こういうぼんやりしてるときのエネルギー消費。脳というのは、血液が巡ってブドウ糖を消費したり、人間のなかで一番消費量の多い組織ですけど。これがなんと通常思考や仕事をしてるときの約15倍ぐらいあるんじゃないかと。なので、意外に、なにもしてないときのほうが休んでいるというわけでもないんです。

この話はあまり関係ないですけど、統合失調症とかアルツハイマー型認知症といった、あるいはうつ病もそうなんですけど。こういう病気はこの「Default Mode Network」が関与している前頭葉とか、こちらの後部帯状回って。こういうところに障害が出ることがわかっていて。あらゆる広い精神疾患のやられるところにかなりオーバーラップしている。

当然、精神疾患だけではなくて、人間のいわゆるパフォーマンス。仕事をしたりとか、あるいはいわゆる気分や情動を穏やかに保つ、こういうことにも大事なものです。だから、ぼーっとしてるのもけっこう大事だなと。

ここで、「私は絶えずしょっちゅうぼーっとしてるから、大丈夫だ」と安心する人もいれば、「せっせとあれこれしていて、ぼーっとしてる時間があまりないからダメなんじゃないか」と思う人もいるかと思います。

重要な能力「ワーキングメモリ」

ここは患者さん向けの話ではぜんぜんないので、いわゆる働く人、とくにクリエイティブ系の人の話ですけど。「ワーキングメモリ」という概念があるんですね。単に「平安京は794年だっけ」という、そういう記憶じゃなくて、「短時間で情報を保持しながら、同時に物事を処理する能力。会話や読み書き、計算、なんでも基礎になる。日常生活や仕事、学習を支える重要な能力」。これがワーキングメモリって概念なんです。

仕事はもちろんですけど、患者さんにこの「ワーキングメモリ」について説明するときに、一番わかりやすいのは料理なんです。いわゆる段取り。なにかを切ったり、なにかゆでるときはあらかじめ鍋に入れて煮込んでおいて、その間になにかを切ったりする。

これが、やはり、認知症やうつ病、あるいは脳が疲れてくるとできなくなるんです。これは仕事をする上で非常に大事な能力なんですね。

このワーキングメモリは、休息あるいは睡眠、こういうのがないとダメになるという研究は山ほどあるんです。

ある実験が教えてくれたこと

1つだけ研究を紹介しようと思います。「Incubation Paradigm」というのがありまして。いわゆるクリエイティビティを測る心理的な検査です。

たとえば、このクリップがありますよね。クリップから、ぜんぜんクリップとは違う用途のものを考えてくださいと。捻じ曲げてハンガーにするとか、いろいろ考えるわけです。

もしくは、これはレンガですけど、これのなにか違った用途を思い出してみる。傘立てにするとか、あるいは植木鉢にするとか、もっと斬新な考え、なにかありますかね? いろいろ考えるわけです。

それで、これを続けて2回やるんですけど、休憩を挟むとかいろいろ干渉条件をつけたんですよね。4条件あると。

「休息中にどうでもいい作業」。たとえば、なんでもいいから、軽いメールとか。なにもせずじっとしているわけじゃなくて。お菓子食べたりで別にいいんですけど。

あとは、休息じゃなくて「ほかのキツい作業」。えらい難しい書類、エクセル書類とか。そういうのを渡した場合と、「単にぼーっとしてください」という場合と、「休息なし」。この4条件を出したんです。

そうすると、上にいくほどいいというのは、いわゆるアイディアが出る、incubatiion・creativity、いわゆる斬新なものをより多く考え出したという、その率なんですけれど。見ていくと、「ただの休息」はあんまりよくないということなんです。一番ダメなのは「休息なし」。ひたすらだらだら続けるから。

「ただの休息」というのは、「なにもせずに、ここに座ってぼーっとしてください」と。これはかなりの苦業です。

なにか気をまぎらわせる、どうでもいいようなことをしていたほうがいいということですね。現代のどうでもいいものっていったら「スマホ遊び」とかそういうことですね。

このほかにも、この「ワークングメモリ」というものは、睡眠した、ぐっすり寝たあとのほうがいいとか。あるいは睡眠不足だとダメになるとか、こういう研究は山ほどあるんです。

こういった人間のbehavioralなパフォーマンスに関しては、やはり、休憩を入れたほうがいいであろうと。

ただ、「好きなことなら休息なんかしてるより、ずっとやってたほうがいい」とか、そういう問題もあるわけです。だから、これはなかなか心理研究では絶対性の再現適用は難しいんですけれど。

緑のリラックス効果

そのほかにも、あれこれ探すと、緑のなかを5分歩くだけでもリラックス効果があると。これはバーチャルリアリティ、最近は本当に研究もVRをつけて、Oculusとかをつけて、なにかをやらせて反応を見るとか。

だから、これはコンクリートジャングルのなかを歩かせるのと比較して、緑のなかでやったほうが、バイオロジカルな、脈だとかレスポンスが落ち着いたということなんですね。

カヤックさん、緑ありますか? 今後の参考に(笑)。そこにちょこっとあったりしますね。

「学習効果を長持ちさせるには適度な休憩が必要」。もうこれはしつこく言ってることです。この実験の論文は人間を使ったわけではないんです。ラットを使っています。学習効果を長持ちさせるために、いわゆる人間の仕事や作業ってなんでも学習です。なんで休憩が必要なのか。

人間の、ワーキングメモリって言いますけど、短期記憶はこの海馬というところ。短期記憶は復習をしたり、睡眠中にも固定されるので、どんどん前頭葉という、先ほどの「Default Mode Network」で赤く光ってたようなところに移行して、長期記憶に移行すると。

だから、海馬というのは短期記憶には絶対必要なんですね。この海馬は動物実験とかで断面を撮ると、海馬ってタツノオトシゴに似てるかどうかという議論はともかくとして、こういう形をしてるんです。このなかで記憶のやりとりが行われてるんです。

これは動物で切片で見るんですけど、「じゃあ、どうやって見るの?」っていったら、このように染めるんです。染色で。あちこち染まったものが、こういったりこういったり。染色方法はいろいろあるんですね。

なにを見てるかと言ったら、この海馬のなかのいわゆる神経細胞、タンパク質の動きを見てるんです。海馬には神経細胞が山ほどあるんです。

海馬の細胞は大人になっても増える場合がある

人間の脳というのは、どこかで聞いたことあるかもしれないですけど、「小学生ぐらいが脳細胞のマックスで、あとはだんだんと少なくなっていく」という話があります。けれど、この海馬に関しては例外で。年を取っても、神経新生、いわゆる細胞が増える場合があるんです。逆に減る場合もある。

代表例は「うつ病」です。うつ病は、この海馬がスカスカなんです。しぼむぐらい。主にストレスによって。神経細胞はあれこれ枝を出してる、タンパク質や神経伝達物質やらを行き渡ししてるんですけど。ストレスによって、この枝がスカスカになってくる。木が虫にくわれてスカスカになってくる、そんな感じです。また、うつ病が治れば復活して戻ると。もう1つ、アルツハイマー型認知症、これはなかなか元には戻らないです。

なにを言いたいかというと、この記憶学習には、この休息中に合成される「タンパク質」。タンパク質は元を辿ればアミノ酸のつながりで、遺伝子とかに制御されてるんですけど。当然、ドーパミンやセロトニンや神経伝達物質、これはまたタンパク質とは別のものも関与してますけど。記憶のやり取りというのは、こういったタンパク質でされている。

この短期記憶がいかに前頭葉で、この長期記憶に移行していくかという。こういう研究も今、行われています。記憶が前のほうに向かうというような。東大がなにか研究してます。それは最先端の研究ですね。

逆に、休息しないとか、睡眠不足でぶっ通しでやらせたとか、そうなると、この辺の記憶のやり取りがスカスカになってくるということなんですね。

あと、最後、ぼーっとするという意味では睡眠とも絡むんですけど。寝ている間にいいアイディアを思いついたという歴史的な話は山ほどあって、皆さんご存知のこともあるかもしれません。

この元素の周期表。これも、メンデレーエフが寝てる間に部分的に思いついたと言われてます。有名なのはベンゼン環のケクレ。どうも寝てる間に、夢かなにかで思いついたと。DNAの二重らせんも、ワトソンという研究者が寝ている間に「蛇が絡みつく夢」を見ていたからではないかと。

研究者というのはなんだかんだ、みなさんもそういうところがあるかもしれないんですけど、休みの日は完全オフにしてないんですよね。なんだかんだ、頭の隅でなにかを考えてるんですよね。

なにかしら考えてる人というのは、起きてると、いわゆる論理脳のの縛りが強くて、なかなか闇に潜んでるアイデアを思いつかないと。これがふっと出てくるのが、ぼーっとしてるときであったり、あるいは睡眠中であるということなんです。

だから、睡眠は脳に休息を与えるというわけじゃなくて、なにかしら、起きてるときでは思いつかない・結びつけられないものが突然ドーンと結びついたりすることがあるということなんです。

ちなみに、『Yesterday』(The BEATLES)はポール・マッカートニーが寝てる間に夢で素晴らしい音楽が流れてたと。朝起きて、さっそくピアノで弾いてみたら素晴らしかった。そんなことでできて。これは本人が音楽雑誌のインタビュー記事で語ってるので、間違いないと思いますね。

ほかにも夢でなにか思いついた、そういう話は山ほどあります。本当か嘘かはわからないものもありますけれど。ただ、こういうのはクリエイターに特徴的ですよね。ただ、公務員の人とかも、考えこんで寝てる間にアイディアを思いつく、そういうこともあるかもしれないですよね。地域おこしとか。

こういうのは、やはり、なにかしら、自分の関心あるプロジェクト、つまりアイデアを一生懸命incubate、考えてる人が巡りあう現象なのかもしれないですね。

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